公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

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ドラゴンの調査

……………………

 

 ──ドラゴンの調査

 

 

『というわけで、だ。ドラゴンを調査しようじゃあないか!』

 

 篠原はさも当然のようにそう言いだした。

 

「あれを追うのか? 想定していないぞ」

 

『ちょっと追いかけて行動範囲や巣を確認できればそれでいいんだよ。ここまで来たのだからいいだろう? 少しぐらい任務が追加になっても』

 

「簡単に言うがな……」

 

 既に俺たちはカルテルとゴブリンと交戦し、それだけ弾薬を消耗している。

 

 これから突然遭遇戦などに巻き込まれるかもしれないということを考えると、一度戻って装備を整えなおしてから行動したかった。

 

「篠原が言う通り、あいつの行動は把握しておくべきだ。あたしはそう思う」

 

 そこでそう言ったのは湊だった。

 

「あれは1階層で野放しにしておくには危険すぎる。もし、あれがダンジョンの出口から突破を図ったりすれば大惨事だ。だから、八の動きを迅速に把握しておくべき。そうは思わないか、佐世保?」

 

「クソ。分かった。調査を継続しよう」

 

 俺は湊の言葉に頷くしかなかった。

 

 あのドラゴンがダンジョンの出口に向かってきたら、出島が危険にさらされる。それが俺の憎むダンジョンが生んだ街だとしても、そこが日本であることに変わりないのだ。

 

「ドラゴンの現在地を確認してもらう」

 

 俺はそう言って公社の本部(HQ)に連絡を取る。

 

「ハングドマン・ワンより本部(HQ)、この座標周辺に使用可能なドローンを飛ばしていないか?」

 

本部(HQ)よりハングドマン・ワン。飛行中のドローンは1機だけだ。コールサインはファルコン・ワン。オペレーターに繋ぐか?』

 

「頼む」

 

『ODIN経由で接続する。待機せよ』

 

 本部(HQ)からそう指示があり、俺たちが待つとドローンに繋がった。

 

『こちらファルコン・ワン。何か用事か、ハングドマン?』

 

「ああ。この付近をドラゴンが飛んでいる。調べてくれ」

 

『ドラゴン? 少し待て』

 

 俺がドローンオペレーターに連絡するのにオペレーターから困惑した声。

 

 小型のドローンは現地で湊が操作するが、大型のドローンは片手間に飛ばすのは難しいため、後方から専用のオペレーターが操作している。

 

 そして、ドラゴンを追いかけるには小型のドローンでは頼りない。ここはもっとデカいドローンに支援してもらう必要があった。

 

『オーケー。確かにこいつはドラゴンだ。1階層にこいつがいるとは。どうする?』

 

「追跡して位置を報告してくれ。これから追跡調査する」

 

『了解だ。追跡する』

 

 後方のドローンオペレーターが追跡を始め、ドローンからの映像がODINで共有される。俺たちは低空を滑空するように飛行しているドラゴンが北上しているのを確認した。

 

「どこに向かっていると思う?」

 

「分からん。だが、ここら辺でこれまで見つかっていなかったということは、中央の森じゃないか?」

 

 俺の問いに湊がそう考察する。

 

 中央の深い森はその地形もあり、カルテルも企業もあまり寄り付かず、そうであるが故に俺たちもあまり用のない場所であった。

 

 そういう理由で人が少ない森ならば、これまで1階層でドラゴンが見つかっていなかった理由にもなるだろう。

 

『諸君、観察なくして正解なしだよ。あれこれ考える前に追いかけたまえ!』

 

「分かってる。行くぞ」

 

 俺たちは再び車両に乗り込み、上空の大型ドローンが追跡しているドラゴンを追いかけることにした。

 

 車両はドラゴンを追って北上していく。

 

「思ったが、カルテルの連中が妙に厳重な防空コンプレックスを構築している理由と言うのは……」

 

「そうか。ドラゴンが出没したから、という理由もあるな…………」

 

 カルテルを脅かす空の脅威と言うのは、ライバルのカルテルや公社のドローンぐらいだ。このダンジョンでまともな空軍を保有しているのは、企業と民間軍事会社(PMSC)ぐらいのもので、そこまで防空作戦は重要ではない。

 

『これまでのドラゴンとの交戦記録を調べたが、あれを落とすのに地対空ミサイル(SAM)空対空ミサイル(AAM)はあまり有効ではないようだ。彼の鱗はちょっとした装甲車並みの装甲があるのが確認されている』

 

「ああ。そうだ。連中にその手の武器はカラス除け程度の効果しかない。地上に降りたところを対戦車ミサイルでぶち抜くのが一番だが……」

 

 篠原が分析するのに湊がそう言った。

 

「今回は調査だ。交戦は絶対に避ける。いいな?」

 

「了解だ。今の装備でやつと戦う気にはならない」

 

 俺が確認するのに湊が頷く。

 

『ファルコン・ワンからハングドマン・ワン。目標は中央森林地帯の手前で西に向かい始めた。このまま追跡を続けるが、そろそろ敵性勢力の防空コンプレックスの射程圏に入ってしまう』

 

「可能な限り追跡を頼む、ファルコン・ワン」

 

『ああ。そのつもりだ』

 

 ドローンオペレーターからの言葉に俺はそう要請。

 

「やつはどこに向かっている……?」

 

「分からん。西には企業が作った道路があるが、それが狙いか?」

 

 俺はODINでドラゴンの情報を見ながら考え、湊は地図を見て告げる。

 

「道路にドラゴンが好きそうなものはないと思うが」

 

『いや。そうでもないのだよ。ドラゴンには珍しいものを収集するという生態が報告されている。車両を持ち去ったという情報や、宝石の類を集めていたという情報もある』

 

「カラスみたいだな」

 

『もしかしたら求愛に使うのかもしれないね。興味深い!』

 

 篠原はそう言い、スパイダーがマオの方を見る。

 

『マオ。君はドラゴンがものを集めるのを知っているかい?』

 

「うん。あれ、きらきらしたもの、すき。かみさま、きらきらのおそなえ、よろこぶ」

 

『ほうほう!』

 

 マオの言葉に篠原は興味深そうにしていた。

 

『ハングドマン・ワン。こちらファルコン・ワン。ドラゴンに向けて地対空ミサイル(SAM)が発射された。繰り返す、地対空ミサイル(SAM)が発射された』

 

「クソ。企業の保有している地対空ミサイル(SAM)か?」

 

『ああ。大井傘下の民間軍事会社(PMSC)のだ。命中したが……』

 

 遠くで炸裂音が響き、マオがびくりとする。

 

『ああ。効果はない。ドラゴンは未だ飛行中で、民間軍事会社(PMSC)と交戦を開始した。この空域にとどまっていると、こちらまで攻撃されかねない』

 

「分かった。一度引き上げてくれ。その代わり近くの空気に予備のドローンを」

 

本部(HQ)に要請しておく』

 

 ここで一度ドラゴンを追跡していたドローンが引き上げていく。

 

「湊。こっちでドローンを飛ばすぞ。一度車両を止める」

 

「あいよ」

 

 俺たちは一度車両を止め、それから湊がドローンを空に放つ。

 

「見えたか?」

 

「まだだ。だが、民間軍事会社(PMSC)の連中が慌ただしくしているのが見える」

 

「これ以上近づくのは難しそうだな」

 

 俺も湊のドローンが撮影している映像を見たが、企業が雇った民間軍事会社(PMSC)のコントラクターたちが装甲車や戦車で移動を始めているのが見えた。

 

 そう、企業は戦車までこのダンジョンに持ち込んでいる。

 

「ここからは徒歩で慎重に進もう。ドラゴンがどの程度の脅威なのかを見極める」

 

 俺はそう言い、車両を降りた。

 

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