公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

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民間軍事会社

……………………

 

 ──民間軍事会社

 

 

 企業はダンジョンでの活動のために民間軍事会社(PMSC)を雇用している。

 

「こいつら太平洋保安公司か」

 

 ドローンで民間軍事会社(PMSC)の装備を確認していた湊がそういう。

 

 太平洋保安公司は大井系列の民間軍事会社(PMSC)だ。

 

 東アジア最大規模の民間軍事会社(PMSC)であり、ダンジョンにおいても最大規模の戦力を誇っている。

 

主力戦車(MBT)4両に、歩兵戦闘車両(IFV)6両。それに随伴する機械化歩兵ってところか。ドラゴンの殺害を目的にしていると思うか?」

 

「これだけ戦力があればぶち殺せるだろう」

 

「じゃあ、お手並み拝見と行こう」

 

 俺たちは可能な限りとドラゴンとの交戦を図る太平洋保安公司部隊に接近する。

 

 ちょうど周囲を見渡せるような丘に俺たちは陣取った。そこからは大井が整備した巨大な道路が見渡せる。

 

 大井──大井コンツェルンは巨大な企業複合体(コングロマリット)で、いわゆるメガコーポというやつだ。

 

 大井がダンジョンに求めているものは、カルテルのそれとはやや異なる。連中はダンジョンに眠る地球上には存在しない資源やクリーチャーを求めている。

 

 それらは高度な医療を実現したり、これまでの技術を革新するものになる可能性があるから。そう聞いている。

 

 ダンジョンは金になる。だから、この異常はいつまでも消えないのだ。

 

「ドラゴンが東から飛来するぞ。太平洋保安公司の連中は迎撃するつもりだ」

 

「連中が守るべき何かがあるのか?」

 

「大井の車列(コンボイ)だ。大型トラックが10台」

 

「それは守りたがるんだろうな」

 

 湊がドローンから大井が組んでいる車列(コンボイ)を視認した。車列(コンボイ)は今は停車しており、護衛(エスコート)の部隊が太平洋保安公司の重武装部隊との合流を目指している。

 

「間もなく交戦状態に入る」

 

 ドラゴンは高速で東から接近中であり、太平洋保安公司の戦車や装甲車が砲口をドラゴンの方向に向けた。

 

 そして、一斉に射撃が開始される。

 

 もともと地上目標を攻撃するための戦車の主砲を無理やり対空目標に定めるのは容易なことではないが、太平洋保安公司の戦車にはそれが可能だった。

 

 ドラゴンは戦車砲弾を受け、よろめきそこに装甲車の機関砲が次々に叩き込まれる。

 

 あれだけの猛威を振るったドラゴンも現代の兵器を相手には無力かと思ったときだ。

 

「これは……! 別のドラゴンが接近中だ、佐世保。こっちに向かっている。こいつはさっきのやつよりもデカいぞ……!」

 

「何だと」

 

 湊が思わず声を上げるのに湊が見ているドローンに映像を俺は共有。

 

 確かにさきほどのドラゴンとは比べて物にならないほど巨大な白い鱗のドラゴンが飛来し、真っすぐ太平洋保安公司の重武装部隊に突っ込んできた。

 

 戦車と装甲車が再び攻撃を行うが──。

 

『おお! あれは報告されていたデフレクターシールド……!』

 

 篠原が声を上げる。

 

 ドラゴンに向けて叩き込まれた砲弾は全てドラゴンに達することなく爆発した。篠原が言ったようのドラゴンの中には一種のデフレクターシールドを展開する能力があるとは噂されていたが……。

 

 ドラゴンはそのまま戦車に向けて火炎放射を行い、戦車が炎上する。燃え上がった戦車は戦闘不能になったようで沈黙し、装甲車は撤退を開始。

 

 しかし、上空を旋回するドラゴンは見えるものすべてに炎を放ち、太平洋保安公司の部隊は大打撃を受け、惨敗となった。

 

 それからドラゴンは先に死亡した小さなドラゴンの下に向かい、嘆くように天に向けて咆哮する。

 

『ふむふむ。あれは親子の個体だったのかもしれないね。我が子を守ろうとしたのだろう。だが……』

 

「子供は死んだ」

 

 篠原の言葉に俺が続ける。

 

「これ、よくない……。ドラゴン、こども、とてもすくない。それ、しぬ、すごくおこる……」

 

 マオは震えるようにしてそう言っていた。

 

「確かに報復に出る可能性はあるよな」

 

「ああ。あのクソドラゴンが太平洋保安公司の連中だけ攻撃してくれるならいいが、区別してくれるとは思えん」

 

 湊が唸りながら言い、俺もそう返した。

 

『興味深いデータが取れると喜びたいが、私も犠牲者が出るのは望まない。ドラゴンの調査はこの辺りでいいから、引き上げたまえ』

 

「言われずとも」

 

 篠原に言われ、俺たちは装甲車に戻ると公社に向けて撤退した。

 

 帰りにドラゴンに襲われるという最悪の事態は避けられたが、1階層は大騒ぎになっていた。大井のドローンが撮影した巨大なドラゴンの姿がネットに流れ、それを見た1階層の住民たちが避難を開始しようとしていたからだ。

 

 1階層の出口にあるコンビニやレストランは臨時休業の張り紙を出し、従業員たちはそそくさと出島に向けて逃げ始めていた。

 

 逃げていないのはダンジョンにしか居場所がない連中だけ。

 

「戻ったか、佐世保、湊。レイヴンのことで村瀬が礼を言いたいと言っていたぞ」

 

「了解」

 

 俺たちをガレージ出迎えた警備主任に俺は頷き、事務所を目指した。

 

「おう、佐世保、湊。レイヴン・ユニットの件、助かった。だが、また別の問題が生じたらしい。お前らはもう知ってるか、ドラゴンこと?」

 

「俺と湊で見てきた帰りだよ。厄介なことになるかもしれんぞ」

 

 村瀬がそう言うのに俺はそう言って椅子に座る。

 

「ああ。どうも太平洋保安公司がドラゴンの子供を殺ったみたいだ。デカくてデフレクターシールドを展開する親ドラゴンはかんかん。太平洋保安公司の連中を虐殺したが、まだ怒り冷めやらぬという具合だ」

 

「うへえ。そりゃあ不味いな……」

 

 湊が俺の代わりに説明し、村瀬と話を聞いていた公社の職員が家わいい表情。

 

「デフレクターシールドを展開するドラゴンってのはダンジョン戦役中ももっとも犠牲者を出した野郎だ。主力戦車の砲撃にすら耐え、同時に戦車を戦闘不能にできる火炎放射を使える」

 

「俺は戦ったことがない。ダンジョン戦役中はどうやって倒したんだ?」

 

「砲兵の猛砲撃で釘付けにして、猛烈な爆撃を加えた。あのデフレクターシールドは一定のダメージが蓄積するとエネルギーが飽和して、機能しなくなると技術将校は言っていたな」

 

「砲兵も爆撃機も俺たちは持ってないな」

 

「だな。古今東西、ドラゴンスレイヤーってのは困難な偉業を成し遂げたからこそ讃えられるんだ。そういうもんだろ?」

 

「かもな」

 

 俺はドラゴンスレイヤーの伝承に興味はない。

 

 興味があるのは現実的にあの化け物をどうぶち殺すかだ。

 

『諸君! ドラゴンについての談義は興味深いが、まずは私のところに報告に来てくれないかね? マオからもっと話を聞きたいのだが!』

 

 と、ここで存在感を失っていた篠原が抗議の声を上げる。

 

「分かってる、先生。すぐに向かう」

 

『頼むよ! 時間は有限なのだから!』

 

 篠原にそう促され、俺たちは地下2階にある研究室を目指した。

 

……………………

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