公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

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カルトについて

……………………

 

 ──カルトについて

 

 

 2階層で問題になっているのはカルト宗教。

 

 それはメイズトロジー教会という連中で、ダンジョンの出現は神の思し召しだと主張する連中である。

 

 ダンジョンの出現で最初に荒れ狂った殺戮は神による不信心者を淘汰する審判であり、ダンジョンそのものは神が与えた第2のノアの箱舟であると信じている。そういういかれた連中だ。

 

 やつらはダンジョンに大勢を引き連れて移り住んだが、ダンジョンは無法地帯だ。

 

 やつらはクリーチャーどもに襲われ、犯罪組織に襲われ、企業に排除された。

 

 それでもやつらはまだダンジョンにいて、今は武装しているらしい。

 

「カルトは自分たちの支配する場所を神の領地だと主張し、侵入する人間を手当たり次第に攻撃している。これが厄介な点だ」

 

 俺は現地指揮官から得た情報を湊に語る。

 

「2階層の広域にわたってカルトは実効支配を行っている。もっとも連中も企業相手に戦争をするのには二の足を踏んでいるらしく、今は企業とは交戦していない。だが、やつらとを組んだ犯罪組織以外は手当たり次第に攻撃されている」

 

「カルトの排除があたしたちの仕事になるのかね」

 

「そうなるだろうな」

 

 カルトは犯罪組織に手を貸している。その時点でカルトは公社にとって排除すべき敵になっている。俺たちは連中が何を崇めているにせよ、関係なく連中を殺し尽くさなければならない。

 

 俺自身にとっても忌々しいダンジョンを神と崇めるような連中は許容できない。

 

「しかし、カルトの規模は今もそれなり何だろう? 単純に排除するには公社側の戦力が足りないぜ」

 

「それもそうだな。となると、頭を潰すってことになるか……」

 

「指導者の暗殺か」

 

 組織の指導者を暗殺する。それは相手に組織にとって大打撃になることが多い。

 

 シンプルに指導者を失ったことへの打撃があり、さらには後継者を巡る争いも勃発する。そうしているうちに組織は弱体化し、外部の勢力による攻撃を許す結果となるのだ。

 

 だから、俺が真っ先に指導者の暗殺を考えたのも当然だった。

 

「問題は今の指導者が誰かって話になる。カルトを排除するなら、そこら辺の情報収集をしなければならないな」

 

「オーケー。今後の課題をして考えておこう」

 

 俺と湊はそう話し合ったのちに、2階層の公社の拠点で命令を待って待機した。

 

 理事会と村瀬から連絡が来たのは俺たちが2階層に到着してから半日後のこと。

 

『佐世保、湊。2階層に存在するカルト問題を片付けるこが決定した。公社は正式にメイズトロジー教会を敵と見做し、排除することになる』

 

「予想通りだな。方法は?」

 

 村瀬が告げるのに俺はそう尋ねる。

 

『首狩りだ。敵の首脳を暗殺する』

 

 これも予想通りだ。

 

「敵首脳部についての情報が必要だな」

 

『ああ。その情報を得るために情報部が行動する。お前たちにはまずはその支援を行ってもらいたい』

 

「オーケー。任せておけ」

 

 村瀬が言い、湊がそう引き受ける。

 

『情報部は主に通信傍受をメインにしたシギントで情報収集を行う予定だ。情報部の技術者を護衛してくれれば、あとは情報部が仕事をやる。作戦開始は情報部の準備が整ってからだ。以上』

 

 村瀬はそう言って通信を切った。

 

「さて、次は情報部の護衛か」

 

「よくある仕事だ。情報がなければ何も始まらない。首脳部を暗殺したくても、どいつが首脳部の人間なのか分からないとな」

 

 湊が言うのに俺はそう返した。

 

 情報は必要だ。どんなに強力な兵器であったとしても、情報の裏付けがなければ意味がない。俺たちエンハンサーも兵士としては優れているが、情報がなければ何事も成すことはできない。

 

 それから情報部の作戦要員が俺たちに合流したのは翌日のことだ。

 

「情報部の二宮と相場だ。よろしく頼む」

 

 来たのは二宮という男性職員と相場という女性職員の2名であった。

 

「よろしく。あんたらの護衛をする佐世保と湊だ。作戦にはいつ取り掛かる?」

 

「可能な限り早く。理事会からも村瀬からも急かされている」

 

 俺の問いに二宮が肩をすくめてそう答える。

 

「オーケー。じゃあ、すぐに始めようぜ。具体的にどこで、何をするのか教えてくれ。お前たちのことはこっちでしっかり守る。敵地のど真ん中に行くとしてもな」

 

「通信傍受のために必要な地点へ進出し、そこで数日間通信傍受を行う。敵地のど真ん中に行く必要はないが、やはり接近しなければならない」

 

 湊の言葉に二宮がそう説明。

 

「地図のどの地点だ?」

 

「ここだ。この地点は僅かとも言えど敵のテリトリーに入り込んでいる。俺と相場は戦闘訓練はあまり受けていない。護衛は任せたぞ」

 

「了解だ」

 

 二宮が指さしたのは、確認されているカルトのテリトリーの南端であった。

 

「では、準備を整えたらすぐに出発だ」

 

 俺たちはそれからすぐに準備を整え、出発。

 

 装甲車両に乗り、俺たちは目的地付近まで移動する。

 

「事前の情報によればカルトの連中はドローンを使ったパトロールを行っている。車両でそのまま乗り込むのは避けた方がいいだろう」

 

「だな。流石に目立ちすぎる」

 

 俺が言うのに湊も同意し、俺たちは車両を途中で降りて、カモフラージュを施したのちに徒歩で目的地を目指す。

 

 通信傍受のための機材を運搬するのには、俺も手を貸した。エンハンサーである俺にとってはちょっとした追加の荷物程度でしかない。

 

「気を付けろ。ドローンが周回している」

 

 そう警告を飛ばすのは湊で、やつが言った通りに安価なクアッドロータードローンが上空を飛び去っていった。

 

「気づかれたか?」

 

「大丈夫だ。気づいていればもっと滞空して確認しようとしたはずだ。あの手のドローンは安いだけあって、カメラを含めたセンサーの性能が不十分という点もある」

 

 二宮が尋ねるのに俺がそう返した。

 

 実際、それからカルトの部隊と遭遇するようなこともなく、俺たちは無事に通信傍受を行う予定地点まで進出した。

 

「この位置でよさそうだ。早速だが傍受のための陣地を設営する」

 

「湊。周囲を警戒しておいてくれ。俺は陣地の設営を手伝う」

 

 二宮が電波状態を見てそう言い、俺は湊にそう指示した。

 

 俺たちは身を隠すためのたこつぼを掘り、厳重なカモフラージュを行い、通信傍受拠点を形成した。

 

「これから数日間、ここで通信傍受を続けることになる」

 

「了解。蛇の首を見つけてくれ。俺たちが叩き切る蛇の首をな」

 

 二宮と相場は配置に着き、俺と湊も長期間の潜入に備えた。周囲に対人地雷を設置して、ジャングルの中に身を伏せる。

 

「こうしていると東南アジアを思い出すよ」

 

「こんな戦場だったのか?」

 

「ああ。まさにな。ジャングルの中で何週間も過ごしたことがある」

 

 湊はそう言い、生体電気センサーを使って索敵を続けた。

 

 情報部による通信傍受はこの日から始まり、カルトの通信がしっかりと傍受されては記録されて行く。

 

 このジャングルに潜む蛇の頭はどこにあるのか。

 

 それを見つければ後はそれを叩き切るだけ。

 

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