公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

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地対空ミサイルサイト

……………………

 

 ──地対空ミサイルサイト

 

 

 夜を待って作戦は開始された。

 

 俺たちは車両である程度、メイズトロジー教会のテリトリーに近づき、そこからは徒歩で長距離浸透を開始。

 

「湊。分かっていると思うが、今から派手に騒ぐわけにはいかない」

 

「ああ。パトロールは可能な限り回避だ」

 

「よし。じゃあ行くぞ」

 

 俺たちはジャングルの中に踏み出し、長い作戦に身を投じた。

 

 ジャングルの、整備された道でも、獣道でも、道という道は絶対に避ける。道はあれば敵は当然そこを侵入者が通ることに警戒している。

 

 ジャングルの中で移動可能な場所は限られるが、俺たちは可能な限り敵が想定しないルートを選んで進む。道なき道を進み続け、敵と遭遇することを避けた。

 

 ジャングルは鬱蒼と茂っている。上空をドローンが飛んでも熱赤外線センサーでなければ捉えることはできないだろう。だが、カルトのドローンには熱赤外線センサーは民生品の感度の低いものだけだという情報がある。

 

地対空ミサイル(SAM)サイトまではもう少し」

 

 斥候(ポイントマン)と務める湊がそう言い、俺は後方を見張る。つけられている様子はなかった。

 

 俺たちは事前のドローンの偵察映像に従って地対空ミサイル(SAM)サイトを目指す。このダンジョンにはGPSは存在しないので、俺たちは昔ながらの方位磁針と歩数で距離を測って前進した。

 

地対空ミサイル(SAM)サイトがそろそろ見えてくるはずだ」

 

「了解。闇夜に紛れて爆薬をセットする」

 

 俺たちはメイズトロジー教会が設置した地対空ミサイル(SAM)サイトに音もなく近づいた。そうしてようやく配備されているロシア製の旧式地対空ミサイル(SAM)が見てきた。

 

 地対空ミサイル(SAM)は自走式のもので装甲車にマウントされている。

 

 その周囲には簡単な陣地があり、土嚢が積み上げられた機関銃陣地などもあった。正面から相手にしていたら、面倒なことになるのは間違いない。

 

「俺が爆薬をセットしてくる。援護してくれ」

 

「了解だ」

 

 俺はODIN経由で港にそう言い、爆薬を手に地対空ミサイル(SAM)に向けて進む。

 

 熱光学迷彩を起動し、姿を完全に隠すと俺は足早に地対空ミサイル(SAM)に向けて駆け、ミサイルを収めた発射筒に爆薬をセット。それから再び熱光学迷彩の電気が切れる前に走って離脱する。

 

「仕掛けられたか?」

 

「無事に。爆破するぞ」

 

 俺は地対空ミサイル(SAM)を眺められる位置に移動すると、爆薬に点火。

 

 ドオンという爆発音が響き、地対空ミサイル(SAM)が爆発。

 

「よし。まずは1基撃破だ」

 

 俺たちはまずひとつの地対空ミサイル(SAM)を片付けた。

 

 残りは3か所だ。

 

 俺と湊は混乱するカルトどもが騒ぐ場所を静かに離れて、それから次の地対空ミサイル(SAM)を狩りに向かう。

 

 ジャングルの中を黙々と進み、俺たちは次の地対空ミサイル(SAM)サイトに到達。ここにはまだ先の爆破の報告は来ていないのか、やけにのんびりした空気が漂っている様子であった。

 

「さっと済ませよう」

 

「援護する」

 

 俺たちは先ほどと同じように湊が援護する中で、俺が地対空ミサイル(SAM)の破壊に動く。爆薬を抱え、熱光学迷彩を起動し、地対空ミサイル(SAM)に接近すると地対空ミサイル(SAM)に爆薬をセット。

 

「爆破」

 

 爆発。地対空ミサイル(SAM)が吹き飛び、周囲のカルトたちがうろたえる。

 

地対空ミサイル(SAM)は残り2基」

 

「いけそうだな」

 

 俺たちは敵にやはり夜間交戦能力が欠如しているのを確認し、自信を深めた。これならば問題なく全ての地対空ミサイル(SAM)を撃破できるだろう。

 

 次の地対空ミサイル(SAM)サイトでも同様に地対空ミサイル(SAM)を始末し、俺たちはついに残り1基となった地対空ミサイル(SAM)のある集落の方に向けて移動を始めた。

 

「あそこに地対空ミサイル(SAM)がある」

 

「警備は厳重だな」

 

 集落の守りは固く、そう簡単に侵入できないようになっている。

 

 テクニカルに乗ったパロトールが点在し、さらには土嚢で構築された陣地もあるし、有刺鉄線で塞がれた道などもあった。

 

「流石に騒ぎすぎたかね……」

 

「かもしれないな。最後の地対空ミサイル(SAM)を始末するのには、明日にしよう。そろそろ夜が明けてしまう」

 

「了解だ。この地点から監視を続けよう」

 

 俺たちはそれから集落がある程度見渡せる位置に陣取り、そこで夜が明け、そしてまた夜が来るのを待ったのだった。

 

 夜が明けると集落の様子が、より明白に見えるようになってきた。

 

 集落はジャングルの中にコンテナハウスが点在する場所で、殺風景とも言えるものだった。広場にはメイズトロジー教会が崇めるダンジョンを与えた神への信仰を示す、巨大な十字架がある。

 

 こいつらは全く無から新しい宗教を作ったのではなく、結局は既存の宗教のそれに便乗しているだけなのだ。

 

「民間人が割といるな」

 

 湊が集落で武装していない人間を見つけてそう言う。

 

「民間人なんていない。やつらは全員が敵だ」

 

 事前の情報からカルトのほとんどが軍事訓練を受けていることを知っていた。つまりは女子供も老人も全ては潜在的な敵である。

 

「油断するな。いざとなればすぐに撃て。俺たちが撃たれるよりマシだ」

 

「……分かっている」

 

 俺の言葉に湊は小さく頷いた。

 

 それから夜が来るのをじっと待ち続け、俺たちは交代で眠って作戦開始に備えた。

 

「時間だ」

 

 今や2階層のジャングルは暗闇の覆われている。カルトの集落でも明かりで照らされているのは教会の建物だけだ。

 

「行動開始だ」

 

「了解」

 

 まずは地対空ミサイル(SAM)を片付け、それからホワイトを殺す。

 

 俺たちはゆっくりと集落の暗がりから接近する。

 

 しかし、そこでODINにメッセージが入った。

 

『ホワイトに聞きたいことがある。一時的に拘束せよ』

 

 俺たちはこのメッセージを受けて顔を見合わせる。お互いにこの命令は正気かという顔をしていた。

 

「どうする? やれると思うか?」

 

「さてな。こいつはハードな仕事になりそうだぞ」

 

 湊が確認するのに俺は険しい表情でそう返す。

 

「分かった。何とかやり抜けよう」

 

 湊はそう言って先頭に立ち、斥候(ポイントマン)として前進。

 

 俺たちはまずは地対空ミサイル(SAM)を片付けるために集落の方に向けて進み、それから俺たちは僅かな警備兵に守られている地対空ミサイル(SAM)を視認した。

 

「警備を片付けてから、地対空ミサイル(SAM)を始末する。ここからはいくら殺そうと問題ない」

 

「オーケー。派手にやろうぜ」

 

 俺と湊は敵に対して牙をむく。

 

 俺は大型の軍用ナイフを抜き、湊はアサルトライフルを構える。

 

「熱光学迷彩を起動」

 

 俺たちは敵の目から見えないように姿を消して敵の背後に忍び寄った。

 

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