公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

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市場の場所

……………………

 

 ──市場の場所

 

 

 ブラックマーケットの居場所を特定する。

 

 それが俺たちの今の任務であった。

 

 しかしながら、それはすぐに行えることでもなかった。

 

「どこからブラックマーケットの情報を手に入れるか、だ」

 

 ブラックマーケットについての情報は未だ僅かにしかない。関係しているとされる人間の名前は僅かであり、場所については全く分かっていないのだ。

 

「マオが何か知っているかもしれない」

 

 手がかりとなるのはマオの証言だけだった。

 

「マオはまだ1階層に?」

 

「今、こっちに篠原と向かっているそうだ」

 

「こっちに来ているのか? 篠原と?」

 

「ああ。村瀬が希望したらしい」

 

 俺が少し驚いて尋ねるのに湊がそう答える。

 

「確かにマオならば何か知っている可能性はあるな。ある程度の位置させ分かれば、また情報部隊と展開して、通信傍受なり何なりで情報が得られるが……」

 

「あたしは心配だよ。マオにとって嫌なことを思い出させるかもしれない」

 

 湊は俺の意見にそう言う。

 

 確かにブラックマーケットで商品としてやり取りされていたとすれば、マオにとっては嫌なことを思い出すことになるだろう。

 

「だが、それでも必要なことだ。悪党どもがこれ以上無法で稼ぐのを阻止するためには。マオにとっても復讐になるだろう」

 

「だといいんだが……」

 

 俺の説得でも湊は煮え切らない様子だ。

 

 それから俺たちは2階層に拠点で篠原たちが到着するのを待った。

 

「やあやあ、諸君! 2階層の様子はどうだね?」

 

 そして、騒がしさとともに篠原とマオが姿を見せる。

 

「カルトを始末したところだ。それでようやく調査が開始できる。だが、まずはブラックマーケットの件を調査しなければならん」

 

「うむうむ。分かっているよ。無法者の資金源を叩かなければ、ダンジョンの生態系がむやみやたらに破壊されてしまうということは」

 

 俺がそう言うと篠原は素直に頷く。

 

「マオがこの件を解決する手助けをしてくれるはずだ。マオ、ここで何があったかを教えてくれるかね?」

 

 篠原はそう言って連れてきたマオに尋ねる。

 

「ここ、マオ、逃げ出した場所……。マオ、捕まってた……」

 

 マオは僅かに身を震わせてそう言う。

 

「具体的にどこだ?」

 

「地図、見たことない。場所、見たら分かる」

 

「そうか……」

 

 俺たちはマオの言葉に考え込む。

 

「やはりマオが使ったという1階層への出入り口が怪しいんじゃないか?」

 

「確かにな。怪しむとすれば、それか……」

 

 マオが1階層に登ってきたあの未確認の経路はまだ調査されていない。場所だけが調べられていたが、まだ現地を確認できていないのだ。

 

 というのも、カルト問題があったからである。それを解決しなければ、調査は行えなかったのだから仕方ない。

 

 しかし、今やカルト問題は解決され、ようやく調査が行えるようになった。

 

「調査を実行するときが来たな。カルトの活動は低調なものになっている。今なら連中に妨害されることもないだろう」

 

「オーケー。どのみち調査しなければならなかったことだ」

 

 未確認の出入り口があるというのは、公社としても放置できない事実だ。犯罪者が利用する密輸の経路になっているのかもしれないのだから。

 

「調査はいつから?」

 

「まず本当にカルトが問題になっていないのかの確認だな。それから調査だ」

 

「了解」

 

 公社の俺たち以外の部隊も動員されてダンジョンのカルトであるメイズトロジー教会の活動が停止しているかの確認が行われることに。

 

 もし、活動が続いていたらそれを排除することも公社の任務である。

 

「もし、ブラックマーケットを見つけたら、すぐに殲滅するのではなく、私に教えてくれたまえ。どのようなクリーチャーが扱われているのか興味がある。これまではこの手のブラックマーケットは確認されていないからね」

 

 篠原は呑気にそう言っていた。

 

「分かったよ、篠原。できれば確保しておく」

 

 俺は篠原にそう約束しておいた。

 

 それからメイズトロジー教会が分裂状態に陥っていることが公社の情報部によって確認され、調査範囲の拡大が可能になったことが判断される。

 

 俺たちはこれまでは場所だけが分かっていたマオが通った通路を、ついに確認しに向かうことになったのだ。

 

 まずはやはり情報部によって通信傍受が行われることになり、俺たちは大井が領有を主張しているエリアの調査に向かった。

 

「今回もよろしく頼む」

 

「ああ」

 

 情報部の人間は以前にも一緒に働いた二宮と相場だ。

 

 俺たちは装甲車で大井のテリトリーを目指す。

 

 その道中、かつてダンジョンのカルトであるメイズトロジー教会が支配していた地域を抜けるのだが……。

 

「ドローンも人もいない」

 

「内戦にご執心か」

 

 カルトは本当に分裂し、殺し合っているらしく、俺たちに干渉している様子はないという具合だった。以前はドローンが哨戒していた場所も、今は何の警戒も行われておらず、無人の密林が広がっている。

 

「しかし、カルトのテリトリーを抜けられても、大井のテリトリーに入るのはそう簡単じゃないように思えるんだが」

 

「そこは努力するしかない。現段階でまだ公社が大井と正面からことを構えるつもりはないから隠密(ステルス)だけが選択肢だ」

 

「少しばかり面倒だな……」

 

 湊は俺の言葉にそう愚痴る。

 

「大井を怒らせたら太平洋保安公司の連中に追い回される。隠密(ステルス)が賢明だよ」

 

 二宮もそう言っていた。

 

「交戦を避け、秘密裏に通信を傍受する。それでブラックマーケットの位置がつかめたら、次はどうする?」

 

「強襲、になるんじゃないか?」

 

 ブラックマーケットは潰さなければならない。大井のテリトリーにそれがあるならば、大井との敵対を覚悟して踏み込む必要があるだろう。

 

 大井が何を考えてブラックマーケットをテリトリー内に設置しているのかは分からないが、俺たちにとってはブラックマーケットの存在は許しがたい。

 

「結局太平洋保安公司とやり合うことになりそうだ」

 

「そういうなよ。もしかしたら、大井のテリトリーにブラックマーケットは存在しないかもしれないだろ」

 

 まだ本当に大井のテリトリー内にブラックマーケットが存在するという確証はないのだ。まだ疑いの段階であり、その証拠を掴むために俺たちはこれから大井の通信の傍受を行うのである。

 

 それから俺たちは大井のテリトリーに可能な限り近づいた。

 

「この付近は太平洋保安公司が警備している。カルトより高度な装備を使っているから、あまり深くは侵入できないぞ」

 

「大丈夫だ。今回はそこまで侵入せずとも通信傍受は行える。この地点まで進出できればいい。頼めるか?」

 

「了解だ」

 

 ODIN経由で進出すべき場所が送られてきて、俺たちは侵入を開始。

 

「ドローンに警戒」

 

 湊がそう警告を発し、俺たちは頭上に警戒する。

 

 周囲には密林があるとは言えど、カルトより上等なセンサーのドローンを装備している太平洋保安公司には嗅ぎつけられる恐れがあった。

 

「あまり深くは忍び込めそうにないな……」

 

 俺は太平洋保安公司の展開している警備を前にそう呟く。

 

 ドローンはあちこちで飛行しており、地上には地雷だ。これは深入りしすぎると、撤退が困難になる。

 

「分かった。予定を変更だ。別の地点からの通信傍受を試みる」

 

 俺の発言を受けて二宮は予定を変更。大井のテリトリーから下がり、別の場所から通信の傍受を目指すことに。

 

 俺たちは慎重に撤退し、それから装甲車で移動。

 

 大井のテリトリーがある程度見渡せるが、大井の支配下にない丘の上に向かった。

 

「ここでいい。ここからだと通信傍受は完全ではないが、時間をかけることで解決する。暫くの間、護衛をの頼むぞ」

 

「了解だ」

 

 それから情報部による通信傍受が始まり、俺たちは大井の通信に聞き耳を立てる。大井の通信は暗号化されているが、その点は問題ない。こちらは日本情報軍お手製の暗号解読プログラムを有している。

 

 そして、通信傍受が続く。

 

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