公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

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6階層の存在証明

……………………

 

 ──6階層の存在証明

 

 

「クソ。これはマオと同じクリーチャーだぞ」

 

「下衆どもめ」

 

 俺が檻を見てそう呟くのに、湊がそう吐き捨てる。

 

 檻の中には全裸にされたマオと同じクリーチャーたちが閉じ込められており、憔悴した様子であった。

 

「佐世保。どうする?」

 

「救出は任務に含まれてない。今回の作戦はブラックマーケットを叩き潰すことだけが、目的だった」

 

「だが!」

 

「分かっている。可能な限り救助はしよう」

 

 湊が食い下がるのに俺はそう言い、まずはブラックマーケットが完全に省察されたかを確認する。武装警備員はほぼ全員が血の海に沈んでおり、檻から解き放たれたクリーチャーも殺害されている。

 

「オーケー。クリアだ。脱出のためにパワード・リフト機を要請する。そのパワード・リフト機に彼らも乗せよう」

 

「ああ」

 

 俺の言葉に湊が頷き、湊は檻のカギを破壊し始めた。

 

「もう大丈夫だぞ。一緒に逃げよう」

 

 湊がそう言うのにマオに似たクリーチャーたちは何やら不安そうにして動かない。

 

「脱出だ。一緒に来るんだ。分かるか?」

 

 湊は身振り手振りでそう示し、まずひとりのクリーチャーが前に出て檻を出た。それに他の4名のクリーチャーが続く。

 

「湊。お前がしっかり見張っておけよ」

 

「ああ。任せとけ」

 

 当初の目的であるブラックマーケットの制圧はほぼ完了した。関係者の顔写真を含めた生体情報の採取は完了しており、それをデータベースで識別すればブラックマーケットの全容は掴める。

 

 役目を終えた俺たちを迎えにパワード・リフト機がやってくる。

 

「乗り込め。急げ、急げ」

 

 俺たちはパワード・リフト機に急ぎ早に乗り込み、パワード・リフト機は離陸。

 

 それからは地対空ミサイル(SAM)による攻撃を受けることもなく、俺たちは無事に公社の拠点へと帰還したのだった。

 

「佐世保。首尾は?」

 

 公社の拠点に戻ると真っ先に村瀬が俺にそう尋ねてくる。

 

「上々だ。ブラックマーケットの関係者の生体情報を入手して、そしてついでに……」

 

 ここでパワード・リフト機から湊に見守られて、マオと同種の5名のクリーチャーたちが降りてくる。

 

「これは……」

 

「ああ。ブラックマーケットで取引されていた。マオにも関係あるかもしれない」

 

「そうだな。あとでマオに会わせて話を聞いてみよう」

 

 俺たちはまずは装備を解いて、それからブラックマーケット襲撃の案件をまとめる。報告書を作成し、何があったのかを報告するのだ。

 

 しかし、報告書を書き終える前にお呼びがかかった。

 

「佐世保、湊。篠原がお前らを呼んでる」

 

 村瀬にそう言われ、俺たちは篠原の下に。

 

 篠原は既に2階層の公社施設内に簡易の研究設備を設置していた。

 

「やあやあ、諸君。やはりという結論が出たよ!」

 

 篠原の研究施設にはマオとマオと同じクリーチャーたちがいた。

 

 マオは彼らと話をしているようだ。

 

「何が分かったんだ?」

 

「彼らがどこから来たのかを聞き取った。正確には私ではなくマオがだがね。その結果、分かったのは6階層の存在だ!」

 

「6階層。クソ、やはり存在しているのか」

 

 俺たちが疑いを持っていた場所。それが6階層だ。

 

「つまりブラックマーケットを主催していた人間、またはブラックマーケットに土地を貸していた大井は既に6階層に到達しているというわけか」

 

「そうなるね。しかし、ブラックマーケットでこそこそと取引されるぐらいだ。まだまだ彼らも本格的に6階層に到達しているとは考えにくい」

 

「それもそうだな」

 

 ブラックマーケットという場所で取引されるぐらいには、希少であり、後ろ暗くもあるわけだ。

 

「しかし、6階層を既に企業か犯罪組織が把握していると、6階層までのルートも既に確立されている可能性がある。その情報がほしいな」

 

「ブラックマーケットで手に入れた参加者の情報から情報部が探るだろう」

 

「連中が情報を持っていれば、だが」

 

 ブラックマーケットは犯罪組織の資金源だとみられていた。よって、運営していたのは犯罪組織などで間違いないだろう。

 

 ただ、ブラックマーケットに出入りしている人間が、言ってしまえば仕入れに関係しているという保証はない。

 

 しかしながら、手掛かりはそれだけになる。

 

「情報部の働きに期待だな。で、篠原。今回保護した連中はどうするんだ?」

 

「調査させてもらうよ。それに、いわば彼らは難民のようなものだ。人道的見地から考えても引き続き保護するのが適切だと思うがね」

 

「好きにしてくれ」

 

 公社はこれまで人質の救出などは行っても、難民の保護などは行ってこなかった。このクソッタレなダンジョンに難民と呼べるものは存在などしなかったからだ。

 

 だが、篠原がやりたいというならば、勝手にしてもらえばいい。

 

「させぼ、みなと!」

 

 と、ここでマオがやってくる。

 

「おう。友達が増えたな?」

 

「うん! けど、みんな、困ってる。こきょー、帰りたいって……」

 

「そうだな。いつかはちゃんと帰れるようにするよ」

 

 湊はマオの言葉にそう応じていた。

 

「ありがと、みなと!」

 

 マオは笑顔を浮かべると、また仲間の下に走っていった。

 

「2階層での仕事はほとんど終わったと言っていいだろう。次は3階層の把握だ」

 

「ああ。理事会もそれを求めてくるはずだ」

 

 2階層の問題点であったカルトとブラックマーケットは潰した。2階層の調査はこれから俺たち以外の人間が進めるだろう。

 

 俺たちは3階層に向かって、そこでの作戦に従事する必要がある。

 

「村瀬に話してみよう。向かう時期がいつ頃になるか」

 

「ああ」

 

 俺たちは村瀬に会いに向かい、3階層での作戦の時期を聞くことに。

 

「3階層の調査の時期か。まだ決まってない」

 

 村瀬は俺たちの質問にそう返した。

 

「もちろん3階層の調査は急ぐつもりだ。6階層の存在がほぼ確定したということで、理事会も焦っているみたいだからな。だが、3階層ではちょっとしたトラブルが起きているらしいんだよ」

 

「トラブル?」

 

民間軍事会社(PMSC)のひとつが暴走しているって話だ。軍閥化して大暴れしているという報告が3階層にいる公社部隊から報告されている」

 

「軍閥化した民間軍事会社(PMSC)か……。世も末だな」

 

 民間軍事会社(PMSC)はそれ単独で行動することはない。連中は誰かに雇われて行動するものだ。それが軍閥化しているというのは、どうにもおかしな話であった。

 

「それに対処する準備ができたら、3階層にお前たちを送る。だから、待て」

 

 村瀬はそう言って俺たちに待機を命じた。

 

「ドラゴン、カルト、ブラックマーケットときて次は軍閥化した民間軍事会社(PMSC)とはな」

 

「このクソッタレなダンジョンでは何が起きても不思議じゃないのさ」

 

 俺と湊はそう言葉を交わし、2階層の拠点で待機する。

 

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