公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

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ギロチン

……………………

 

 ──ギロチン

 

 

 村瀬が出せる兵力を調整し終えたのは、明日のことだった。

 

「よし。戦力は揃ったな」

 

 動員された戦力は1個分隊。あまり規模が大きくなっても、秘匿性が損なわれるのでこれが期待できる最大の戦力だろう。

 

「作戦は次の通りだ」

 

 俺たちは事前にウィットロックが通過するだろう場所に展開し、そこで敵を待ち伏せる。敵が近づいてきたらまずはヘリを撃墜し、それから爆薬か即席爆発装置(IED)を起爆して装甲車を走行不能に。さらに素早く脅威になる自走対空砲を排除。

 

 それからは敵の護衛(エスコート)と交戦して排除し、ウィットロックを確実に殺害する。それだけだ。

 

「オーケー。だが、これが囮だった場合、何が想定される?」

 

「潜んでいた敵の増援がわらわらってところだろう。こっちが撤退するところを追撃されるかもしれない」

 

「最悪だな」

 

 動員された公社のオペレーターのひとりがそう愚痴る。

 

「最悪だろうと何だろうとやれと上が言っているからやらねばならん。担当の人間はそれぞれMANPADSと対戦車ミサイルを抱えていけ。ヘリも、自走対空砲も、下手に生き残らせると罠のあるなしにかかわらず危険だ」

 

「了解」

 

 それから俺たちは準備を整えて、出撃を開始する。

 

 移動には装甲車を利用し、情報部が掴んだウィットロックの移動の1日前には現地に到着して準備をすることになっている。

 

「さて、ギャンブルの時間だぜ」

 

 湊はそう言って装甲車に乗り込む。

 

「ジャックポットと行きたいところだ」

 

 そして、俺は装甲車を発進させた。

 

 デザート迷彩が施された装甲車はウィットロックを待ち伏せる地点まで進み、俺たちは途中からは車両に偽装ネットを施して歩いた。

 

「この道だな」

 

 誰が整備したのか、3階層には道がある。舗装されたアスファルトの道だ。

 

「爆薬を仕掛けろ。急げ、急げ」

 

 俺たちは持ってきた爆薬を仕掛ける。当初の予定が変更になり、俺たちはちゃんとした爆薬を使うことになった。とは言えど、やることは路肩爆弾である。

 

 爆薬をセットし、無線信管を突き刺し、周囲のもので爆薬を隠す。

 

「爆薬セット完了!」

 

「待ち伏せ地点まで移動だ」

 

 俺たちは爆薬をセットしたのちに道路が見渡せるちょっとした丘の上に潜んだ。

 

 それぞれが担当に応じてMANPADSや対戦車ミサイルを装備し、丘の上からウィットロックたちを乗せたとされる装甲車が来るのを待つ。

 

「……来るぞ」

 

 湊が生体電気センサーで敵の動きを捉え、警告を発する。

 

「こちらの想定通りか?」

 

「ああ。ヘリと自走対空砲、そして装甲車だ」

 

「オーケー。派手にかまそう」

 

 俺たちは丘の上から接近する車列を確認。

 

 無人ヘリ1機が上空を飛行し、その下にはドローン対策の自走対空砲、そしてウィットロックを乗せていると思われる装甲車が接近している。

 

 まずは予定通りにMANPADSを持ったオペレーターがヘリを狙う。

 

「いいぞ。撃て!」

 

  ランチャーからミサイルが放たれ、固体燃料ロケットが燃焼しながらヘリに向けて突き進んでいく。ヘリは回避行動を取るが、遅すぎた。ミサイルはヘリのテールローターをもぎ取って撃墜。ヘリはきりもみしながら落ちていく。

 

「すぐに自走対空砲を潰せ!」

 

 自走対空砲はドローン除けながら、地上の目標に掃射することもできる。ベトナム戦争時代のミートチョッパーと呼ばれたそれから変わらず、得てしてそれは歩兵にとって危険な攻撃となる。

 

「対戦車ミサイル、発射!」

 

 続いてジャベリン対戦車ミサイルが4発、同時に放たれて自走対空砲を攻撃。自走対空砲のアクティブ(A)防護(P)システム(S)がミサイルを迎え撃つが、2発の対戦車ミサイルがそれをすり抜けて目標よ撃破した。

 

「よーし、いいぞ。爆弾を起爆だ」

 

 俺たちは慌てて逃げようとする装甲車を逃がさず道路沿いに埋めた爆薬を起爆。

 

 爆発によって装甲車は横転し、動けなくなった。

 

「それじゃあ、ウィットロックに挨拶しに行くとしようか」

 

「本当にやつが乗ってるならな」

 

 俺たちは慎重に横転した装甲車に向けて接近。

 

 湊の援護を受けて俺は装甲車に飛び乗り、扉を音を立てて開く。

 

「クソ。ウィットロックはいない。ウィットロックは確認できず!」

 

「畜生」

 

 俺が報告するのに作戦に参加したメンバーが悪態をつく。

 

本部(HQ)よりハングドマン・ワン。不味い情報が入った。そちらに敵のヘリが向かっている。すぐに退避しろ!』

 

「了解!」

 

 ODIN経由で3階層の公社拠点から警告が飛び、俺たちは急いで撤退を始める。

 

「湊。敵のヘリの位置は掴めているか?」

 

「今、掴んだ。敵のヘリは4機。うち1機は無人機だな」

 

「ヘリボーン部隊ってことか。見事に敵の罠に嵌った。クソッタレ」

 

 一応MANPADSの予備はあるが、相手がそれに警戒している状態で命中させるのは難しい。それに撃墜できるとしても1機だけだ。

 

 それなのに敵のヘリは4機。うち3機には恐らく地上部隊が搭乗している。

 

「急げ、急げ。すぐに装甲車に乗り込んで逃げるぞ」

 

 俺は撤退を急かしたが、敵の動きの方が一歩早かった。

 

「敵のヘリが来ちまったぞ! どうする、ブギーマン!?」

 

 敵の無人攻撃ヘリが1機先行して飛来し、俺たちに迫る。

 

「MANPADSを寄越せ。俺が撃墜する」

 

「了解だ」

 

 俺は部下からMANPADSを受け取ると部下を先に逃げさせ、無人攻撃ヘリを照準する。

 

 そして、発射。MANPADSが迫るのに無人攻撃ヘリは回避運動を取りながら、俺の方を機関砲で狙って攻撃を始めた。

 

 機関砲弾が俺の周囲に着弾するが、俺の肉体はそれに耐えた。あの篠原でも分からなかった謎の力が俺を守っていたのだ。

 

 放たれたミサイルは無人攻撃ヘリに命中し、攻撃を受けた無人攻撃ヘリはきりもみしながら墜落していく。

 

「すぐに次が来るぞ。撤退を急げ!」

 

 俺は叫び、撤退を急がせる。

 

「佐世保。ヘリの編隊が迂回して先回りしつつある。どうする?」

 

「クソ。公社への撤退を妨害するつもりか?」

 

「恐らくは」

 

 敵のヘリボーン部隊はただ馬鹿正直に俺たちを追いかけるのではなく、公社への撤退を阻止するために先回りし始めていた。

 

「なら、こっちも迂回しながら公社に撤退だ。敵とわざわざ交戦する必要はない」

 

「了解」

 

 俺たちは装甲車までたどり着くと、真っすぐ公社の拠点に向かわず大きく迂回する。

 

「湊。敵はドローンを飛ばしていないか?」

 

「待て。……ああ、飛ばしているな。それもちゃちなのじゃなくて高度軍用グレードのドローンだ。恐らくあたしたちはそいつに追われている」

 

「不味いな。どうやっても先回りされる可能性がある」

 

「そもそも何だってブラックカイマンの連中はあたしたちを追いかけてるんだ? あたしたちはただの公社の使い走りだぞ。公社の上層部ってわけでもない」

 

「分からん。ただ俺たちをぶち殺したいのは確からしい」

 

 確かにブラックカイマンの連中がここまで執拗に俺たちを狙う理由は分からない。俺たちを殺したところで公社は次の殺し屋を送り込むだけだ。

 

 ウィットロックは何を考えているのか……。

 

 ウィットロックを狙った俺たちを殺して公社への見せしめにするのか? それぐらいで公社が引くとは思えないのだが。

 

 分かっているのはウィットロックは俺たちを殺したがっているということだけだ。

 

「ヘリボーン部隊は完全に先回りしている。交戦は避けられそうにないぞ」

 

「クソ。じゃあ、ぶちかますしかないな」

 

 ODIN経由で湊が情報を送ってくれているが、ヘリボーン部隊はしつこく俺たちの進路上に展開しようとしている。ならば、ここは無理やりにでも突破するしかない。

 

「全員、ブラックカイマンの連中と交戦する。準備はいいか!」

 

「おう!」

 

 さあ、ブラックカイマンの連中と再び交戦だ。

 

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