公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

44 / 59
獲物をしとめる

……………………

 

 ──獲物をしとめる

 

 

 俺たちの前に姿を見せたウィットロック。

 

「こんにちは、ウィットロックさん。私はナイト・ファスト・ロジスティクスの田中です。どうぞよろしく」

 

「ああ。よろしく」

 

 ウィットロックはそう言って田中の向かいのソファーに座る。

 

「さて、そちらは我々の警備を望んでいるとか?」

 

「ええ。その通りです。我々は主に配達業を行っておりまして、1階層から3階層で活動しております。しかし、最近では1階層も2階層も変化が激しく、安定した業務遂行が難しくなっているのです」

 

「ほう」

 

 ウィットロックは田中の言葉にそう興味を示す。

 

 俺たちは連中が偽装された商談としている間、状況を確認していた。

 

 この部屋にいるウィットロックの護衛は4名。全員が自動小銃で武装している。ウィットロック自身も腰にホルスターを下げていた。

 

 ゴーサインが出たら湊が護衛を排除し、俺はウィットロックに一撃。それでケリをつける。そのことを俺たちはODIN経由で相談していた。

 

 公社本部からゴーサインが出るのを俺たちは待ち、いつでも動けるようにする。

 

「しかし、日本人がこの手の取引を望むのは珍しいな。日本人はどうも我々のような民間軍事会社(PMSC)を雇うことに消極的かと思っていた」

 

「ここでのやり方に従っているだけですよ。郷に入っては郷に従えというでしょう?」

 

「それもそうだな。正しい選択だ」

 

 ウィットロックが田中の言葉に満足に頷く、俺たちがやつを殺すためにここにきているとは全く思っていない様子だ。

 

 そこでODINにメッセージが着信。

 

『首を刎ねろ』

 

 公社本部からのゴーサインだ。

 

 俺は僅かに湊に視線で合図すると、湊が頷く。

 

 そして、俺たちは一斉に動いた。

 

「──!?」

 

 突如として俺が散弾銃の銃口をウィットロックに向けるのに、やつは目を見開き、すぐに応戦するためにホルスターの件中に手を伸ばすがすでに遅い。

 

 俺は引き金を引き、散弾がウィットロックの頭部を吹き飛ばした。

 

 脳みそがスプレーされたように後方に飛び散る中、ウィットロックの護衛たちがワンテンポ遅れて行動を始める。しかし、それも遅すぎた。

 

 湊がそいつらに素早く銃弾を叩き込み、ダブルタップで脳みそに2発の銃弾を受けたブラックカイマンのコントラクターたちが倒れていく。

 

「クリア」

 

「クリア」

 

 そして、俺たちは室内から完全に敵を排除してお互いに確認を終えた。

 

「ウィットロックの死亡を確認」

 

「脱出開始だ」

 

 それから改めてウィットロックが死亡していることを確かめると、すぐさま公社本部に脱出のためのパワード・リフト機を要請する。

 

「ハングドマン・ワンより本部(HQ)。目標を排除した。脱出のパワード・リフト機を寄越してくれ」

 

本部(HQ)よりハングドマン・ワン。了解した。すでにパワード・リフト機はそちらに向かっている』

 

「聞いたな? 急いでここを脱出するぞ」

 

 本部(HQ)からの返事はすぐにあり、俺たちは脱出地点に急ぐ。

 

 俺と湊が進路を確保しながら進み、田中が後方を守る。俺たちは可能な限り交戦を避けて、脱出地点まで向かうつもりであった。

 

「──ウィットロック司令官のバイタルデータが途絶えた! 誰か確認を!」

 

 ブラックカイマンのコントラクターたちはすでにウィットロックが死亡したことを把握しているようで、急いで建物の方に向かっているのが見えた。

 

「こうなると俺たちはすでにお尋ね者だな」

 

「だろうね。だが、ここまでは想定の範囲内だろ?」

 

「もちろんだ」

 

 俺は湊の言葉に頷くと引き続き脱出地点を目指す。

 

 俺たちは車両は放棄していくことにしている。車両の周りにはブラックカイマンのコントラクターたちがうようよしており、取り戻したとしてもハチの巣にされる。

 

 そこで俺たちは徒歩でパワード・リフト機との合流地点を目指した。幸い軍隊での主な仕事である歩け、歩け、ただひたすらに歩けという訓練に関しては十二分に受けているので問題ない。

 

「後方からブラックカイマンのコントラクターどもが追ってきているぞ」

 

 湊がそこでそう警告。

 

 後方からエンジン音が聞こえ、車両でブラックカイマンのコントラクターたちが追ってきているのが分かった。

 

「交戦している暇はない。逃げ切るぞ」

 

 ブラックカイマンのコントラクターが慌てて追っ手を放ってきたのに俺たちはそれを無視して合流地点を目指す。合流地点まで到着すれば上空援護機による航空支援も受けることができ、多少の追っ手はどうにかなるだろう。

 

「敵はさらにドローンを飛ばしてきた。不味いぞ」

 

「クソ。本部(HQ)、こちらハングドマン・ワン。すでに迎えのパワード・リフト機と上空援護は到着しているのか?」

 

 ドローンに捕捉されればこの鬼ごっこは圧倒的に俺たちの不利になる。よって俺はこの状況を打破できる迎えのパワード・リフト機と上空援護について本部(HQ)に確認を取った。

 

本部(HQ)よりハングドマン・ワン。撤退のためのパワード・リフト機と上空援護の到着予定時刻(ETA)は5分後だ。回収地点を変更するか?』

 

「そうしたい。こちらで新しい座標を送るのでその地点まで迎えに来てくれ」

 

本部(HQ)、了解』

 

 俺は本部(HQ)にそう要請し、新しい回収地点の座標を送る。当初の予定よりも近い場所を指示し、俺たちはそこに向けて駆ける。

 

「上空に敵のドローンだ。捕捉されたぞ!」

 

 湊がそう警告を発し、俺も空を見上げると上空をクアッドローターのドローンが飛行していた。間違いなくそのカメラは俺たちを捉えている。

 

「撃ち落として突破する」

 

 俺はショットガンでドローンを銃撃。低高度を飛んでいたドローンはあっけなく撃墜された。しかし、すでに俺たちの居場所はばれ、次々にドローンと兵士がやってくるだろう。その前に退散しなければ。

 

「車両が接近中。ブラックカイマンの連中、あたしたちのすぐ後ろだ」

 

「クソ。不味いな」

 

 3階層は隠れられるような茂みもない。ひたすらに荒れた岩肌がさらされているだけだ。そのため追っ手に追われると逃げることは困難になる。

 

 エンジンの音が俺にも聞こえ始め、軽装甲車両が俺たちを追っているのが分かった。追いつかれると後方からハチの巣にされてしまう。

 

「まもなく合流地点だ。もう少しだけ踏ん張れ!」

 

 俺はそう湊と田中を励まし、合流地点に急ぐ。

 

 俺が合流地点に指定したのは、特に何かがあるわけでもない開けた場所で、パワード・リフト機がちゃんと着陸できるような地形であった。

 

「追手が来たぞ!」

 

「合流地点で迎え撃つ!」

 

 俺たちは合流地点に駆け込み、そこらにあった岩を遮蔽物にしてブラックカイマンとの交戦に備えた。

 

「来たぞ。敵の装甲車両だ!」

 

 そして追っ手はついに俺たちに追いついた。

 

……………………

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。