公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

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脱出ののち

……………………

 

 ──脱出ののち

 

 

 迫る敵の装甲車。

 

 しかし、俺たちはすでに脱出地点に到達しており、これ以上逃げることはできない。ここで戦うしかないのだ。

 

「撃て!」

 

 素早く降車して展開するブラックカイマンの連中に向けて俺たちは発砲。サプレッサーに抑制された銃声がかすかに響き、敵が倒れる。

 

「クソ。車載の重機関銃が……!」

 

 しかし、装甲車の無人銃座(RWS)に設置された重機関銃が俺たちを狙って攻撃を加え、俺たちは遮蔽物に追い込まれてしまう。

 

「これじゃ動けないぞ」

 

「分かってる。近接航空支援(CAS)を呼ぼう」

 

 湊の言葉に俺はそう言い、もう一度本部(HQ)と連絡を取る。

 

本部(HQ)本部(HQ)。こちらハングドマン・ワン。上空援護機に近接航空支援(CAS)を要請!」

 

本部(HQ)、了解。上空援護機のコールサインはデーモン・ワンとデーモン・ツーだ。ODIN経由で呼び出し、目標を指示せよ』

 

「了解!」

 

 俺はODIN経由で上空援護機を呼び出す。

 

「こちらハングドマン・ワンよりデーモン・ワン、デーモン・ツー。近接航空支援(CAS)を要請。目標はレーザーで指示する」

 

『デーモン・ワン、了解。待機している』

 

 俺は上空援護機に向けて連絡し、目標をレーザー照準器で指示する。遮蔽物からレーザー照準器だけを出して、敵の装甲車を照準。

 

『デーモン・ワン、攻撃開始、攻撃開始。地上部隊は警戒せよ』

 

 上空から爆装したパワード・リフト機が襲来し、ロケット弾と航空爆弾を降り注がせて装甲車とその周辺のブラックカイマンのコントロールたちを薙ぎ払った。

 

 さらに続いてもう1機のパワード・リフト機が襲来。同じように爆弾を降り注がせ、さらに機銃掃射を加えて離脱していく。

 

「やったな。ブラックカイマンの追っ手はほぼ壊滅だ。連中、逃げていく」

 

「ああ。どうにかなったな。さあ、離脱だ」

 

 それから合流地点にゆっくりと迎えのパワード・リフト機が着陸し、俺たちはそれに乗り込んだ。

 

「これからブラックカイマンは本当に分裂するのかね……」

 

「どうだろうな。ウィットロックはすでに求心力をある程度失っていた。すでにやつの地位を狙ってクーデターを画策していた人間がいても不思議じゃない。その場合は、すんなりと後釜が決まっちまうだろう」

 

 湊が呟くのに俺はそう言う。

 

「この作戦が無駄骨だったとは思いたくないところです」

 

「そうだな。ここまで騒いで意味がなかったら困る」

 

 田中もそういうのに俺は頷いておいた。

 

 それから俺たちを乗せたパワード・リフト機は無事に公社の拠点まで到着し、俺たちを村瀬たちが出迎えた。

 

「ご苦労だったな、佐世保」

 

「ブラックカイマンの動きはどうだ?」

 

 作戦を遂行したことをねぎらう村瀬に俺はそう尋ねる。

 

「今、情報部が通信を傍受しているが大混乱だ。内部分裂は確実だろう。これでブラックカイマンの脅威はある程度排除できる」

 

「それは何よりだ」

 

 ブラックカイマンはこちらの目論見通り、ウィットロックを失って内部分裂を始めた。これでブラックカイマンは身内の争いに必死になって、外の勢力に対する攻撃能力が低下するだろう。

 

「これで4階層に進めるってわけだ」

 

「ああ。4階層を調査して、次は5階、6階だ。6階層が本当に存在するのかどうかを確かめなければならん」

 

 6階層の存在の有無。それを確認するのが、俺たちの主目標であった。

 

「いつ4階層に向かう?」

 

「まだポータルが奪還てきたわけじゃない。もうしばらくはかかる。最終的に公社の戦力でポータルを制圧してしまう予定だが」

 

「それは理事会の命令か?」

 

「ああ。ポータルがブラックカイマンに制圧されていた間に、4階層で悪さをしている連中がいそうだからな」

 

「確かに」

 

 3階から4階層のポータルは長い間、ブラックカイマンによって制圧されていたようだ。そのせいで公社は4階層以降の情報を有していない。

 

 俺たち公社の目が届かない間にろくでもないことをやっている連中は、まあ確実にいることだろう。

 

「では、お前たちは公社の部隊がポータルを制圧するまで休暇でも取ってくれ。1階層まで戻ってもいいが、ダンジョンからは出ないでくれよ。すぐに呼び出す必要があるかもしれないからな」

 

「了解だ」

 

 そういわれたが別に1階層に用事があるわけでもない。1階層ならばいろいろと店舗やらがあるものの、今のところ何かを欲する欲求があるわけではなかった。

 

「佐世保。1階層に飯食いに行こうぜ」

 

「わざわざ1階層までか?」

 

「ここには酒がないだろう?」

 

 湊は当然だろうという顔をして俺にそう言う。

 

「分かった、分かった。1階層まで向かおう」

 

 幸いにして3階層から1階層までの空間は公社が安全に保っている。

 

 2階層のメイズトロジー教会は分裂しているし、1階層の麻薬カルテルは未だにドラゴンから受けた打撃から回復していない。

 

 なので3階層から1階層まで戻るのは別に危険ではない。

 

「じゃあ、行こうぜ。今日はぐでんぐでんに酔っぱらおう」

 

 湊は笑みを浮かべてそう言い、俺たちは装甲車に乗ると1階層を目指した。

 

 ポータルを抜けて、3階層から2階層、2階層から1階層へ。道中で襲撃されるようなこともなく、俺たちは無事に1階層に到着した。

 

「ドラゴン騒ぎで逃げた店舗も戻ってきて、また賑やかになったな」

 

「そうだな。懲りない連中というべきか……」

 

 ドラゴン騒ぎが起きたときは多くの店がダンジョンから逃げ出したが、ドラゴンが無事に討伐されて再び賑わいを取り戻していた。

 

 俺たちはそんなダンジョン1階層の居酒屋に入り、まずはビールを注文する。

 

「いよいよ4階層が近づいてきたな。しかし、問題の6階層は存在するのかね」

 

「……分からん。今のところ6階層の存在を示唆するものはマオぐらいだろう。もし、6階層が現れたとすれば、次は7階層がいつか現れてダンジョンは巨大化し続けるって危惧も出てくる」

 

「それで喜ぶのは篠原だけだろうな」

 

「違いない」

 

 湊が冗談めかして言うのに俺は頷く。

 

「しかし、4階層に大規模な公社の拠点はなかっただろう。4階層以降の作戦はどうするつもりなのかね」

 

「まずはベースキャンプ作りからかもな。拠点がなければいざというときに危うい」

 

「5階層、6階層でも作戦を行うことになるから、拠点は近い方がいいしな」

 

 4階層には湊が言うように公社が有する拠点はない。公社はしばらくの間、3階層以降から撤退してたからだ。

 

 なので4階層の調査を行うならば、まずは拠点造りからである。

 

「まあ、4階層以降のことは村瀬たちも考えるだろう。あたしたちは今日は酔いつぶれておこうぜ。4階層に潜ったら、もしかしたらそのまま6階層までいくように命じられるかもしれないしな」

 

「確かにな。休めるうちに休んでおくか」

 

 俺とも湊はそう言葉を交わして、飲み明かした。

 

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