公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

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バイオミメティクス

……………………

 

 ──バイオミメティクス

 

 

 俺たちはアルテミス・グループと呼ばれる科学者集団の施設に突入している。

 

「エントランス、クリア!」

 

 爆撃で半ば崩壊したエントランスに敵がいないことをそれぞれが報告。

 

「佐世保、敵の歓迎委員会がこっちに向かっている。気を付けろ」

 

「了解だ。蹴散らして進むぞ」

 

 俺たちの侵入はすぐに敵に伝わり、敵の警備部隊がこちらに向かっていた。

 

接敵(コンタクト)接敵(コンタクト)!」

 

 敵の警備部隊は事前に情報にあったように軽装であり、今のところ深刻な脅威にはなっていない。だが、室内戦という戦況にあっては油断はできなかった。

 

 俺たちは敵の歓迎委員会を銃撃で粉砕しながら、研究施設を制圧していく。

 

「ゴー、ゴー、ゴー!」

 

 一部屋、一部屋、敵を掃討しながら俺たちは前進。

 

「う、撃たないでくれ!」

 

 暫く前進したところでそう声が上がる。見れば白衣の男たちが両手を上げていた。

 

「研究者だ。命令ではどう扱えって?」

 

「殺せと言われている。持って帰るのはインテルだけでいいと」

 

「マジかよ……」

 

 俺が村瀬から伝えられていた命令を告げるのに湊はげっそりとした表情。

 

「この施設は潰さなければならんということだ。仕方がないだろう」

 

「クソ。最悪だぜ」

 

 俺たちは決して非武装の人間を殺して喜ぶような人間ではないが、命じられればそれを実行するだけの意志はあった。

 

「しかし、この研究施設は何を研究していたんだ?」

 

 俺たちが科学者の一団を虐殺してから湊がそう尋ねる。

 

「分からないが、それを調べろとは言われている」

 

 しかし、公社がそれに興味があるように俺には思えなかったのも事実だ。

 

 もし、研究している内容を欲するならば科学者を数名拉致しろと命じたはずだ。皆殺しにするのではなく。

 

「インテルの回収は情報部が行う。俺たちは引き続き施設の制圧だ」

 

 まだまだ敵は残っている。俺たちは考え込む前にそれを一掃しなければならない。

 

 俺たちは施設内を進み、一部屋一部屋を制圧していった。

 

「クリア」

 

「クリア」

 

 そして、ある部屋を制圧したときだ。

 

 俺たちは見つけてしまった。

 

「これは……」

 

 その部屋の中には蠢く筋肉のようなものが水槽に中に入れられていた。

 

「人工筋肉……?」

 

 それはまさに俺の四肢になっているのと同じような人工筋肉に見えた。

 

「どうした、佐世保?」

 

「湊。近くにインテルはないか? 探してくれ!」

 

「お、おう」

 

 俺と湊はインテルを探す。この筋肉にかかわる情報を。

 

「あったぞ。これは……公社にて実験中……?」

 

 湊はそう言って近くにあったタブレット端末から情報を抜き取って告げる。

 

「まさかとは思うが……」

 

「クソ。公社がここを知っていたのは間違いない。俺の人工筋肉の出所はここだ」

 

 前々からおかしいとは思っていたのだ。

 

 公社の技術は進んでいた。俺たち強化人間(エンハンサー)に使われている技術は、進みすぎていたと言ってもいい。

 

 その技術の出所はもしかするとダンジョンなのではないかと薄っすら思っていたが、これでその憶測が肯定されてしまった。

 

「まさかあたしに使われている技術も……」

 

「間違いないだろうな」

 

 湊の技術だって現代技術としては異常なほど進んだ技術だった。その出所がこのダンジョンだったとしても驚くべきことはない。

 

「じゃあ、どうして公社はここを攻撃させたんだ? 自分たちの技術の出所ってことは友好関係にあったんじゃないのか?」

 

「ここで考えることじゃない。今は制圧を急ごう」

 

「クソ。分かったよ」

 

 俺は湊にそう言い、施設の制圧を進めていった。

 

「ここは……実験動物置き場か?」

 

 制圧を進める俺たちはダンジョン内のクリーチャーが閉じ込められた檻が大量にある区画へと進んだ。

 

「なんだか気味が悪いな。クリーチャーもここで生み出された、とか言わないよな?」

 

「それは流石にないだろう……」

 

 クリーチャーはすでにダンジョン戦役の際には存在していた。ここにいた科学者たちが作ったということはありえない。

 

「佐世保、湊。施設全体を制圧した。これからインテルを回収して爆破する」

 

「了解だ」

 

 作戦に参加していた公社のオペレーターがそう言い、俺たちも施設に爆薬を設置していく。インテルの回収は同行している情報部の人間が行い、俺たちは爆破に専念した。

 

「爆破準備完了だ」

 

「よし。引くぞ」

 

 インテルの回収と爆破の準備が整い、俺たちは撤退を開始。

 

 ウォッチャーはすでに壊滅しているのか敵が俺たちを妨害することもなく、俺たちは施設の外に出た。

 

「爆破!」

 

 爆薬が点火され、アルテミスの施設が一気に崩壊していく。山肌を穿って作られた施設は轟音を立てて崩壊し、雪崩を起こして完全に地中に埋もれた。

 

「作戦完了だ」

 

 と宣言はしたものの、俺と湊の中には不安が渦巻いていた。

 

 アルテミスが俺たち強化人間(エンハンサー)の技術を開発していたのだとすれば、そこでは何が起きていたのだ?

 

「撤収しよう。このことは上に質問しなければならない」

 

 俺はそう言い、麓に置いていた車両を目指して進み、公社の拠点に戻る。

 

 公社の拠点に戻ると俺たちはすぐに村瀬の下に向かった。

 

「村瀬。聞きたいことがある」

 

「ああ。アルテミスと公社の関係か?」

 

「お前、知ってるのか?」

 

 あっさりと村瀬が言うのに俺はそう問い詰めた。

 

「さっき知らされた。アルテミスは、かつて公社の科学部門だったらしい」

 

「クソ。つまり……」

 

「お前たち強化人間(エンハンサー)を作った技術はアルテミスが、ダンジョンのクリーチャーを模倣して作ったものだ。いわゆるバイオミメティクス、だそうだ」

 

 公社とアルテミスは繋がっていた。そして、アルテミスの技術が俺たちを生んだのだ。よりによってクリーチャーどもの技術を使って。

 

 吐き気がする。

 

「しかし、どうして公社はそのアルテミスを攻撃したんだ?」

 

「連中が制御できなくなったかららしい。アルテミスは独自に行動を始め、ろくでもないメガコーポなどに技術を売り始めた。無茶な人体実験もやり始めていたらしく、公社としては放置できなくなったそうだ」

 

「なるほどな」

 

 湊は村瀬の言葉にそう頷く。

 

「他に何か隠していることはないか?」

 

「ないはずだ。俺だって今まで知らされてなかったんだ。公社がどんな秘密を持っているのか全て知るはずがないだろう」

 

「篠原は知ってたのか?」

 

「分からん。だが、そろそろ5階層に到着するそうだぞ」

 

 俺が尋ねるのに村瀬はそう答える。

 

「篠原は何か知っているかもしれない。あとで聞いてみよう」

 

「ああ。どうにももやもやする」

 

 俺と湊はそう言葉を交わして、篠原の到着を待った。

 

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