公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

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6階層に向けて

……………………

 

 ──6階層に向けて

 

 

 篠原が5階層にやってきた。マオも一緒だ。

 

「やあやあ。佐世保君、湊君。そんな顔をしてどうしたかね?」

 

「篠原。聞きたいことがある」

 

 篠原がいつもの調子で話しかけてくるのに俺たちはそう切り出した。

 

「アルテミス・グループというものを知っているか?」

 

 俺はそう篠原に尋ねる。

 

「懐かしい名前だね。ダンジョンが生まれたときに発足した研究グループだよ」

 

「ダンジョンが生まれたとき?」

 

「そう。ダンジョンのクリーチャーたちには特殊な能力があるものが多くあった。それに対抗する手段を開発するために作られたのがアルテミス・グループだ」

 

 篠原はアルテミス・グループについてそう語った。

 

「俺たちの持っている情報とは違うな。連中はダンジョン由来の技術で人体実験をしていたって話だが」

 

「そう、それが問題になった。そのせいでアルテミス・グループは解体されたんだ。科学にも最低限の倫理は必要だからね」

 

「そうか……」

 

 しかし、解体されていたはずのアルテミス・グループは生きていた。

 

「何を隠そう私もアルテミス・グループに所属していたのだから、彼らについてはよく知っているさ。有望な人間もいたが、大多数は新しい玩具に夢中になっているだけのどうしようもない連中だったよ」

 

 それから篠原はあっさりと自分がアルテミス・グループにいたことを語った。

 

「彼らの残党は地下に潜ったときいたけれど、彼らと接触したのかい?」

 

「壊滅させたところだ」

 

「それは世のためになることをしたね」

 

 かつての古巣が壊滅したというのに篠原は特段目立った感情を見せなかった。

 

「それよりも5階層のトラブルは解決したのだろう? いよいよ6階層を探さなければならないよ!」

 

「それだが、どこに6階層に向けたポータルがあるのか分からないだろう」

 

 6階層は未だあるかもしれないという段階に過ぎない。実際にそれを確かめた人間はいないし、6階層へのポータルも見つかっていない。

 

「ならば、探すのだよ。6階層へのポータルを! 幸い私たちには6階層出身だろうマオがいる。彼女に話を聞いて6階層をめざそうではないか!」

 

 篠原はそう高らかと宣言し、マオを見る。

 

「マオ。ようやく故郷に帰れるかもしれないな」

 

「うん。けど、ちょっと不安……」

 

 マオは湊の言葉にそう言う。

 

「何が不安なんだ?」

 

「もうずっと故郷、見てない。大きく変わってるかも……」

 

 マオはそう言って不安そうにしていた。

 

「どれだけ変わっても故郷は故郷さ。さあ、ポータルを探そうぜ」

 

「うん」

 

 湊はそう言ってマオを元気付け、6階層へのポータルを探すことに。

 

 6階層へのポータル探しはマオ頼りであった。俺たちにはマオ以外の手がかりは存在しないのだから。

 

「ここ、通った。間違いない」

 

 マオはそう言い、俺たちに道を示す。

 

 俺たちはマオに言われるままに軍用四輪駆動車を進めて、5階層を進んでいく。

 

「ここら辺は調査したことがあるんじゃないか?」

 

「いや。5階層は公社はほとんど調査していないはずだ」

 

「じゃあ、未発見のポータルがあってもおかしくないか」

 

 俺と湊はそう言葉を交わして、マオの指示通りに軍用四輪駆動車を進めた。

 

「ここ! この近く!」

 

 マオが声を上げ、俺たちは軍用四輪駆動車の速度を落とす。

 

「この近くか? 間違いないのか?」

 

「うん。ここ、通った。間違いない!」

 

 マオはそう言って軍用四輪駆動車の中から周囲をきょろきょろと探る。

 

「湊。周囲に敵は?」

 

「いない。あたしたちだけだ」

 

「じゃあ、降りて探そう」

 

 俺たちは軍用四輪駆動車から降りると周囲を探り始めた。

 

 周囲に敵やクリーチャーがいないことは湊が確認しているので、マオと篠原も下車して周囲を調べる。

 

「あれじゃないか……?」

 

 そこで湊が声を上げた。

 

 ぽっかりと山肌に穿たれた洞窟の中に、ポータルの輝きがあったのだ。

 

「間違いない。あれが6階層へのポータルだ!」

 

「待て。だとしても、まずはドローンなどで調査しなければ。6階層がどんな環境なのかはさっぱり分からないのだろう?」

 

 篠原が大喜びするのに俺はそう言った。

 

「その点は心配いらないと思うがね。マオを調べたが我々との違いは少ない。6階層がそこまで人間の生存可能な環境からかけ離れているという心配はないだろう!」

 

「そうか」

 

 確かにマオが暮らしていた場所ならば、そこまで苛烈ではないのかもしれない。それともこれは楽観的な考えだろうか?

 

「まあ、もちろんドローンでの調査も行うよ。何があるかは分からないからね」

 

 篠原はそう言い、俺たちは一度調査準備のために帰還することになった。

 

 だが、その帰り道であるものとすれ違った。冬季迷彩の軍用四輪駆動車。その車体には太平洋保安公司のロゴ。

 

「今のは太平洋保安公司か」

 

「連中、6階層のポータルの方に向かっていたぞ」

 

 俺が言うのに湊がそう言って警戒を示す。

 

「大井が6階層のポータルを把握していたとしても驚くべきことではないさ。ブラックマーケットにはマオと同じ種族が出品されていたんだ。誰かが攫ってこなければ、そういうことは起きない」

 

 だが、篠原は悠長にそう言っていた。

 

「じゃあ、6階層で大井とドンパチする可能性もあるわけだ」

 

「あるね。備えたまえよ、兵隊諸君」

 

「クソ」

 

 また大井と衝突するという話に俺は思わず悪態をついた。

 

「大丈夫?」

 

 そんな俺のことを心配するようにマオが話しかけてくる。

 

「佐世保は大丈夫だ。お前を絶対に故郷に帰してやるからな、マオ」

 

 湊はそんなマオに優しくそう言い、俺たちは公社の拠点に戻った。

 

 公社の拠点で俺たちは6階層の探索に向けた準備を進める。

 

「まずはドローンによる調査で、その次に有人調査か?」

 

「だな。それから大井と交戦することに備えなければならない」

 

「大井とやり合うとはな」

 

「まだ決まったわけじゃないさ」

 

 俺と湊はそう言葉を交わしながら、調査に向けて準備した。

 

 ドローンを準備し、武器弾薬を準備しと必要な装備を集めていく。

 

「よし。準備はできた」

 

「篠原と合流しよう」

 

 一度分かれた篠原たちと俺たちは再度合流。その篠原は村瀬と一緒にいた。

 

「篠原。こっちは準備ができたぞ」

 

「おお。こっちも人員を手配してもらっていたところだよ!」

 

「調査の人員か?」

 

「その通り。安全が確かめられたらすぐに6階層にキャンプを作りたいからね」

 

 篠原はどこまでもわくわくしている様子であった。やつにとっては全く未知の場所に向かうわけなのだから当然なのかもしれないが。

 

「じゃあ、向かうとするか、6階層に」

 

 俺はそう言い、篠原たちを連れて再び6階層に繋がるポータルへと向かった。

 

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