公益財団法人日本迷宮公社   作:第616特別情報大隊

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マオの故郷

……………………

 

 ──マオの故郷

 

 

 俺たちは6階層に繋がるポータルへと戻ってきた。

 

「まずはドローンだ」

 

 俺たちは核兵器(N)生物兵器(B)化学兵器(C)対策に用いられるセンサーがついた無人地上車両(UGV)を早速ポータルの向こう側に送り込もうとする。

 

「待ちたまえ。せっかくだから私のスパイダー君も一緒に送ろう」

 

「別にいいが……」

 

 篠原が自分のお気に入りであるドローンを無人地上車両(UGV)の上に乗せた。

 

「では、送り込むぞ」

 

 俺たちはドローンをポータルの向こう側に送り込んだ。

 

 すぐさまドローンからポータルの向こう側の映像が伝えられてくる。

 

「……なんだか牧歌的な光景が広がっているな?」

 

 ドローンのもたらした映像には平原が広がり、そこに麦畑のような人工的に加工された土地が広がっていた。

 

「マオ。これはお前の故郷の光景か?」

 

 湊がマオに映像を見せてそう尋ねる。

 

「うん! マオ、故郷、これ!」

 

 マオはそう言うと嬉しそうにドローンが送ってくる映像を眺めていた。

 

「決まりだね。6階層は存在するし、それはマオの故郷だ!」

 

 篠原はそう言って大発見をしたようなリアクションを取る。

 

「では、いよいよ6階層に踏み込むか……」

 

「そうだな。ドローンは異常を報告していない。俺たちに無害なはずだ」

 

 湊が言い、俺もドローンの送ってきたデータを読んでそう返す。

 

「私たちも一緒に行くよ」

 

「あんたらもか? 安全が確保されてからの方がよくないか?」

 

「何を言っているのだね。ダンジョンに安全な場所などないのだよ!」

 

「はいはい」

 

 篠原がそう言い張り、俺たちは篠原とマオもつれて6階層へ。

 

「では」

 

 俺が先頭に立ってポータルを潜る。

 

 6階層は穏やかな場所であった。

 

 銃声はしないし、気温はちょうどいい温かさであったし、今のところ俺たちを食ってやろうというクリーチャーもいない。

 

「ここがマオの故郷か」

 

 湊もそう言って周囲を見渡す。

 

「マオ、案内してくれるかい?」

 

「分かった!」

 

 篠原はマオに案内を頼み、俺たちは軍用四輪駆動車に乗って移動する。

 

「こっち! こっち、マオの家!」

 

 マオは故郷に戻ってきてすっかり元気になった様子であった。その様子を見ている湊も安心した表情を浮かべている。

 

「ここ、マオの村!」

 

 そう言ってマオが訪れたのは小さな集落だった。竪穴式住宅が並ぶかなり原始的な集落である。

 

 マオがそれを軍用四輪駆動車の窓から見つめるのに、集落からマオと同種のクリーチャーたちが姿を見せた。

 

「あ! あれ、マオの友達!」

 

「おお。そうか。じゃあ、挨拶してこようぜ」

 

 湊はそう言うと軍用四輪駆動車の扉を開け、マオとともに車両を降りる。

 

「マオ!?」

 

 マオが友達だと言っていたクリーチャーたちはマオに駆け寄ってやつを出迎えた。

 

 当然ながら俺たちはマオたちの言葉は分からないので、マオが友達の再会で何を話しているのかも分からない。ただ嬉しそうだと言うことだけは分かった。

 

「あたしたちも行こうぜ」

 

「ああ」

 

 湊にそう言われて俺たちはマオの友達の下に向かう。

 

「────?」

 

「佐世保、湊、篠原!」

 

 どうやら俺たちのことを友達に紹介したらしい。

 

「────!」

 

「うん。分かった」

 

 そういうとマオは俺たちの方を向く。

 

「みんな、マオが帰ってきたお祝いしたいって。湊たち、歓迎する、言っている」

 

「お。そうか?」

 

「うん。一緒、来る?」

 

 マオは俺たちにそう尋ねた。

 

「では、お邪魔させてもらおう!」

 

 篠原は真っ先に声を上げた。

 

「あんたが行くなら俺たちも行かないといけないな」

 

「よし。あたしたちも行こうぜ」

 

 俺は渋々と湊は楽しそうに篠原とマオについていく。

 

 マオと友達は楽しそうに話しており、やつらがただのクリーチャーではないということを思い知らされた。俺たちはこれまでここまで高度にコミュニケーションを行うクリーチャーを見ていない。

 

「こっち!」

 

 マオは一軒の家に入る。

 

「ただいま!」

 

 マオがそう言うと中の住民がびっくりした様子でマオを見る。

 

「────!」

 

 恐らくはマオの家族なのだろう。驚いた表情のクリーチャーたちはマオを囲み、あれこれと声をかけながら涙を流したり、笑ったりしている。

 

「よかったな。マオをここまで無事に連れてこれて」

 

「……そうだな」

 

 道中いろいろとあったが、確かにマオをここまで連れてきたのはよかったのかもしれない。俺は湊の言葉にそう思った。

 

「湊、佐世保、篠原! こっち!」

 

 マオはそう言って俺たちを家族に紹介した。マオの家族は俺たちに対して笑みを浮かべて頭を下げた。

 

「────!」

 

「今日はゆっくりしていってね、って」

 

 家族の言葉をマオが翻訳して伝える。

 

「うむうむ。私も6階層についていろいろと聞きたいことがある。協力してほしい!」

 

 篠原はそう言ってマオとその家族にぐいぐいと質問を始め、マオの家族たちはあれこれとマオを通じて答えていた。

 

「────」

 

 そこで俺たちにマオの家族の手によって前に陶器のカップと何かの肉料理が出された。カップには飲み物なのだろうアルコールの香りが僅かにするものが入っている。

 

「いただくよ」

 

 湊が笑顔でカップを取り、口に運ぶとマオの家族は笑顔を浮かべた。

 

「味は?」

 

「悪くない。フルーツの酒だな」

 

 湊はじっくりと味わうように出された酒を飲む。

 

 俺も湊に続いて飲んでみたが、なかなかにさわやかな風味で悪くなかった。

 

「料理の方もいただこうぜ」

 

「ああ」

 

 肉料理は少し脂が足りない感じがしたが、独特の塩辛い味付けてあり、いい酒のつまみになった。

 

「佐世保、湊」

 

 ここでマオがやってくる。

 

「本当にありがと!」

 

 そう礼を言いにマオはやってきたのだ。

 

「気にするな。それよりこの階層のことを篠原に教えてやってくれ」

 

「うん!」

 

 マオは湊の言葉に頷くと篠原の下に向かった。

 

「しかし、これでマオともお別れか……」

 

「別に会えなくなるわけじゃないだろう。マオは6階層に住んでいるんだ。会いたくなったら会いにくればいい」

 

「それはそうだけどさ。これまで一緒に行動してたからな」

 

「気持ちは分からんでもない」

 

 湊が寂しそうにするのに俺も僅かに同意しておいた。

 

「マオにはこの階層を案内してもらう最後の仕事が待っている。それが終わったら公社の方でもお別れ会でも開けばいいだろう」

 

「そうだな。なんだかんだであんたもマオがいなくなるのは寂しいか、佐世保?」

 

「別にそこまで別れを惜しんじゃいない」

 

 湊の言葉に俺はそう返したのだった。

 

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