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──6階層の生成理由
俺たちはマオと家族の再会を見届け、マオをそのまま村に残して一度建設中の公社の拠点に戻った。
「よう、村瀬。拠点づくりは順調みたいだな」
「ああ。ここは5階層と違って気温もいいし、楽な仕事になるだろう」
湊が作業を監督している村瀬に声をかけるのに、湊はそう応じた。
確かにこの6階層は5階層のように凍死する危険があるような場所ではない。程よい気温で過ごしやすい場所だ。
「じゃあ、この階層での問題は?」
「さっき情報部が通信を傍受したんだが、大井が進出しているみたいだ。連中の通信を傍受している」
「大井か……。狙いは何だと思う?」
「恐らくは6階層そのものだろう。ここには大井と俺たち以外まだ進出していない未開拓地域だ。今のうちに基盤を固めて、未知の資源をたっぷりいただいちまおうって考えだろうな」
「未知の資源、か」
この6階層にどんな資源があるのか。それは全く分かっていない。
「篠原がマオの友達や家族からいろいろと聞き取ったはずだから、そいつを当てにさせてもらおうぜ」
「そうだな。そうしよう」
そういうことで俺たちは篠原が現地住民であるマオの家族たちから聞き取った情報を当てにさせてもらうことにした。
その篠原から調査の依頼があったのは、それから数日後のことである。
「やあやあ、佐世保君、湊君。仕事の時間だよ!」
篠原はいつものように意気揚々と現れた。
「どんな仕事だ?」
「うむ。マオ君の情報によれば、この6階層には話が通じるドラゴンがいるらしい」
「何だって?」
マオように人型クリーチャーですら意思疎通が取れたことに驚いたのに、ここにきてさらに意思疎通がとれるドラゴンとは。
「そのドラゴンがお宝を持っているらしくてね。ぜひともそれを調査したい!」
「はあ。分かった。俺たちも大井の狙いが何なのか調べなければならないと思っていたところだ。調査をやるとしよう」
「素晴らしい。では、すぐに準備してくれ。善は急げだよ!」
これのどこか善なのかはさっぱりだったが、篠原が求めるのに俺たちは武装を整えてやつと合流した。
「そのドラゴンの巣はここからどの程度なんだ?」
「そうだね。半日もあればつくだろう。あの集落からもそう遠くはないとマオ君たちからは聞いているね」
ふむ。マオの集落に近いということは、本当にドラゴンはさほど脅威になっていないのだろう。
「ドラゴンと何を話すんだ? お宝についてか?」
「それから6階層について。知りたいことはいろいろとある!」
篠原は始終興奮した様子であれこれ語っており、そんな中で俺たちは目的地を目指したのだった。
「あれか?」
そして、俺たちの前方に木々に囲まれた小高い山が見えてくる。
「間違いない。あれだよ。話に合った通りだ!」
篠原が頷き、俺たちは軍用四輪駆動車を山の方に走らせた。
「さて、ここからは歩いていこう。ドラゴンを刺激したくない」
「思ったんだが、マオたちと一緒じゃなくてよかったのか? ドラゴンは話かもしれないが、それは知った人間に対してだけだったりしないか?」
「その点は大丈夫だとマオ君から聞いている」
「本当かよ」
湊は疑いの目を篠原に向けながらも、軍用四輪駆動車を降りて森の中に入る。
「一応敵対的なクリーチャーに警戒。あとは大井にも」
「了解。今のところは人間に関してはクリアだが、デカい何かがいる」
「そいつが目的のドラゴンだろう」
話ができるからと言って襲われないとは限らない。だが、今はドラゴンの対話を俺たちは求めており、そのためには相手を刺激しない方がいい。
「慎重にやるぞ。うっかりドラゴンに丸焦げにされないようにな」
「了解」
俺と湊は篠原を護衛しながら森の奥に進む。
「巨大な生き物が近い」
「具体的どれくらいだ?」
「15メートル先だな」
ドラゴンはすぐそこだ。
俺たちは武器は下し、その状態で進んでいく。
「こいつは……」
俺たちが進んだ先には祭壇のようなものがあった。
それは石で作られた簡素な祭壇であり、何かしらの神を讃えているかのようなものである。それがぽっかりと開いた洞窟の前にあったのだ。
「何者かね?」
そこで重低音の声が響いてきた。
「やあやあ。私たちは敵ではないよ。マオという現地住民に教えてもらってここに来たものだ。あなたが話の出来るドラゴンだと聞いてやってきた!」
篠原がその問いに答えると洞窟からずんずんと重々しい足音が聞こえ、そして──。
「ほう。奇妙な客人だな。しかし、歓迎しよう。ようこそと」
現れたのは黒い鱗をしたドラゴンだった。
デカさは1階層で暴れまわったドラゴンと同じくらいの大きさであり、俺たちを丸のみできそうなほどデカい口を持っていた。
「おお。本当に言葉を理解するのだね!」
「いや。待てよ。このドラゴンは今、俺たちの言葉──日本語をしゃべったよな?」
俺はそう篠原に指摘する。
「というより、この声は耳から聞こえてきているものではないね。頭に直接響いているように思える」
「つまり、テレパシーか……?」
「その可能性はあるね」
驚いた。ドラゴンが人語を解するどころか、テレパシーまで使うとは。
「さて、客人たちよ私が人語を話すのを確認に来ただけではあるまい?」
「まさに。私たちはこの6階層のことをよく知りたい。それにはあなたと話すのが一番だとここの住民たちに教わった」
「6階層のどのようなことが知りたいのかね?」
黒い鱗のドラゴンはそう尋ねる。
「その前に自己紹介をしよう。私は篠原、こっちのふたりは佐世保君と湊君だ」
「丁寧にありがとう。私はシュヴァルティア。見ての通り年老いたドラゴンだ」
そのドラゴンはシュヴァルティアと名乗った。
「シュヴァルティア君。君はこの6階層がどのようにして生まれたかを知っているかね? 私たちはこの6階層がこれまで存在することを知らなかった」
篠原の質問はまずすべきことだった。
確かに俺たちは6階層の存在を今になってようやく知った。それはこれまで捜索不足だったからというよりも別に理由があるように思われた。
「そうだね。そこから話すとしよう。我々がどうしてここにいるのかを」
シュヴァルティアはそう言って語り始めた。
「我々がこの小さな世界に閉じ込められたのは、3、4年前のことだ」
「3、4年前? 確かなのか?」
ダンジョンがこの世界に生まれたのは3年前だ。
「ああ。確かだ。当時の我々──ドラゴンとドラゴンに従う民は大きな迫害に遭っていた。我々から財産や土地だけではなく、生きる権利すらも奪おうという極めて過酷で残虐な迫害だ」
「ドラゴンに従う民というのはマオたちのことだね」
「そうだ。我々は大陸の中心から西へ、西へと追いやられていった」
シュヴァルティアは篠原の言葉に頷き続ける。
「そして、我々が西の果てにある大地にたどり着いたとき、意地悪な神が我々に手を差し伸べたのだ」
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