ワンパターン化や言葉の無さに悩みながら。
谷底を沸き潰しつつ古井戸までを1つの章に。
キリが悪いかもですが…
谷底に漂う陰鬱な霧。
世界の描写距離を違和感無く最低限にしているつもりだろうと、マインクラフターの進撃を止めるには至らない。
いつも通り大量の松明で霧散せしめ、迫り来るキノコ胸を鋏で伐採し去勢。 そしてまた松明を立てるを繰り返し霧払い。 隠れた地表がどんどんと眼前に晒される。
その気持ち良さは水捌けの良さを目の当たりにした時のような爽快さだ。 霧捌けというべきか。 目に見える成果は大好きだ。
「う、ぁ……? あら? 私は此処で何を?」
「金の林檎ではなく、鋏で元の人間の姿に戻した!? ソレただの鋏ですよね!?」
すると、どうだ。
キノコ村人共はキノコをドロップすると同時、普通の村人や黒服に浄化された。
そこは牛胸と同じ結果だったが、次には困惑のハァンを上げ周囲を見渡すときた。 やがて後続の牛胸と合流しハァンハァンと鳴き合い始めるときた。
「あの、大丈夫ですか? 具合の方は?」
「ええ、頭がぼんやりしますが何とか……どうやら助けてくれたようですね、ありがとうございます。 キノコの胞子にやられて悪い夢を見ていた様です」
毎度呑気なものだ。 村人らしいとも思う。 呆れを通り越して興味は無いが、既知の光景は妙な安堵感があるものだ。
今更特筆すべき特徴が無いからといって、それ以上の変化を望まない。 クラフターは元ある常識もそれなりに愛しているつもり故に。
だから一瞥して作業に戻った。 今は本旨のままに松明を立てる事に傾注する。 村人は村人。 クラフターはクラフターの矜持の道を歩めば良い。 奇を衒う必要は無い。
「彼方にいる旦……騎士様のお陰ですよ」
「……すみません。 私には剣と盾を持つ騎士ではなく、松明と鋏を持って振り回している変人に見えます。 本当に騎士なのですか!?」
「正確には分かりませんが、鎧を着ておりますし、剣や盾を使う事もあるので一応……」
しかしと松明の光の中、思う。
キノコ村人の扱いをどうしようかと。
ゾンビ相手なら金林檎で浄化するのに対してキノコ相手なら鋏で済む。 ソレは良い。 金インゴットと林檎を用意するより鉄インゴット2個で作れるのは雲泥の差だ。 安上がりで良い。
「はぁ。 まぁ見た限り、どこからともなく大量の松明を出す魔法か何かを行使し、闇祓いしてくれているので頼もしく感じます。 あの鋏もきっと魔導具か何かなのでしょう」
「恐らくは、たぶん」
「……不思議な人というのは理解しました」
そうして浄化した村人との取引内容に不満があるなら再びキノコ化して貰い、自動シチュー製造機として飼育する事も考えられる。
ただ正直、スタック出来るベイクドポテトの方が効率的だ。 畑でジャガイモを育て焼く手間はあるが、纏めて大量に作れて腹持ちも良い。 基本的に携帯食糧といえばベイクドポテトと決めている。
一方、キノコシチューは腹持ちは良いがスタック出来ないし、食器となるボウルを用意しないと作れない。 このボウル自体はスタック出来るが他に用途が無い。 材料となるキノコはまだしも。
「ところで、何故この谷底に?」
「……それが上手く思い出せません。 聖堂にいたような、町にいたような」
「私達は聖堂へ向かう為の道を探しています。 この先にあるであろう水汲み場から行けないか調査しに行くのですが、何か思い出せませんか?」
「すみません、お力になれず」
「いえ……ここは危険です。 私達が通ってきた道を辿れば町へ戻れる階段があります。 一先ず修道院で身体を休めるのが良いでしょう」
「松明があって分かりやすいですね……どうか気を付けて」
だが創造とは合理性に縛られない。 心往くがまま作りたい物を作る事こそ1番だ。
それこそ美学であり耽美であり。
なによりマインクラフターなのだ。
「───だいぶ霧が祓われましたね。 菌床化した他の人達も鋏と松明で浄化され、町へと向かったようです」
最早当然とした作業行程の内に、あれよこれよと夢想し、やがて煉瓦の柱が並ぶ地へ辿り着く。
見上げれば橋となっているようだ。 しかし途中で途絶えている。 工事中なのか。 いや荒い崩れ方だ。 クリーパーの類にやられたのか。 後で僭越ながら修復を試みよう。
今は、そう。 此処だ。
「聖堂へ続く、壊れた橋の根元に来たようです。 橋を支えるのは、ここに聳える立派な煉瓦の柱たち。 建設当時の努力が垣間見えます。 ですが今や無残な姿に……聖堂もまた、邪気が漂う城となって。 誰が想像出来たでしょうか」
谷底だ。 どうしてくれよう。
キノコ栽培だけで全てを占領するのは馬鹿馬鹿しい。 いっそ、ふざけて骨粉でキノコを巨大化し、なんちゃってキノコバイオームを作るのも面白そうとは思う。 だがそうすると谷底が毒に沈みそうで駄目だ。 被害が集落まで及んでも詰まらないし。
取り敢えず地下鉄を引き込んで建材を輸送出来るようにしよう。 今は直ぐできる事からだ。
「旦那様?」
ここから橋の上にも行けるよう、有り合わせの木材を作業台で加工。 棒を組み合わせて柱に梯子をかける。
麓と上それぞれに木材ブロックで豆腐ハウスを構築。 仮拠点とする。 中にベッド、作業台、かまどとチェストと最低限のセットを備えておく。
「橋を診るのですか? 確かに橋が直れば聖堂へは行けます。 しかしこの先にも何やら邪気を感じます。 無視する事は出来ません」
でも何を作ろうかなあ、悩むなあ。
首を傾げ、贅沢な悩みに浸っていると。
いつの間にか牛胸が1人でに先に進んでしまう。 まだ松明で照らしていない方にだ。
クラフターは呆れた。 牛胸は相変わらず無謀だと。 いい加減に己のペットである事を自覚して欲しい。 犬ほどの順従さは期待していないが、あまり自由過ぎると猫や牛や豚の方が良くなってしまう。 魚や小麦で懐柔、誘引できるし。
「ッ! 魔物、エネヌトが此処にも? ああっやめ、ああんっ! 胸がまた大きくぅ!?」
搾乳される牛としての自覚はあるようだが。
呆れつつ……放置はできず。
結局、牛胸を追うクラフターなのであった。
後書き
己の衰えを感じつつ…
奇妙なキノコ
キノコ人間以外にも、普通に地面から生えているキノコもある。一定間隔で胞子を散らして行手を遮っている。隙を見て飛び越えて進む障害物の扱い
菌床化した人間
何体もいるが、どうして谷底で菌床となったのか、いつからいるのか
昔、谷底へ降りる足場が健在だった時に降りた人か、聖堂から逃げるか何かしてやられたのか…
当作ではご都合主義の1つとして、鋏でキノコを採るとアッサリ元の人間に戻る。キノコバイオームにいるムーシュルーム的なノリである
ただし菌床化されていた影響か記憶が混濁、曖昧で、重要な情報は聞けないかも知れない