上位存在マイクラ   作:ハヤモ

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前書き
28日の地震、大丈夫でしたか?
被害が大きいようで不安感が増す中…
読み書きしていて良いのか、他にもリアル事情で悩みが無い訳ではありませんが、自身の不安感を逸らすように文字入力…

台詞の差別化が難しい…
誤謬もあるかと思いますが御勘弁を


架橋と品評

 

 

「姉妹の娘が雁首揃えて、行くなって言われた町の外。 挨拶ついでに親父の見学とはな」

「あっ! 大工さん!」

「ええ。 憧憬もありますが後学になればと」

「……修道院には黙っといてやる」

 

 

壊れた橋を修復する準備を進めていたら、見知った村人が3体やってきたので、マインクラフターは満更でもなくお辞儀する。

牛胸モドキとチビ黒服モドキは、まあ、意外性こそあれ想像の範疇として、もう1人は同志故の敬意があった。

最善の態度で示して歓迎しよう。 ただしモドキ、お前らは駄目だ。

クラフターはスニークしながら右往左往、腕を振った。 威嚇しているのだ。 招かれざる客だ。 余計な真似をしてくれるなよと警告を示す。

 

 

「父様が手招きして歓迎してくれてます!」

「それもとても良い笑顔ですね。 娘が来てくれて嬉しいのでしょう」

「手招きというか、ツルハシを振ってるんだが? 部外者を追い払っている仕草に見えるんだが? 俺の仕事柄、そう感じてしまうんだが?」

「やだなぁ、考え過ぎですよ。 こんなにも可愛い娘が来てるんですから」

「胸を持ち上げながら言わないでくれます?」

「そういうもんか? 俺だったら危険な現場ほど、娘には来て欲しくは無いんだが」

 

 

いっそ落下死してくれて構わない。 建築中の村人乱入とか邪魔でしかない。

 

 

「ところで大工さんは橋の修理に?」

「それとも私達同様、見学ですか?」

「修理で来た。 が、仕事を取られた。 あの錬金術というか、不思議な能力が広まるようなら、いよいよ用無しだな」

「そう卑下せずとも良いのでは? あと錬金とは違う気がします。 鉛を金に出来るかは未確認ですが、物質の性質を変えるに至る力では……いえ、蜘蛛の糸を羊毛に加工したのを見た身としては怪しいですけど」

「父は恣意的ですが、大工さんは家具や装飾品等が秀逸で、精緻に気を遣えている者と思慮します」

「妹に賛成です。 父様を悪く言うつもりはありませんが、細部への配慮に欠けてます。 異文化故か話も出来ません。 あ、これは忌憚なき意見ってヤツです」

「容赦ねぇ。 俺が娘に言われたらヘコむぞ」

 

 

しかし、まあ、ここまで村人を意識するとは。

昔の己が見たら信じられない変化だ。

村人の友好度なんて取引での値引目当てでしかなかった。 高価なエメラルドを払ってでもパンなどというぼったくりと殺意に耐えたのは、次なる取引に繋げる為の忍耐であった。

しかも、その先に得られるかも定かではない有益な取引を夢見ての博打ときた。 賭博だ。 あまりに無益過ぎる村人は屠るまである。 アイアンゴーレムに殴打されてでも手を出す事案である。

しかし、どうだ。 今目前の村人は取引でもなしに足場を作ってみせた。 最早同胞、マインクラフターなのだ。

やり方こそ違えど、この広い世界に仲間がいた事実。 その衝撃足るや凄まじく、感動に打ち震えて滂沱した。 生涯忘れる事は無い感動だった。

故に畏まり、敬意を示し、頭を下げる。 同時に畏怖し恐縮すらある。 己が同志である村人にしたように、今同志は我が作品を品評しにしているのだから。

 

 

「姉の言う点に付け加えるなら、能力そのものに頼っているのに問題があるのやも。 物理法則を無視するなど非常識な力ですが、完璧には見えません。 それは改修された町を見れば分かります。 細部が単調な事が多く、意匠への拘りがやや薄い。 それと通気性や冷暖房に難があり。 隙間風が無いのは良いのですが、窓が無いと空気が籠る。 通気口を設ける必要がありましょう。 あと雨樋も。 雨が降ると、屋根の隅全体から雨水が垂れ流されるので庭や道路が抉れたり、騒音が懸念されます。 他にも色々と問題があり、良くも悪くも大工さんの仕事はありそうです」

「そうか。 だとしても大規模な建設ほど、アンタら能力持ちの出番になりそうだな。 早くて確実。 町を囲む防壁なんかが良い例だろうよ」

 

 

今なんて此方を誉めそやす。

であればこそ、橋は立派に仕上げねば無作法というもの。

 

 

「それについても少し。 壁や備え付けられた兵器のように防衛に力を入れる割に、扉には鍵を付けないという不可解さがあります。 父の故郷は鍵が無くても大丈夫な程に平和だったのかとも愚考しましたが……防壁や罠の数々については獣避けの要領でしょう。 やはりこの分野においても同様の事を言えるかと」

「鉄扉は押しても引いても開かないが」

「それも不可解な点です。 扉が人力で動かない程に重量物であるか、蝶番に問題がある可能性はありますが。 スイッチや感圧版とかいう踏み板が無いと開閉しないとは……」

 

 

しかし下等モドキ達と交流するとは。

そこは村人らしい行為だし、軽蔑も憐憫も無い。 だがクラフター自身、僅かに嫉妬したのも事実。

何故我が橋ではなく村人に構うのか。 有益な取引が出来るのか。 少なくとも牛乳は摂れそうではある。 だがやはり己と出自が違う謎多き生物であると。

ましてや人の機微なぞに鈍感に生きてきたクラフターだ。 というより他に仲間がいなかった。 言えば素人である。 言葉も解らずでは知る由もない。

 

 

「兎に角、あんたらの親父さんは謎が多い。 何処で生まれ、どうやって来たのか。 お袋さんも知らなければ、娘のあんたらも知らんときた。 俺が言うのもなんだが、よく結婚できたな」

「ですね。 思えば父様は無口で、偶にウォッと叫ぶくらいでしょうかね。 しかし気難しい職人とはそういうものかなと」

「姉さん、ウォッは悲鳴かと」

 

 

何やら聞き覚えのある響きが聞こえたが、見やってもモドキ同士がハァンハァン見合っているばかり。

何故わざわざ安全な壁の内から抜けてまで鳴き合うのか。 クラフターこれが分からず首を捻る。

 

 

「……あの一瞬で町を作り変える不思議な物作りの力は先天的なものか、後天的なものなのか。 だが、あんたら生まれてきた子供達を見てると、どうも生来の能力に思える。 羨ましい限りだ。 努力もなく降って湧いた力だ」

「それと母の浄化の魔法も引き継いでます!」

「体付きもでしょう。 殴りたい、その豊満」

「小さな体にも需要はあります、多分。 それに自分の否定は親の否定。 あるがままの自分を受け入れなさい。 拘泥していてはなりませんよ」

「先ず己の罪を数えなさい……! あとね神が赦してもね、私は赦さないですよッ!」

「妹の分際で姉に勝てるとでも?」

「ヤッてヤろうじゃねーですか! どんな勝負にしやがります!?」

「じゃ、モノにした男の数で♡」

「体付きからして不利!? 無効です!」

「自信を持って下さい。 生後◯◯週間とは思えない身体と知能をしている事に興奮したり、誰でも良いからヤらせろっていう頭を◯欲に支配されたゴロツキや変態さんも少なくないので」

「とても修道女同士とは思えん会話だな……他の修道女も最近は乱れてるけどよ」

「冗談です♡」

「これが姉として生まれた余裕……!?」

「……なんであれ驕らずにな」

 

 

他所にして作業に戻ろう。

せめて本懐を遂げるのに傾注したのである。

答えの出ない問いを続けたところでキリがない。 時間の浪費だ。

クラフターはさっさと竈を並べて、石炭を燃料に丸石を焼く。 シルクタッチで採石していれば手間は省けたが、それなりに貴重なエンチャントだ。 そうしたツールというのは耐久値が気になるもので。

それに燃料と丸石の在庫が余りあった。 そこは時間を取るか手間を取るかの天秤。 今回は後者。 架橋は喫緊の課題でもなし。

やがて取り出した焼石を作業台なしに加工。 石煉瓦をクラフト。 作業台に向かい、ハーフブロックや階段ブロックも作っておく。

これらを橋の材料とする。 元あった橋の造形は崩れて不明。 想像の域を抜けない。 しかしながら崖両端に残された残滓の雰囲気からして、石煉瓦が適当であると判断した。

 

 

「まぁ、なんだ……町で生まれた子供達もあんたら同様に多少なりとも物作りの力が備わっていて、そのものにも興味津々な傾向にある。 時代の転換期といえる。 その中で尚も古いやり方に拘り続ければ、俺ら古い人間は淘汰され、近々御役御免になるかも知れん。 だがそれよりも気掛かりは、生きている間に俺の娘がマトモに嫁入りする姿を見られるかどうかだな」

 

 

対岸に石煉瓦を伸ばして1列状に繋げ、それを起点に横方向に次々と煉瓦を広げて橋の幅を広げる。

左右には柵として、階段ブロックを逆さまにして設置したり、そこからハーフブロックを繋げて並べる。 一定間隔でジャックオランタンを設置、顔を内側にして光源とした。

実用性ならば1.5ブロックの高さがある柵を設置するべきだが、見栄えを優先。 やはり石橋に木柵は気になるので。

或いはネザーブロックから柵をクラフトして使用するべきかと悩んだが、やはり石には石で統一した方が気持ちが良い。

 

 

「そんな卑屈にならず。 需要ありますって」

「そうです。 娘さんがいると言っても、貴方ご自身は壮年の内に見えます」

 

 

既に橋としては十分な機能を持たせたが、クラフターは足場の下へ潜り込む。

土ブロックで足場を作りつつ、谷底に落下死しないようスニーク移動。 見上げて足場の下側にも煉瓦を設置。 肉付け作業だ。 なんなら二重構造を思い立ち、橋の下にメンテナンス兼線路用のスペースを作った。

上は歩道。 下は鉄道の立派な石橋だ。

普段見えない細部に気を配ってこそ、建築家といえよう。 更に将来性も付加する事で価値を高めている。

 

 

「それにほら、今まさに凄い勢いで架橋工事が完工しましたが、例により飾付け等の細部が微妙です。 ここは良く観察し、棲み分けを見つけるチャンスですよ」

「私達も手伝いますから!」

「姉さんはやりたいだけでしょう……まぁ父は物作りをする人には寛恕のようですから、少し弄るくらいなら怒らない筈です。 壊す者には容赦しないでしょうけど」

 

 

既存の建造物とは、それで1つの完成だ。

成る可くあるがままであるべきであり、改修や修繕するにも原型や雰囲気を損なってはならない。 それが信条だ。 破壊の限りを尽くす荒らしと違うのが己である。 片手落ちな下衆とは違う。

今回もそんな信条に従いつつも……僭越ながら自己流に修繕、改修させて貰った形となった。

 

 

「新たな檜舞台に立つつもりで挑戦してみるか……はっきりと棲み分けし、老い先分からん今後に備えるべきか。 だが何もせず帰るのは悔しいからな」

 

 

我ながら満足だ。 クラフターはその場でジャンプした。

そんな脇を同志とモドキが素通りし、橋を見て誉めそやす。 石橋を叩くという暴挙に出た時は思わず殴りそうになったが、感嘆の溜息を前に理性が歯止めをかけた。

 

 

「……やはり凄いな。 どうなってる?」

「大工さん的に、思うところがありますか。 千尋を前にしても手を止めない父に!」

「それでも仕事は簡単に無くならないかと」

「いやそうじゃねぇ。 この橋、柱や筋交が無いのにこの強度。 町や谷底への足場作りでも感じてはいたが揺れも軋みもしないとは。 良く言えば頑丈。 悪く言えば不気味だな……しかも二重構造とは。 橋の整備用か、或いは水道でも通す気か。 何にせよ、これで谷底を経由せず、直接聖堂に行けそうだ」

「流石父さんの能力です。 拘らなければ土でも橋は架けられるというのに」

「なんでもありだな」

 

 

いやぁ照れるな?

実用性と兼ねて拘りってあるからさ?

 

 

「何処かと繋がり合う、浮いているというより空間に固定されると言った方がしっくりくるかも知れません。 その癖、砂利や砂は空中に留まれず落下するようですが」

「あと着火したTNTとかいう爆弾とか!」

「水もですね。 ですが梯子や看板で堰き止められるみたいですが」

「常識が通用しない事だけは分かった」

 

 

偏見や常識は敵だ。

更なる知見や感動、称賛とした自己肯定感を得るには、やはり時として忍耐も必要ということだ。

 

 

「───悲観する訳じゃ無い。 時代が変われば必要とされるものも変わる。 新しい物が作られ古い物が淘汰される。 世の理だ。 仕方ない。 だが明るい話でもある。 新時代の幕開けに立ち会える機会だ……君達、新世代には期待している」

「ありがとうございます! 修行中の身ですが、妹共々頑張ります!」

「修行のサボり魔が何か言ってます」

「こうして一緒にいるから同罪でしょ!」

「それを言ってしまえば、淫乱な修道女を母に持つという意味では私達の存在自体が……」

「? 何か言いました?」

「いえ……これは呪詛ではなく祝福としましょう。 子供は両親を選べない。 容姿もです。 しかし人の子として生まれた事に感謝するべきでしょう。 生まれながら異質な力を持たされて曖昧だとしても。 それでも自身を人と定義する限り、人であるとしたい」

 

 

モドキ達も神妙そうに鳴いている。 同志や我が作品に感化されたのか。

良いぞ。 そのまま同調しろ。 そしてマインクラフターになるが良い。 そこには楽しい創造道が待っている。

 

 

「……母譲りか、人間らしさがあるのは救いだな。 このまま堕ちてくれるなよ」

「大工さんまでナニをブツブツ言ってますか」

「……気にするな」

「……父は何というか、人を模倣した存在に見えてしまう時があります。 本質的には魔物と同じ類の人の皮を被った、俗世じゃ物足りなくて生きていけない、魑魅魍魎が跋扈する暗所でこそ勇躍する無邪気さと理不尽の怪物が、それでも人の営みが愛おしいから世話を焼いている……そういう上位存在なのでは、と」

 

 

下等存在と侮蔑していた村人との交流も、思っているより悪くないかも知れない。

いや、この世界の村人は元よりそうだった。 自己防衛の意識がその片鱗。 気付くのが遅かっただけなのだ。

 

 

「妹ちゃん。 確かに父様の本心は見えず、能力と相俟って恐ろしく感じる時があるでしょう。 でも母様と心を通わせ、愛の結晶足る私達が生まれました。 その事実を、その無い胸に抱いて自信を持って生きて下さい」

「そうですね。 ひと言余計ですねッ!?」

「ああっ、また強く揉まないで!? でちゃう、でちゃいますからぁ!」

「常時母乳体質なのも良い度胸です! 吸い尽くします!」

「ああんっ!? こんな所で剥かないでぇ!」

 

 

かと思った側から、チビが牛胸に抱きついた。 遂に繁殖か。 どんな子供が生まれるのか見てやろうとスニークで観察するが中々生まれない。 アレか。 モドキだからか。 それか搾乳作業でしかないのか。 それもバケツ要らずの直飲み。 そうするだけのバッドステータスでも付いていたのだろうか。

 

 

「……騎士さん、父親の苦労の味はどうだ?」

 

 

学びが多いな、村人は。




後書き
台詞多め。文字数共々問題なければ良いのですが…クラフターと関わりが少なかったかも?
今のところ約1週間毎投稿も…続くか否か。
次回は助け出されたモブ村人の反応集?

娘ちゃんの評価
・冷静かつ客観的な判断が求められる状況に於いての能力発揮には課題があるものの、明るく積極的な性格によって、問題解決に到達する頻度は比較的高確率である
・修行を放棄し町の内外で遊ぶ放蕩娘であり、下馬評を気にせず、時に憚る事なく振る舞い、慇懃無礼な態度になる場合もあるものの、特別剽軽という訳でも不見識という訳でもない
・母譲りの浄化能力、父譲りの創造力において傑出しており、親子の振る舞い次第で教会の名を膾炙する可能性あり。人々の希望、その依拠としても今後に期待
・特異な能力と相俟って、先進的な思考と技術提案には二重の意味合いで見張るものがあり、振る舞いや教育方針次第では人心の掌握と利便性向上の一方、教会の威厳や現在ある技能と魔法の価値が低下、蔑ろにされる懸念あり

騎士様(娘ちゃんの父)の評価
・異文化故か意思疎通が困難である他、行使する術法や道具は奇怪と得体が知れないものの、魔物に対する積極的な討伐、開拓や防衛、それらの為の建設能力は戦闘力以上に卓越しており、国益に資する他、協会への心付けとしても有益と思慮
・出身は不明。 没落、凋落した国家や貴族に仕えていたが浪人になったのか、多くは謎に包まれている
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