交流と次の場所
待てど暮らせど羊が見つからないから、クラフターは村の隅々に徘徊してハサミを使用するのが日課となっていた。
今日も土ブロックを重ねて天井高く作業する。 蜘蛛の巣の収集である。 今は黒服たちの拠点だ。 そこそこ広いから収穫が見込めた。集めた糸は後で羊毛にする。
「いつもありがとうございます。 私もリーリアのように背が高ければ、手の届く場所が増えるのですが……」
土ブロックを殴って回収、下に降り立つと、チビ黒服が会釈してきた。 クラフターもスニークして会釈する。 この黒服は中々成長しない。 畑の小麦やジャガイモを届けているのに。 牛胸の子供ならデカくなれば胸もデカくなるというのは流石に短絡染みた考えだと改めざるを得ない。
「ハーニャ。 騎士様もご一緒でしたか」
今度は牛胸が揺れて来た。 この数日で見慣れたとはいえ、ついバケツで搾れるか試したくなる。 牛乳は中和作用があるからだ。 毒消しに1つは常備したい。
「リーリア、どうされましたか」
「墓地の問題を解決した事、騎士様が各地でシスターを救出して町に連れ帰っている事と並行して情報も集まってきました」
「私たちの事も信頼してくれるようになったのですね。 喜ばしい限りです」
「町の安全が確保され、精神的な余裕が生まれたのもあるでしょう」
「して、この地を蝕む忌み子の呪いを解く方法を得た形でしょうか?」
「はい。 その鍵はアルセゾン大聖堂に。 そこの神官たちは異形の外なる存在、上位存在を崇拝する邪教徒と化したそうです。 生贄の為か、この町から女性、妊婦を拉致同然に連れて行ったと」
「であれば、そこに向かうのが最終的な目標になります。 十分な準備を整えてください」
「はい。 ですが、そこに至るまでの橋が落ちている為に直ぐには向かえません。 騎士様がその気になれば直りそうですが……それまで他の方法を模索します。 墓地以外に異形がいる地もあり、その浄化もしなければなりませんから」
2人は頻繁に交流している。 村人らしく、知らない服装を纏っても村人は村人なのだとクラフターを和ませる。 未だ繁殖の気配を見せないが、そこそこの人数が村にいる。 慌てる時間では無い。
その癖、アイアンゴーレムがいないから、クラフターが自ら作る事になったのだが。 しかるべきものが無いと、作品として未完成だとする信条からだ。 作り手として妥協したくなかった。
「……騎士様は教会の掃除をされていたのですか。 とても働き者ですね」
「何事にも一生懸命です。 言葉がなくても、姿勢が全てを語っています」
「ツルハシとシャベルで土木に建築。 時にクワを握り凄い勢いで耕し、時に剣を持ち騎士となる……己の魔法で多くの人の役に立とうとしているのでしょう」
「既に多くの恩恵を、この町は授かっています。 防衛施設だけでなく、畑を耕し小麦やジャガイモ、カボチャやニンジン、ビートルートと多様。 城壁の内側でありながら自給自足ができています。 この短期間に素晴らしい事です」
「急速に成長する作物には抵抗がありますが……そういう品種、魔法という事にしましょう」
だがそろそろ手狭だ。
また他の土地に繰り出して、松明を差して湧き潰し、村を拡張する頃合いかも知れない。
だがあまり牛胸から離れたくない。 どうしてか気になる。 無理に離れたら気が散って作業に集中できなさそうで困る。
「浄化の姉妹は、いらっしゃいますか」
奇遇かな、好機到来。 村人の1人が来た。
これをきっかけに牛胸が行動すれば、それに随伴する。 上手くやれば魑魅魍魎のいる場所が更に減らせる。
「血呑み沼地にいる忌み子を退治して欲しいのです。 その地に医療用のヒルを取りに行く際、犠牲が出る場合があるのです……」
「分かりました。 調査に向かいましょう」
「リーリア、お気を付けて……騎士様も気を付けて。 あなた方は私にも、町の人にも希望なのです」
やはりか動く。
であればとクラフターは盾を手渡した。
生存率を上げる為だ。 敵の飛び道具なら大抵は防げるだろうと思う。
「木製の盾を私に? ありがとうございます。 そうですね、魔法の弓矢を形成する余力が無い時、護身用の杖だけでは心許ありません。 是非使わせてください」
素直に左手に装備してくれた。
よしよし良い子だ。 村人全員、これくらい賢く素直ならなぁと思った。
「行ってきます」
「───幸多からん事を」
向かう先は何やら陰湿な沼地だった。
スライムの親戚のような奴が地面を這いずり回る場所だ。 そんなモノに遅れを取りはしないが……牛胸がまたやられそうだなぁとは思う。
その時はその時だ。 また助けよう。
さて……再び冒険の時間だ。