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小出し、サクサク進めるダイジェスト感の当作ですが、宜しくお願いします
陰湿深いその場所で、マインクラフターは呑気にも斧を振るっていた。 木の伐採だ。
「突然木こりを? 騎士様の事ですから、きっと考えがあるのでしょう。 その間、この盾でヒルの群れからお守りします……ッ、沼の中から飛びついて……!」
枯木だが幹はしっかりしている。 木材に加工して使用する。 木材は用途が広く、建材だけでなくツールの作成に必要不可欠だ。 効率は悪いが燃料にもなる。 原木から木炭も作れる。
「数が多過ぎ……ああっ! 吸わないでぇ!」
熟練の片手間で切り終えて、さっそく加工。
作業台にして更に加工。 ハーフブロックにフェンス。 架橋工事に使用する。
あとボートもクラフトした。 沼に浮かべたが、碌に進まず沈んでしまった。 やはり工事をするか。 その気で木こったのだし。
「騎士様、お逃げくだ……んんんっ!?」
先程から牛胸が煩い。 繁殖でもなしに。
殴ろうかと振り返れば、倒れた牛胸にスライムモドキが集っている。 手足や脇腹、胸に取り付いている他、口にも入られている。 当人はビチビチ動くスライムモドキのように足をジタバタ動かすばかり。
おお、中々の残忍で斬新な集団攻撃だ。 ピグリンやゾンビピッグマンとは異なる戦法だ。 そうした数で押す相手に盾では防ぎきれない。 土や丸石で壁を作るか上に逃れるしかない。
それだけに気分が悪い。 ネザー要塞での嫌な思い出まで蘇る。 倒そう。
クラフターは水バケツを手に持った。 牛胸ごと斬り捨てる訳にもいかないからと、水バケツを一瞬使い、流水で洗い流したのだ。
流れた先に負傷のスプラッシュポーションをすかさず投擲。 1撃で群れを消し飛ばす。 見た目相応に体力が無くたわいない。
「けほっ……すみません、助かりました。 歯を食い込ませていたヒルまで流すとは。 最後に投げたガラス瓶も魔法の類でしょうか」
会釈される中、クラフターは気にせず架橋工事に取りかかる。 沼にはスライムモドキが蠢いているし、普通に泳げない。 そうじゃなくても橋は架けたいが故に。
「騎士様? ああ、橋が一瞬で……!」
木のハーフブロックで対岸まで繋げる。 落下防止にフェンスも両端に並べていく。
あとブロックが空中に浮遊している雰囲気を消す為に、支柱を一定間隔で左右に立てた。 それは原木だ。 敢えて加工しない事で雰囲気を出す。 見えない所まで拘ってこそ建築家といえよう。
「相変わらず凄い事です。 これでヒルに襲われずに奥地へ向かえますね」
相も変わらずスタスタと独りでに進む牛胸。 多少戦えるからと、さっきの今でよく前進できるものだ。 勇敢なのではない。 蛮勇である。 せめて橋を褒めて利用して欲しい。 支柱とか細かい所に拘っているのだからこちとら。 村人らしいとも思えたが。
そうこう松明を差しつつ陸地を進む。 すると牛胸が弓を構え始めた。 光る矢尻の先はデカい羽虫だ。 蜜蜂とは似ても似つかない。 色は暗いし羽音が不快だ。
「大きなハエの形をした魔物でしょう。 こちらを捕食する気のようですが、今度はそうはいきません」
クラフターは思う。 この牛胸、近接より弓矢による中遠距離の戦いが向いていると。
それをしないのは、恐らく矢の数や弓の耐久値を気にしての事だろう。 或いはその場の地形や敵の行動の影響だ。 クラフターも近距離で弓矢を引こうとは思わない。 スケルトンじゃあるまいに。
まぁ今は今。 クラフターも弓矢を絞り、共に放つ。 虫は火球となり燃え落ちた。 フレイムのエンチャントだ。 こうなるなら虫特効を付加させたかったが、これでも十分だ。
「騎士様は弓矢も上手なのですね。 外見は実体でありながら、火矢となる魔法と組み合わせて……本当に何でもできるようで、頼もしく存じます」
牛胸が感嘆の鳴き声に誘われるように、人影が揺らめいてきた。 あいやスライムモドキの集合体だ。 小サイズが人型に纏まっているのだ。 攻撃したら分裂するかも知れない。 元よりスライムとはそうした敵だ。
「人を模倣したヒル! って、燃えた!?」
燃やす。 消し炭だ。 わざわざ近付いて分裂されて襲われそうだったからだ。 建築も戦闘も効率が良い方が良い。
「今度はより大きなヒルが! 口からヒルの塊を飛ばして……打ち返したあああ!?」
大型種が弾を飛ばしてきたので、驚きのままに咄嗟に殴ってしまった。 すると持主に跳ね返り爆散した。 ガストの火の玉と同等で良かったと思う。
「なんといいますか、私、言葉が見つかりません。 騎士様は何処の文化の方なのですか本当に!?」
橋より戦いに声を上げる牛胸。
クラフター、なんだか哀しくなる。 造った建築物を褒められる方が好きなのに。
武器や防具にしても、エンチャントの組み合わせを褒めるならまだ分かる。 だが現状、何の捻りもない打ち返しに感動されている。 牛胸の心中が分からない。 クラフターは首を振った。
「急に悲しい顔をされて……もしかして、故郷を魔物に滅ぼされたのですか。 故に魔物を許せず、見ず知らずの町を救おうと……」
所詮は村人。 やはり分かり合えない。
こちらは雑食。 そちらは草食だ。 黒曜石以上岩盤未満の壁に隔てられている。
「……ここが沼地の最奥のようです」
とぼとぼ覇気なく歩いている内に末端に到達したらしい。 廃屋の前にまたも大きな沼がある。 そこから巨大なスライムモドキが飛び出した。
「これは!? 忌み子の成れの果て!?」
あいやスライムではない。 奇妙にも顔がある。 蠢く小さな触手が生えている。 どちらかというとガストの親戚かも知れない。
「巨大なヒルが出るようになったのは、この忌み子が原因でしょう。 浄化します!」
でも全然ハッピーな顔じゃない。 敵対してる。
クラフターは哀しい顔のまま、弓矢を射る。
仲間には出来そうにもない。 残念だ。
後書き
更新未定