評価、お気に入り、ありがとうございます。
励みになります。
マインクラフターは1つの疑念を抱く。
対峙した敵、コレってスライムモドキというよりシルバーフィッシュの仲間じゃねと。 弱いしドロップしないし、その癖に背景に溶け込んで数がいるならそうだろうと。
対して目前の親玉。 この辺のボスといった風格で、ちょっとした塔くらいの大きさだ。 エンダードラゴンくらいか。 それでいて形は親玉らしくシルバーフィッシュに近い。 海底神殿のガーディアンという前例があるからそうだ。 間違いない。 見た目が分かりやすくて狩り甲斐がある。
「くっ! 周囲のナメクジが邪魔を……!」
攻撃手段は多彩だが。 空からスライムモドキを落としたり、ぬかるんだ地面から大きな触手が出て鞭のように叩いてきたり。
今としては、沼地から勢いよく体当たりをしてきた。 クラフターはエンダーパールを遠くに投擲。 ワープして回避する。
「急に騎士様が消え……きゃあああ!!」
が、牛胸黒服はモロに受けてしまう。
強烈なノックバックで吹き飛ばされ、廃屋の壁に激突。 そのまま座り込んでしまった。
「うぅ……」
するとボス、やたら長い触手を地面より生やし、牛胸を捕まえて顔の前まで持っていく。 瞬間。
「……えっ、んうううう!!?」
食われてしまった!
頭から食われ、ジタバタする足が奥へ奥へと吸い込まれていく。
盲点だった……その発想は無かった!
クラフターは目を見張る。 確かに牛胸ではあるが、村人の姿が故に見落としていた。
牛は乳だけでなく皮と肉を獲れるのだった。
豚という、食用として増やすも殺すも分かり易い家畜とは違うのが牛だ。 まさか生きたまま食うとは大胆が過ぎるが、このままでは牛胸が奴の経験値になる。 それは気に食わない。 その牛はやれない。 絶対にクラフターのである。
クラフター、奴に吶喊。 泥棒腹を切り刻む。
沼の中に逃げるから溶岩バケツをぶち撒く。 バケツから流れ出たマグマが水に触れていくや、急激に冷えて丸石化。 水面は石の蓋で忽ち塞がれた。
そこをボス、巨体のままに突き抜けた。 沼の中に封印される、壊して脱出しようとでも思ったのだろう。 だがその気なら黒曜石で塞いでいる。 クラフターの意図は別にあった。
突き抜けた頃……奴の腹辺りで明点するTNT。
沼の水面を丸石にする事で歩き易くし、その勢いでTNTを大量設置、奴が浮上するタイミングで火打石で着火したのである。
結果、ボスの胴体周囲で連鎖爆発が発生。 1個の爆発から誘爆したTNTが次々爆発。 奴を爆炎で包み込んだ。 木っ端微塵だ。 肉塊が雨のように沼に降り注ぐ。
「うぐっ!? けほっ、けほっ!」
奴の腹だった塊から、牛胸がぬるりと滑り出てきた。 奴と一緒に爆散しなかった事に胸を撫で下ろしつつ、爆破という軽率な行動に反省しつつも……変貌した牛胸の姿に首を傾げた。
「また助けられましたね……忌み子も騎士様が倒されたご様子……浄化の姉妹の名を冠しながら、面目もありません」
スライムモドキが大量に体中についている。 まぁそれは想像の範疇として……何故か腹が膨れて、股の間からスライムモドキがとめどなく這い出ているのは何故だ。 腹の中にスポーンブロックでも飼っているのか、この村人は。
「みないで……ください……」
しおらしくも、手で己の目を覆う牛胸。
状態異常らしい。
ならばアレだとインベントリを開いた。
「……忌み子の体内で卵を大量に植え付けられてしまい、このような恥ずかしい姿を……むぐぐぐっ!!?」
飲め。 牛乳バケツ一気飲みだ。 この手に限る。
「げほっ、げほっ!? 突然なにを! 謎の白い液体を無理矢理飲ませるなんて! 何故このような……えっ、なんだか体が軽くなって……?」
朗報。 牛胸のボテ腹、瞬時に治る。
腹の中身がドロリと出し切られ、引っ込んだ。
実験は成功だ。 クラフターの中和のやり方は村人にも通じるようだ。 今後も牛胸がヤられたらこうしようそうしよう。 問題は牛だ。 コイツが自分で出して自産自消できれば良いのに。 今ので貴重なストックが減った。
「あ、あの……すみません。 ありがとうございます……色々と助けられてばかりなのに、私、お礼を言えていませんね……」
牛胸のしおらしさは治っていない。
なんなら頬の赤さが増すまである。
「それでもあまり見ないで欲しくて……体は治っても服は直りませんから……」
クラフターは天を仰いだ。
帰ったら鉄防具一式を作ってやろうか。 防御力があがれば簡単にはやられないんじゃないかなと思った。
「そうですか。 沼の忌み子を浄化しましたか。 服がボロボロになって帰ってきた時は心配しましたが」
「騎士様が倒し、その肉塊に対し浄化を行いました。 それとその、牛乳と思われる白い液体を騎士様に飲まされたところ、私に溜まった穢れも浄化されました……」
「はい? その、それはその、淫行ですか?」
「ち、違います! そのような意図は双方ありません! 勿論です!」
牛胸とチビ黒服の声を背景に、畑で作物を採取し、ブラマイで石と鉱物を採掘し、かまどで精錬している間に村中を駆け回り蜘蛛の巣を回収する。
「リーリア。 確かに彼は奇妙ですが誠実な騎士様です。 しかし私たちはシスター。 それをお忘れなきよう」
「ハーニャ……大丈夫です。 彼は私に魅力を感じていないと思います。 私の裸同然の姿を見て、多少目を逸らす素振りこそしましたが、下心は無いように思えます」
「そうでしょうか。 リーリアは自分の魅力を自覚してください…………その胸とか特に」
「? 最後の方は聞き取れませんでしたが、励ましてくださったのですね。 ありがとうございます」
漸くベッドができる数を収集できた。 3つの羊毛にし、3つの木材を並べてクラフトする。 それは分かり易く牛胸ら黒服の拠点に設置する。 1番見えるところだ。
「それで当の騎士様はナニしてるのです!」
「祭壇の上にベッドを置いていますね……」
「儀式ですか!? そこでナニしようと!?」
「周囲の松明が、一層際立たせます……」
寝てリスポーン地点を再設定しつつ、今度は精錬された鉄インゴットだ。
加工して牛胸に渡さねば。
ああ、あと醸造台を設置しよう。 ポーションを生産しなければ。 その為の材料も調達しないと。 サトウキビの生産もだ。 これから作る畑は立体型の農園にして土地を節約したい。
やりたい事が沢山だ。
物作りができる幸福。 己は果報者だ。
そう。 これこそ我がマインクラフト。
今日も己は生きている───。
後書き
【沼の忌み子】
血呑み沼地のボス。
胴体はヒル、頭部は人間の赤子。元々は人間の赤子として生を受けた。しかし生まれてきたのは普通の人間ではなかった。
この世界では忌み嫌われ、不幸と魔物を呼び寄せる、無垢な命が異形の化物に代わる忌み子の呪いを受けた赤ん坊だった。
その赤ん坊は奇妙な肌で手足がなく、血を好んで飲むという異常さであった。当然、普通の赤ん坊と思う筈もなく、赤子は忌み子として沼地に捨てられた。
赤子はヒルに襲われるも、逆に取り込み始め、巨大なヒルの形態となるまでに至ったのだそう。
リーリアが敗北しちゃうと、食われてしまい、中で生きたままヒルを産む器官の一部となってしまう。つまり苗床だね! 卵を受け付けられて、ナカで孵化出産だろうから不妊の加護は効かなくて可哀想かわいい