ミッドチルダUCAT   作:箱庭廻

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昨日は投稿予約を忘れていました


第一回 地上本部攻防戦 その3

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ。どうやら無事に終われそうだな」

 

 色んな意味で呆然としている本局幹部達、聖王教会関係者、記者、さらにいえば機動六課の面々を横目にレジアスが渋く呟いた。

 しかし、それを否定する言葉が隣の佐山から発せられる。

 

「馬鹿め。フラグを立てたな」

 

「ぬ?」

 

 佐山の言葉に首を捻った瞬間、モニターを見つめていた本局幹部達が声を上げた。

 

「な、あの砲撃群を!?」

 

 砲撃の吹き荒れた後、何も残らないと思われた空に無数の黒点が浮かんでいた。

 ガジェットだ。

 しかも、小さく映るナンバーズたちも無事である。

 おかしい。どう考えてもあの魔導戦車から撃ち出される砲撃はガジェットが展開するAMFの出力を凌駕していた。映像からの試算だが、リミッター付きのなのはの砲撃と比べても遜色無いほどの威力はあったのだ。

 そして、事実過去二回の砲撃でガジェットが撃沈していったのを見ている。

 なのに、何故?

 

「それだけやない!!」

 

 はやては思わず声を上げて、モニターを指差した。

 数が増えている。

 次々とガジェットが虚空から姿を現し、レーザーを放ち、ミサイルを放ち、破壊活動を続けながら飛来してくる。

 NANOHA-3の砲撃が応戦とばかりに繰り出されるも、その瞬間無数のガジェットが一塊になるように連結し、その砲撃を弱体化させた。

 

「AMFの多重展開やて!?」

 

 今までのガジェットにない戦法であり、機能だった。

 NANOHA-3の砲撃は引き続き撃ち出されているが、明らかに落としきれていない。

 応じるように陸士たちが応戦を始めるが、圧倒的な数と出力に吹き飛ばされていく。

 

「くっ! どう見ても陸士だけに手に終える事態やない! レジアス中将、私らは機動六課として自主的に出撃するわ!!」

 

 見過ごしておけるわけがない。

 戦う力があるというのに、見て見ぬふりなど出来なかった。

 踵を返し、他の呆然とする幹部達を押し退けて、はやてたちが会場を閉ざす扉を開こうとした瞬間。

 ――ガギン。

 扉は開かなかった。

 

「え?」

 

 扉がロックされている。

 キッと振り返ると、レジアスと佐山は仏頂面で座っていた。

 

「レジアス中将! そして、そこの佐山やったか。アンタら、何考えてんの! 扉を開けい!!」

 

 上司にする言葉使いではなかったが、そんなのに気にしている余裕は無かった。

 ただ外に出なければ、戦わなければ地上本部は、外で戦っているフォワード陣たちはやられてしまうのだ。

 そして、ここが落ちれば今後このミッドチルダの危機を護るのは誰なのだ。

 本局か? いや、海だけでは護りきれるわけが無い。足が遅すぎる、地に足をつけてない海では駆けつけられない。

 はやてはだからこそ期待していた。

 ミッドチルダUCAT、人格と性質はともかく陸の理想を実現する組織だと。

 だけど、それは裏切られた。

 

 と思った。

 

「まったく……君は私の話を聞いていたのかね?」

 

「なんやて?」

 

「私は告げたはずだぞ。“きみらが出撃する必要は無い”」

 

 佐山は立ち上がる。

 その手を美しく翻し、手を伸ばした。

 

「あえてここで告げよう。佐山の姓は悪役を任ずると」

 

 それは堂々と誇りに満ちた言葉だった。

 何一つしていない。

 ただ発言だけが許される客分でありながら、まるで誰よりも偉そうに、尊く、英雄のように告げた。

 それこそが悪役である証明。

 

「どこぞのエロジジイと同じ匂いがする駄目男よ。さっさと本気を出したらどうなのかね?」

 

「だ、駄目だよ、佐山君! せめて大城全部長よりは心持ちマシぐらいに言ってあげないと!!」

 

 その横でわたわたと手を振り上げる長髪の美しい麗人が悪意無き刃を振るった。

 

「……」

 

 しょぼーん。

 レジアスは凹んでいた。

 

「さらりと言葉の暴力をありがとう、新庄君」

 

「ほえ?」

 

「ま、まあいい」

 

 不屈の根性で立ち上がり、レジアスは見えないように腰をとんとんっと叩くと、懐から一つのレシーバーを取り出した。

 

「――私だ。総員に通達せよ、対異世界装備の許可を与える」

 

『本当ですか?』

 

「返事は違うだろう。正しくUCATとして動きたまえ」

 

 瞬間、レシーバーの向こうで息を飲む声が聞こえた。

 それは戸惑い、それは喜び、それは歓喜。

 

『――Tes.(テス)!』

 

 声が上がる。

 そして、レジアスは静かにレシーバーを置き、机の上のスイッチを操作した。

 

「私だ。管制室、調子はどうかね?」

 

『あー! 俺だ! 今なんか変なハッキングされてやがるが、現在必死こいて食い止めてるよ!』

 

「なるほど。ならば至急どんな手段を取ってでもそれを解決しろ。そして、ミッドチルダUCAT、対異世界装備許可を与えた――概念空間を展開しろ」

 

『っ! Tes.だ!』

 

 聞きなれない応答。

 そして、それらに戸惑う全員にレジアスは両手を広げて、告げた。

 

「時空管理局本局のものよ、聖王教会の重鎮たちよ、そしてこれらを見ているこの世界の住人全てに伝えましょう」

 

 告げる。

 重々しく誇りを篭めて。

 

「私たちの名前は時空管理局では無い。地上本部ですらない」

 

 カメラが向けられる。

 そして、それらを通してミッドチルダの全都市で画像が流される。

 放送されるのはレジアスの顔、声、その全て。

 

「私たちはミッドチルダUCAT。そして、その目的は“如何なる異世界からも私たちの世界を守り通すことであります”」

 

「っ! 時空管理局の理念を超えた発言だと!? クーデターでも企む気か!」

 

「愚かな。彼らは地上部隊だぞ? 世界を護るのが何が悪いのかね」

 

 幹部の言葉に、佐山が嘲るように、けれども淡々とした口調で告げた。

 

「私たちは貴方達を護ります。

 例えどの世界が私たちを嫌おうとも、貴方達が私たちを嫌っても護りましょう。

 私たちは見返りを求めない。

 私たちは理解を求めない。

 私たちは如何なる屍をも顧みない。

 私たちは如何なる犠牲をも厭わない。

 私たちはどんなに苦しくても諦めない。

 私たちはどんなに絶望的でも挫けない」

 

 告げる。

 告げる。

 レジアスは吼える。

 

「私たちの世界は無限の次元世界の一つです。

 かつて11の異世界と戦った組織がありました。

 かつてどんなに苦しいときでも諦めない組織がありました。

 かつて世界を滅ぼしてでも護ろうとした世界を守り通した組織がありました。

 だからこそ、私たちはもっと強く在らなければならないのです。

 11では利かない、100でも足りない、1000でも少ないかもしれない、もっともっと沢山の世界があります」

 

 腕を振るう。

 ただ答えるように。

 ただ告げるように。

 レジアスは誰にも理解を求めなくても、ただ叫ぶのだ。

 

「けれど誓いましょう。

 だから、契約をしましょう。

 私たちは決して敗れないと、くじけないと、守り通してみせると!

 正義ではありません。

 私たちは正義にはなりえません。

 ただの諦めの悪い人間たちの集まりです。

 けれども、私たちはこの胸に誓った覚悟を秘めて叫ぶのです」

 

 レジアスは手を上げた。

 佐山も手を上げた。

 新庄も手を上げた。

 本部にいる全てのUCATが手を上げた。

 そして、外に戦う誰もが笑って、きっと手を上げたに違いない。

 

「我、ここに契約す――Tes.(テスタメント)!!」

 

 誰が吼えた。

 

「Tes.!」

 

 誰かが手を伸ばした。

 

「Tes.!」

 

 誰かが悲鳴と共に叫んだ。

 

「Tes.!」

 

 誰かが走りながら言った。

 

「Tes.!」

 

 誰かが戦いながら告げた。

 

「Tes.!」

 

 誰かが吹き飛ばされながらも誓った。

 

 

 

「ミッドチルダUCAT! 対異世界組織の演習戦闘に入る! 各員、対異世界戦闘準備!!」

 

 

『Tes.!』

 

 

 ここに契約は成された。

 

 








 2.偉大なるもの。


 嗚呼、嗚呼。
 祈りましょう、祈りましょう。

 嗚呼、嗚呼。
 願いましょう、願いましょう。

 世界が救われることを祈りましょう。
 世界が護られることを祈りましょう。

 誰かが願いました。

 世界を救いたいと。

 それはどこまでも純粋な願いでした。

 平和への願いを叶える願望でした。

 けれども、平和は願うだけではやってきませんでした。

 どこの時代でも、どこの世界でも、平和を阻むものが居たのです。

 それは悪でした。

 けれども、正義でもありました。

 悪役は正義を持って、平和を願うものとぶつかりました。

 平和を願うものも正義をもって戦いました。

 正義とはたくさんあります。

 たくさんの願いがあります。

 けれど、いつだってどっちかが勝ちました。

 力が強いもの。

 運がいいもの。

 願いの強いもの。

 大勢の人が望むものが勝つとは限りませんでした。

 世界はいつだって不条理で動いています。

 だから、だから。

 誰かが願いました。

 誰もが望む平和を作るものを。

 誰もが願う正義を貫くものを。

 信じなさい。

 信じるのです。

 それは剣を手にするものです。

 それは悪を断つものです。

 それは魔を断つものです。

 それは闇を消し去るものです。

 人々の心にあるものこそがそれの力でした。

 誰もが抱いて、忘れて、けれども蘇る輝きでした。

 さあ信じましょう。

 それは今こそ蘇るのです。

 輝けるものを呼び出しましょう。


 さあ――叫びなさい。


 ■■の名を!!

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