ミッドチルダUCAT 作:箱庭廻
戦いはどこまでも続くかと思えた。
空はなく、地上はなく、概念空間が広がっている。
その中を一人の青年が駆け抜けていた。
彼が纏うのは好んで着る彼の故郷である武装隊の制服ではなく、日本UCATが製造した装甲服。
賢石による母体自弦振動の固定。
故に彼はこの概念空間のルールに飲み込まれることなく、存在が可能。
「っ、敵は何機だ!!」
『武神五機、機竜を二匹確認。地上には人狼の部隊がいるようです。どうやら接収、及び亡命した軍勢と判断』
通信機からの通信。
可愛い妹には負けるが、中々に素敵なボイス。
痺れるほどに心地いい内容、闘志が湧き立つ。
「っ、結構な戦力じゃねえか!」
青年が指を鳴らす。
賢石を起動させる、封じ込まれた概念の開封。
概念条文追加
・――名は力を与える
――記入。
「2nd-Gの概念を追加ぁ! さあ、かかってきやがれ!」
右手を閃かせる。
――【Less】と彫り込まれた拳銃が現れる。否、ハンドガン型のデバイス。
左手を添える。
――【B】と彫り込まれた右手のデバイスと瓜二つのデバイスの参上。
続けて読めばB・Less。
すなわちBLESS。
「祝福してやるぜ、ベイビー!!」
祝福の意のままに、光が宿る、力が増す、祝福とはなんだ? 神の奇跡? NON、NON。
それは魔法。
眠り姫に魔女たちが祝福を与えたかのように、それは魔法の力を約束する。
脅威が迫る。
強大なる機械の巨人達が飛翔し、迫ってくる。
概念条文【金属は生きている】による命の付与、軽度の重力軽減。
それは恐ろしい光景。
何たる悪夢、機械の甲冑を纏い、鋼鉄の武具を持ち、冷たい金属に加工された破壊を齎す質量兵器を搭載した鉄巨人共――名を武神。
さらに、さらに、空の上には機械と混じり合うメタルウイングの翼をはばたかせる機竜までいるのだ。
ぞくぞくする、いたって平和で物騒な武装局員、その彼が戦争に参加している。
嗚呼、怖い。
最初は怖気づく、けれども恐怖を乗り越えて、覚悟を決めればにっこり笑えるのさ。
「さあリリカル・マジカルと始めようか!」
大気中の魔力素を吸収、現地の人間の誰もが気付いていない、概念以外の人間の可能性。
リンカーコアが駆動、熱い、熱い、魔力に変換していく。
両手のデバイスが燃え盛る、烈火のごとく、太陽のように。
「魔法に名前を、必殺技の如く力強く!!」
『CrossFire―Shoot』
クロスファイアシュート/十字砲撃の意。
名前が力を持つ、ならば元々名前のついている魔法ならばどれだけ本当になる?
佐山の腐れ悪役がほざいていた、必殺技を信じ込めばそれが現実になると。
信じるのならば問題ない、それが常識だったから。
一々詠唱をしなければいけない、どこの小説だと馬鹿笑いされた、とりあえず殴っておいた。そんな記憶も懐かしい。
彼の能力ならば精々十のスフィアを出現させるのが限界、だがしかし、今の概念化ならばそれは異なる。
名前の意味が分かる、名前の意味を知る、彼は信じ込む。
――この程度では十字砲撃とは呼べないと。
故に、彼の周りに無数のスフィア、鬼火のように燃え盛る、無数の砲台。
一人で弾幕張れますか?
YES! デバイスはパワーアップ、魔法もパワーアップ。
「そして、俺も強くなった!」
迫る、鋼鉄の巨人。
怖くない、叩き潰す。
「祝福を与えてやれ。盛大に! B/LESS!!」
銃声の如く破裂音が鳴り響く。
スフィアから追撃の魔力弾が吐き散らされる。鳳仙花の勢い、派手な花火のように舞い踊る破壊の嵐。
武神、ギョッとしたようにスラスターを吹かせて、横に回避。弾頭軌道からの回避。しかし、甘い。
「さあ撃ち落せぇ!」
デバイスを振るう、プログラムを起動、自動追尾機能ってのが最近の魔法のデフォルト。
直角に、物理法則を無視して、弾丸が武神の肩に直撃、派手に風穴を開いていく。
一度当たれば速度が落ちる、次々と命中して、被弾しまくり。火花が散る、絶叫の如く部品が砕け散って、落下していく。
「いっちょあがりー、っ!?」
爆風の上がった中から、炎を突き破り一体の武神が突撃。
怒り狂った様子、当たれば人などミンチになりそうな剣を振りかざしてくる。やばい、速い。
「っ!」
ベクトルを操作、重力を下へと方向修正。
ガクンと迫る刃から反れるように、“上へと落下していく。”
『なっ! 何の概念だ!!?』
ははは、概念条文も概念武装なしに空中機動をする生身の人間にびびったのか、外部スピーカーから声が洩れた。
教えてやろう。
「概念じゃねーよ!!」
魔力弾を吐き散らしながら、彼は告げる。
「魔法っつうんだよ!」
飛行魔法をさらに起動、落下速度に、大気抵抗のカットでさらに速度を上げる。
武神とのダンスゲーム、空への落下しながらの戦い、繰り出される斬撃を回避し、踊るように弾丸を叩き込む。
落ちながら戦ってる。
いや、昇りながら戦っているというべきか。
音速を超えて、衝撃波を撒き散らしながら、撃つ、撃つ、撃つ、弾く。
プロテクション、補助武装の機銃の一斉射撃、それを展開した障壁で弾く、逸らす、凌ぐ。
やばい、敵軍は圧倒的な火力じゃないか、こっちは戦闘機、向こうは爆撃機と呼ぶに相応しい戦力バランス。
しばらく対峙、交戦、プロテクションがきついので回避に専念、調子に乗りやがって!
『死ねぇ!』
虚空を蹴り飛ばす、方向転換用スラスターが青白い吐息を景気良く吐き出し、重圧な人型機体が恐ろしい速度で旋転。
回る、刃が閃く、剣速は既に遷音速クラス、音響の壁を突き破る超弩級斬撃。
やべえ、回避出来るか!?
「っ、無理ぃ!!」
肉厚の刀身が一直線に閃き、俺を切り裂いた――と見えただろうな。
『なっ!?』
刃が通り過ぎる、そこにいた俺の姿、まるで水を零したカンパスのように滲んで消失。
幻影、フェイクシルエット。
「オプティックハイド、解除」
本物はここ、武神の後ろ。
シューティングシルエットとフェイクシルエットの同時並行。
気づけ、撃たれているのに損傷していないことを。
武神の頭部に乗る。こつんと足音、銃口を突きつける。
『っ!?』
「おせえ!」
ゼロ距離、砲撃ぶちかます!
「ファントム・ブレイザー!!」
昔見たアニメ、燃える展開、装甲をぶち抜くにはゼロ距離射撃。
燃え滾る紅蓮の吐息、頭部から股間まで二つの魔力砲撃が貫通し、飛び上がった俺の足元で爆砕、撃沈、さようなら。
「二丁目上がりぃ!」
ベクトル変更、空へと舞い上がる。
良い調子だ。
「このまま今日の撃墜王でも目指すかぁ!」
『馬鹿いってんじゃねえよ、女顔!!』
独り言に反応して、叫び声。
轟音、振り返る。
そこには俺の背後から襲いかかろうとしていた機竜――その頭部をアチョーと蹴り飛ばしている武神【荒人・改】
「っ、飛場ぁ! 遅いじゃねえか!」
『真打は遅れてくるもんだって母親から教わらなかったのか、魔法青年!!』
飛場竜徹。
護国課に所属する武神の乗り手、八大竜王の一人、血気盛んな糞男。
荒人・改が唸り声を上げる。
中身の乗り手を体現するかのようにその動きは荒々しく、無駄がなく、修羅のよう。
襲い掛かる武神共、その斬撃を紙一重で躱し、流れるような動きで次々と両断、現代に蘇った武士と誉れ高い戦士。
『サンダーソンの奴もはりきってやがるぜ、さあ気合入れろ!』
「はっ、だろうなぁ!」
空を見上げる。
其処には誰よりも速い男が空を支配している。
恐れることは無い、さあ戦おう。
「いくぜ、高々十二世界、数百の次元世界を護る時空管理局を舐めるなぁああ!!」
彼は叫ぶ。
彼は駆ける。
どこまでも走り抜ける。
そう、それが時空管理局地上部隊にして、ミッドチルダUCATの首都航空隊ティーダ・ランスターの使命なのだから。
ミッドチルダUCAT 概念戦争編
「――ということわけなんだよ!」
『ダウト』
誰も信じてくれませんでした。
あるぇー?
……始まるわけが無いですよねー!!
まず一番最初に行われたのは事情聴取だった。
ティーダ帰還の速報で集まった昔なじみの陸士の連中に今までの武勇譚を聞かせていたのだが、返ってきた返事が嘘だ! だった。
「お前がそんなにかっこいいわけないだろう、常識的に考えて」「っていうか、調子のんな」「テメエは脇役が十分だ、主人公面してんじゃねえよ」
即答三連発だった。しかも理不尽でした。
そして、何故か武器を持ち出されて、襲われました。
「な、なにをする、きさまらー!」
「その立場ぁ!」
「ころしてでもうばいとる」
いつも通りの乱闘だった。
ドッたんばったんぎこしゃはむはむばきゃぁいや~ん、などという悲鳴と罵声と嬌声と破壊音の撒き散らされる室内。
そして、そこで一人静かに事情を聞き終えた隊長は思った。
(ミッドチルダUCAT成立の始まりはLow-GのUCATとの接触が発端だ。現地組織には他Gとの異世界存在の認識以外にも、他次元世界の存在と魔法技術の存在を知っていたせいで調査管理局員が発見されたのが理由だったのだが……まさかティーダが原因か?)
六十年前のLow-Gへのティーダ転移。
それがなければおそらくかの世界は管理局の組織とこれほどの技術提携を結んではいなかっただろう。
そうなるとミッドチルダUCAT自体が彼の存在によって成立したことになるのだが……
(まあ本人も気付いていないし、どうでもいいか)
隊長は深く考えるのをやめた。
ミッドチルダUCATに所属するティーダが飛ばされたのが始まりだったのか、それともその前の元の地上本部に所属していた別の可能性が始まりだったのか、タイムパラドックスなどが色々と複雑になるのだが、考えると面倒なので放棄。
「い゛えあ゛あ゛あ゛あ゛ー!!!」
こうして、ティーダは本家UCAT的には重鎮存在になるはずだったのが、スルーされました。
ティーダ・ランスター奇跡的生還。
そのニュースは流し素麺の流れるような速度でミッドチルダUCAT内に行き渡った。
それを聞いた一人はこう語る。
「いや、奴が死んだとは思ってませんでしたよ。だって変態だし」
そして、他の面子はこう告げている。
「むしろ普通に帰ってきたことに驚いた」
「イベント的には魔王でも倒してくるのかと賭けていたんですが、大穴かよ!」
賭けチケットを投げ捨てながら、ペッと唾を吐き捨てる始末だった。
ちなみに大穴当てた奴は嬉し喜びに踊っていたが、数分後に他の陸士に襲われて、尻の毛まで毟られたことを記述しておく。
そして、その張本人であるティーダはというと。
「ティアナー!!!」
全力で妹の名前を叫びながら、地上本部の廊下を疾走していた。
事情説明を終えた後、我に返った(狂ったともいう)ティーダが妹であるティアナがどうしているのか調べたところ、他のラグナたん可愛いよはぁはぁと怪しい言葉を発している陸士が、現在ティアナが機動六課という部隊に所属していることを教えてくれたのだ。
ついでに他の連中が持っていたティアナのブロマイドを蹴り倒して奪い取った後に、現在のティアナの姿を見た彼が鼻血を吹き出して大量出血で詰め所の床を真っ赤に染め上げたことは語るまでも無い。
ガリゴリと増血剤の錠剤をかじり、はむはむっ! とほうれん草をポ○イよろしく食べながら、ティーダは機動六課本部隊舎へと向かう。
本部隊舎のある湾岸地区までかなりの距離があるが、彼にはそんなことは関係なかった。
直進距離で直進し、途中で松葉杖を突いていた老人を蹴り飛ばし、扉を開いてきゃーと悲鳴を上げる男子更衣室を潜り抜け、窓を開けると、そこは外だった。
窓枠に足をかけて、飛び上がる。
飛行許可? なにそれおいしいの?
都市上空を奇声を上げながら滑走する一人の青年の姿に、都市住民はああまたUCATかと諦めた。
一方、機動六課のほうで一人の男が稲妻を浴びたかのような衝撃に襲われていた。
「な、なに? ティーダが帰ってきたぁ!? しかも、悪化? マジでか」
『マジマジ、超マジ。今そっちに向かっているようだ』
「っ、やべえな。ありがとよ、今度なんか奢るわ」
『んじゃー、今度ラグナちゃんとの合コンをセット――』
ガチャンと地上本部直通黒電話を叩き切ると、その男――ヴァイスは珍しく焦ったような顔を浮かべていた。
「やばいな。早く避難させないと!」
彼は悲壮な決意を浮かべると、踵を返して全力疾走で走り出した。
数分後、彼はとある部屋の前に辿り着くと、ローリングソバットで扉を蹴破った。
「なのは隊長ー!! たいへんで――あ?」
飛び込み前転からくるりと見事な動きで起き上がり、ヴァイスは叫ぼうとして。
――目の前の光景にすっと目を背けた。
「……失礼しました」
ヴァイスは何も見なかったことにして、立ち去ろうとした。
「ま、まって! 何で逃げようとするの!」
がしっとその肩を掴んだのは慌てた様子のなのは。
彼女は何を慌てているのか、ヴァイスは知らないふりを続けることにした。
「いや俺何も見なかったですから。まさか高町隊長がロリスキーで自分の養女を押し倒そうとする特殊性癖者なんて俺知らないですから安心してください。昔フェイト隊長に欲情していたけど今は育ったから興味ないという噂は本当だったのかーなんて俺納得してないですから(棒読み)」
「違うのー! 違うNOー! ヴィヴィオが、着替えるのを嫌がるから着せ替えていただけなのー!」
号泣しながら首をぶんぶん横に振るうなのは。
「なのはママ乱暴だった……」
そして、火を注ぐ純粋無垢なるょぅじょ。
「ああ。ベットでも戦場でも全力全壊なんですね、わかります」
「いやー! これ以上変な噂を立てられるのはいやー!!」
そんな押し問答中に、マッハを越えた速度で飛び立っていた一人の男が地上に着地していた。
「華麗に着陸!」
ガリガリとアスファルトの地面を砕き、螺旋を描くように回転しながら襲来した男――ティーダは両手を頭上に上げた。
「俺、参上!!!」
Yポーズで地面にめり込んだ足をずぼっと引き抜くと、ぐるりとそこらへんにいる一般事務員らしき女性(メガネ、ストレートヘアの女性)が怯えた目で見ていたので尋ねた。
「あ、すみませんが。ここにティアナ・ランスターっています?」
「え? はい。ティアナならもう訓練が終わって戻ってきていると思うけど……」
ピクリ。
一瞬ティーダの肩が揺れると、ひっと女性が引きつった顔を浮かべた。
「あ、そうですか。兄のティーダと申します。いつも妹がお世話になっているようで」
ペコりと一礼すると、何故か拍子抜けたように女性が安堵の息を吐いた。
何故だろうとティーダは内心首を捻ると、とりあえずティアナを探しに行くことにした。
「あ、一応会いに来たことはそちらの部隊長に連絡が来ているはずですので。ちょっと入らせていただきますね」
正確には「俺帰る、ティアナ嫁にする、すぐいこう、さあ逝こう」と叫んで、詰め所から飛び出したのだが、あの気配りのいい隊長のことだから事前に連絡は回しているだろうという予測発言だった。
事実その通りなのだが、確信犯な分性質が悪い。
「え? そ、そうなんですか? それならいいですけど……」
「では」
さっさかさーと立ち去るティーダ。
その背後で女性にかけよる男性が、「シャーリー無事か!」と声をかけて「う、うん。あれってどうみてもUCATの……」「あの制服はUCATのだ。油断しないほうがいい、彼らのことだから何かする可能性が高いぞ」とぼそぼそと警戒されているような気がしたが、ティーダは気にしなかった。
その身に備わるシスターセンスを活用して、素早くティアナの位置を探る。
そして、数秒と掛からずに進路を決めると、ティーダは一直線に歩き出した。
妹はそちらにいる、それは確信だった。
それに間違いなどあるはずがない。
この身に宿る肉親への愛が、情愛が、執念が、妄執が、妄想が、全てを告げるのだ。
想像を妄想に、妄想を願望に、願望を現実に置換する。
彼女と会ってからどうするか、そのシチュエーションを脳内で数千パターン構築し、最終的には肉親の絆を軽くコサックダンスで踏み越えて、結婚ENDまで余裕で妄想していた時だった。
「え?」
声がした。
思わず競歩速度だった足を止める。
「嘘……」
声紋照合、脳内記憶照合、脳内予測ティアナボイスに六年の年月を追加修正し、照合。
――全てオールグリーン。
ドスッ! 全力で振り返ろうとする己をレバーブローしつつ、ティーダはゆっくりと声の方角に振り返った。
「久しぶりだな、ティアナ」
激痛に顔を歪ませつつもニッコリと微笑んで、振り返った先には目を潤ませた愛しい妹の姿があった。
六年前の子供の頃とはすっかり変わり、美しくなったティアナがそこにいた。
「に、兄さん……?」
声が震えていた。
体も震えていた。
傍にいるおそらく同僚だろう、それ以上だったらぶち殺す少女二名とあとでヤキいれること決定な少年一名が困惑した目で見ている。
「ティア? あの人ってもしかして」
青い髪の少女が、ティアナに尋ねるが、彼女はフルフルと必死に首を横にふりたくった。
「嘘。兄さんなわけがない、だって兄さんは死んだ……はずなのに」
は?
一瞬呆気に取られる、いや高々行方不明になっていただけなのだが。
いや、違うな。ティアナのことだ、悲しさのあまりにそう信じてしまったに違いない。MAIだったし。
「馬鹿だな、ティアナ。俺はお前の兄だぞ? そう簡単にくたばらないさ」
ニッコリと笑み。
飛び掛ろうとする己を必死に自制しながら、ティーダはゆっくりとティアナに歩み寄ると、ぽんっとその頭を撫でた。
一瞬ビクリと彼女は肩を震わせたが、その手の感触に目を開いた。
温かい。
幻覚じゃなく、夢じゃなく、現実の感触だと実感できる大きな手。
「本当に……にいさんなのぉ?」
涙声だった。
見上げる目は潤んで、ぐしゃぐしゃだった。
今すぐにでも抱き付きたそうな彼女の体は懸命に作り上げた自制心で堪えていたけれど、それがティーダには痩せ我慢だと気付いていた。
「本物に決まっているだろ?」
安心させるようにティアナの髪を撫でる。
昔と変わらない髪形のままだった。
「だって……だっていきなりすぎるよ……」
「おいおい、俺が生きたって信じてなかったのか?」
少し意地悪するように笑いかけながら、ティーダはティアナの涙の雫を親指の腹で拭った。
「だって六年……兄さんが行方不明だって……どこに消えたのかも分からないって六年も……」
この瞬間に至ってティーダはティアナとの時間差を実感する。
自分は半年、彼女は六年。
十二倍もの時間の差、濃密な死を感じさせる戦争を潜り抜けてきたけれど、妹はそれ以上の悲しい時間を経験していたのだ。
理解、実感、残酷な運命の悪戯に怒りすら覚える。
もしも神――別世界の神族とか、そういうのは嫌ってほどぶちのめしてきたが、運命を操る存在がいれば今すぐにでも八つ裂きにしたいほどだった。
六年前ティーダを異世界の彼方にぶっ飛ばしてくれた違法魔導師は、既に他の陸士が逮捕し、生きるのもアッー!という目にあわせたらしく、新たな領域の扉をオープンドア状態で刑務所に入ったらしいので、ぶちのめす機会がないのが残念だった。
「悪い。待たせたみたいだな」
ごめんよ、とティーダは妹に謝る。
ううん、とティアナは一生懸命首を横に振るうと泣きじゃくる子供のような笑みを浮かべて。
「兄さんっ!」
すたっと足を早めて、飛び込んでくる。
キターッ!! と高鳴る動悸、笑みを浮かべて、ティーダは両手を広げた瞬間。
「あぶなーいっ!!」
――バァンッと横から走ってきたバイクに撥ねられた。
「え?」
錐揉みしながら空中旋回、キラキラと光る唾液と吐血を撒き散らしながら哀れなティーダの体は重力に引かれてぐしゃりと地面に叩きつけられる。
そして、彼を撥ねた張本人であるバイクの乗り手はふぅーと息を吐きながら、華麗に額の汗を拭った。
「危ないところだった……」
「に、兄さん!? ヴァイス陸曹何するんですかぁ!!」
うわーんと両手を振り上げて、ヴァイスの胸板をぽかぽかと叩くティアナ。
しかし、彼は至って真面目な顔でティアナの肩を握り締め、告げた。
「大丈夫か、ティアナ!(性的な意味で)」
「え?」
ちょびっと気になっている男性に肩を掴まれて、普段は済ませた顔でツンツンしているけど内心初心なティアナは頬を赤らめたのだが、言われた言葉に意味が分からず唖然とした。
「無事か? 襲われていないな!?(性的な意味で)」
「え? あ、あの? どういうことですか?」
「今のティーダはひじょ~に危ない。言うなればスバルの前にスパゲティー、シグナム姐さんの前に強敵、なのはさんの前に新型レイジングハートだ!」
「どういう意味だ、ごるあ゛あ゛あ゛!!」
驚異的な生命力でティーダ復活。
ボタボタと血を流し、バイクのタイヤ跡を顔に残しながらも立ち上がる。
そんな彼の復活にヴァイスは舌打ちをすると、ティアナを後ろに庇い、構えた。
「ちっ! 再生が早いな、せめてリッターバイクにメタルホイールで轢くべきだったか!?」
「さすがにそれは死ぬ……と思うぞ!」
「嘘付け!」
対峙する二人の男。
護るは多分ヒロインのティアナ、呆気に取られて付いていけない子供三名を観客にミッドチルダUCATの誇れない変態二名が睨み合う。
「ヴァイス。久しぶりの再会でいきなり人を撥ねるとはいい度胸だな、年下の癖に」
「ティーダ。お前が行方不明になっている間に、俺はすっかりお前の年を越えたよ」
「やーい、オッサン」
「言うな!」
ちょっとだけ気にしていることを言われて、ヴァイスはこめかみに血管を浮かばせた。
一種即発、今にも互いのデバイスを抜き放ちかける――というか待機状態のデバイスが、二人の手に魔法のように抜き放たれていた。
「ヴァ、ヴァイスさん!?」
「お、落ち着いて、ティアのお兄さん~!」
「喧嘩は駄目ですー!」
「二人共落ち着いてよ!!」
羽交い絞め開始。
ティーダにはスバルとエリオのベルカ組が抱きつき、ヴァイスはキャロとティアナのミッド組二人が押さえ込む。
その光景にティーダが戦闘機人を越える腕力を発揮したのだが、スバルが全力全開の魔力強化で押さえ込んだ。
「ヴァイスぅうう!!! てめえ、誰の許可を得てうちの妹に粉かけてるんだぁ!?」
「ああ!? そんなわけあるか! 俺は365日ラグナ一筋だ!」
シスコン二人の醜い罵倒開始だった。
ちなみにティアナが密かにショックを受けているが、二人共気付いていない。
両手をふさがれつつも、蹴りが激突しあう。クロスを描くような華麗な蹴りの交差だった。
そんな争いが数分ほど続いただろうか、押さえ込むほうも暴れるほうも息絶え絶えになった頃
「もうやめてよ!」
と、泣きが入ったヒロインの叫びがあり、二人共戦闘中止だった。
「そうだな。争いはやめよう」
「そうだな。何気に俺接近戦弱いし」
ティーダとヴァイスの二人共が大人しくなり、ようやくここでフォワード陣が手を離した。
そして、流れるような展開の速さに付いていないフォワード陣が訓練の帰りだったことを思い出し、ヴァイスはとりあえずシャワーを浴びて来いと指示。
涙を流していたことによりティアナの顔は赤かったし、事情説明するにも外でするには長すぎると判断だった。
しかし、休憩時間はあまり残ってないとエリオが告げると、事情が事情だからなのは隊長には既に話は通しておいたとヴァイスが説明。
常識的な三人は納得いかない顔をしつつもシャワーを浴びに行き、ティアナは名残惜しそうに何度も振り返ったが、慌ててシャワー室へと向かっていった。
残る二人は彼女達の姿はいなくなると同時に一秒も躊躇わずに拳を繰り出し、クロスカウンターがめきょりとめり込む。
「ぐっ!」
「い、いいパンチだ……げふ」
ばたりと倒れる二人。
空に見える太陽が夕日のように眩く見えた。
慌てつつも、しっかりと身支度を整えたフォワード陣が、待ち合わせ場所の食堂にやってきた。
「……ふ、二人共どうしたんですか? その痣」
「気にしないでくれ」
「久しぶりの友情を深めていただけさ」
痛ててと医務室から貰った氷で顔の痣を冷やす二人がそこにいた。
「あれ? シグナム副隊長も……なぜ?」
そして、そんなヴァイスの横には皺一つ無い制服を身に纏い、凛々しい佇まいで座るシグナムが座っていた。
「なに。ティーダが戻ったと聞いてな。一応私もティーダとは同じ部隊に所属していた身だ」
「そうだったんですか!?」
今更のように事実を知るティアナ。
「ああ」
ズズーとお茶を啜るシグナム。
ヴァイスはコーヒー、ティーダは紅茶と嗜好がバラバラに分かれていた。
「んじゃー、事情説明するんだが。嘘くさいかもしれないが、信じてくれ」
ティーダが今までどうしていたのかを説明。
この世界では六年前に違法魔導師を追いかけている最中にティーダは転送魔法を応用したトラップにかかり、別世界に飛ばされたこと。
そして、自身の体感時間ではそれは精々半年程度前だということを説明すると、ティアナは驚いた。
飛ばされた世界Low-G(フォワード陣は名前こそ知っているものの実情は知らない世界)でミッドチルダに戻るために努力しつつも、自分を拾ってくれた組織の力となって概念戦争に参加した。
詳しい説明は機密になるので話せないがそこで我々こそオリジナルだー! とほざいている悪い連中を、知るかボケなす! とぶちのめしたのだが、その世界を滅ぼした時に避難が遅れて自分はさらに異世界に飛ばされたのだが、それが付近の管理世界だったということ。
そこで現地の武装組織をついでにぶちのめし、金を巻き上げて旅費を稼ぎ、次元航行艦を乗り継いでミッドチルダに帰還した。
「ほへー、凄いんですね」
「凄いです」
と、そこまで説明した時点でスバルとキャロは感嘆の息を吐いた。
エリオはどこか憧れの混じった目で「UCATの隊員ってやっぱり凄いんですね」と間違った方向へとフラグを進めていた。
「いや、しかし。まさか六年も経っているとは知らなくてな。家にすっ飛んで帰ったんだが、ティアナがいなくて心配したぞ」
「ごめんね、兄さん」
素直に謝るティアナ。ツンデレのツンを通り越して、デレ状態だった。
どうやら長年のトラウマだった兄の死が、帰還してきた兄を見て粉々に砕けたらしい。
しかし、彼女はさすがに予想していない。
すっ飛んでという言葉が事実であり、さらには家の扉をぶち破ったままこちらに来ていたということを。
「まあさっきUCATにも顔を出して復隊手続きもしてきたし、俺もまた管理局の一員だな」
長かったなぁとため息を吐きながら、紅茶を啜るティーダの一言。
その言葉に、ティアナは少しだけ沈んだ顔を浮かべた。
「兄さん、UCATに復帰するの?」
「ん? ああ」
てっきり喜んでくれると思っていたティアナが、沈んだ顔を浮かべるのにティーダは首を捻った。
「あの人たち……兄さんのこと馬鹿にしてたんだよ? 葬儀の時だって散々馬鹿にしていて……」
その顔には怒りが満ちていた。
憎悪という火がその瞳の奥で燃え盛っていた。轟々と暗く、冥く、へばりつくような痛みを堪えた憎悪。
彼女は怨んでいた。
彼女は憎んでいた。
かつて兄の死――行方不明となり、M.I.A.判定を受けて、上げられた死体のない葬儀。
思い出す。
――馬鹿だな。
――必要ないだろ、葬儀なんて。アイツには。
――死んでくれたほうが助かるしな。
その時に浴びせられた言葉が彼女の耳にいつまでも残っていた。
それこそが彼女を打ち震わせ、彼女の怒りの原動力だったのだが。
『は?』
その時、ヴァイスとシグナムが同時に首を捻った。
「してたっけ?」
「いいや、記憶に無いが」
葬儀に参加した二名。
首を傾げていた。
「お前ら、ちょっと純真無垢なティアナが傷ついているから詳しく説明しろ」
「えっと確か……」
記憶は六年前に遡る。
それはティーダ・ランスターが行方不明になり、死亡判定を受けた時だった。
一応儀礼的に神父を呼び、死体の無い棺が土に埋められていく。
そして、葬儀にはヴァイスもシグナムも参加していたのだが。
「葬儀なんて必要ないよなぁ(死んでないだろうし)」
「というか、馬鹿だしなぁ(変態的な意味で)」
という会話が陸士の間であったような気がするし。
「むしろ死んでいるといると助かるなぁ(野望的な意味で)。そうすれば俺が晴れて、あの子の保護者に!」
「馬鹿野郎! それは俺に決まっているだろう、常識的に考えなくても」
「うるさい、黙れ! あの少女は私がめくるめく百合の世界に連れ去るに決まっているでしょうが!」
「馬鹿野郎! 光源氏計画は男の浪漫だー!!」
という会話の後に、仲裁に入った神父も巻き込んで乱闘があったような記憶しかない。
確か途中で腐った大人共の世界に穢れないようにティアナに目隠しして、保護した記憶があったようなないような。
「……という葬儀だったような。ん? どうした、ティアナ」
ORZ というポーズでティアナが床に沈みこんでいた。
ニュアンス的なものも説明を交えていたのだが、何故か見る見るうちに雰囲気が落ち込んでいったのは何故だろう?
こうして、ティアナとティーダの再会は無事(?)に終わったのだった。
その後「ティアナを苛めたのは貴様かー!!」「きょ、教導だったのー!!」 と叫ぶ一応AAのはずのティーダとエクシードモードのなのはの間で、三日間にも渡る個人戦争が幕を開くのは別の話である。
帰ってきた馬鹿殲滅戦 完了
第一回 地上本部攻防戦に移行する
今日もUCAT
1.ラッド・カルタスとギンガさんの甘い日々(片方の主張より)
カタカタ。
彼は何時ものように詰め所で事務処理を行っていた。
電子ディスプレイの上を、鍵盤でも弾き鳴らすかのように無駄なく指を動かし、次々と処理を行っていく。
「ふむ。調子が乗らんな」
彼は不意にデスクの引き出しを開き、その中にあったテープレコーダーを取り出した。
そして、それと接続していたイヤホンを耳に嵌めると、再生ボタンを押し込む。
そして、耳元に流れるある女性の声を聞きながら、気分が乗ってきたので指をパチパチと走らせていると。
「カルタス主任。お疲れ様です」
「ん? ギンガかい」
存在を気付いてはいたものの、気付かないふりを続けたラッドは静かに振り返る。
すると、そこにはコーヒーカップを持ったギンガがいた。
「どうぞ。少し濃い目ですが」
「いや、その方が嬉しいね。なによりも君が入れてくれたことが嬉しい。そろそろ私と籍を入れないかね?」
「お世辞が相変わらず上手いですね」
引きつった笑みで答えるギンガ。
彼女は知らないふりをしている、彼の言葉は全て本気だということを。
そして、ラッドはギンガに貰ったコーヒーを味わうように飲んでいたが、不意に席に戻ったギンガのデスクのあることに気が付いた。
「ギンガ」
「? なんですか」
「君はコーヒーを飲まないのかね?」
「え? あ、そういえばうっかり忘れてました」
ドジですね、と苦笑するギンガの微笑を視姦しながら、ラッドは立ち上がる。
「それなら私が入れてこよう」
「え? いいですよ、私が」
ガタリと立ち上がろうとするギンガの肩をぽんっと叩いて、「たまには部下を労わせてくれ」とラッドは告げた。
申し訳ないという顔を浮かべるギンガの横を通り過ぎて、廊下に備え付けてあるインスタントカップの自販機にデバイスでのIC支払いで購入を済ませる。
「ミルクはいるかい?」
「あ、お願いします」
部屋内のギンガに訪ねて、注文通りにコーヒーを設定。
出てきたカップにぽいっとポケットから取り出した粉末を入れて、コーヒーとミルクが注がれるのを待ち、音が鳴った後に取り出した。
「ギンガ、注文どおりだがこれでいいかね?」
「あ、ありがとうございます」
何一つ変わらない笑みに、ギンガはまったく警戒する事無くコーヒーカップを手に取った。
そのまま何事もなかったかのように、ラッドは席に着くと仕事を再開する。
仕事をしたふりをしながら、ラッドはギンガがコーヒーに口を付けるのを観察していた。
ゴクリ。
彼女の細い喉が確かに音を奏でた。
時間を計測。
一分、二分、三分……五分。
コーヒーを飲み終えたギンガが、ばたっとデスクの上に前のめりに倒れた。
「ぐー」
コーヒーに盛った睡眠薬が効いたようである。
「典型的な寝息だな」
ラッドは時計を確認。
入手先曰く30分は寝ているはずなので、時間には余裕がある。
先ほどから聞いているテープレコーダーのスイッチを止めて、新しいカセットを中に挿入。
さらにデスクの中からこの時のために用意した【ギンガの寝顔アルバム その37】と書かれたディスクと小型ビデオカメラを取り出し、かつかつとギンガのデスクに歩み寄ると、その寝息と寝顔を録音+録画するためにセットした。
ビデオカメラのピントを調整し、そのあどけない顔がしっかりと映っていることを確認し、調整完了。
そして、ラッドはそのまま場所を離れると、詰め所に備え付けのロッカーから仮眠時に使われる毛布を取り出し、ギンガの肩に優しくかけた。
「幾ら戦闘機人とはいえ、君は無茶をしすぎなのだよ」
ラッドの声音は優しい。
ラッドの確認する限り、今日で二日は貫徹している彼女を休ませるにはこれぐらいしか手段はなかった。
そして、警邏任務から戻ってきた他の部下達が詰め所に戻ってきた時に、音を立てないように彼は唇に指を当ててしーと告げた。
彼女は愛されていた。彼女自身が自覚するよりもずっと深く。
二十分後、カフェイン効果と戦闘機人故の薬物耐性があることを気付かずに、寝顔をはぁはぁと視姦していた同僚達が涙目の彼女にぶちのめされた。
2.とある潜入工作員の日記
これはある潜入工作員の脳内データベースに記録された日記である。
――ミッドチルダUCAT 潜入1日目
ドクターからの任務により、本日からミッドチルダUCATにもぐりこむことになった。
時空管理局地上部隊の本拠地であり、管理局本部からの警戒も厳しい地上部隊の組織への侵入。
変装自体はISライアーマスクにより心配はないが、かの組織は高ランク魔導師を潤沢に保有する本局をも脅かすほどの力を蓄えているらしい。
警戒は必須だ。油断してはならない。
いつかの聖遺物を入手するための聖王教会にもぐりこんだ時よりも過酷な任務になりそうだ。
しかし、挫けることは許されない。
まだ開発途中の姉妹たちと無事に再会するために、この任務をやり遂げてみせる!
――ミッドチルダUCAT 潜入2日目
……ありえない。
なに、この組織? 本当に時空管理局の部隊なのか?
どこの連中も仕事中にも掛からずフィギュアとか、漫画とか弄ってるし、もぐりこんだ秘書課により接触した最重要人物と思しきレジアス・ゲイズは……小説なんか書いてましたよ?
副官にして、娘であるオーリス・ゲイズに叱られていたし、私は本当に上手くやっていけるのだろうか?
追記:陸士部隊の戦力を調べるために、主戦力と思しき首都航空隊と情報収集の会話をしたのだが、中々にイケている男がいた。
もう少し渋くて、過去を背負った男になるといいのだが――シスコンだったため、微妙。
――ミッドチルダUCAT 潜入3日目
ドクターに「実家に帰ってもいいですか?」 という懇願メールを送ったのですが、拒否られた。
大変欝だ。
クアットロ、ごめんね。
私途中で自殺するかもしれない。
こ こ は 変 態 し か い な い の か。
――ミッドチルダUCAT 潜入18日目
何か色々諦めてきた。
今日も定時報告。
「異常しかなくて異常無しです」
そんな報告したら、ドクターに怒られた。
だって、その通りなんだもん。
たまに本局にもぐりこんで、脳味噌ガラス共の世話をしているほうが癒しになっているというのはどういうことだろう?
不愉快な会話をしている干物共だが、常識人なために心が激しく癒される。
追記:副官のオーリス・ゲイズと屋台でばったり遭遇する、UCATの愚痴を言いながら一晩酒を飲み明かした。
彼女は常識人だ。きっといい友達になれる、明日も頑張ろう。
――ミッドチルダUCAT 潜入78日目
テロ事件勃発。
次元世界の一つを範疇に納めるマフィアが、地上本部に飛行機テロを仕掛けてきた。
危うく私も死ぬところだったが――アリエナーイ。
特攻してきた旅客機が「てめえ、アニメの放送中に仕掛けてくんじゃねー!」と叫んで、ブちぎれた陸士たちが数百人がかりでバインドした挙句に、空中で停止させ、中にワラワラとドリルを持った装甲服の連中が飛び込んでいった。
中を占領していたテロリストはアッー! という悲鳴と共に窓から放り投げられて、高度数百メートルの位置から地面すれすれでキャッチされていた。
その三日後、本局に逮捕状を申請した後、陸士三個師団が出撃し、現地の地上部隊と協力してマフィアを壊滅させたらしい。
……なんであいつらの魔導師ランクがB以下なのか、理解しかねる。
――ミッドチルダUCAT 潜入128日目
かゆ……うま……
――ミッドチルダUCAT 潜入???日目
今日もUCATな日々が始まる、頑張ろう。
そして、思う。
ドクター、多分ここに入ったら……五分で適応しそうだ。