英雄のいない世界で   作:タク-F

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好転した筈の事態が悪化の一途を辿る。それでも亜樹は足掻き続ける。


ラービット攻防戦

「この道は危険だ! 迂回して逃げろ!」

 

 ヴィザとヒュースを回避したものの千佳を狙ってラービットが大盤振る舞いで投入されて来る。その数……

 

「8体いますね。今のエスクードで動きを封じた奴を引いても7体……多すぎる!」

 

「腐るなよ? お前達は必ず逃がす!」

 

 烏丸先輩がラービットを止める為に殿を決意した時だった。

 

「旋空弧月!」

 

「誰!?」

 

「誘導弾!?」

 

 私達を追うラービットの側面から斬撃と弾丸が飛来して足を止める。そうか……来てくれたんだ! 

 

「遅いよ!」

 

 そして奇襲を凌いだ個体にグラスホッパーのピンボールが襲いかかった。

 

「緑川君! 来てくれたの!?」

 

「通信で聞いたよ三雲先輩。この間の恩があるからね……今返すよ!」

 

 駆けつけてくれた緑川君・出水先輩・米谷先輩がラービットの足を止めさせた。新たな戦力が私達にとっては心強い! 

 

「迅さんの指示で三雲とC級を本部へ逃がします。協力お願いします」

 

「任せろ京介。行くぞ弾バカ迅バカ!」

 

「「バカじゃない!」」

 

 言葉とは裏腹に連携の取れた動きがラービットの警戒度を引き上げてる。

 

「撤退戦だからなー」

 

「撤退戦……」

 

 そう。私達を逃がす為にこの人達は駆けつけてくれた。私達が逃げないと意味が無い。

 

「亜樹ちゃん!」

 

「ッ!」

 

 磁力型の結晶片……ヤバい! 

 

「動けないっ……!」

 

「メガネ先輩!」

 

「逃げて千佳!」

 

 千佳を磁力型の射程に入れる訳にはいかない。でもどうすれば……千佳を戦わせる? 駄目だ警戒されてたら当たらない。先輩達の救援を待つ? 駄目だそもそも数で負けてる。戦闘員とラービットを同数以下にしないとその土俵にもならない。そうなると消去法は……

 

「ソレしか……無いのかなぁ……」

 

 私1人の覚悟じゃあ……足りない。でもその為に千佳を戦わせる? 

 

『トリガー臨時接続』

 

「亜樹ちゃん……私も戦いたい! でも私じゃあ近界民を倒せない。だからお願い!」

 

「千佳……わかった! 命を預ける覚悟をしてよね!」

 

千佳が私のトリガーに接続した。それならまだ手はある。あの方法が使える。

 

「手を離さずついて来てよね!」

 

「もちろん!」

 

 最初に倒したいのは鬱陶しい磁力型。交戦している個体は……アイツだ! 

 

「宇佐美先輩! 出水先輩と交戦中の個体を倒します! オペレートお願いします!」

 

『了解! 国近ちゃんと合わせるから30秒凌いで!』

 

「了解しました!」

 

 連携まで30秒……それなら

 

「走るよ!」

 

「うん!」

 

 私達は全速で敵の側面を取る。後はタイミング……

 

『撃って亜樹ちゃん!』

 

「行きます! 通常弾!」

 

 千佳のトリオンで出力されたキューブの大きさは想定以上。これなら……

 

「うおっ! なんつー火力!」

 

 出水先輩が下がったタイミングに合わせた飽和攻撃がラービットを全壊にする。いける……これならいける! 

 

「なるほどね。それなら……徹甲弾(ギムレット)

 

 暴力的な数と大きさの弾丸がラービットを射抜けることを理解した出水先輩は立ち回りを変えていた。

 

「そのまま正面の個体を撃ち抜きます!」

 

『オッケー。お願い出水君!』

 

「はいよ! 足は止めたぜ! 撃ち抜きな!」

 

「はい! そのまま……壊れろ!」

 

 次いで2体目のラービットを破壊。試すなら今! 

 

「刃モード!」

 

 距離の近いラービットに私はレイガストを構える。そしてその鋭さは私の想像を超えていた。

 

「なんて鋭さ……コレが千佳のトリオン量……」

 

「話に聞いていた以上だな。そこのメガネちゃん!」

 

 私が驚愕している間に出水先輩が私へ語りかける。

 

「A級1位の出水先輩ですね! 援護ありがとうございます!」

 

「気にするな非常事態だからな。それよりも提案なんだがこの新型を掃討したい。撤退戦のつもりだったがその戦力があれば掃討できる」

 

 凌げれば確かにありがたい……「亜樹ちゃん! まだナニカが来る!」

 

「千佳!? どういう意味!?」

 

「どうしたんだメガネちゃん?」

 

「彼女……千佳の危機察知系副作用で悪意を持った何者かが来ると言ってます!」

 

「マジかよ……?」

 

 敵総指揮官(ハイレイン)の登場が早い……やっぱり分断の時点で仕掛けられてたんだ。

 

「それならやっぱり逃がすしかねーか。しゃーない逃げな!」

 

「すみません!」

 

 私達が再度退却を試みたその時戦場に鳥のようなナニカが飛来する。

 

「なっ……わ……」

 

 回避できず鳥に触れられた訓練生がキューブ化される。

 

「キューブ化!? 新型みてぇな能力か!? とにかくメガネちゃん達は逃げろ!」

 

「判断が早い……か。だが問題は無い」

 

 私達が駆け出そうとした時に絶望を告げる声がした。

 

「黒ツノ……近界民!」

 

 事態は更に深刻だ。未だ撃破できていないラービットがあと5体。ここに黒トリガー使いの人型近界民。あまりにも条件が悪すぎる。

 

「確かに鳥は鬱陶しいが」「俺達の実力なら……」

 

「「落とせない速さじゃあ……ない!」」

 

 米谷先輩と緑川君が鳥に反撃を加えたがそれぞれの武器がキューブへと変わる。

 

「マジかよ……」

 

 そしてその隙を待っていたラービットが緑川君を抑え付ける。しかも追撃の鳥が迫って……

 

「ヤバい……緊急脱出!」

 

 戦闘続行不可能と判断した緑川君は撤退出来た……でも! 

 

「戦況がまた悪くなる!」

 

「コレは……ちょっとヤバ過ぎじゃね?」

 

 そして敵の進軍は止まらない。ハイレインは更に鳥を増やして私達の動きを観察している。

 

「大盤振る舞いかよ」

 

 そして出水先輩を無視して千佳へ狙いを定めていた。

 

「金の雛鳥をおとなしく渡せ。さもなくば……!」

 

 鳥の弾丸が私達に振り注ぐ。ステップで回避を……千佳! 

 

「どうしたメガネちゃん!」

 

 奇襲してきた鳥が千佳の足と接触しており足の形が不安定なモノへと至っていた。

 

「ごめんなさい亜樹ちゃん……足が……」

 

 不定形な状態の足だと機動力が取れない! このままじゃ逃げ切れない! 

 

「んなろぉ! コレ以上はさせねぇよ! 急げ」

 

 私は千佳を背負って逃げる。でもこのままじゃあ……

 

「機動力が……クソ!」

 

 速度が落ちるまま千佳を連れて逃げるのは現実的じゃない。せめてナニカ……機動力が戻れば……

 

「攻撃だ……」

 

「亜樹ちゃん?」

 

 私は息を整えて千佳に問いかける。

 

「皆で命を賭ける覚悟が出来る?」

 

「私は……私はできてる! 何でもやるから!」

 

「わかった。それなら!」

 

 私は千佳を背負い移動を再開。目的地はハイレイン側面の住宅の影。ここなら……

 

「お願いね。私が弾丸を撃ったらソレを渡して。それと宇佐美先輩……この賭けの記録をお願いします」

 

『わかってる。成功することだけ考えて!』

 

 私達はそのままハイレインの側面から背後を撃てる位置に立つ。今! 

 

「通常弾!」

 

 絶大な威力の弾丸も魚に阻まれキューブへと変わる。

 

「流石は金の雛鳥……そのトリオン量は素晴らしい。ならば!」

 

 鳥は私達をキューブに変えるべく飛来する。

 

「当たれ!」

 

 迎撃の為に射出する弾丸や低速弾は軌道を読まれたか鳥たちに外れ眼前へと迫った時

 

「来るな!」

 

 私はシールドを細分化して受け止める。そして数が減ったなら……来た! 

 

「む……なに!?」

 

 弾丸の後を追うように投げられた瓦礫がハイレインの顔面に一撃を入れる。その様子を見て出水先輩は逡巡した。

 

「へぇ〜……。撃ち抜かれて落ちた瓦礫は……鳥じゃあ……防げないか。ソレに分割シールド……なるほどな!」

 

「中々凌ぐ運び手か。だが甘い!」

 

「亜樹ちゃん……あとは……」

 

 シールドの隙間を抜けた鳥が千佳へと接触。その姿をキューブへと変えた。

 

「このままお願いします!」

 

 私は千佳を抱えて全力で離脱した。後はマーカーを受けた右腕(副トリガー)側を頃合いをみて切離する。ソレしか……ない! だから私は千佳を確実に逃がす為に! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてよミスターブラックトリガー……あの子に随分としてやられたな」

 

「まったくだ。手(・)負(・)い(・)の(・)雛(・)鳥(・)を(・)キ(・)ュ(・)ー(・)ブ(・)化(・)さ(・)せ(・)る(・)為(・)に(・)攻(・)撃(・)し(・)て(・)く(・)る(・)とは思わなかった。だが何よりも……!」

 

「弱点が見えたのは度し難いってか?」

 

 戦況を変える為に見えた糸口は事態の変化に至る。

 

「わりーがお前の相手は俺達だ」

 

 その戦闘の結末を信じて私は基地までの最短距離を駆ける。この戦いを全員で生き残る為に。

 

未来の分岐点まで残り713秒

 

 

 




亜樹が原作の修君より強くなった分ハイレインの遊び心が無くなってるのが辛いですね。それでも善戦できているのが……

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