イルガー攻防戦です!
イルガーの襲撃により大小問わない建物の損壊と、それに伴う人的被害も明白だった。
「BORDER隊員です! 逃げ遅れた方々を救助しに来ました! 現在大型近界民と木虎隊員が交戦しています! 彼女の戦闘に支障をきたさない為にご協力をお願いします!」
「BORDER!? しかも嵐山隊の木虎さんが交戦してるのか!」
「こっちの瓦礫の下に逃げ遅れた人達がいます! 助けてください!」
「あの大きさなら……多分いける!」
私は閉じ込められた人達の前や上に存在する瓦礫を取り除くことにした。
「この瓦礫は私が動かします! 皆様離れてください!」
「少し重いけど……りゃあ!」
トリオン体に身体能力の底上げ機能があって良かった。生身なら多分動かせなかっただろう。
「大型飛行近界民は推定軌道で橋・河の上空を飛行していましたがいつ軌道を変えるかは不明です。しかしその付近への接近は許容できません。この現在中継映像を確認出来る方は情報提供をお願いします!」
「俺! LIVEニュース映像受信できます!」
「見せて貰えますか?」
「は……はい!」
同年代? と思われる男子の端末から中継ニュースの映像を確認した。
「お借りしても?」
「はい!」
端末を確認し巻き戻しを含めて確認した映像から大凡の飛行軌道は想像できた。やはり橋を中心に円周上を軌道としている可能性か……
「映像からは大橋から3キロ内が暫定空襲範囲と推定されます。SNSを活用し圏内の人達には一時避難の要請があるかもしれません。BORDER本部からの公式速報は拡散と周知をお願いします」
端末を男子に返却し近い人達には周知が進んだ。
「こっちにBORDERの人が来てると聞いたのですが!」
「私です! 救助ですか? 誘導ですか?」
「救助です! 大型瓦礫に生き埋めにされた人達が助けを求めています!」
「ッ! 直ちに案内と人払いをお願いします!」
私は案内に向かう途中で何人か救助したが、運悪く瓦礫が崩れる事もあった。幸いトリオン体が物理攻撃にある程度の耐性を有していた事で深刻な被害は免れた。
「その……瓦礫が当たった部分は大丈夫なんですか?」
「トリオン体の機能である程度の物理攻撃には耐性を得ています。限度はありますが現在の活動に支障はありません」
ただしトリオン体が解けたら非力な小娘だ。間違ってもトリオン兵と交戦は出来ない……
「……かなりの被害規模ですね。隙間は……」
駄目だ。予想よりも積み重なった瓦礫の量が多い。しかも崩れた瓦礫でまだ生存出来ている人達や範囲内の人達に2次災害が起こるのは許容出来ない。
『手を貸そうアキ』
「レプリカさん? 何を……っ!」
『ユーマのトリガー機能の1つで【印】の権能をアキに付与した。今回は膂力の強化を施したのでその瓦礫をもう1度動かしたまえ』
「っ!? コレほどとは……」
コレが黒トリガーの権能……こんなのが量産出来る訳ないし、仲間でもなければ警戒されるのは当然だ。
「大型瓦礫を簡単に持ち上げるなんて流石BORDERだ!」
「動かしますので離れてください!」
持ち上げた瓦礫を動かして民間人の救助が出来た。
「コレなら助けられる人達が増えます。支援お願いします」
『心得た。ついでに私が検知した被害の深刻なポイントをナビゲートしよう』
「助かります」
私はレプリカさんのナビゲートに従い救助が効率化された。それによる心の余裕が上空を見た。
「イルガーの動きが鈍い? ッ! 本部に連絡をしなきゃ!」
記憶が正しければイルガーはダメージを負うと感知した人間を1番殺せるポイントを狙う。
「本部応答願います! 訓練生ですが通報です! 現在交戦中と見られるトリオン兵が避難所を狙うかもしれません! 動きが緩慢です!」
『落ち着きなさい。現在A級隊員が交戦中な以上心配は要らないだろう? 君の違反はこちらも検知している。必要以上の行為は余計な推察に行き着くぞ?』
通信はそれを最後に途切れた。駄目だ……やはり本部から私への信用が無い以上もう私に出来る事が!
「Bへの昇格を先送りした裏目がここにも出るのは分かっていた筈なのに!」
悔しい。ただ今は己の無力と他者への依存で動く自分が恨めしい。
「お願い空閑君……街を……守って……」
私は表に立てない上にBORDERからの信頼が得られ無い今の空閑君に縋っていた。
『聞こえたなユーマ。アキの悲痛な叫びをしていたがどうするつもりだ?』
「だな。やっぱ独断のトリガー使用ってBORDERだと面倒なんだな。アキが庇ってくれたのは重要だったか……」
そうだな……アキが本部へ報告しなかった理由はわからないけど事実として助かってる。なら恩返しをするのはアリだ。
「まずはイルガーを落とす。コレ以上被害が拡大すればアキも俺達も面倒な事態に巻き込まれ兼ねない。かといって……」
『ではどうする? トリガーを使うのか?』
「使うよ。とはいえBORDER隊員に見つかりたくない。さて……」
少し立ち回りを考える。するとレプリカから提案があった。
『キトラは交戦してから順調にダメージを与え続けている。通常のトリオン兵ならば問題は無いだろう。しかしイルガーは不味い。その理由はわかるな?』
「アレはダメージを受けると最も被害のある場所を狙う性質がある。本来倒すならその機能発動前に潰すべきだけど……」
『我々の介入は難しい。ならば発想を転換しようではないか』
「転換か……この場合は……」
周囲を見渡すと河がある。つまり……
「そういう事だなレプリカ?」
『ソレを決めるのは私ではない。ユーマ自身だ』
キトラの攻防を俺達は見守った。安心しろアキ……街は必ず守ってやるさ。
イルガーがダメージを抱え始めた。空襲が落ち着いた……となると残り時間は短いだろう。
『聞こえるなアキ? これからイルガーを河に落とす。離れていろ』
「空閑君!? 何をするつもりなの!?」
その数分後にイルガーは制御を失ったかのようにフラフラし始めた。しかし数秒後には鎖が現れ河へ引き摺り落とされた。
「っ! トリオン兵が落ちた!? 木虎さん!」
記憶が正しければ木虎さんは河に落とされて自力で上がる。でももし【トリオン体か維持出来ない程消耗していたら?】市民の心の拠り所は失われる……もしくは私にかかるだろう。
「私は……臆病者だ。英雄に祀り上げられるのは怖い。だからこそあの人が眩しいんだ……」
同じような行動をした今ならわかる。あの人が耐えられた事が偉大なんだ。
「打算で申し訳ありませんが助けます」
私は彼女が落ちた場所へと駆け出した。
「っ! 見つけた!」
河岸に辿り着いた木虎さんがかけた手を私が掴み引き上げた。
「貴女……どうしてここに?」
「木虎さんがトリオン兵を倒してくれたので被害の拡大が終わり、救助に目処が立ちました。せめてこのぐらいはさせてください」
「…………目立つ為のポイント稼ぎかしら?」
「本心です。そもそも民間人の避難や救助がスムーズだったのは木虎さんの名声を利用しました。木虎さんが戻れなければ皆様は安心しないでしょう」
「…………どこまでが本心なのかしら……」
「凄いなキトラ。あのデカブツを1人で倒すなんて」
私は空閑君を探したがその必要はなく自分から声をかけた。
「…………確かに倒したのは私かもしれないけど、街を救ったのは私では無いわ。悔しい事だけど……」
「お願いします木虎さん! 彼等の支えになってください!」
木虎さんを発見した民間人が称賛・感謝・八つ当たり込みで集まって来た。恐らく拡散情報からやってきたのだろう。
「……はぁ。分かったわ。私が対応するわ」
「へぇ……」
空閑君が言葉を
「私自身の戦いはまだ終わっていない」
上層部からの審問が待ってる。
ペンチメンタルじゃないので実は次回が亜樹にとって一番辛いかもしれません。
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亜樹が遊真のヒロインでは?