英雄のいない世界で   作:タク-F

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futurehope 様 評価ありがとうございます

本作の玉狛支部訪問に迅さんは同行しません。理由は複数あり以下の通りです。
・遊真が林藤支部長に会う理由がある
・争奪戦の準備及び暗躍
・三輪及び城戸司令以外が基本的に静観の姿勢
・遠征組の帰還までまだ原作より時間的な猶予がある


玉狛支部との出会い

「じゃあ顔つなぎ頼んだよメガネちゃん。あの2人をココに連れて来てくれ」

 

「空閑君はともかく千佳もですか?」

 

「おれのサイドエフェクトが彼女を必要としている。ココに彼女を連れて行く事に意味がある筈なんだ」

 

「確かに千佳のトリオン量を考えれば保護して貰えるのは助かりますが……」

 

 迅さんから空閑君と千佳を玉狛支部に勧誘するように頼まれた。

 

 

 

 

 

 

 

「って訳で千佳には一緒にBORDERに来てもらうね。もちろん本部に行ければって思ったけど……無理だよね?」

 

「うん……BORDERが嫌いな訳じゃないけど……」

 

「大丈夫。次に空閑君……迅さん紹介の支部から依頼があるの。

 

【ぜひ彼と話をさせて欲しい】

 

 って。城戸司令は情報をくれなかったけど、玉狛支部の人は識ってるらしいの。どうする?」

 

「ん〜教えて貰えるなら行ってみようかな。ちなみにその支部の人って近界民を敵視してるのかな?」

 

「詳しい事情は知らないけど迅さんが紹介するならある程度話は通ってる……と思う。流石に自信は無いけど」

 

「なら行こうかな。千佳はどうする?」

 

 千佳は俯いている。恐らく見知らぬ人に割れ物扱いされるのが怖い……のかな。

 

「もし千佳が今の状況を良く思えなくて変わりたいなら聞いて。私(・)な(・)ら(・)行(・)っ(・)て(・)み(・)る(・)かな。例え利用されるとしても知りたい事を教われるなら価値があるとは思う。欲を言えば自衛出来る手段を持ってくれると助かるかな。幸い千佳が狙われる理由と対処方法は分かったし」

 

「亜樹ちゃん……」

 

「当たり前だけど強制はしない。でも千佳が狙われる理由からは目を背けないで。BORDERに所属したくないなら、その中で出来る手段を私も全力で探すから」

 

 私は千佳の瞳をしっかり見据えて伝えた。コレは私個人として譲れない。それは千佳が悩み、考えて、結論を出すべき事だから。

 

「遊真君と同じ場所に連れてって! 私だって自分で知りたい事があるもん!」

 

「決まりだな。それじゃあ案内よろしくなアキ」

 

「意見が纏まったなら……行こう!」

 

 私達は玉狛支部へ向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迅さんの紹介で来ました三雲です。玉狛支部の隊員の方はいらっしゃいますか?」

 

「ありゃ? お客さん? 迅さんの紹介……迅さんかあぁ〜〜……」

 

 対応してくれたのは支部所属のオペレーターで遠征を経験している優秀な隊員の【宇佐美 栞】さんだ。そしてこの人は元(・)風(・)間(・)隊(・)の(・)オ(・)ペ(・)レ(・)ー(・)タ(・)ー(・)で(・)も(・)あ(・)る(・)。

 

「貴女は……確か風間隊のオペレーターだった宇佐美さんではありませんか? どうして本部所属の貴女がこの支部に?」

 

「む? 私の事を知っているとは中々博識だね。お目が高い。私の名前は【宇佐美 栞】。だけどそれは昔の話だね。今はこの玉狛支部に移籍したの。だから良ければ私が用件を聞くよ?」

 

「失礼しました。では改めて……迅さんの紹介で来ました三雲です。【空閑 遊真】君と【雨取 千佳】を連れて来ました。2人を連れて来る連絡等はありませんでしたか?」

 

「雨取……? ちゃんは聞いて無いけど空閑君は聞いてるよ。もしかしてその娘も紹介だった?」

 

「……とは思いますが、理由は検討がついてます。よろしければ千佳のトリオンを測定して貰えますか?」

 

「トリオン……そういう事ね。えっと……千佳ちゃんで良いのかな?」

 

 宇佐美さんは私の意図を察してくれたらしい。千佳もそのやり取り見てを察してくれた。

 

「お願いします」

 

「さてさて……む? 測定中……」

 

 やはり測定に時間がかかる。先に空閑君の事を伝えないと……

 

「あの……では空閑君については聞いてますか?」

 

「あっ! そっちは聞いてた! 支部長を訪ねて来る空閑君が来たら迎えるようにって!」

 

 用件を理解した宇佐美さんは支部長を呼びに部屋を飛び出した。

 

「…………行ってしまったな」

 

「まぁ千佳はトリオン計測中で動けないからちょうど良かったと言えばそうじゃ無い?」

 

「私は……良いけど……」

 

「じゃあとりあえず待つか……」

 

 私達は宇佐美さんが戻って来るまで大人しく待つ事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴメンゴメン! お待たせしました。まずはお茶をどうぞ。名前しか名乗れずおもてなしが不十分でゴメンね。せっかくだからどら焼きも食べて食べて。美味しいって評判のお店の商品だから」

 

 戻って来た宇佐美さんは林藤支部長を連れて来ていた。どうやらお茶の準備と支部長との面通しを図ってくれたみたいだ。

 

「やっ。俺がこの【BORDER玉狛支部 支部長】の林藤 匠だ。まずは3人ともよろしく」

 

「「「よろしくお願いします」」」

 

 私達は互いに頭を下げ挨拶を進めた。さて……

 

『計測が完了しました』

 

「むっ……ようやく終わったのか。どれどれ……ッ!」

 

「どうした宇佐……ほう?」

 

 測定記録の確認をした2人の表情が巌しくなる。私達は理由を識ったけど初見なら驚くトリオン量なのは明らかだ。

 

「あの……コレって不味い事なんでしょうか……」

 

「まぁ……そ(・)う(・)と(・)も(・)言(・)え(・)る(・)し(・)言(・)え(・)な(・)い(・)と(・)も(・)取(・)れ(・)る(・)だな。本当なら空閑君と最初に話そうと思ったが順番を変えたい。まずは君の名前と目的から聞いても良いかな?」

 

 支部長は穏やかなな声で千佳に問いかけた。千佳は今までの大人と反応が違う事に戸惑うものの語りはじめる。

 

「私の名前は【雨取 千佳】です。よく近界民……トリオン兵? ってのに追われていました。遊真君がその要因に心当たりがあり、迅さんの紹介でこちらに来ました」

 

「トリオン兵に追われてた……ね。確かにこのトリオン量なら狙われるのは道理だ。原則近界民はトリオンを求めて活動をしている。君のトリオン量で自衛出来ないなら連中からすれば上質な餌に見えても不思議は無いだろうね」

 

「やっぱり私のせい……でしょうか……?」

 

 支部長の言葉は千佳の不安を言語化していく。その結果千佳が辛い現実を突きつけられるのは明確だった。

 

「それは違うよ。ですよね支部長?」

 

 宇佐美さんは千佳の言葉を明確に否定した。

 

「そうだ宇佐美。良いかい雨取ちゃん……トリオンってのは誰(・)に(・)で(・)も(・)存(・)在(・)す(・)る(・)物(・)で(・)個(・)人(・)差(・)が(・)あ(・)る(・)事(・)は(・)問(・)題(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)。ソレが多い事で狙われる理由になっても雨取ちゃん自身は悪用していないなら責められる理由も無い。ココで責められるべきなのは雨取ちゃんを狙う奴だけさ」

 

 支部長は千佳の頭に手を置き語りかける。その姿や手つきは優しい大人のソレだ。

 

「例えば人間は【勉強が出来る】人間と【運動が出来る】人間がいる。運動が出来るからって【勉強が出来る人間】を攻撃する理由にはならない。逆も同じさ。人間ってのは大体一長一短があるものなんだ。雨取ちゃん他より優れてる事があるのは当然だろ?」

 

「でも……私のせいで……襲われる人が」

 

「雨取ちゃんが襲わせて無いなら責められる理由も無いの。雨取ちゃんがその状況を変えたいなら出来る事もある。そしてココにはそのための手段もある。しっかり悩んで答えを出しても良いんだよ?」

 

 宇佐美さんが千佳を抱きしめて語りかける。その言葉に千佳は今までに溜め込んだ感情を決壊させようとしていた。だけど私はその前に問いかけないといけない事があった。

 

「ゴメンね千佳……今話すと辛いかもしれないけどこの機会に話させて欲しい。あの人について。多分この話は避けては通れないから」

 

「亜樹ちゃん……うん……」

 

「ありがとう千佳。宇佐美さん……千佳を別の部屋に連れて貰えますか? 今は存分に泣かせてあげたいので」

 

「分かったよ。じゃあ雨取ちゃん……私の胸でいっぱい泣いて良いから全部吐き出してね」

 

 そうして千佳と宇佐美さんは席を離れた。

 

「………………大分強引な手を打ったね三雲ちゃん。そこまでして話さないといけない事なのかい?」

 

「はい。千佳……【雨取 千佳】には家族……兄(・)が(・)い(・)ま(・)し(・)た(・)。名前を【雨取 麟児】……およそ半年前に行方不明になった民間人の名前です。私の知っている事、憶測混じりではありますがも(・)し(・)も(・)B(・)O(・)R(・)D(・)E(・)R(・)が(・)千(・)佳(・)を(・)保(・)護(・)す(・)る(・)べ(・)き(・)と(・)判(・)断(・)す(・)る(・)な(・)ら(・)伝えない訳にはいきません。少なくとも私はそう考えています」

 

「【雨取 麟児】……なるほどね。確かにその名前が出るのは彼女の事を周知した時からいずれわかる事だ。だけど……条件があるんだろう?」

 

 やはりこの人は凄い人だ。恐らく私の言葉はほぼ推測されているのだろう。それを隣で聞いている空閑君が静観する程の状態で。

 

「はい。千佳が了承するまではこの支部と上層部以外に徹底した情報統制をお願いしたいです」

 

「良いだろう。彼女からの了承が無ければ俺から……いや、玉狛支部から情報を持ち出さない。無論彼女がBORDERにどう対応するかで判断は変わるが……な?」

 

「感謝します」

 

「…………凄いねリンドウさん。本心でソレを即答するとは……」

 

「おっ……やっぱお前はあの人の息子だ。まさに昔の有吾さんの雰囲気そのものだな!」

 

「あっ……じゃあやっぱり空閑君のお父さんは観察眼の副作用持ちって事ですか? じゃあなんで空閑君にも同じ副作用が?」

 

 正直仕組みそのものはまだ良くわかって無い。説明を……情報が欲しい。果たして支部長は教えてくれるのか……

 

「む? 良いぞ。せっかくだから空閑君がその黒トリガーを得た経緯を聞かせてくれるか? 予感が当たっていればお互いの為になると思うが?」

 

「む……」

 

 空閑君が少し考え込んでいる。得られる情報と差し出す情報を秤にかけてるのだろう。

 

「良いよ。その代わりモガミソウイチの情報とリンドウさん達と一緒にいた頃の親父の話を教えてくれたらね」

 

「そりゃあコッチから頼む話だ。ソレ以外で欲しい物があれば遠慮無く言ってくれ」

 

「ありがとうねリンドウさん」

 

 そうして空閑君は近界を回っていた頃のお父さんとの話を教えてくれた。聞いていく度に支部長の表情が悲壮に変わったのは印象的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とまあコレが親父の最後と俺が黒トリガーを手にした経緯だな。どうするリンドウさん……やっぱコレ欲しい?」

 

「あぁ〜…………難しいなぁ。BORDER関係者としては黒トリガーは欲しいし、尊敬していた先輩の形見だ。ソレを手元に置きたいのは心情的にも戦力的にも本音だ。そして……」

 

 支部長は一呼吸挟み言葉を続けた。

 

「今(・)は(・)亡(・)き(・)最(・)上(・)さ(・)ん(・)も同じ言葉を告げるだろうな」

 

「どうして……亡くなっていると断言出来るのですか?」

 

 私はその言葉を絞り出す事しか出来なかった。

 

「迅の黒トリガー……【風刃】」は黒トリガーであり、そ(・)の(・)作(・)成(・)者(・)こ(・)そ(・)が(・)最(・)上(・)宗(・)一(・)さ(・)ん(・)だからだ。

 

 そこから支部長は黒トリガーの仕組みを淡々と語っていき、気づけば日が落ちていた。

 

 

 




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