生まれた時から最強だった   作:roborobo

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第12話

 

 

【――ハジメの夢の中】

 

――うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwお話合いのじかんでーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーすwwwwwwwwww

 

ハジメ「……ハハァ」

 

ユエ「……」

 

シア「……」

 

ティオ「……お、おー?」

 

――なぁ、頼むよ地球人。お前の世界の陽キャに合わせようと思っていたのになんかこっちがダダ滑りみたいじゃん

 

ハジメ「いや俺に言うなよ。元陰キャ舐めんな」

 

ユエ「……え、ええと。ハジメは確か昔はいじめられっ子でこういったちゃらちゃらとしたものとは無縁だから……」

 

ユエ「変に無茶振りしても困るだけだからやめてあげて……?」

 

――えっ、私が悪いの……? えぇ……?

 

ティオ「そういった人種と馴染めていなかったのだから無茶振りも良いところだろう……」

 

ハジメ「あの、みなさん。それだと俺が社会不適合者みたいなものじゃ……」

 

――……

 

ユエ「……そんなことないと思う。おも、うん……」

 

ティオ「おも、いたいんじゃがな……」

 

――あのさ、変に同情で庇わないほうがいいよ……

 

ハジメ「お前らしまいにゃ泣くぞ」

 

シア「……」

 

………………

 

ユエ「……話がちょっとだけ弾んだけど……まぁ、こんなものかな」

 

ハジメ「地の底の底まで沈んでたんですがそれは」

 

ユエ「で、でもゆっくりできる時間を用意できてたし……」

 

ティオ「現実では敵との戦いや迷宮攻略と大忙しじゃからなぁ」

 

ユエ「ん、本当の意味で肩の力を抜いて……周囲に警戒しないでいられるのはこれが初めてかも……」

 

ハジメ「何のかんの行っても宿に泊まってても変なのが覗きをしてきたりで休まらねぇのがな……」

 

シア「……」

 

――それは助かるな。なんだかんだ言いつつも話し合いの場を用意したいと思っていたから

 

――そう思ってくれるのは光栄だ

 

――なにせこの空間は実質『時間が流れない』。いくらでもリラックスしてくれてかまわないさ

 

シア「……」

 

ハジメ「……ん? 時間が流れない?」

 

ハジメ「あれ、でもちょくちょく時間が来たら無理やり戻されていたような……あれって現実が朝になったからなんじゃ……」

 

――あー……それか……

 

――……

 

――お前たちに今のうちに言っておきたいことがある

 

――エヒトの用意したこの世界、それによるお前たちの影響についてだ

 

ハジメ「――!! 聞かせろ」

 

ユエ(……有益な情報、か)

 

ティオ「……」

 

――お前たちに渡されているステータスプレート。これらは、お前たちの能力や習得しているスキル、さらには適正とされる職業が表示されているはずだ

 

――ステータス……この意味が、お前たちの強さを数値化したものというのはわかるな?

 

ハジメ「あぁ、それはわかる。ここに書かれている数値……ステータスとスキルは俺たちの強さだ。それは理解している」

 

ハジメ「もっとも、俺はバグって表示が変になっちまったが」

 

ハジメ「……それで? いったい何の話だ?」

 

――ふむ、ではお前たちに聞こう

 

 

――ステータスプレートは……一体『何を』表示している?

 

 

ハジメ「……? 『何を』……?」

 

ユエ「ええと、体力とか筋力とか……あとは魔法の力や耐性とか……」

 

――そうだ、ステータスプレートは言ってしまえばお前たちの強さや適性などの抽象的な数値や言語として表示させたもの

 

――本来、人間の強さを数値という極端なものとして形を成すと言うのは難しい

 

――数値の高さ、強さをどうやって表現する? 力にしたって発揮しようにもあらゆる状況を想定すれば数値通りのモノが出るかわからない

 

ハジメ「……言われてみれば……そうだな……」

 

ハジメ「戦いのときだってそうだ。例えば、有利な条件……俺のコンディションが好調な時に殴ったときの攻撃と不調だったときの殴ったとき……」

 

――そう、数値が同じとは限らない……

 

――だが、同じなんだよ。数値は同じ。不調でも好調でも『数値』は、『ステータス』はゆるがない

 

――なぜなら、その数値は『絶対』。そうでなければ、その人物の強さを表す『強さ』を証明するものとしてありえないのだから

 

――だってそうだろう? 何千年もトータスの住民たちの身分証明書として機能してきたものが……お前のようなよっぽどのイレギュラーによってバグる一例があったとしても、外見上だけはごまかせたとしても……

 

――その数値は、しっかりとお前たちの力を視覚化するために形として表示される。それはなぜか?

 

ハジメ「……ええと、じゃあ……」

 

ハジメ「ん、んん……?」

 

――答えを言おう。本来であれば、お前が次の迷宮を……ハルツィナの場所にまで言ったら知るはずのものなのだが……

 

 

――その答えは『概念魔法』。それをステータスプレートに仕込まれているからだ

 

 

ハジメ「概念……魔法……?」

 

――解放者の魔法をすべて習得できることによって習得できる最後の魔法

 

――手に入れれば、己の実力によって自分の考えた魔法を作り出せる究極の魔法

 

シア「! 自分で考えた魔法を……」

 

ティオ「作り出せるじゃと……?」

 

ハジメ「概念……そうか、『数値』という『概念』……」

 

――お前たち、ステータスプレートがどういったモノかはメルドやギルドの職員たちからも聞いたことがあるだろう?

 

ユエ「……確か、神代の時代に存在するアーティファクトで……」

 

ティオ「現代においても複製されて流通されている……身分証明代わりのアーティファクトであったな」

 

――そうだ

 

――……かつて、まだ国の法律や時代における秩序が未熟だった時代、神であるエヒトは世界を管理するために、世界の基準を数値化し、作業を簡略化させようと試みた

 

――そうすればこの世界はもっとより良くなる。この世界に住む住民たちを導く『火』になりうるだろうと……

 

 

――……まだ、エヒトが『狂神』となる以前のことだ

 

 

ハジメ「…………」

 

――それがステータスプレートだ。各種世界の様子、国そのものの人口比率や幸福度などを数値化し、作業の効率化をするために明確なアイテムを求めていたからだ

 

――エヒトが自分で偉大なる神と名乗ろうと、自分で見れる範囲なんてたかが知れている

 

――なにせ……光輝よりも優れた能力を持った人間がこのように集まっているのに、エヒトは気づかなかっただろ

 

ユエ「……私たちのこと?」

 

――そういう事だ。光輝以上に才能が有り、優れた者たちがいるのならばもっと有効に扱おうとしていたはずだ

 

――ステータスプレートは、そんな神代の神や神と共に在った人間たちのために造られたものだった

 

ハジメ「……それと、これと何が関係あるんだよ……?」

 

――……考えてもみろ。人間の抽象的部分を数値化するのであれば、それは自分自身の客観的な部分を知れると言うこと

 

――そして、それらを知れると言うことはその数値の限界値を知り……伸ばしたり減らしたりも自身の努力で変えられる……

 

――つまり、その数値に自分から干渉できると言う事だ

 

ハジメ「自分の数値……ステータスに干渉できる……?」

 

――そうだ。そこに書かれている数値は、お前のようなイレギュラーが出てくることでバグっただろ?

 

――つまり、そこに上げられる数値や習得できるスキルもそこに表示されるだけじゃないってわけだ

 

ユエ「……あっ! そうかそういえば偽装できるわけだから……外見上だけは好きなだけ変えられる」

 

ハジメ「……いや待て。お前、さっき言ってたよな。『概念魔法』があると」

 

ハジメ「それは……考えようによっては自分の好きなように魔法を習得でき……」

 

ハジメ「好きなようにステータスをいじれる……ってこともありえるんじゃないか?」

 

――……その通りだ

 

――概念魔法。あらゆる自然現象、人間の頭の中にある抽象的概念。それらを形のある事象や現象に作用するこの魔法を

 

――エヒトは、それに近い物を得ている

 

ハジメ「何……!?」

 

ユエ「……ちょっと待って。どういうことなの」

 

――考えてみろ。人の持つ抽象概念……言ってしまえば、人間の思念がステータスプレートに作用しているのは先ほど教えたとおりだ

 

――ならもしも……もしもだぞ? その抽象的概念……エヒトの力そのものを高める思念がエヒトに収束してるとしたら?

 

ティオ「それが……エヒトを支える力の源……?」

 

ハジメ「……エヒト……狂神……」

 

ハジメ「……神……思念……」

 

ハジメ「……っ! 『祈り』……!!」

 

ハジメ「そうか!! 『信仰』! イシュタルや世界中の聖教教会や……『信者たち』の『信仰』という『概念』!!」

 

ユエ「あっ……!」

 

――……人の祈り、願い。意識そのものに形はない

 

――だが、それを形にする魔法が存在する。それが、解放者たちが残した概念魔法と類似したエヒトの魔法……自分の発した言葉そのものを現実にする『神言』……

 

――祈りや想いと思いが形になる。ステータスプレートは、まさに目に見えぬものを、抽象概念を数値化させるものということだ

 

ハジメ「……なるほど、ステータスプレートの仕組みは……わかった」

 

ハジメ「……いや、じゃあこの部屋は……」

 

――……ここもまた、それらと同じ仕組みを施した部屋ということだ

 

ハジメ「……同じ、仕組み……」

 

ティオ「……」

 

ティオ(……待て、いや……ここまで奴がこれほどまでにステータスプレートに詳しい様子……)

 

ティオ(……神代のころの人間……? だが、この者……)

 

シア「…………」

 

ユエ「……シア。どうしたの」

 

シア「? ど、どうしました?」

 

ユエ「……あなた、さっきから何もしゃべってない」

 

シア「えっ、あー……べ、別に。何でもないですよ?」

 

ユエ「……??」

 

………………

 

ユエ「ハジメ! か、体が……浮き始めて……!」

 

ハジメ「! あ、時間が……」

 

ハジメ「……いや待て。時間の概念がこの部屋にないなら……」

 

ハジメ「お前ッ、自分の都合で俺たちを追い出しやがってたか!!」

 

――アッチャァ、イッケネ……バレちゃった!

 

ハジメ「おめっ……テメ――」

 

………………

 

――……はぁ、なんともまぁ喧嘩っぱやいことで

 

――……強さ、か。こんな数値だけの強さなんていらんだろうに……

 

――こっちもサポートしてっているとはいえ、上がったところで……な

 

============================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

 

天職:錬成士

 

筋力:省略

 

体力:省略

 

耐性:省略

 

敏捷:省略

 

魔力:省略

 

魔耐:省略

 

信仰:∞

 

技能:スキル欄省略

 

==============================

 

――ほへー……数値が高くて数値欄が省略されちゃってるよ

 

――……

 

――……ん?

 

――……えっ、なんだこれ……ステータスプレートに見たことないステータスが……表示されてる……?

 

――……『信仰』……??

 

………………

 

…………

 

……

 

【ハイリヒ王国――地下牢】

 

コツ……コツ……

 

光輝「……」

 

コツコツコツ……

 

光輝「……」

 

ピタッ……

 

光輝「……」

 

光輝「お久しぶりですね。イシュタルさん」

 

イシュタル「……」

 

光輝「……すいませんね。牢屋越しに」

 

光輝「本当はここの扉を開いて二人で話し合いをしたいと思っていたんですけど……あなたが罪人である以上、ここにいてもらわなきゃいけないので」

 

光輝「ここの所大変でしたよ。王国の各地復旧作業、病人、けが人の治療……」

 

光輝「あれから一週間近くたったけど、それでも終わらない仕事が多すぎる。傷は、敵が残した爪痕は……あまりにも深い」

 

イシュタル「……」

 

光輝「……」

 

光輝「あの一件で、エヒトの醜態がトータス各地で広まっている」

 

イシュタル「……っっ」

 

光輝「……この期に及んで、あなたが苦悶の顔を浮かべるのはエヒトが侮辱されたとき……か」

 

イシュタル「…………れ」

 

光輝「あなただってもうわかっているのでしょう。あなたたちが信仰していたエヒトが、あなたたちに不利益をもたらす存在であることを」

 

イシュタル「……まれっ……!!」

 

光輝「見ないふりしてるんだろう。見てしまえば……今までの自分の人生が無駄になってしまうから!!」

 

イシュタル「黙れっ!!!」

 

光輝「すべてを否定されてしまうから!! 見ないふりして……エヒト自身ではなく! 自分の心を守ろうとして!!!」

 

イシュタル「――黙れェェェェェェェェェェェ!!!!」

 

ガシャァァァンッ!!!

 

イシュタル「貴様にっ!! 貴様に何がわかる!!」

 

イシュタル「生まれたときからエヒト様にすべてを捧げてきた!! この信仰と共に、あの方にすべてをっ、捧げられるものを差し出し、偉大なる神に仕えてきたのだ!!」

 

イシュタル「私にも進みたい道や夢だってあった! だが、生まれたときから進む道も決められ! 神に捧げられることの尊さを教えられてきた私にとって……エヒトさまがすべてでなければいけなかった!!!」

 

イシュタル「だってっ、だって!!! それじゃあっ、それじゃあ私は……」

 

光輝「……」

 

イシュタル「なんの゛っ……だめに゛……っっ」

 

イシュタル「すべでをっ……ふみ゛、にじっでえぇ゛っ……」

 

イシュタル「ぐぐぐっ、ぐあ゛、あぁ、ああぁっぁあ゛ぁ゛……っ!!」

 

光輝「……」

 

………………

 

イシュタル「……」

 

光輝「……」

 

イシュタル「貴様を最初に見た時、利用しがいのある子供だとしか思わなかった」

 

光輝「でしょうね」

 

イシュタル「あの教師に比べて威厳と威光に溢れ、行動力のあるお前は……私たちに対して懐疑的な少年少女たちに言うことを聞かせるのにはうってつけだったのだ」

 

イシュタル「……実際に、お前は便利だったよ。一部のイレギュラーがあったモノの、お前たちを救世主にする動きとしては順調だったわけだ」

 

イシュタル「世界を救うと言う大業、長年続く歴史においてもっともエヒトさまに貢献できたという現状に……震えたものだ」

 

イシュタル「……それが、ふたを開けば……お前は単なる癇癪持ちのクソガキ。無能と呼ばれた少年は魔王と呼ばれるほどに……各地を暴れて回っていた」

 

イシュタル「なんとも……笑ったよ……こんなマヌケを持ち上げていたことに……」

 

光輝「……」

 

イシュタル「なによりも……」

 

イシュタル「私も……そんな持ち上げられたマヌケでしかなかったことに……」

 

光輝「……」

 

光輝「俺は、自分のやりたいことが分からなくなりました」

 

イシュタル「は……?」

 

光輝「この世界に連れて来られて、だけどあなたたちのことがかわいそうで……力にならなきゃって思ってた」

 

光輝「だけど、その中で過酷な現実を思い知らされて、割り切れだとか言われて……自分の心が気持ち良くなるようなものは……何一つとしてなかった」

 

光輝「やりたいことはいっぱいある。でも、すべてが俺の手には余って、どれも出来ないことばっかり。その場その場で勝手に感傷的になって、思うとおりに行動してしまう」

 

光輝「そうしていたら……やりたい事がなにも出来ないたんなる子供だったんだって……わかってしまったんです」

 

イシュタル「……なにが、いいたい」

 

光輝「……だから俺は、せめてやれる事だけは手から零したくない」

 

イシュタル「……やれる、こと」

 

光輝「勇者として与えられた使命も、なまじっか出来るから迷ってしまった」

 

光輝「自分の精神に見合わぬスペックで、いろんなことに振り回された」

 

光輝「……それなら、せめて自分の心が暴走しない程度に、自分のやれる事を見つければいい」

 

光輝「あなたは罪人だ。教皇の地位もなくなって、信仰心もなくなって、身軽になった今」

 

光輝「イシュタルさん、あなたは、何がしたいんですか」

 

イシュタル「……」

 

イシュタル「逆に聞かせなさい。あなたは、私に何をさせたいのですか」

 

光輝「かなえられる範囲。癇癪を起さないことならオーダーを聞きますよ」

 

イシュタル「……」

 

イシュタル「……エヒトがあのような醜態をさらした以上、多くの信者に知られているはず。おそらくだが、我々の信仰心はもうエヒトの力になることはない……」

 

イシュタル「聖教教会に身を置く信者たちは……全員が全員私のように狂信的ではない。おそらく、あのむの……ハジメが言っていた洗脳されていない者もいるかもしれない」

 

イシュタル「国王にこちらのほうで管理していた信者たちのリストを渡してある。王国の復興だのなんだのは……そこに書かれている頭数を利用して好きにするといい」

 

光輝「……ありがとうございます。イシュタルさん」

 

コツコツコツ……ギィィィ、ガチャン……

 

イシュタル「……私の」

 

イシュタル「選ぶ道……か」

 

イシュタル「数十年生きてきて……そんなこと……今更考えるとはな」

 

………………

 

…………

 

……

 

【王宮、食堂にて】

 

光輝「話は終わったよリリィ。王国復興の役に立つかもしれない」

 

リリアーナ「……ありがとうございます光輝さん」

 

リリアーナ「現在、王都のほうでは多くのケガ人や死者を管理していますが……それ以外にも破壊された建築物の対応や大結界の修復と大忙しですから」

 

光輝「南雲の協力や事前の対策で何とか魔人族による襲撃で起きた被害は最低限抑えられたけど……今後のことを思えば対策は施すだけ施して損はない」

 

光輝「そのためには聖教教会の……信者たちの力が必要だ。もっと言えば、信仰の力や魔法とじゃない……人員の力が」

 

リリアーナ「今、先ほどのリストを元に、イシュタルの言葉と照らし合わせて狂信的でない者、洗脳らしきものを受けてない者に声をかけているところです」

 

リリアーナ「幸いなのは、お父様やお母さまに何事もなかったこと……どちらかが欠けてしまっていたら、膨大な作業量で潰れていたかもしれません」

 

リリアーナ「……ランデルが、必死になっていましたよ。子供のうちでも力になれることがあるかもって」

 

光輝「こちらのほうもフリードが用意していたであろう対軍用空間転移に利用されていた巨大な魔石を破壊しておいたよ」

 

光輝「王国の執務には口出しは出来ないけど……俺たちにできることがあったら何でも言ってくれ」

 

リリアーナ「ふふっ、あまり安請け合いするなって怒られちゃいますよ」

 

光輝「……ははっ、だね」

 

光輝「……」

 

光輝(俺たちは、弱い)

 

光輝(あの奈落に落ちた南雲は、怒涛の死線を潜り抜けてきた)

 

光輝(自分自身で生きるための道筋を、活路を見出し、生きることを……帰ることを目指して……頑張っていたんだ)

 

光輝(……すごい、と思う。胸のうちでじりじりと焼き付く嫉妬心が……それを証明している)

 

光輝(……)

 

光輝「ごめん、リリィ。ちょっと――」

 

リリアーナ「あの、光輝さん。私から相談が」

 

………………

 

【王宮、各所にて】

 

【訓練場……】

 

龍太郎「よっ、どうしたんだよ光輝!……っと、姫さんか」

 

リリアーナ「精が出ますね、龍太郎さん」

 

光輝「元気だなぁ、お前。こんなときも訓練か」

 

龍太郎「いいだろ? 体動かしておけば頭すっきりするんだよ」

 

龍太郎「それによ、ほれ、あっちのほうで白崎が回復魔法をかけてくれんだよ」

 

龍太郎「疲れたら回復! 疲れたら回復! これ、シンプル!」

 

光輝「う、うん……脳みそ筋肉すっげぇなぁ……悩みなさそう」

 

龍太郎「お前はむしろ悩みすぎなんじゃねぇの?」

 

龍太郎「なんせ、イシュタルと交渉してきてそれで疲弊するくらいなんだしな」

 

光輝「……なんだ話聞いてたのか」

 

龍太郎「いや、ほかの兵士たちとかから聞いた。お前たちがどんな話をしていたかはわかんねぇ」

 

龍太郎「で、どうすんだ? これから」

 

光輝「……」

 

龍太郎「結局、この戦いもその神様ってやつのゲームだったわけだろ?」

 

龍太郎「だったら付き合ってやる義理なんてねぇ。もうお前だって勇者として戦う必要はないはずだ」

 

光輝「……何をしたいのかは決まっている」

 

光輝「俺は、南雲の各地迷宮の攻略を手伝うつもりだ」

 

リリアーナ「えっ……」

 

龍太郎「……そう決めたのか」

 

光輝「こういっちゃなんだけど、あいつは強い。俺なんかよりずっと」

 

光輝「金魚のフンかもしれないけど……自分から勝手に強くなっていくアイツは、その成り行き上で、自分にとって必要であれば成し遂げてくれる」

 

光輝「それはつまり……力の強さ次第によってはエヒトを倒すことも元の世界に帰ることも可能になるわけだ」

 

龍太郎「ついていくことのメリットは確かにデケェな」

 

光輝「肉壁になるとかサポート係になるとかとにかく何でもいい。俺たちが役に立つことをアピールすれば……きっと同行を許可してくれる」

 

光輝「……そのために」

 

龍太郎「んじゃ、出かける準備しておくか」

 

光輝「! 龍太郎……」

 

龍太郎「これからいろんな奴に話しつけておくんだろ?」

 

龍太郎「でも俺じゃあきっとうまく話せねぇだろうしな……ってことで、説得頼むわ。俺は横でへらへらしてっからよ」

 

光輝「安心してくれ。お前の頭だから説得は捨ててるから!」

 

リリアーナ(中々に酷いこと言いますね光輝さん)

 

龍太郎「うーん、この幼馴染の信頼感よ」

 

………………

 

【訓練場にて】

 

ブンッ、ブンッ、ブンッ!!

 

雫「……ふぅ、ふぅ……」

 

雫「……はぁぁぁぁ……」

 

ス……ドサッ……

 

雫(なんか、体に力が入らないわね……)

 

雫(ステータスは……うん。上がってる。レベルも、力も、各種能力や新しいスキルもどんどん習得していってる)

 

雫「……」

 

雫(なのに、私はみんなの力になれてるって気がぜんぜんしない)

 

雫(南雲君はすっごく強くなっている。それに同行する香織や王宮に残って魔人族に備える光輝たち……)

 

雫(私たちを裏切ろうとした檜山くんや中村さん……それに清水くんですら……今回の襲撃では活躍していた)

 

雫「……」

 

雫(私、何がしたいんだろう)

 

雫(みんなの役に立てている自信がない。私だけが置いてかれている)

 

雫(……)

 

雫(私が剣術を始めようと思ったのは家の、祖父の影響だった)

 

雫(ただ褒められたいからやってるだけの剣術。なまじっか才能があったがために、私はこの力を伸ばすことを選んでしまった)

 

雫(だけど、本当は女の子でいたかったのに、私は自分の気持ちとは裏腹に生まれたときからの才能を伸ばして……女の子らしくない剣士へと成長してしまった)

 

雫(……光輝は、私の王子様になってくれるかもと思ってた。こんな不格好な女の子を、王子様にしてくれる、そんな男の人を待っていたのに)

 

雫(だけど、ふたを開けば……彼は誰にでも優しいだけ。彼と一緒に居ることで嫉妬にかられた女子にいじめられて、なのに悪意はない幼馴染を突き放せなくて……)

 

雫「……」

 

雫(今だってそう。誰の役に立てているわけでもない、戦闘だけじゃない、もっと誰かを助けられる何かを私は持っていない)

 

雫(なのに……何も持っていないくせに……私は、誰かにすがろうとしている。この期に及んで……っ)

 

雫(私は……なんなの……?)

 

ザッザッザ……

 

香織「あっ、雫ちゃん!」

 

雫「……香織」

 

香織「ごめんね、雫ちゃん。ちょっと、今のうちに挨拶しておこうと思って」

 

………………

 

雫「そう、神山の迷宮を攻略したから……次はハルツィナへ……」

 

香織「南雲くんが言ってたの。迷宮攻略の証を持っていけば、その迷宮を攻略できるって」

 

香織「……私は、このまま彼に同行しようと思う」

 

雫「なんで?」

 

香織「? なんでって……」

 

雫「香織、あなた……聞いたわよ」

 

雫「南雲君のこと、好きでも何でもなかったって」

 

香織「……」

 

雫「あなたが心底落ち込んでいた時、私はあなたのことを慰めた。そこから奮起し、立ち上がったのは……南雲君の存在があったからよ」

 

香織「……」

 

雫「なのに……ねぇ、なんであなたは南雲君への恋心を捨てちゃったの? あれだけ好きだった人だったのに、どうしてもうどうでもいいなんて言って……彼についていこうとしているの?」

 

雫「私はあなたの気持ちがわからない。あれだけ好きだったのに、どうして――」

 

 

香織「私は、南雲君のためだけに戦おうとしているわけじゃないから」

 

 

雫「……え……」

 

香織「……雫ちゃんの言うとおりだよ。私は南雲君のことが好きだった。地球にいたときからも好きだったから、こうしてトータスに来てから……弱いけど優しい彼のことを好きでいようとした。奈落に落ちた時も……生きてると信じられたのは彼のことが好きだったから」

 

香織「……でも、思ったの。私、本当に南雲君のことを好きだったのか……ううん」

 

香織「南雲君と、向き合えていたのかって」

 

雫「向き合えて……いなかったの……?」

 

香織「……私は、南雲君とほとんど話したことがない。彼も、私に対して積極的に話してくれたことなんてなかった」

 

香織「それなのに、私は一方的な思いをただただ向けていただけだったんだって気づいたの。私は……もしかしたら……」

 

 

香織「彼を通して見た……『私』のことが好きだったんじゃないかって」

 

 

雫「……彼を通して……?」

 

香織「自分の理想や、頭の中のモノを思い描いて、それを南雲君に押し付けていたかもしれないって気づいたの」

 

香織「だから、あの恋はもうおしまい。押し付けるだけじゃなくて……彼を、本当に私たちのクラスメイトとして受け入れて、一緒に過ごしたいから……」

 

香織「私は、もう誰かのために戦わない。誰かから押し付けられた『二大女神』であるよりも」

 

香織「私は私として人を救いたい、この戦いを終わらせたい」

 

雫「……」

 

雫「香織、あなたに頼みたいことがあるんだけど――」

 

………………

 

…………

 

……

 

【王都、とある大衆食堂の『個室』にて】

 

清水「おっつかれーーーー!!!」

 

恵里「お、おつかれ……」

 

清水「……」

 

恵里「……」

 

清水「……」チラッ

 

檜山「……ァァ……ッ」

 

清水「……あの、なんかすっげぇグロッキーじゃねぇの……」

 

恵里「死んだ魚の目ってまさにこれだよね。疲労困憊で目の焦点があってない」

 

恵里「なんだかもう魂が抜け落ちそうって感じだ。そんなに大変だったのかい? キミ」

 

檜山「……ウン……」

 

清水「やべぇな出てる声にハリがねぇよこれ。そんなにあっちこっち駆けずり回ったの……? マジ……?」

 

檜山「……」

 

清水「ごめん、ちょっと代わりに解説おねがい」

 

恵里「……キミも知っての通りだけど、今現在ボクたちの立場はひっじょーに危うい」

 

恵里「こいつも言ってたけど、ボクたち異世界の英雄は聖教教会によって呼び寄せられたエヒトの使者だ。そして今、例の王都襲撃による事件が、聖教教会もかかわっていたうえに教皇のイシュタルが地下牢に閉じ込められている。まさにこの世界最大級の宗教は地に堕ちたわけだ」

 

恵里「で、それらの悪印象を払拭するために檜山含めて白崎さんたちがあれこれしていたようだけど……どうもダメみたいだ」

 

清水「え、マジで……?」

 

恵里「まずボクたちに対して非難を飛ばしているのは、このハイリヒ王国のだいたいの貴族たちだ」

 

恵里「彼らは一丸となってボクたちを『エヒトが遣わした悪魔の使いに違いない』と決めつけ、もしかしたら近いうちに裁判にかける……かもしれない」

 

清水「……この世界が地球における中世だとしたら……中世基準の裁判とかぜってぇ受けたくねぇぞオレ……」

 

恵里「問題なのはさ、複雑なことに……実は貴族たちも全員が全員エヒトを信仰してるってわけじゃないんだ」

 

恵里「宗教……て言ったって本当に進行してるのなんてよっぽどこの宗教にどっぷりずぶずぶか、普段から善行を積んでるかと周囲にアピールするくらいだ。まぁ、マジで信仰心を持って祈ってるのもいるだろうけど」

 

恵里「ただ……信仰を盾にし、ボクたちを排除しにかかる……なんてことは十分にあり得るよ」

 

清水「……そうか。ただでさえ王国の執務やら財源やら……それらを切り崩さなきゃだから……」

 

清水「なのに、その切り崩しの対象が自分たちに向けられるのなら……俺たちを排除しにかかるのなんて……」

 

清水「あ、いや、でもよ! 俺たちはやっべぇ力を持った人間だぜ? そんな露骨に――」

 

 

檜山「『今こそあなた様方の力を持って突撃を仕掛けるべきでは?』だとよ」

 

 

清水「…………えっ」

 

檜山「リリアーナ姫や王様は俺たちに友好的だ。だけどな、貴族たちは全員が全員そうじゃねぇのはわかってるだろ?」

 

檜山「貴族たちや一部の兵士たちにとって、俺たちは目の上のたんこぶだ。魔人族に対する国策として呼ばれた俺たちが、聖教教会に関係する人物である以上、国による切り崩しやら資源や資産を俺たちに投じてても貴族たちは文句が言えなかった」

 

檜山「だから今回は好機だったわけだ。この国によるコストカット……自分たちの地位を守るために、何よりも自分たちが傷つかない部分の切り捨てをな」

 

清水「い、いやでもそんな直球的な排除は……」

 

檜山「だからこそだよ。そこで貴族連中はこぞって……口をそろえて言うはずだぜ」

 

檜山「国の者たちが苦しんでいる! この状況を打開するためにはあなた方に戦っていただくしかない! ……ってな」

 

清水「……っ!! 俺たちが邪魔になるからこそ……今回の王都襲撃を理由に俺たちを無理やりにでも魔人族へと赴かせるつもりか……!」

 

檜山「危機を煽り、戦わなければお前たちを援助しない……という含み。これじゃあ、引きこもっていた連中でも無理やり戦わされることになる」

 

恵里「……だいぶやばいね。敵が魔人族だけの話じゃなくなってくる」

 

檜山「元々、聖教教会が魔人族に対抗できる手段を持つからこそ保てていた協力関係だからな。俺たちの力も、聖教教会によって呼び出されて、異世界によって引き出されたモンだ。何の後ろ盾もなければ、何の権威もないガキなんて……」

 

清水「……はぁぁぁぁぁ……どうしたもんかなぁ」

 

檜山「……」

 

恵里「……」

 

清水「お前、まさかここに呼んだのって」

 

檜山「まぁ、そうだよ……聞かれるわけにはいかねぇからな」

 

檜山「この店の店長には話はつけてある。こことは別室に近藤たちに飯も食わせている」

 

檜山「今日は休もう、って言うのは嘘じゃねぇよ。さて、かんぱ――」

 

ガチャッ……

 

鈴「……あ、その、ごめんね」

 

清水「? 谷口……?」

 

恵里「……」

 

………………

 

鈴「……ってことらしいの。どう、かな」

 

檜山「……各地迷宮の攻略、ねぇ」

 

鈴「こ、このことについては別に押し付けるつもりはないの! ただ、三人にも協力してくれたらなぁって……思ってるだけで……」

 

恵里「……ふぅん」

 

清水「あ、あー……ええと、その……」

 

鈴「南雲君は、元の世界に戻るために頑張ってる。なら、彼のお手伝いをすればきっと戻れるんだよ」

 

鈴「だからね、檜山君たちにも協力してほしいから――」

 

 

恵里「ホントうざいよね、お前」

 

 

鈴「……っ」

 

清水「お、おい……」

 

恵里「あのさ、なんで君がここに来たのか当ててあげようか?」

 

恵里「活躍の場を用意して、ボクたちの印象をアップさせようって腹なんだろ?」

 

鈴「あ、あの……」

 

恵里「おやさしい鈴ちゃんだからねぇ? 元の世界に戻るために、協力させればきっと裏切り者のボクたちの印象は回復するだろうさぁ?」

 

恵里「そうやって……いい子ちゃんぶるためにボクたちを利用するつもりかよ。偽善者」

 

鈴「……そ、れは……」

 

清水「お、おい。やめろって……」

 

檜山「……」

 

恵里「……」

 

檜山「谷口、この件。俺にも噛ませてくれ」

 

鈴「! 檜山君……!」

 

恵里「……なに? キミも罪滅ぼしのつもり?」

 

檜山「……ない、とは言い切れないな。そういった算段」

 

檜山「ただ、もう静観しているのも……サポートするってだけじゃそろそろ限界がある。このまま傍観者を気取ったままだと、王都側のごたごたや準備の済んだ魔人族による攻撃に対処できない」

 

檜山「何かが勝手にどうにかなるじゃなくて、誰かがどうにかしてくれるんじゃなくて」

 

檜山「俺たちが、自分たちで動かなければ……流されるままの結果に翻弄されちまうだけだ」

 

恵里「へぇ? そういえばこの旅って白崎さんが同行するけど――」

 

檜山「だからこの戦いは世界のためでもなければ、白崎のためじゃねえ」

 

檜山「俺は、俺のために戦う」

 

清水「……」

 

恵里「……」

 

檜山「お前らはどうする」

 

ガチャンッ……

 

清水「言うまでもない。谷口、南雲のほうに俺も同行することを伝えてくれないかな」

 

鈴「も、もちろんだよ!」

 

清水「な、なんにも思い通りにならなくてさ。自分の能力で好きなことをして……人の心を操って好き放題にしようって思ってた」

 

清水「それでも思い通りにならねぇのが歯がゆくてさ……なんか、そう考えてるだけでイライラして、なんにも楽しくなくなってさ……」

 

清水「でも、それだったらせめて俺の気持ちだけには従っていたい」

 

清水「魔法を使わなくても、自分で立って歩いて考えられることは……魔法を使わなくても唯一俺に出来ることだから」

 

鈴「……その、エリリ……恵理……」

 

恵里「……」

 

スッ……

 

鈴「? これ……イラスト?」

 

恵里「この似顔絵の子供……ボクが助けた子だ」

 

恵里「……この子、どうなった?」

 

鈴「ええと……」

 

鈴「あ、そうか! あの子か……大丈夫だよ。今、避難所でこの子のおばあちゃんらしき人が居たから……預けておいてるの」

 

恵里「……そうか。なーんだ、孤児になってなかったのか」

 

恵里「死んだら……ゾンビにして操ってやろうと思っていたのにねぇ」

 

鈴「ちょ、ちょっと……!」

 

スクッ……

 

恵里「だったら王都にいる理由はないな。いつ出発するわけ?」

 

鈴「……! 恵理……! エリリン……!」

 

………………

 

【王都出発まであと数日。王宮、食堂にて】

 

リリアーナ「皆さん、お集まりいただきありがとうございます」

 

ガヤガヤ……

 

ハジメ「……」

 

光輝「……」

 

リリアーナ「こうして集まってもらったのはほかでもありません。私たちの今後のことです」

 

リリアーナ「皆様も知ってる通り、私たちは窮地に陥っています。この世界を産み落としエヒトさま……エヒトがこの世界を滅ぼす悪神としての姿を現し、先日の王都侵攻により、聖教教会の権威は地に堕ちてしまいました」

 

リリアーナ「そうなれば、今こうして聖教教会……エヒトによって召喚された皆様方の身の安全を優先的に考え、今後は王宮や周囲の者たちから庇うためにも……皆様方にも多少は王都内での雑務を手伝っていただきます」

 

リリアーナ「さて、それでは本題ですが……」

 

 

リリアーナ「私たちは、この善意の協力者であるハジメさんの協力を得て、帝国への会談に臨もうと思っています」

 

 

ザワザワザワ……

 

光輝「……一つ聞いて良いか? なぜりり……リリアーナさまがわざわざ帝国に……?」

 

雫「王様は健在。そうであるならば、別に姫さまでなくても……」

 

リリアーナ「理由は、交渉を円滑に進めるうえで私は必要不可欠だからです」

 

リリアーナ「帝国を治める皇帝ガハルドの息子、つまり皇太子であるバイアスさまと婚約関係にあるのです」

 

ザワ……

 

光輝「こ、婚約……」

 

リリアーナ「私のお父様とお母さまはご健在……ですが、これから先続く魔人族との戦いを考慮すれば、より国同士の関係を深めるためにもこの婚約を進める必要があるのです」

 

リリアーナ「この婚約は魔人族との闘い以前から浮上していた話でした。よって、今度の会談でそれを形にしようと……」

 

雫(……なかなかの覚悟ね……リリィ)

 

リリアーナ「ただし、私としても好き勝手されるつもりはありません。先ほども触れたとおり、この国は確かに襲撃されましたがまだ防衛体勢は盤石。国王も健在であればまだまだ簡単に揺らぐことはないでしょう」

 

リリアーナ「私には、この婚約という切り札がある。私や、この国と関係を持ちたがるこのエサを用意し……なんとか帝国と協力関係を築けないかと……そう考えています」

 

檜山(……なるほどな。一部のクラスメイトだけをここに引き連れたのはそのための密会ってことか)

 

清水(側近やらがいないと思ったらなるほどなぁ)

 

リリアーナ「……さて、今回の一件にて、ハジメさんにはいろいろと手伝っていただきました」

 

ハジメ「……まず俺から言えることは、王都を含めて聖教教会によるごたごただ。これをまとめるために、俺は王女様に『提案』してみた」

 

 

ハジメ「それが……『善のエヒト』だ」

 

 

ザワザワ……

 

龍太郎「善の……エヒト?」

 

ハジメ「確かにエヒトはこの世界に顕現した。奴がその醜態をさらし、自らの行動で堕ちて行ったのはやつの自業自得だ」

 

ハジメ「だが、これらの騒動をまとめるためにも情報が錯綜してまとめようがない。だから、ここで一つの案を提示してみた」

 

ハジメ「『実は醜態をさらしていたあいつは悪のエヒトであり、真なる善のエヒトが使者を遣わした。それがクラスメイト達だ』……ってな」

 

恵里「なるほどね。そうすればエヒトの威光は健在だし、ボクたちの悪しき神の使者というレッテルは剥がされる」

 

清水「なんか、こういうの地球の宗教にもあったな。グノーシス、だっけ……」

 

龍太郎「グノ……なに?」

 

清水「……今度説明するよ」

 

光輝「それにしても、よくこんなことを国王様が許可を出したな……」

 

リリアーナ「強力な力を持っていたとしても、国そのもの……丸ごとを守るともなれば他者とのつながりは大事ですから……やはり、人間関係だけはムシできないんです」

 

ハジメ(……人間、関係か……)

 

リリアーナ「ハジメさん。当日はよろしくお願いします」

 

ハジメ「……ん、あ、あぁ……」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――夢の中】

 

――ふーん、へー、そんな話があったんだ

 

ハジメ「……まぁな」

 

――にしても一気に大所帯だなぁ。男女バランス一気に改善されていて見ていて気持ちがいい

 

――次はハルツィナ……の途中にある帝国か

 

ハジメ「おそらくだが……いや、絶対、百パーセント巻き込まれることが確定している気がするんだよな……なぜだか」

 

――そっかぁ……

 

――うん、がんばれよな

 

ハジメ「……ん? うん……」

 

ハジメ「……あれ、もしかして今日の話ってこれで終わりか……?」

 

――うん、おしまいおしまい

 

――じゃ、ちゃっちゃと帰ろうか!

 

ハジメ「……えっ、えっ!? ちょっ、本当にはやくねぇ!?」

 

………………

 

――……

 

スッ……

 

============================

 

南雲ハジメ 17歳 レベル:???

 

信仰:∞

 

============================

 

――……『信仰』の、ステータス……

 

――やはりだ、これはバグではない。正常に数値化されている……

 

――それだけじゃない。この信仰ステータス……ハジメ以外のクラスメイト……いや……

 

 

――トータスにいる者たち全員に……表示されている……?

 

 

――しかもこの数値、私にしか見えてないだと……? 現実にいる人間たちは、トータスの者たちはこの数値が見えてないのか?

 

――どういうことだ、なんでこんなのが数値化されてる……? ステータスプレートはあくまで所有者の肉体的ステータスとスキルだけが表示されるはず

 

――本人の人間的、精神面の変容はそれこそ特殊なスキルでなくては……

 

――いや、そもそもこの数値がおかしい。∞表示もそうだが……あのハジメの信仰心が『無限』だと……?

 

――なんでだ……? だって、エヒトに対する信仰心なんてあるはずもない……異世界の人間がどうして信仰を……

 

――……まて、だとしたら

 

――この数値は……何を『信仰』しているんだ……?

 

……コツコツコツ……

 

 

シア「……」

 

 

――……ん、あぁ、すまないなシア

 

シア「……あ、あの……どうして、今晩は私だけをお呼びになったのでしょうか……」

 

――いや、ちょっとな……キミだけ、個人的に話したいことがあって呼んだんだ

 

シア「私とお話を?」

 

――あぁ、キミの素養について

 

 

――南雲ハジメ以上の……本当の最強になりうるキミとお話をね

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

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