生まれた時から最強だった   作:roborobo

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第13話

 

 

【シアの夢の中】

 

――お客さんいらっしゃーい!

 

シア「……は、はぁ……」

 

――あらぁ、つれない返事じゃなーい。女の子は笑顔のほうがかわいいのよぉ?

 

――……

 

――そのはやく本題に入らせろって顔、すごいね。めっちゃ怖い

 

シア「そう思ってるならさっさとしてください。時間が無限にあろうとも苛立たしいのは変わらないので」

 

――ふむ……

 

シア「あなた、さっき言ってましたよね」

 

シア「ハジメさんよりも私のほうが最強になり得ると。本当に強いのは……私のほうだと」

 

――ああ、言ったさ。確かに言った

 

――……前に言ったことがあるな? お前たちと神山で戦った時の事だ

 

――私はかつて友とであるモノたちの言葉を振り切り、一人ぼっちになってしまった

 

――周囲を顧みず、自分のやりたい事だけを追求して……他者とのかかわりを断ち切ったことを

 

シア「……それで、何が言いたいのですか?」

 

――今のお前の目は、その時の知り合いの『目』に似ている

 

シア「はぁ? なんで私がそんな目を……」

 

 

――お前、本心ではハジメに対して愛想をつかしているだろ

 

 

シア「……なに、いって……」

 

――嘘は通じないぞ。私は、お前たちの心の内を探ることが出来る

 

――今までは遊びの場で変に精神操作など使用せず……あくまでお前たちの心に寄り添う形で接してきた

 

――まぁ、よっぽど内面的に複雑なコンプレックスやカッチカチの外面を持っている奴には流石に強行突破したけど……

 

――……お前が好きになったあの男……もしもこれから先も好き合っていくのであれば、今お前の中に残るしこりは今のうちに排除したほうがいい

 

シア「……」

 

――お前のハジメを見る目に、以前ほどの熱を感じられない

 

――それが、日に日に熱を失っているように……私にはそういう風にしか見えんのだ

 

シア「……」

 

――いったいいつからだ?

 

――奴が香織にフラれたときか?

 

――光輝たちが魔人族の女と戦った時に言い負かされたハジメを見たときか?

 

――それとも……神山で奴が負けたときか?

 

シア「……」

 

――お前の本心を聞かせろ

 

――私も出来ることなら変に心の内をこじ開けるような真似をしたくない

 

シア「…………」

 

シア「私は、私たちはずっと虐げられていました」

 

シア「亜人族として生まれ落ち、さらに穏やかで平和を愛するハウリアであるなら……命の安い世界ではいとも簡単に踏みつぶされるのがオチでした」

 

シア「しかも、家族が追い詰められていたのは私の特殊な力のせい。私さえ生まれて来なければきっと家族たちも」

 

シア「その時に、あの人が現れたんです」

 

シア「あの人が、私たちの閉塞感を打ち破ってくれた」

 

――……

 

シア「あの人は、とっても強くて、すっごい残酷なほどに怖いところがある魔王様だけど……それでも、誰かを捨てられない優しさを持っている」

 

シア「私はあの人についていく。たとえユエさんほどの大切になれなくても……私はあの人の傍らに寄り添うたくさんのうちの一人でいい」

 

シア「それが私の答えでした。あの人を支えるいくつもの妻のうちの一人として……」

 

シア「……だけど」

 

――けど?

 

シア「私は、あの人が分からなくなったんです」

 

シア「あの人は強い。強いけど、それはどこまで行っても人間としての強さの延長線。根っこに人間としての感情が残り続けるなら、その心の内側に……弱い部分がずっと残る」

 

シア「ハジメさんの弱さを知れて、実はすこしうれしかったんです。あんなふうに、自分の弱さを見せてくれたことが……本音の部分を打ち明けてくれていて……」

 

シア「この人が、どこまでも冷徹に徹しようとしても、どこかで捨てられない人間らしさが残ってるんだって」

 

シア「だからわからなくなったんです。私が、あの人を……ハジメさんの……」

 

 

シア「どこを好きになったんだろうって」

 

………………

 

…………

 

……

 

【トータスの空、『飛空艇フェルニル』内部にて】

 

檜山「ぐむむむ……」

 

清水「……むぅ」

 

龍太郎「ぬっ……」

 

シュッ……パシッ……

 

龍太郎「っしゃぁ! いちあがりぃ!!」

 

檜山「っだぁぁぁあぁ! やってらんねぇー! またお前かよぉ!!」

 

龍太郎「はははは! 俺にババ抜きで勝とうなんて百年はぇぇよ! こういった勝負事には勘で十分だ十分!」

 

清水「や、野生の本能パネェ~……」

 

コツコツコツ……

 

雫「……なんだかえらく楽しんでるじゃない」

 

龍太郎「よっ! 雫もやってみっか?」

 

雫「やらないわよ。それにしてもここってトランプとかあるのね」

 

檜山「いやー、トランプだけじゃねぇんだわ。簡単なボードゲームも常備してあるし、しかもこん中ちょっとした広いホールもあってボール遊びも出来るぜ!」

 

龍太郎「あとでドッジボールやろうぜドッジボール!」

 

清水「あ、じゃあ俺は避ける係で……」

 

檜山「う、うん……頑張ってね……?」

 

雫(運動系苦手特有の回避係……)

 

………………

 

リリアーナ「……ま、まぁ! おじいさまは法律関係者……と」

 

光輝「まあね。俺もいつかはおじいちゃんみたいになりたいなぁって思ってて」

 

光輝「だから……ね? 俺も、そのー……頑張りたいなぁって思ってて」

 

光輝「……あぁ、うん……うん……」

 

 

兵士たち「「「「「………………」」」」」

 

 

光輝「……」

 

光輝(いや空気重っ。護衛のためになんでこれだけいるの……)

 

リリアーナ「……やっぱりご迷惑でしたか?」

 

光輝「えっ? あ、いやいやいや! そんなことないよ! リリィはお姫さまだもんね。そりゃあ兵士の存在は必要さ!」

 

リリアーナ「……申し訳ございません。何分、この船そのものが頑丈で強固と言えども一国の姫ともなればそう簡単に一人になるわけにはいかないので……」

 

リリアーナ「それに、万が一、億が一に殿方と二人っきりになったら……コトですし」

 

光輝「あー……そっかそっか。確かにそこらへんはね、うん。分別がね……」

 

 

イシュタル「かと言ってこのような少年は色恋沙汰に疎いですからな。変に押そうとしたところで二の足を踏むだけが落ちかと」

 

 

光輝「……」

 

リリアーナ「……」

 

イシュタル「……」ズズズズッ……

 

イシュタル「ふむ。東にある国の茶葉ですか。私の舌には十分に合いますな」

 

イシュタル「お茶うけはありませんかな?」

 

光輝「いや、俺にはわかんないですね……」

 

イシュタル「……はぁ、そうですか」

 

光輝「……」

 

リリアーナ「……」

 

光輝(……あのっ、あのっ!!! な、なんでこの人連れてきてんの!?)

 

光輝(この人、曲がりなりにも……表では悪神を信仰する邪教徒ってことになってるんでしょ!? 牢獄にぶち込まれて何もさせないって話じゃなかったっけ!?)

 

リリアーナ(……ははぁ、いや、それがその……)

 

イシュタル「国王様にちょっとばかしお願いをしたのですよ。邪教徒である私めを王国から追放すれば、邪教の手先による魔人族から狙われることはなくなるやもしれませんぞ……?」

 

イシュタル「っていう感じで」

 

リリアーナ「……兵士づてに魔人族の秘密だとかエヒト神の秘密などと記された手紙を私たちに寄越し、それを読まされたお父様がハイリヒ王国からの永久追放処分……という名の釈放」

 

リリアーナ「つまり上記の手紙の内容で暗に『このまま自分を置いておけば邪教の手先によってまた王国が狙われるかもね?』みたいに伝えたってことです……」

 

光輝「牢屋にぶち込まれてる側が国王に脅しをかけたの!?」

 

リリアーナ「元々が表立った話では悪神の信者ということになっていますし、彼の言葉には説得力があったんです。元が『敵側』みたいなものですし」

 

光輝(あぁ……信仰云々を置いといても敵国のスパイが重要機密をしゃべります!って言ってるのと同じようなもんなのか)

 

リリアーナ「それから、見事牢屋からも国からも追い出されたイシュタル……さんは一人になり……」

 

イシュタル「で、『たまたま』一人になっているところを『たまたま』南雲殿に拾ってくれたと言うわけですな。いやぁ、幸運だった」

 

リリアーナ「あのっ、まるで見計らっているかのようにばったり出くわしてビビったってハジメさんが言ってたんですが」

 

光輝「ぬ、ぬけぬけと……」

 

イシュタル「まぁまぁよいではないですか」

 

イシュタル「それに此度の話、何も私自身が何の役にも立たないとは限らないのですから」

 

光輝「……なんだって?」

 

イシュタル「先ほどあなた方が触れていたのをもうお忘れですかな? 表では、悪の偽エヒトが善のエヒトを騙している……みたいなことになっていると」

 

リリアーナ「……エヒト神がどんな神であれ、何千年もこの世界や人の心を支えてきた偉大なる神には違いありません。それを揺るがせるような真似をすれば、一気に国は瓦解します」

 

リリアーナ「だからこそ、ハジメさんはそれを心配し、悪のエヒトや善のエヒト、ひいては愛子さんを豊穣の女神として矢面に立たせていたのです」

 

イシュタル「その通り。エヒトの名に揺らぎが生じた以上、人々の精神的支えが崩れればまたたくまに魔人族、さらにはエヒトの先鋭たちによって突き崩される」

 

イシュタル「これがハイリヒ王国だけならマシ。もしもヘルシャー帝国ですら乗っ取られてしまえば、仮にあのハジメ殿は平気でも国や周囲は無事では済ますまい」

 

光輝「それであなたが釈放されたのとどう関係が……」

 

イシュタル「だからこそ、私が帝国に直接足を運び、こう宣言するのです」

 

イシュタル「『人々よ、ご安心くだされ。私は聖教教会の教皇イシュタル。エヒト神を名乗る不届きの神を罰するために、我々は動き申した』」

 

イシュタル「『今は戦乱の世が訪れているが、いつかは平和な世が来ることを保証しましょう。なぜなら、悪神に操られた私もこのようにして洗脳を解かされた。私自身がその証拠だ』」

 

イシュタル「……と、言う感じに」

 

光輝「……あっ……『イシュタルとしての立場』を利用して説得に応じるってことか!?」

 

イシュタル「左様。エヒトに盲信していたころの私を、悪のエヒトによって操られていたと言うことにし、それらから解放されたことにすれば悪のエヒトは決して理不尽で跳ねのけられる存在ではない、と印象づけられる。私はまさに生き証人なのです」

 

イシュタル「加えて、あの王都侵攻の折に地に堕ちた私の名が回復すれば、とたんに私自身の『名』や『肩書』が利用可能となる」

 

リリアーナ「内部の混乱や王都や聖教教会に関するゴタゴタはお父様にとっても頭痛の種でした。外部から起こされた問題もそうですが、それらが片付かないうちに教会と王国との状況を整理したい……」

 

リリアーナ「そうなれば、イシュタルさんの存在は重要になります。聖教教会の内部にはいまだにエヒトに対して妄信的なものが多い。その宗教……内部でトップに立つイシュタルさんならば、妄信的な信者に対して説得も可能ということです」

 

イシュタル「帝国側は実利を取るが、決して無神論者ばかりではない……私の言葉は、皇帝だけでなく現地にいる帝国の人間の耳にも届く」

 

光輝「……なる、ほど……合理的な作戦だ……!」

 

光輝「……」

 

光輝「……ん?」

 

光輝「オイちょっとまて!? アンタなにどさくさに紛れて過去の自分の行いを『操られていました』で済ませようとしてんの!?」

 

光輝「しかもちゃっかり無罪放免と今後の教皇としての椅子を確保してるし!!!」

 

イシュタル「……はて、この年になると記憶がめっきり薄れてきましてなぁ……?」

 

リリアーナ「……その、光輝さん。申し訳ありませんが、この辺の王国と教会のずぶずぶな所には触れないでくれるとうれしいです……」

 

リリアーナ「何分、宗教というのは国と密接にかかわっている以上、切っても切り離せないんです。人の精神的支柱、ともなれば下手をすれば支持は国の王に並んでしまう物のほどですから」

 

リリアーナ「それを、『実はこうだった』という形で荒れる前の状況に戻しながらも改善していくなら」

 

リリアーナ「まぁ、うん」

 

イシュタル「はて、そういえば光輝殿の世界では国と宗教はそこまで密接ではないのですかな?」

 

光輝「……え、えーと……俺たちの国では政教分離って言って国と宗教は別って感じなんです」

 

光輝「ただ、これはいろいろと歴史での積み重ねがありまして……」

 

イシュタル「そう、歴史の積み重ね。ヒトの歴史の積み重ねがあってこその歴史」

 

イシュタル「ですが、この世界にそんなものは実は一切ない。悪しきエヒトによる盤上としての歴史があるだけ」

 

イシュタル「人が人であるがままに流れて行けば得られていたであろう、国と神を切り離す概念。いわば、これはそのための第一歩なのです」

 

イシュタル「無限に続く未来。その流れを作るためならば、老い先短いジジイが腰を据えても未来の歴史の筆記試験への暗記問題の一つ程度にしか残りますまい」ハッハッハ……

 

光輝(た、タヌキジジィ~~~~~~…………っ)

 

イシュタル「なに、ハジメ殿も同行には良い笑顔で返してくれましたぞ?」

 

光輝「えっ、ついていくの……?」

 

リリアーナ(苦虫をかみつぶしたような顔をしてました)

 

………………

 

ヒュォォォォォ……

 

ハジメ「……」ボーッ……

 

コツコツコツ……

 

シア「……ハジメさん、ちょっと隣いいですか?」

 

ハジメ「? シアか。いいけど……」

 

シア「ふふっ、失礼しますね」

 

スッ……

 

シア「……ハジメさん、その、率直に聞きますけど」

 

シア「ハジメさんって、昔はどんなふうに暮らしていたんですか?」

 

ハジメ「あ? 昔の俺……?」

 

シア「はい。私、ちょっとこれまでのことを振り返ってみたんです」

 

シア「初めてハジメさんたちと出会ったときのこと、ユエさんたちとの日々を過ごしてきたこと」

 

シア「そこでちょっと気になったんです。奈落に落ちる前の……例の、ハジメさんたちが暮らしている世界のことで」

 

シア「ハジメさんは、どんな風に暮らしてきたんですか? いつも、どんな事を考えて生きてきたんですか?」

 

ハジメ「? どんなふうにって……どんなことを生きてって……」

 

ハジメ「……ええと……」

 

………………

 

ハジメ「……とまぁ、こんな感じだよ。俺は、そんな弱いいじめられっ子だったんだ」

 

シア「………………」

 

ハジメ「ただ、あの頃は本当に……自分の好きなことだけをして生きて行けばいいかなって思ってな」

 

ハジメ「やりたい趣味はたくさんあって、やりたい仕事も親から斡旋してもらって、だから学校なんかも……真面目に行く必要なんてなかった」

 

ハジメ「俺からすれば、自分の趣味を優先して生きてるだけ……」

 

 

ハジメ「『趣味のついでに人生を生きる』。それが、俺の生き方だった」

 

 

シア「………………」

 

ハジメ「なんか、こんなことを……最初にしゃべったのがお前ってのが変な感じだな」

 

ハジメ「……ユエやティオも連れて行くだろうし……最初に自分の胸の内を開くことが出来て……よかったよ」

 

シア「………………」

 

スッ……ギュッ……

 

ハジメ「? シア……」

 

シア「ハジメさん、何かあったら……全部私に何でも話してください」

 

シア「不安なことがあったら相談してくれればいい。悲しいことがあったら私に甘えてくれていい」

 

シア「だって、私は誰よりも自分の道を突き進む『最強の魔王』を支えるために戦ってきたのだから」

 

ハジメ「……シア」

 

シア「ハジメさん。私は、私の信じる『魔王様』のために戦ってきたんです」

 

シア「私を救い、私たち家族に新たな道を指示してくれた……あなたを信じてきた」

 

シア「だから……もっと甘えてください」

 

ハジメ「……すまん。ちょっと、胸を借りる……」

 

シア「……ふふっ。いいですよ」

 

ガタンッ……

 

ハジメ「? なんだ……フェルニルが揺れた……」

 

シア「何かあったんでしょうね。行ってみましょう」

 

………………

 

【トータスの空、峡谷の合間にて……】

 

ハウリアたち「「「「「お久しぶりですっ!! ボス!!!」」」」」

 

光輝「うるさっ!? な、なんだこれ!?」

 

香織「えええーーーーっと……この人たちは……」

 

ハジメ「まぁ、その……いろいろとな」

 

龍太郎「……あっ、お前前に言ってたなぁ! なんかめっちゃシゴいて強くさせた兎人族の話! そっかぁ、この人たちか!」

 

リリアーナ「兎人族が帝国兵を虐殺している攻撃に護衛の兵士たちが唖然としていましたんですが……」

 

ハジメ「……話が早くて助かる……おい、ユエ。ディスプレイで表示された奴らがいるって聞いたけど……これは……」

 

ユエ「……画面で表示されているのが、帝国兵に追われている亜人族がいるのを確認された」

 

ユエ「それを撃退し、全員を葬った場面がディスプレイに映っていたの。それで、あの場所にいるのが……」

 

ガサガサ……

 

檜山「うぉっ!? 馬車の中には見慣れない亜人がいっぱい!?」

 

恵里「これは……なるほどね。奴隷を運んでいたわけか」

 

清水「でもおかしくねぇか? あっちじゃ奴隷って結構いるって話は聞いたけど」

 

恵里「……よく知ってるねぇ? 清水くん?」

 

清水「ちょ、変な目を向けんなって……」

 

清水(……昔、奴隷欲しさに調べてましたってのは言わないほうが吉だよな……うん……)

 

ザッ……

 

パル「ボス! そのことについてはこの方から……」

 

ハジメ「お前はパル……」

 

パル「いえっ! 必滅のバルドフェルドでさぁ……」

 

ハジメ「あ、うん」

 

パル「そしてあっちにいるのが『空裂のミナステリア』、『幻武のヤオゼリアス』、『遺斬のヨルガンダル』、『霧雨のリキッドブレイク』で」

 

ハジメ「いや聞いてない聞いてない」

 

パル「これもすべてボスのおかげでさぁ……」

 

ハジメ「やめろやめろやめろ。お前たちの中二病ブームを俺のほうにふっかけんな」

 

龍太郎「そうか……これも南雲の影響か……かっけぇな!」

 

雫(悪気ゼロで追い込んだわね……)

 

光輝(純粋な好奇心が南雲を追い詰める……)

 

ハジメ「あのっ、やめて、マジでやめて? こいつらが勝手に暴走してるだけだからね?」

 

ザッ……

 

アルテナ「……あなたが、南雲ハジメ殿……ですよね?」

 

ハジメ「あ、あぁ……あんたは」

 

アルテナ「私はフェアベルゲン長老衆の一人、アルフレリックの孫娘。アルテナ・ハイピストと申します」

 

………………

 

光輝「そうか……魔人族は帝国や樹海にいる亜人たちにも手を出していたのか……」

 

アルテナ「その通りです。帝国の様子はわからないままですが、樹海のほうは強力な魔物たちによってやられてしまったのです」

 

パル「攻め込んできた魔物たちはあらかじめ作っておいたトラップ地帯に誘導しました。幸い、魔人族は人間たちと同じように俺たちを見下し、油断してくれたのが虚を突くことが出来たんです。けど……」

 

アルテナ「魔人族によって樹海は惨憺たるありさま。大勢の被害者と負傷者を出し、しかもそこに帝国兵たちが乗じて……」

 

ハジメ「……だとしたらまずいな。襲撃してきた魔人族、しかもそれで帝国兵がここに来ると言うことは……」

 

パル「お察しの通りでさぁ。やつら、あらたな奴隷の『補充』ということで連れ去ったわけです」

 

パル「これは族長が生き残りの帝国兵を締め上げて得た情報です」

 

パル「気づけば、こちらの……ハウリアのほうも何人か連れ去られていました。さすがに同胞を放ってけないと思った族長は、すぐさまに少数で帝国へ向かったのですが……」

 

ハジメ「連絡はこないまま……か」

 

パル「族長が帰還しないことを悟った俺たちは急いで帝国へと向かいました。調べた結果、族長は帝国からの脱出失敗」

 

パル「今、この帰り際にどうしようかと思っているところにちょうど亜人を運んでいた馬車を発見して……」

 

恵里「なーるほど。このありさまなわけか」

 

清水(子供なのにすっげぇ眼力……チート能力持ってるのに気圧されちゃってるよオレ……)

 

ハジメ「……で、このままお前たちは……」

 

パル「……」

 

 

パル「族長の救出に向かいます」

 

 

ハジメ「……」

 

シア「……」

 

パル「族長同様、このまま放ってはおけません。何とかこちらのほうで仲間を集めて、隙をついて忍び込もうかと……」

 

パル「その、ボスには……その……」

 

ハジメ「……」

 

雫(……ん? なんで口をもごもごさせてるのかしら)ヒソヒソ

 

檜山(こいつらの態度を見るにかなりの威圧感と力強さで押さえつけていたみたいだな……委縮してるぜこのガキ)ヒソヒソ

 

香織(少し前の南雲君だったら、もしかしたらこの子のおねがいを突っぱねていたかもしれない)

 

光輝(……だけど)

 

ポン……

 

パル(……えっ、頭を撫でられた……?)

 

ハジメ「……その、なんだ」

 

 

ハジメ「変に無茶はするな」

 

 

パル「……ぼ、ボス……?」

 

ハジメ「……俺は、確かにお前たちを鍛え上げた。厳しい世界の中で生き残れるようにと……わずかに関わったとは言え、お前たちにはかなりの力を付けさせてやった」

 

ハジメ「だから……お前たちに力を預けさせた責任者として……変に無茶な方向に吹っ切るな」

 

ハジメ「……お前はまだ、子供なんだから」

 

シア「………………」

 

パル「………………」

 

光輝(……確かに、奈落の一件では南雲を暗い世界に落とし、すべての敵を薙ぎ払うバケモノと化したかもしれない)

 

光輝(それでも、誰かにやさしくなれるアイツの心が残っていれば……きっと、彼らを救ってくれる)

 

光輝(だって、もう損得や利害ではなく助けることを考えられているのだから)

 

檜山「……なんか」

 

檜山「余計に顔を合わせづらいなぁ、オイ……」ボソッ

 

清水「? なんか言った?」ボソボソッ

 

檜山「なんでもねぇよバカ」ボソッ

 

パル「ありがとうございます。ボス」

 

パル「こちらのほうで準備を済ませておきますので……」

 

ハジメ「あぁ、頼む」

 

シア「……」

 

シア「ありがとうございます。ハジメさん」

 

ハジメ「ん、あぁ……なんだ」

 

ハジメ「お前に憂いた顔をさせたくなかった。力になれればって思ってる」

 

シア「分かりました」

 

シア「それじゃあ、フェルニルに乗り込む前にちょっとパルくんたちとお話してきますね?」

 

ハジメ「? あ、あぁ……え? これから先鋭メンバーを乗せていくんだし、別に乗ってからでも」

 

シア「ちょっと相談しておきたいことがあるんです」

 

シア「大事な話ですから」

 

………………

 

 

【……それから、ヘルシャー帝国に着くまでにいろいろと時間を重ねて……】

 

 

檜山「へ? お前って酒呑むの?」

 

ハジメ「あ? あぁ……父さんに教えてもらったんだよ。おいしいお酒の飲み方って」

 

清水「へぇー、意外。やっぱあれ? 梅酒とかなん?」

 

ハジメ「俺もあんまり覚えてないけど、日本酒? だったかな。あと、水で割ったやつ」

 

檜山「ふーん。オレはさぁ、よく親戚の兄貴に買ってもらったもんを分けてもらったりするんだけどよ」

 

檜山「毎回変な酔い方するんだよなぁ。絡み酒っていうの? アイツらなんて俺がすっげぇうざくなるから一緒にのみたくねぇっつってんの」

 

ハジメ「呑んでる酒が合わないんじゃないか? あんまり度数の高い奴よりも口当たりが良いやつとかのほうがいいと思うぞ?」

 

檜山「お? 経験則? お前も酒の酔いでいやな体験した口?」

 

ハジメ「それはない。あんがい強い体質みたいでさ」

 

ハジメ「ただなぁ……この体になってからはぜんぜん酔えないんだよ。泥酔って状態異常扱いみたいでさ」

 

清水「……俺も飲んでみようかな。おススメ教えてよ」

 

ハジメ「果実酒とかは? この世界にも似たようなのがあったぞ」

 

檜山「あーはいはい。あれってドライフルーツを一緒に口に入れるとうめぇんだよな」

 

清水「へぇ。帝国行ってみたら呑んでみようかな」

 

………………

 

鈴「……え、えへへへ……」

 

恵里「……」

 

プイッ……

 

鈴「ちょ、ちょっとお話しようよぉ……」

 

恵里「……」

 

プイッ……

 

鈴「……うぅぅぅ……」

 

………………

 

ユエ「……本当に? あのハジメが?」

 

光輝「喧嘩なんてもっぱらやるような奴じゃなかったし、なんだったら絡まれて土下座するくらいだったからね」

 

香織「私も、そんな彼が好きだったんだけど……今にして思えば、恥だとかそういうの……考えない人だったのかな」

 

雫「アンタはずーっとそれで気にかけてばっかだったもんね。面白い人が居るーって言って」

 

香織「え、えへへへ……」

 

ユエ「むぅ……参考になった」

 

………………

 

 

【……各々が思い思いの時間を過ごし】

 

【ヘルシャー帝国まで、あと数時間】

 

 

 

【――夢の中】

 

――……うーん、うーん

 

――結局この信仰のステータスってなんなんだ……?

 

――……うーん

 

………………

 

…………

 

……

 

 

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