【ハジメという男に対する印象】
【とある女子生徒の言葉】
――あの、聞きたいことがあるって何のお話でしょうか
――え、クラスメイト? 『なぐもはじめ』……あ、ああ。同じクラスの南雲くんのことですか?
――あ、はい。同じクラスメイトですよ。といっても……私は一回も話しかけたことなんてないし、関わった事なんて……
――? 知っている事を話してほしい? いや、だから同じクラスの男子ってだけで話したことも知り合ったこともないんですって
――……ぅ、あ、あー……は、はい。はい、そうです。ぶっちゃけ、クラスでのいじめられっ子ですよ彼
――なんでって……いわゆる世間一般で言う所のオタクなんですよ。ほら、オタクですよオタク
――なんだっけ、たしか夜中にやってそうな女の子がおっぱいを見せつけながらそれをこっそりと見てニタニタしているような?
――話したことはないけどそういう男の子なんじゃないですかね。まぁ、それでカースト上位の男子からは疎まれたりはしてるし……
――えっ? 『他にも理由はあるだろ』……? え、えー……なんだろ、そう言われても……
――あっ! ありましたありました! たしかあの子! 白崎さん! 学校の二大女神だ!
――学校の二大女神って言うのは、要は学校で誰からも人気のある美少女女子生徒のことなんです
――私も何回かお話したことありますよ? だって同じクラスメイトだし! それにお近づきになりたいじゃないですか!
――……あ、あー、そういえば……そういう事か。あ、いえ、ちょっと思い出したことがあるんです
――さっき言っていたいじめグループの男子がいるって言ったじゃないですか。その中で檜山くんって男の子がいるんですけど、彼が南雲くんをいじめてるんです
――で、さっきはオタクだから虐められていたって言ったじゃないですか。実はですね、これは推測なんですけど……檜山くんって白崎さんに気がるんですよ。ほら美少女だから。檜山くんとしても振り向いてほしかったんでしょうねー
――それで面白い事にですね、実は白崎さんって南雲君のことをいつも気にかけてるんですよ。学校の二大女神の内の一人がさえない男子を気に掛ける。私のクラスでは有名なんですよ
――だからなのかなー、檜山くんからしたら面白くないんでしょうねぇ
――……うーん、あ、ほかにもあるかも……
――実は白崎さん、女子にも人気があるんですよ
――……あ、言っておくけど違いますからね? お耽美な理由とかそういうのじゃありませんからね?
――えっと、そうじゃなくてですね……ほら、さっきも言ったように南雲君って白崎さんに気にかけられてるって言ったじゃないですか。白崎さん、いつも簡単な食事でお昼を済ませようとする南雲君のことを心配して……
――それで南雲君の分のお弁当を持ってきたりするんです。でも、南雲君はお腹いっぱいだから良いって言って……彼からしたらおせっかいだけど、親切を無下にしたりしてるから周りからはあまりいい顔はしないんです
――……えっ? ええ、一回や二回ではないですよ。よくも白崎さんの親切を無駄にしやがってーって
――……? 『男子はともかく女子が怒るのがわからない』? ああ、これ以外と思われるかもしれないけどあるんですよ。女子の間でも
――いわゆる仲間意識? 同調? ほら、白崎さんって女神って言われるくらい人気のある女子じゃないですか。白崎さん、自覚ないけど
――……だから、なんですよね。ほら、こういったグループって出来ると他所のグループを他人だと意識しちゃうんですよ
――それで、白崎さんって人気があるから……白崎さんに同調しない南雲をゆるすなーって。親切にしてやってんのに何様? 南雲って冷たいよねーって
――……はい? 最後の質問?
――……『南雲ハジメとはどんな人間か』?
――……えーと、だからさっきも言ったように話したこともない男子だからわからないんですよ
――はい? 理由はほかにあるはずだって……
――……ぅぅん……
――あれ、そういえば南雲くんって……
――誰かに話しかけたこと……あったっけ……
【平日、教室】
【朝】
檜山「よぉ、キモオタ。クッソクセェ、ギャルゲにでもドはまりしてんのかよぉ」
ハジメ「あ、あはは……おはよう檜山君」
――うわぁ、今日も来やがったぜアイツ
――ほーんと、きっしょ……
――勉強やる気ねぇなら学校くんなよな……
ハジメ(……うへぇ、今日も陰口ひっどいなぁ)
ハジメ(ま、いいんだけどね。ボクの座右の銘は『趣味の合間に人生』だ)
ハジメ(嫌なことは耳から入ったら右から左へと受け流しまーす……っと)
香織「南雲くんおはよー!」
ハジメ「あ、おはよう白崎さん」
ハジメ(……やっべ、受け流せないのが来ちゃったよ)
香織「南雲くん、家の事情があるとはいえ、やっぱり遅刻は良くないよ。明日から迎いに行こうか?」
ハジメ「い、いやいやいや! 大丈夫! 大丈夫ですから!」
ハジメ(……彼女は白崎香織(しらさき かおり)。『学校の二大女神』と呼ばれている美少女だ。どういうわけかボクのことをいつも気にかけている)
――ちっ、なんであいつに白崎さんが……
ハジメ(げぇー……やっぱりかよ。このヒト、悪人ってわけじゃないんだけど人気がありすぎて、話しかけられてるボクがめっちゃ敵視されるんだよなぁ)
檜山「……ッッ!」ギリギリギリ……
ハジメ(ヒィーッ! ほら見たことかめっちゃにらんでるじゃん! 放課後はこっそり帰らないとなぁ……)
雫「南雲くん、おはよう。いっつも大変ね」
ハジメ(……彼女は八重樫雫(やえがし しずく)。先ほどの白崎さんの知り合いで、彼女が『学校の二大女神』の内のもう一人だ。実家が八重樫流という剣術同情を営んでいて、小学生のころから剣道では負けなしの猛者だ)
光輝「香織はまだ彼の世話を焼いてるのか? まったく……本当に香織はやさしいなぁ」
ハジメ(このまばゆいばかりのイケメンは天之河光輝(あまのがわ こうき)。容姿端麗、成績優秀のスポーツ万能超人! 八重樫さんとは幼馴染で、彼自身も八重樫道場に通う門下生。しかも全国クラスの猛者!)
龍太郎「ホントだぜ。そんな奴、気にしなくてもいいと思うけどな」
ハジメ(長身長のがっちり体形の彼は坂上龍太郎(さかがみ りゅうたろう)。天之河くんの親友で見た目通りのスポーツマンだ)
ハジメ「い、いやぁ。あ、あははは」
光輝「まったく……いつまでも香織のやさしさに甘えてばかりじゃ駄目じゃないか」
龍太郎「まったくだな。お前、んなぐーたらしてばっかじゃ将来困るぜ? なんだったらオレと一緒に昼休み……」
ハジメ「あーっ! いいっていいって!」
ハジメ(……そう、本当にいいのだ。だって、ボクの父親はゲームクリエイターで母親は少女漫画家。両親のおかげで技量は十分、将来的には両親の仕事を継ぐ予定だから将来設計もバッチリだ)
ハジメ(……だから、なんだよな。正直言って、クラスの人たちとはそこまで関わろうとは思わないし、それに白崎さんなんて高嶺の花だしね)
ハジメ「は、あははは……」
雫(……ったく、このバカ男ども)
雫「ごめんなさいね? 二人には悪気はないから」
ハジメ「あ、あはは……わかってるから」
ハジメ(……あー……なんか、ホントもう……)
光輝「だからさ、香織は――」
龍太郎「だからよぉ、オレが鍛え上げて――」
雫「やめろっつのっ――」
香織「ちょっと天之河くん、私は自分から南雲くんに――」
ハジメ(この人ら、異世界召喚されないかなー……見た感じ、特別な人間って感じがするし)
ハジメ(そうすればボクの人生も穏やかになるはずなのにな……)
――いいや、そうならないよ
ハジメ「――えっ……」
ハジメ(……この時、ボクは……いや、ボク達は)
光輝「なっ……!」
龍太郎「か、体がうご、か……」
雫「な、なにがおきて――」
ハジメ(その身を、その存在をまったく別の世界へと送ることになった)
ハジメ(決して忘れる事は出来ないだろう、異世界……)
ハジメ(ボク達の人生を、運命をガラリと変えた……トータスへ)
ハジメ(……マヌケな事に、ボクは昨日の夢を思い出しかけていた)
ハジメ(あの、おせっかいでうっとおしい……『声の主』のことを)
【異世界トータス】
イシュタル「お、おおおおっ……!! 召喚の門が! ついに、この世界に『救い』が舞い降りる!」
イシュタル「人間族を滅ぼそうとし、世界を秩序なき混沌へと堕とす魔人族を討つ救世主たちが……」
コツコツコツ……
「……来るか、救世主たちが」
イシュタル「おっ……おおおおおっ……! まさか、まさか貴方様が直々に……!」
「これから長い付き合いになる。英雄と言えどもまだ磨かれていない原石。ならばこの目でどのようなものか見極めておきたい」
イシュタル「わ、私もその通りだと思っております!」
イシュタル「彼らはきっとやり遂げてくれるでしょう……貴方様の『神託』の通り、この世界を救う英雄なのですから!」
イシュタル「……『エヒト』さま!」
エヒト「……」
エヒト「来るがいい少年少女よ。歓迎するぞ」