生まれた時から最強だった   作:roborobo

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第22話

 

 

【――夢の中】

 

ティオ「我々は誇り高き竜の一族」

 

ティオ「我々は折れない」

 

ティオ「我々の誇りは、決して穢れることはない」

 

ティオ「たとえ、狂った神によって踏みにじられようとも」

 

――それが、お前の求めていたものか

 

ティオ「……そうかも、知れぬ」

 

ティオ「強さが欲しい。今以上の、強さを」

 

ティオ「だから、妾は旅立った。いつか、かつての世界を取り戻すために」

 

ティオ「神の支配から逃れた、誰もが自由に生きていける、自由の世界を」

 

ティオ「……」

 

ティオ「力がいる」

 

ティオ「なによりの、力がいる」

 

ティオ「何物をもしのぐ、力がいる」

 

ティオ「妾たちは、もう誰にも支配されない」

 

ティオ「竜の爪はすべてを切り裂く」

 

ティオ「竜の翼はすべてを置き去りにする」

 

ティオ「そうだ、妾は竜だ」

 

ティオ「妾が背負う物、者。それは、軽くはない」

 

ティオ「……妾は、竜だ」

 

ティオ「なれば、妾が背負って生きていく者は」

 

 

ティオ「同じ、竜でなければありえない」

 

 

――……お前の願い、確かに聞き届けた

 

――竜の者よ、お前の強さを求める声、強さを願うその意識

 

――いいだろう、共に行こう

 

――それが、お前の願いであるのならば……

 

………………

 

…………

 

……

 

【ハイリヒ ランデルの部屋】

 

カリカリカリカリカリ……

 

ランデル「……」

 

ランデル「……」チラッ

 

ランデル「……連絡は、まだ……か」

 

ランデル「……」

 

――コンコンッ

 

ランデル「……! は、入れ!」ササッ

 

――ガチャッ……

 

メイド「おはようございます、ランデル様」

 

ランデル「う、うむ。お前か」

 

――ペラペラ……

 

メイド「今日のスケジュールです。今日はハイリヒの○○殿との――」

 

ランデル「……うむ」

 

メイド「お昼は○○産の牛を利用した――」

 

ランデル「……あぁ」

 

メイド「――……以上が、今日のスケジュールです」

 

メイド「……それと」ゴソゴソ……

 

ランデル「……!」

 

メイド「こちら、街のほうで配られている新聞紙です」

 

ランデル「お、おぉ……感謝するぞ。これが見たかったのだこれが!」

 

メイド「お褒めの言葉を頂き、ありがとうございます」

 

メイド「……やはり、殿下も気になさるのですね」

 

 

メイド「この世界の新たな神にして魔王、ハジメさまのことが」

 

 

ランデル「……あ、あぁ! 当たり前ではないか!」

 

ランデル「世は後々、この国の王になる! そうであるならば、世情の事を知らなければならぬからな! はっはっはっは!」

 

メイド「ふふっ……そうですね」

 

メイド「それでは、そろそろ失礼いたします」

 

――……ガチャッ

 

ランデル「…………」

 

ランデル「……! 内容……内容……!」ババッ!

 

ランデル「! あった、魔王ハジメの内容……!!」

 

ランデル「――『トータス各地で、エヒトを崇める寺院が破壊』……!? 『次々とハジメさまの像を作らせ』……!?」

 

ランデル「……! ステータスの公開……? 一冒険者のステータスを公開したところで……」

 

ランデル「――っっ!?!?!? な、なんだこのステータスは!? こんな……デタラメにデカい数字に……このスキル数……! 勇者なぞ、足元にも及ばぬではないか!」

 

ランデル「い、いや、問題はそこじゃない……! こんな、天地がひっくり返る様な過剰な戦力を持った個人がいるとなれば、放っておくわけがないぞ!?」

 

ランデル「……『某ギルド長がハジメさまのステータスをひた隠しに』? ……なる、ほど……あの男、各地で恩を売って自分のステータスを隠すように手伝わせていたのか。それで隠し通して……」

 

ランデル「……まて、それ以前にこの情報源はどこだ? だれがバラした……?」

 

ランデル「貴族間で読まれるようなものだ。面白おかしく誇張している可能性も……」

 

ランデル「……」

 

――ガタッ……

 

――コツコツコツ……ガチャッ

 

………………

 

【……転移者のいる部屋】

 

――ブツブツ……ブツブツ……

 

――ハジメさま……たすけて……たすけて……

 

――あの人なら、俺たちを助けてくれる……!!

 

ランデル「……」

 

ランデル(く、くらい……余のような子供でも分かるくらいに淀んでる……!)

 

ランデル(元々、迷宮の件も合って心に傷を負って滞在するモノやハイリヒを守るために城に居てくれているのだが……)

 

ランデル(これ……は……南雲ハジメのやつが強くなるにつれて……奴にすがろうとしている……?)

 

女子生徒「あ、あのぉ! ランデル殿下ぁ!」

 

ランデル「うぉっ!? だ、誰だ?」

 

女子生徒「あのっ、あのっ、南雲くんはいつになったらここに戻ってくるんですか!?」

 

ランデル「い、いやっ、それは余には……」

 

女子生徒「あのっ、おねがいです! もしも南雲君が帰ってきたら、言ってほしいんです!」

 

女子生徒「私、前々から南雲君のことが好きだって!」

 

ランデル「は……? はぁ!? い、いやっ、確かお前は……お前たちは……」

 

ランデル「あの、天之河光輝が好みじゃなかったのか!? 余はお前たちがあいつをちやほやしているのを見かけたことがあるぞ!」

 

女子生徒「……あぁ、アレですか……」

 

女子生徒「だってアイツ、弱いじゃないですか」

 

ランデル「えっ……」

 

女子生徒「この世界では強いほうが好かれるのが当たり前。光輝くんはそれ以下ってコト」

 

女子生徒「大体からして、元の世界でも単にイケメンだから言い寄っただけですもん」

 

ランデル「だ、だけで……?」

 

女子生徒「そうですよぉ。だって、イケメンで剣道も強くて……それだったら、中身とかどうでも良かったんですもん」

 

女子生徒「アタックしたりして、付きあえればそれでラッキー。だって、すっごいスペックの高いイケメンを連れまわすのなんて――」

 

 

女子生徒「私たちには良いステータスですもん」

 

 

ランデル「……お、お前……」

 

女子生徒「……あっ、そろそろお昼ご飯だ」

 

女子生徒「じゃあ、よろしくお願いしますね! 殿下!」

 

――タッタッタッタ……

 

ランデル「……す、ステータスって……」

 

ランデル(なんだ……なんだ、これは……)

 

ランデル(こいつら、ここにいて守られる立場に甘んじて……根腐れを、起こして……)

 

ランデル(マズイマズイマズイ……! なにか、何かこの状況をそのままにしては、イカン!)

 

ランデル(だ、だが……余に何が出来る!? 余は守られる立場の人間。好き勝手に行動する身分では……)

 

ランデル(……! まともな奴! 使える奴がいるはずだ! その者たちに……!)

 

………………

 

近藤「……ん、あの……?」

 

中野「ええと、俺たちに何の用が……」

 

ランデル「お前たち、檜山……という男の知り合いだな?」

 

ランデル「あいつはハイリヒにいた時からいろいろと動いていた。余は見ていた」

 

ランデル「お前たちに対する配慮、貴族や生徒たちのメンタルケアに動いたりと」

 

ランデル「奴の姿は印象に残っている。その知り合いであろうお前たち三人に、いろいろと動いてほしいのだ」

 

ランデル「町にむかって……なんでもいい! 世間の問題や、魔王ハジメの話を逐一余に報告しろ!」

 

斎藤「……」

 

斎藤「わ、わかった」

 

中野「お、おい……」

 

斎藤「もうここで大人しくしてたって、ダメだろ……檜山だって戦ってる。なら、俺たちもやれる範囲でアイツをサポートしてやんなきゃだろ」

 

近藤「……っ」

 

中野「……うぅ」

 

ランデル「報酬はしっかり出す。今、城の者たちは全員忙しい。自由に動けるのは、城に滞在しているお前たち転移者だけだ」

 

ランデル(転移者を利用し、今この世界で起きている流れを掴まなければならぬ……身内も、城の一部の者たちも……信頼できん……!)

 

ランデル(……いったい、世界で何が起きておるのだ……!?)

 

………………

 

…………

 

……

 

【雫の部屋】

 

…………ばしゃっ!!

 

雫「……」

 

恵里「コップ一杯分の水でも、頭からかけてやればスッキリするだろ?」

 

恵里「……で、何が合ったのかいいなよ。そろそろ」

 

雫「……あの人がね、抱いてくれなかったの」

 

雫「私、二大女神なのに」

 

雫「私、誰にも見てもらえないの」

 

雫「……」

 

恵里「……」

 

恵里(うわちゃぁぁぁぁ~~~~~……おもっくそ病んでるじゃん)

 

恵里(っつーか、抱いてくれなかったとか……ヘルシャーの時に見かけなかったこととガハルドの意味深な態度……うわっ、そういうコトかよ)

 

恵里「……まぁ、何が合ったのかだいたい察しがついた」

 

恵里「でもな、お前の今の気持ちがどんな形であろうとも、今ここに縋れるものなんて何もないんだよ」

 

雫「なんでよ! なんでそんなこと言うのよ!!」

 

雫「こんなに不安なのに! こんなに苦しいのに! 頼れるものなんて、何もないのに……!!」

 

雫「……むねが、空っぽなの。耐えられないの」

 

雫「私、今まで何がしたくて……いきてきたか……わからない……っ」

 

恵里「……」

 

恵里「馬鹿だろ、お前……」

 

雫「……っ」

 

恵里「縋りたい者? 自分のことを支えてくれる人? 導いてくれる人?」

 

恵里「そんなの……そんなのどこにもあるわけないだろ」

 

恵里「本当に、仮に、本当にあったとしても……」

 

 

恵里「そんなの、錯覚だ。自分の弱さを埋めてくれるものを……誰かに投影してるだけだ……っ」

 

 

雫「……」

 

恵里「……ボクだって、欲しかったよ。そんな人」

 

恵里「でも、いないんだ……いないから、仕方ないって思うしかないんだよ!!」

 

恵里「……イヤって程、分かってんだよ……こっちは……っ」

 

雫「……」

 

雫「あ、もうアンタでいいや」

 

恵里「えっ」

 

………………

 

…………

 

……

 

【フェルニル 一室】

 

清水「……」ソワソワ……

 

檜山「そ、粗茶です」コトッ

 

ノイント「お気遣いなく」

 

清水「そ、そっすか」

 

檜山「いっ、いやぁ~~~! すっごくおいしいんだけどなぁ~~~~~!!」

 

檜山「飲んでくれると……うれしいなぁ~~~~!!」

 

ノイント「……」

 

ノイント「わかりました。では、一杯」

 

――ゴクゴク……

 

清水「……」

 

清水「ねぇ、ほかのみんなはぁ!?」ヒソヒソ

 

檜山「あぁ!? いねえよクソ!」ヒソヒソ

 

檜山「どいつもこいつも自分たちのことで手一杯なんだよ! フェアベルゲンに向けてみんなあれこれやってんだよ!!」

 

檜山「あぁ~~~~もう! とんでもねぇ乗客だっつーのになんでいねぇんだよぉ……!!」

 

ノイント「なら、勝手に話を進めてもよろしいのでは?」

 

清水「よ、よろしいのかなぁ……?」

 

ノイント「重要な情報は先にトップに伝え、その決定を下すかを委ねる必要があります」

 

ノイント「ですが、アナタたちの今の様子では、例のトップ……イレギュラーとやらは余裕がないのでしょう?」

 

清水「……んま、うぅん……」

 

ノイント「で、あるならば。これから先の事を考えれば、あなた方個々人も、イレギュラー同様に自分たちの頭で動く必要があります」

 

ノイント「ましてや、こんな状況ならばなおさらでは」

 

清水「まぁ、はい……」

 

檜山「っすねぇ~~~~……」

 

檜山「あぁ、んで何が言いてぇんだよ!?」

 

檜山「つか、あれだろ!? テメェ、エヒトの手下だろうが!!」

 

檜山「その手ごまの一つがここに何しに来やがったんだよ!?」

 

ノイント「手ごまではなく、あくまで主の命で動く管理者……まぁ、別に言い返さなくてもいいでしょう。こんな言い争いに意味なんてありません」ズズズ……

 

――コト……

 

ノイント「……まず、率直に言います。私は、本来生き返ることはありません」

 

清水「……いや、ここにいるのに?」

 

ノイント「はい、生き返るはずがないのに、ここにいる。私は、なぜかここにいる」

 

ノイント「……遡ること数日前」

 

檜山「結構最近だな」

 

ノイント「私は、アナタたちを滅ぼそうと、主の遊戯を察したイレギュラーや豊穣の女神を葬り去ろうと考えていました」

 

ノイント「しかし、あろうことか私は……イレギュラーとはまた、別の何者かによってその命を奪われた」

 

清水「ん……まぁ、だな……そう、なんだっけ?」

 

檜山「俺たちは南雲の話からしか聞いてねぇからな」

 

檜山「……あ? ってことはやっぱ殺されたのか?」

 

ノイント「その通りです。私は、本来は死んでいる『はず』」

 

ノイント「……しかし、あろうことか私は生き返った。いや、正確に言えば生き返るための自己修復能力がやっと機能しはじめたのです」

 

清水「……? 何それ」

 

ノイント「我々、盤上を管理する者たちには、あらゆる事態を想定してあなたがたのようなスキルをいくつか所持しているのです」

 

ノイント「いくつかある回復の術を使用し、私は何とか自身の肉体を蘇生。こうして、私は蘇り、各地を見て回ってきたのですが……」

 

ノイント「……ふむ。これは……」

 

清水「な、なんだよ……何か言いたげだな」

 

ノイント「……私の体、ううむ……」

 

檜山「んだよ、まじまじと自分の体を見つめやがって」

 

ノイント「……」

 

ノイント「訂正いたします。もしかしたら、私は死んだわけではないのかもしれません」

 

檜山「あ……? さっきと言ってることが違うじゃねぇか」

 

ノイント「あなた方は、私がどのように死んだのかは聞かされたのですね?」

 

清水「ん、あぁ……っつーか、そうであろう人物とこの前会ったんだよ。夢の中で」

 

ノイント「……夢の中」

 

檜山「俺たちは、ずっとそいつに……いろいろサポートを受けてたんだ」

 

檜山「そいつはどうやら夢の中から俺たちにいろいろ指示を出してきやがってよ。エヒト攻略のためだとかで助けてくれるんだ」

 

檜山「……ただ、何を考えているのかいまいち、はっきりしねぇ。南雲の味方をしてるってのは確実なんだけどよ」

 

ノイント「我が主に並ぶほどの力を持った者……? もしや……」

 

ノイント「……何よりも、各地で見てきたイレギュラーの信仰……」

 

ノイント「……合点がいきました。私が生き返った理由、見えてきました」

 

ノイント「あなたがたが、我々の主を愚かにも討伐対象として見て、挑もうとしてるのはすでに把握しております」

 

ノイント「イレギュラーを含め、盤上の駒として選ばれたあの者たちも、今では目的意識を共有し、挑もうとしている、と」

 

ノイント「そして、その結果……今ではイレギュラーが信仰を集める事となった」

 

ノイント「これです。これが、原因」

 

清水「……それが、何か……?」

 

ノイント「あなたがたも知ってるでしょう。我が主は、この長い年月をかけて、この地に生きる者たちの信仰によって育まれたのです」

 

ノイント「しかし、イレギュラーの存在が、その循環を壊した。本来流れるはずの信仰はイレギュラーに注がれ、その祈りが我が主に届かなくなった」

 

清水「……えっ、それって……」

 

 

ノイント「我が主は、弱体化している。それも、かなりの速度で」

 

 

檜山「えっ……マジで!? 弱ってるの!? エヒト!?」

 

ノイント「そう考えたほうが自然でしょう。私が、こうして立っているのが何よりの証拠」

 

ノイント「あの方の手ごまとして使われる私たちに、生殺与奪の権なんて、ない」

 

ノイント「それなのに、こうして自力で生き返れた……ということは……」

 

清水「お前たちの命を管理できないほどに……エヒトがこの世界を好きに出来なくなっている……?」

 

ノイント「そういうことになりますね」

 

檜山「ま、マジで……? えっ、これ渡りに船じゃねぇ……?」ヒソヒソ

 

清水「エヒトが弱っていってるなら、俺たちが対面している問題のハードルってだいぶ下がるよな……何か邪魔してくるってコトがなくなって、迷宮攻略だけに集中できるじゃん……!」

 

清水「そうだ……! これでいい……! ハードルが下がって、俺たちは帰りやすくなって……!」

 

清水「……なって……」

 

檜山「……? お、おい……どうしたんだよ」

 

清水「……」

 

清水(……帰る……)

 

清水(帰る、のか……オレが……?)

 

清水(あの世界に……?)

 

清水(あの、何もなくて……)

 

清水(この世界ですら、何者にもなれなかった『オレ』が……)

 

清水(戻ったところで……『オレ』が……)

 

清水「……あ、うん……」

 

檜山「んだよ! 喜べよ!!」

 

清水「……」

 

檜山「俺はうれしいぜオイ! 俺は元の世界に戻るんだ!」

 

檜山「戻ってよ、平和な世界でのーんびり暮らしてよ!」

 

檜山「……あー、でも進路考えなきゃだもんなぁ」

 

檜山「そこだけは憂鬱だな!」

 

清水「……」

 

清水(こいつは、帰ったら居場所がある)

 

清水(こいつでさえ、家族とはうまくやっていけてる。あの世界で、あの場所で)

 

清水(オレには……何もない)

 

清水(オレには……)

 

――どがしゃぁぁぁぁぁぁん!!!

 

檜山「うぉっ!?」

 

清水「な、何事!?」

 

ノイント「……」

 

………………

 

恵里「んぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

雫「恵里! 恵里ぃぃぃぃぃ!!」

 

恵里「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

……バタバタ……ガチャンッ

 

清水「お、おい、どうし……うぉぉぉぉ!?」

 

檜山「あぁ!? なんだこのカオスな光景!? なんで八重樫が中村を押し倒してんだよ!」

 

雫「もう! もう女でもいい!!」

 

雫「埋めてよ! ねぇ、私の心の隙間を埋めてよ!! ねぇ!!!」

 

恵里「ひぃぃぃぃぃぃ!! お、犯されるぅぅぅぅぅ!!」

 

檜山「げぇぇぇぇぇぇ!! とんでもねぇ暴走してやがる!」

 

清水「ちょっ!! ストーップ! マジでストーップ!!」

 

バタバタ……

 

香織「な、なになに!?」

 

光輝「なんだ、なにがあった!?」

 

鈴「う、うわぁぁぁぁ! 恵里ーーー!?」

 

恵里「あっ、あっ、あっ!! ひぃっ、下着の中に手が! 手が!」

 

光輝「うぉーーーー! ひっぺがせひっぺがせ!!」

 

ノイント「……」

 

ノイント「何をしてるのですかあなた達」

 

光輝「えっ、えっ、なんで光の使途が……!」

 

清水「あーもう! あとで説明するから!」

 

………………

 

…………

 

……

 

光輝「じゃ、じゃあ雫のほうはこっちで見ておくから……」

 

香織「め、迷惑かけて、ごめんね……?」

 

バタバタ……

 

清水「あー、一息ついた……」

 

檜山「あーーーーー……んだよもう……」

 

ノイント「……」

 

恵里「ていうか、こんな客人が来ていたなら紹介してほしいものだけどね」

 

恵里「……なんでこいつがいんの」

 

清水「んやー、かくかくしかじかで」

 

恵里「ふざけてんの?」

 

清水「ちょっ、こういうのって普通は通じるもんなんじゃ」

 

檜山「話のテンポが落ちるから通じてるってことで……」

 

恵里「なるわけないだろ! ……話のテンポだって言うならあとできっちり説明しろ」

 

恵里「よくはわからないけど、こいつとの話が最優先なんだろ?」

 

ノイント「……」

 

恵里「それで、あんたはこっちに何をしにやってきた?」

 

ノイント「……」

 

 

ノイント「あなたたちと同行したい」

 

 

恵里「……ちっ、また増えるのか」

 

ノイント「あなた方も察している通り、すでにこの世界は我が主の盤上ではなくなってきてるのです」

 

ノイント「それどころか、その力を失いつつあり、存在そのものを維持できなくなっている」

 

ノイント「この世界は、何かが変わろうとしている。それもかなり大きく、とても広く」

 

ノイント「……それこそ、我が主すら把握できないほどの、何か大きな流れが」

 

清水「お、大きな流れ……」

 

ノイント「私はこの流れを探りたいのです」

 

ノイント「……我が主は絶対なる存在。その絶対なる物が、この力の流れを把握できず、しかも力を失いつつある」

 

ノイント「この手に余る何か、もしも主の手にすら余るのであれば……」

 

ノイント「手が付けられない、取り返しのつかない『何か』が起きかねない」

 

恵里「……なるほどね」

 

恵里「ボクたちの世界すらも巻き込んだゲームを中断し、一緒に調べたいってか?」

 

ノイント「ですが、あなた方にとっては喉から手が出るほど得たいのでは?」

 

ノイント「今回の件、もしも我が主があなた方に恩を感じたのであれば……」

 

 

ノイント「あなた方だけを優先して元の世界に帰してやることも可能です」

 

 

檜山「なっ……!!」

 

清水「そ、そんな……」

 

恵里「……いや、これは……あり得るぞ……」

 

恵里「元々、ボクたちがこの世界にきたのはエヒトの力があってのものだ」

 

恵里「この世界に呼び込んだ張本人ならば、ボクたちを元の世界に戻せる……! それこそ、迷宮の魔法がなくたって……」

 

ノイント「それだけではありません。もしも、あなた方が望むのならば」

 

 

ノイント「あなた方が、心より望むものを――なんでも差し上げましょう」

 

 

恵里「……さ、さしあげるって……」

 

檜山「えっ……それって……」

 

清水「な、なんでも……願いを叶えてくれる……て、ことか……?」

 

ノイント「えぇ、そうですよ」

 

ノイント「……何をためらっている必要があるのですか?」

 

清水「い、いや、だって……」

 

檜山「……信じられるわけねぇだろ。テメェらの事なんか」

 

檜山「人間をおもちゃにすることしか頭にねぇ、テメェのことなんざな」

 

恵里「……まぁ、信頼に欠ける相手ではある、かな」

 

ノイント「……信頼、か」

 

清水「な、なんだよ……」

 

 

ノイント「何よりも信頼に欠けているあなた方が、それを言いますか」

 

 

清水「――っ!!」

 

檜山「……っ」

 

恵里「……チッ」

 

ノイント「あなた方が何者なのか、私たちが知らなかったとでも?」

 

ノイント「盤上を盛り上げる駒のことは、一つ一つ把握してますよ。イレギュラーを除いてね」

 

ノイント「そろいもそろって、根腐れを起こした裏切り者ども」

 

ノイント「正義のためだとか、元の世界に戻りたいだとかよりも」

 

ノイント「己の下卑た野望をかなえたいだけ」

 

ノイント「何よりも…未遂で終わった二人よりも」

 

 

ノイント「清水……でしたか。魔人族についていたアナタが、何よりも欲しているのでは?」

 

 

清水「……ぅ、あ……っ……」

 

ノイント「……さて、この船の行き先。フェアベルゲンでしたか」

 

ノイント「あなたがたからの良い返事……フェアベルゲンについてからでも構いませんよ」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

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