生まれた時から最強だった   作:roborobo

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第26話

 

【???】

 

ティオ「……」

 

ティオ「妾は、竜の姫」

 

ティオ「妾こそが、竜の未来を背負う者」

 

――……そうだ、お前の肩には多くの者たちの命がかかっている

 

――お前たちが作る未来

 

――お前が築き上げる道

 

――それは、お前だけにしか出来ないことだ

 

――お前だけがやれることだ

 

――それは……『恋する女』である者には成し遂げられないことだ

 

ティオ「……あぁ、わかっている」

 

ティオ「狂った神によって支配されたこの冷たい世界の未来」

 

ティオ「変えて行けるのは、妾だけ」

 

ティオ「……そのためにも」

 

――お前に相応しいのは、偉大なる魔王

 

――雄々しく、勇敢で、偉大なる魔王こそが

 

――……魔王でなければならない

 

ティオ「……そうだ、魔王でなければならぬ」

 

ティオ「魔王で……なければ」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――ハルツィナの迷宮にて】

 

檜山「……んで、なーんも変化がないわけですけども」

 

檜山「どーいうことですかね。実況の龍太郎さん」

 

龍太郎「いや俺に聞かれても……」

 

光輝「……出てきたであろう、ボスらしき魔物は倒した」

 

光輝「で、あるならば……あれで終わりでなくても次のダンジョンギミックが起きてもおかしくはないんだけどな……」

 

光輝「香織、周囲に何らかの変化は?」

 

香織「……感じられるものは、何もない……かな」

 

ノイント「同じく。敵、ダンジョンによる変化は何もありません」

 

ノイント「と、なれば……まだ終わってないからでしょうね」

 

清水「終わってない?」

 

恵里「……あ、そうか。まだ目覚めてないのが……ええと」

 

パル「ハジメさんとティオさん。そして、雫さん……」

 

ユエ「んっ」

 

パル「それで、さきほどユエさんが目覚めたからのこり三人ですね」

 

清水「う、うーん……」

 

光輝「そ、そっかぁ……だったらこの三人が目覚めるのを待つのがいいんだけれども」

 

龍太郎「いつまで待たされるんだろうなって感じだもんな」

 

檜山「……だけどよ、実際問題アイツが起きなきゃさきにすすめないんだろ?」

 

檜山「だったらこっちでなんとかしてやれねぇのか?」

 

龍太郎「たたき起こせればいいんだろうけどよぉ……」

 

香織「これを……ねぇ? この琥珀を崩せば取り出せるんだろうけど」

 

光輝「ぜっっっっっったいに何か問題が起きかねないよなぁ。理想世界ってことは、俺たちの精神と密接につながった場所なんだからそれを無理に断ち切ろうとすれば……」

 

清水「断言する。精神操作系のプロである俺が言う。問題は起きるね、コレ」

 

光輝「あー、プロのお墨付きならやらんほうがいいか……」

 

ノイント「……」

 

――ぶにっ、ぶにっ……

 

ノイント「どうにか、出来るかもしれません」

 

清水「え、マジ!?」

 

ノイント「私の『分解』の力です。この力は、あらゆるものを瞬時に分解させる力があるのです」

 

ノイント「これで、琥珀とその中身にある三人に傷をつけることなく引っ張り出せるかと」

 

光輝「……」

 

龍太郎「お、いいじゃねぇか!」

 

香織「じゃあ、任せても……」

 

光輝「いや、もう少し待ってくれ」

 

――ザワッ……

 

ユエ「こ、光輝……?」

 

檜山「あ? そんな悠長な……」

 

光輝「南雲は、戻ってくる。他の二人も……今は、もう少しだけでも待ちたいんだ」

 

――ぴしっ、ぴしししし……

 

――ぱりん……

 

ティオ「……む」

 

ユエ「ティオ……!」

 

ノイント「ふむ、あなたは出れたようですね」

 

ティオ「……あぁ、何とか戻れた」

 

ティオ「ご主人は?」

 

ユエ「まだ、戻ってこれてない。いま、待っているところ」

 

ユエ「……起きて、ハジメ……」

 

ユエ「ハジメが帰ってくる場所はここ……私は、ここに……」

 

 

ティオ「――本当に、帰る場所はここなのか」

 

 

ユエ「? えっ……?」

 

ティオ「この方が変えるべき場所は、そもそもトータスではない」

 

ティオ「光輝を含めた、地球と呼ばれる世界。この方は、そこから来た……いや、連れてこられたのじゃ」

 

ティオ「彼らには帰る場所がある。帰ってくるのを待つ家族もいる」

 

ティオ「あの世界こそが、戻るべき場所なのじゃ。本来であれば、彼らは最初から無関係……巻き込むべき者たちではなかった」

 

ユエ「……ティオ?」

 

ティオ「……だからこそ」

 

ティオ「この方が、この世界に戻りたがる道理はあるのじゃろうか」

 

ティオ「地球に戻りたいと思っても、トータスに戻りたいなどと……」

 

清水「……」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

【ハジメの理想世界】

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「――きこえない……」

 

ハジメ「なにも、なにも、俺の心には映らない」

 

ハジメ「金銀財宝、豊かに実る果実に溢れた楽園でも」

 

ハジメ「身を焼き尽くす、あるいは身を凍らせるような地獄でもない」

 

ハジメ「なにも、ない」

 

ハジメ「トータスでも」

 

ハジメ「地球でもない」

 

ハジメ「何もない世界が目の前に広がっている」

 

少年「あたりまえだよね」

 

少年「キミは何物にも無関心だった」

 

少年「クラスメイトにも」

 

少年「自分の世界にも」

 

少年「まして、自分を産んでくれた親とその環境すらも」

 

少年「……だけど、何よりも君が興味を抱いてすらいなかったのは」

 

 

少年「『自分自身』」

 

 

ハジメ「……」

 

少年「キミはどんな趣味でも楽しもうとしていた」

 

少年「だけど、惰性で与えられた娯楽を興じるだけなら誰でもできる」

 

少年「キミは死の淵に追い込まれて生きることを選んだ」

 

少年「しかし、死に追い詰められようともそれは生きたいという本能的な欲求によるもの。生物であるならば、誰もが持ちうるもの」

 

少年「じゃあ、『キミ』は? キミが、キミであるものとして生きている証とはなんだ?」

 

ハジメ「……」

 

少年「それがわからない限り、キミのいるこの理想世界には何も映らない」

 

少年「だって、何を理想としている物なんて、キミですらわかっていないのだから」

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「おれが」

 

ハジメ「おれは……なにが……」

 

ハジメ「なにが……したくて」

 

――……えるか……

 

――…………えるかっ……!!!

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「……?」

 

ハジメ「だれ、だ……」

 

少年「……」

 

少年「そうか、そうだな」

 

少年「ヒトは一人では生きられない、自分を変えることが出来ない」

 

少年「ゆえに、『世界』がある」

 

少年「それゆえに、『他人』がいる」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――現実、フェルニル】

 

清水「南雲、聞こえるか南雲!!」

 

香織「ちょ、ちょっと清水くん!?」

 

光輝「……」

 

ノイント「……」

 

清水「聞こえるか!? 聞こえてるよな、南雲!!」

 

清水「お前が理想世界でどんな目に合ってるのかわかんねぇけどな! 今、こっちの精神操作でお前の負担を軽減しているところだ!」

 

清水「いくら俺たちがここの魔法を手に入れても、お前自身も魔法を習得しなきゃ意味がねぇんだ! 絶対に、絶対に手に入れてみせるんだ!」

 

ノイント「……やめなさい。そんな声掛けをしたところであなたの自己満足にしかなりません」

 

清水「南雲! 南雲!!」

 

ノイント「喚いたところで、そんなの届くはずがない」

 

ノイント「むしろ、ほかの魔物を呼び寄せてしまうかもしれない」

 

ノイント「わかったなら、とっとと――」

 

――チャキッ

 

恵里「黙ってもらおうか?」

 

鈴「え、恵里……?」

 

ノイント「……何のつもりです?」

 

恵里「おっと、悪いけどこっちは別に友情だとかそんなおセンチなモンに揺らされたわけじゃないよ」

 

恵里「アイツの言う通り、南雲自身の力が必要だ。そのためにも、アイツには自力で目覚めてもらわなきゃいけないんだ」

 

ノイント「では、あなた方はあの男が復活できるとでも?」

 

檜山「できるね」

 

ノイント「……なぜ?」

 

檜山「アイツがクソみてぇなキモオタだからだ」

 

檜山「クラスでの話し合いなんてまったく参加しようとしねぇ、自分のやりたい事ばっか優先して俺たちのことなんて気にかけようともしねぇ」

 

檜山「そんなクソみてぇな性格をしたやつだぞ? 理想世界だろうが、そんなん知ったことかと言って出てくるだろうよ」

 

檜山「少なくとも、それが俺の知ってる南雲だ」

 

 

檜山「断じて『イレギュラー』でも『魔法』でもねぇ。クソみてぇな『キモオタ』だ」

 

 

ノイント「……」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――ハジメの理想世界】

 

ハジメ「……この声」

 

――南雲! 聞こえてるよな、南雲!!

 

ハジメ「……そうか、清水か……」

 

ハジメ「でも、なんで……」

 

――もしもこの声が聞こえてるなら、俺の声を頼りに歩け!

 

――人の精神世界だって言うなら、声をかければそれをイメージして形になる!

 

――声を頼りに、まっすぐに歩くんだ!

 

ハジメ「……」

 

フラフラ……

 

――……なぁ、南雲聞いてくれ

 

――俺はな、今までずっと話し相手なんていなかった。共通の趣味を持った相手なんていなかった

 

――だから、ずっと一人だった。誰も、俺のことなんて見てないんだって思った

 

ハジメ「……」

 

――俺、みんなを裏切って、お前に殺されそうになって……スッゲェ怖かったよ!

 

――でも、あれだけ誰かに目を見て話しかけてもらったの、初めてだった!!

 

――お前が、俺の目を見てくれたんだ!!

 

ハジメ「……」

 

――……南雲、お前の理想世界、少しだけ覗いた。それに関してはすまないと思ってる!!

 

――でもな、南雲。お前は、俺よりも何よりも恵まれたものがある! あったじゃねぇか!

 

――お前には、お前のことを心配してくれる両親がいるじゃねぇか!

 

ハジメ「……おれは」

 

――そりゃお前は人を殺した! 他人に対して無関心だ!

 

――この世界には何もなかったけど……だったら……

 

――これから作っていけばいいじゃねぇか!

 

ハジメ「……つく、る」

 

――何もないなら、元の世界で見つければいいじゃねぇか! つくればいいじゃねぇか!!

 

――お前なら、きっと見つけられる! お前の夢も、やりたい事だって!

 

――……だから

 

 

――負けるな……負けるなよ南雲!! 自分にも、この世界にも!

 

 

ハジメ「……たた、かう……!」

 

――俺も戦う!! 俺も、もう元の世界から逃げないって決めたんだ!!

 

――いっしょに……いっしょに戦おうぜ!

 

――俺たちが探す……俺たちの『答え』を見つけるんだ!

 

ハジメ「……!!」

 

少年「……向かっていったか」

 

少年「いいだろう、ここを乗り越えたというのならば行くがいい」

 

少年「ここは心の世界……そして、残る迷宮も人の心に左右される仕掛けがある」

 

少年「だから……ボクがココに出てきた。キミの中に眠る『影』がね」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――現実、フェルニル】

 

ハジメ「……っぶはぁ!!」

 

清水「ぬぉっ!? な、南雲!」

 

恵里「……ふぅん。やるじゃん」

 

檜山「はっはっはっは! オイ! 見ろよホレ! ちゃーんと復活したじゃねぇか!」

 

ノイント「……まさか」

 

鈴「や、やったーーー!!」

 

香織「……ふふっ、よかったね」

 

光輝「あぁ」

 

龍太郎「っよーし!」

 

パル「ゆ、ユエさん! ティオさん!」

 

ユエ「ハジメ……!」

 

ティオ「……そうか。ちゃんと起きることが出来たか」

 

ティオ「……」

 

………………

 

香織「……時間、だね」

 

龍太郎「流石にこれ以上はかけられねぇよなぁ」

 

ハジメ「……ノイント。頼む」

 

ノイント「分かりました」

 

――ブブブブッ……バシュッ

 

雫「……っ!! えっ、えっ……!?」

 

光輝「……雫」

 

香織「雫ちゃん……! よかった……!」

 

雫「わ、私は……」

 

雫「そ、そっか……私は、失敗しちゃったんだ……」

 

鈴「あ、あのあの! シズシズはね! ちょっと、ほんと、ちょっと……その……」

 

雫「……いい、もういいの」

 

雫「自分がふがいないことは、分かり切ってるから……」

 

清水「……さて、これで全員起きたわけだけど」

 

檜山「……! これは!!」

 

恵里「何か感じたのか?」

 

檜山「風の流れが……変わった……?」

 

ハジメ「そうか、風に特化したチートだったなお前」

 

檜山「へへっ、まぁな」

 

光輝「……! 変わっていく!」

 

ハジメ「……これで、ついにここの魔法が手に入る」

 

ティオ「あぁ、そうじゃな。この迷宮も終わる」

 

ティオ「……終わるのじゃ」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

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