【ハジメという男に対する印象】
【天之河光輝の言葉】
光輝「……」
光輝「あ、もういいんですよね。それじゃあよろしくお願いします」
光輝「天之河光輝……です。ええ、はい。○○高の……」
光輝「それで、質問ってなんでしょうか。おれ……じゃなかった。自分に聞きたい事ならなんでも言ってください。期待に応えて見せますよ」
光輝「……へ? 南雲ハジメ……?」
光輝「あ、あー……え、ええ。はい、そうですよ。同じ学校のクラスメイトですよ。それがなにか?」
光輝「はっ? どんな人間なのか答えてほしい?」
光輝「そうですね。ハッキリ言うとだらしない男……と、言ったところでしょうか」
光輝「学校には遅刻ギリギリ、来たとしても居眠りしてばかり、そのくせ自分の事を気にかけてくれる周りのアドバイスなんて右から左へと受け流してばかり。俺も自分の普段の態度を改めたらどうだって言ってるんですけどね……どうも本人は真剣に聞いてくれるどころかどこ吹く風って感じで……」
光輝「……は? 『じゃあ最低な人間なのか?』。『どうしようもないゴミクズで、最低で救いようのないクソ野郎なのか』……?」
光輝「え、あ、いや……それは、その……」
光輝「……」
光輝「それはない……と、言えます」
光輝「確かに南雲の普段の授業態度はどうかと思うし、気にかけてくれる香織……げ、げふんげふん。心配してくれるクラスメイトの事を蔑ろにしている感じはします」
光輝「……けど、流石にそこまで言われるほどの人間ではない……です。いや、俺もあまり南雲の事を『しらない』から何とも言えないけど……」
光輝「んー……あ、そういえば南雲はオタクなんですよ。知ってますよね。オタク。アニメばっかり見て、周りの事を気にしないから身だしなみとかを気にかけない人種ですよ。南雲もそういった人種の人間なんですけどね……ただ、南雲にはそう言った不快感はないんですよ」
光輝「声なんかはきはきしているし、不潔って印象なんてまったくない。髪の毛だってオタク特有のぼさぼさ感やフケなんかついてないし……ああ、そう考えると周りの事を考えて身だしなみを整えているくらいはしていますね」
光輝「それと、あなた。あまり感心できることじゃありませんよ。相手の事に対してある事ない事言いふらして……それは南雲という人間に対する侮辱でしかない」
光輝「謝罪しろ……とは言いませんが言葉には気を付けてもらいたい」
光輝「……へっ? 『なんで南雲ハジメのことを知らないんだ』……?」
光輝「え、えー……? そりゃあ、確かに南雲は俺のクラスメイトですけど、ただそれだけの関係ですよ。同じ学校の人間で、同じクラスメイトで、だから顔を見る機会が多い。ただそれだけの関係なんです」
光輝「それにアイツとは直接話す機会なんてほとんど…………」
光輝「……『直接』? あれ、そう言えば……」
光輝「あ、いえ。ちょっと思い出したことがあるんです。実は俺、南雲と二人で話したことってほとんどないんですよ。いや、その……俺には幼馴染がいましてね、その子がいつも南雲の事を気にかけているんです。ただ、あまりにもやさしい性格をしているからそれで相手に誤解を与えてしまうんですよ。知ってます? 学校では二大女神と言われるほどの美少女なんですよ」
光輝「……あ、あー……ごめんなさい。ちょっと気づいたことが……」
光輝「そういえば俺……香織が南雲に話しかけているときにしか……南雲に話しかけていないんだ……」
光輝「……へっ? あ、『今日はもう帰っていい』? そ、そうですか。ありがとうございます」
光輝「……」
光輝「……」
光輝「へっ?」
光輝「あの、これってどうやって帰るんです?」
………………
…………
……
【異世界トータス、神山】
イシュタル「……と、言う事です」
愛子「……っっっ!!」プルプルプル……
ハジメ(うっわぁっ……とんでもないくらいにテンプレ&身勝手な屁理屈だ……)
ハジメ(このイシュタルって人、見た目は好々爺のように見えて底に秘めているのは薄暗いモノが見えてくる。口ぶりや態度は人当たりが良さそうな人物を演じているけど実際は真逆……)
ハジメ(このヒトを支えているのは何よりも偉大な精神の支え、威厳溢れる後ろ盾……ほかならぬ『エヒト神』と呼ばれる存在に他ならない)
愛子「ふざけないでくださいっ!!!」
イシュタル「……?」ポカン……
イシュタル「そう言われましても……あなた方を呼んだのはエヒト様です。我々人間には異世界に干渉することはできませぬ。それが出来るのはエヒト様だけ……帰れるのはエヒト様のご意思次第なのです」
ハジメ(……何よりもこのおじいさんが油断ならないのはこう言う所だ。周りは気づいていない。愛子先生はイシュタルを責め立て、周りは背伸びしている愛子先生を見てほのぼのしているけど……)
ハジメ(今、この人は暴れている愛子先生を見ながら平然としている。それが何よりも恐ろしい)
ハジメ(この人からすれば愛子先生は『偉大なる神に選ばれながらなんで憤るのか』という疑問を抱いているはずだ。だが、信仰する神を侮辱されても平静を装った仮面を付けて、状況を観察している。信仰心は本物でありながら状況を読む観察眼と心の切り替えをできる精神性)
「いやっ……! そんな、そんなっ!」
「帰せっ! 元の世界に帰してくれよっっ!」
ハジメ「……」
――バァンッ…!
ハジメ(……ま、そうくるよな)ボソッ
光輝「みんな、俺は戦おうと思う」
「えっ……?」ザワザワ……
「うそだろ? 天之河が……」
光輝「イシュタルさんを責めてもしょうがない。この人だって、どうしようもなかったんだ。助けを求めてすがって……だから、俺たちに頼ったんだ。そうですよね」
イシュタル「ええ、その通り」
光輝「そして、帰るにはエヒト神の意思次第……つまり、この世界を救えば元の世界に帰してもらえる……そういうことですよね」
イシュタル「世界を救った英雄の言葉であるならばエヒト様も無下にはしませんかと」
光輝「……そういう事だ。みんな! 俺たちの力を合わせて、元の世界に戻ろう! この世界に平和を取り戻そう!!」
鈴「うぉー、かっこいー」
恵里「……ふわぁっ……♡」ポーッ……
清水「……」チッ……
ハジメ(……うわっ、思っていた以上にすごいな。流石天之河くんのカリスマっぷりだ)
ハジメ(彼は勘違いしがちな男ではあるが、そのカリスマぶりと天才的な頭脳と運動能力は嘘ではない。伴った実力と力のこもった発言力は心細い彼らの支えとなるはずだ)
龍太郎「……ったく、お前がやるなら俺もやるしかねーよな」
雫「……ま、そういうことよね」
香織「うんっ、うんっ! がんばろうね!」
光輝「みんな……っ!」
光輝「よしっ! そのためにもイシュタルさんに案内してもらって――」
――「――すばらしい」
光輝「……っ!」ゾクッ
ハジメ(――……な、んだこれ……この、威圧感……っ)
ハジメ(……)チラッ
イシュタル「おお、わざわざ足を運んでくださるとは……っ!」
――「……ほう、そうか。キミが皆をまとめ上げ、戦うと心に誓った少年か」
ハジメ(……青年だ。金髪碧眼の青年……見た目は成人男性ほどの年齢で、年もボク達より少し上くらいの男に見える……)
ハジメ(だけど纏っている威圧感……なによりもこの場に膝をついて頭を下げたくなるほどの威光……先ほどまで、天之河くんのカリスマで起ち上っていた彼らでさえも委縮してしまっている。あれだけ熱狂していたのに……)
光輝「あ、あなたは……もしかして……」
――「自己紹介がまだだったか」
エヒト「私はエヒト。キミたちを異世界から召喚した……この世界の神だ」
光輝「あ、あなたが……!」
エヒト「今回の事、あまりにも申し訳ないと思っている。本来ならば平穏な世界で平凡に暮らしていたキミたちを……このような世界に招いてしまったことを。偉大なる神とあがめられながら、争いを止めることが出来ない駄目神に頼られてしまったことを……」
光輝「そ、そんなっ! あなただって手段や方法がなかった! 悲しそうな顔をしないでください……俺は、いや、俺たちが! この世界の悲しみと涙の連鎖を断ち切って見せます!」
光輝「その時、あなたに見せられるのは……平和になったこの世界だ……!」
エヒト「……ありがとう。そう言ってくれると本当にうれしい」
龍太郎「お、おお……なんかすごそうなオーラを放っている兄ちゃんかと思えば結構親しみやすいのな……」ヒソヒソ……
雫「そうね……穏やかな顔をしているのに、そこに居るだけで平伏してしまいそうな……」
ハジメ「……あれが、エヒト……」
エヒト「……」
エヒト「イシュタル。何をしている」
イシュタル「は、はいっ!?」
エヒト「彼らにはこのようなゲテモノ小屋に置いておく必要はない。急いで王宮へと案内しろ」
イシュタル「げ、ゲテモノ小屋っ!?」
エヒト「言わなかったか? 彼らが住む国では神に対してドライだ。神を信仰し、崇める事よりも女と娯楽に就寝する思春期の少年たちにはひどく退屈でしかないだろう。来てくれたお詫びもかねてとろける様な豪勢な食事で楽しんでもらった方が良い」
イシュタル「わ、わかりました……い、今すぐ……」
タッタッタッタ……
エヒト「いやぁ、すまなかった。今度からはもっと親しみやすい内装にしようかなと考えてるんだ」
光輝「り、リフォームしちゃうんですか?」
エヒト「検討しているよ」ハハハッ
ハジメ「……」
ハジメ(……油断、出来ない。表の顔は穏やかだけど、それでも身勝手な理由でこの世界に呼んだのはほかならぬこのエヒト神だ)
ハジメ(……注意深く観察するのはやめないほうがいい、か)
………………
…………
……