生まれた時から最強だった   作:roborobo

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第34話

 

 

【???】

 

 

――彼らがこの世界に足を運んでから、いったいどれだけの年月が経っただろうか

 

 百年や千年なんて言葉じゃ物足りない。積み重ねられた年月は未来をかぶせて過去を下へと追いやっていく。かつてあった真実は埋もれて消えて、見るべきものも見なければならない物も見えなくなっていく。

 

 そうなれば、必然的に目に入ってくる者たちは、上っ面の上で表される数字の羅列。それが一つの指標になることは誰も否定できない。もちろん、私自身にも。縋ること、頼ることは人の本能であるがゆえに拒絶なんて絶対にできない。

 

 ……まだ始まるまでに時間があるな。話に付き合ってくれるかな? これが誰の夢に繋がり、誰の概念へ届くのか誰にも分からない。もしかしたら、私の独り言で終わるかもしれないね。だけど、暇つぶしにはなるはずさ。そうだろう?

 

 『異世界転生』……と言ったジャンルを、知っているかな?

 

 これはね、『古来』より人間たちの世界でずっとずっと人気のあるジャンルなんだ。冴えない自分が死んでから別の世界に生まれ変わって、その世界で本来の才能を発揮して世界を守り、誰からも称賛される人気小説の一つのカテゴライズ。私も好きだよ。たまに読むんだ。

 

 ……でもね、これらが流行り出したことで、一部の人たちの間でこういった話が広まるようになったんだ。こういうのを好きになる人間は、自分が生きている世界を頑張ろうともせず、都合の良い世界逃げようとしている。昨今の若者の、心の弱さが生み出した産物だ……とね。

 

 君はどう思う? そう思う? 異世界転生ものって、そう思う?

 

 ……これはね、私自身の解釈。答えは『NO』。見識者たちはしたり顔でこんなことをのたまうが、まったく何も分かっちゃいない。

 

 古来より、人は自分のルーツと世界に答えを見出そうとした。目には見えない物を、形にあるものとして捉えようとして、自分たちの心の中に一つの落としどころを作ろうとしてきた。

 

 なぜなら、自分たちには『終わり』があるから。終わりである『死』に一つの答えを見出そうとして、そのための納得できる理屈をいくつも用意しようとした。その答えのいくつかが、キミたちが『神』や『宗教』、はては『死後の世界』と言った一つの概念だったわけだ。

 

 その死後の世界も国ごとの解釈も違ったりするが、どれも大体が似たり寄ったりだ。死ねば生まれ変われる、死ねば世界から解放されて解脱する、永劫続く楽園へと招待される。中にはずっと処女のままの天使とヤりたいほうだいなんて解釈もしている。これが昔からある人間たちの理想の『世界』だ。

 

 わかるかな……人の心が弱くなったから異世界転生が流行ったんじゃない。人の在り方が、異世界転生へのを求める構造そのものになってるわけだ。誰しも、目には見えない物に恐怖を覚えるからこそ、安心できる形を得たいわけだ。

 

 そう、それこそが――あぁ、そろそろ時間か。すまないね、また今度だ。

 

 それじゃあ、『彼』に会ったらよろしく頼むよ。どこのだれかか分からない誰かさん。

 

 

 

【――夢の中】

 

 

――あ゛ー……すっごい久々な気がする

 

――なんでだろうね。ちょっと前まではちょこーっとばかし流暢にお話しできてたり、ハジメたちの所に連絡取れてたり出来たのにさ

 

――それがいまじゃどーよ。振るえる力はどんどん下がっていく、この世界に干渉できる意識が低くなっていく

 

――……よほど、私の中にある力が薄れてきたと見える

 

――もう、先は長くない……ということか

 

――……

 

――あと、もう少しだな

 

――あともう少しで、この茶番劇も終わる

 

――私も、『あいつ』にとっても長い長い旅路だった

 

――……さて、感傷に浸るのはあとだあと

 

――なにせ、このトータスで私ですら認知してない『何か』が起きているのだからな

 

――シアやティオに従う神と名乗る『何者』、知らず知らずのうちに再生した神の使途であるノイント

 

――このまま私が消えていなくなるならば、そう望むのならば私は受け入れよう。だが、それは今ではない。

 

――……恐らくだが、もうハジメたちは氷雪洞窟の最奥にいるはず。最後の神代魔法を習得し、奴らは概念魔法を習得するはず……

 

――その時だ。その時こそ、この旅の終わりだ

 

――……ハジメ……

 

………………

 

…………

 

……

 

【――ユエの夢】

 

ユエ「あの時、私の心は深い暗闇の奥にあった」

 

ユエ「あの時、私の体は深い漆黒の中にあった」

 

ユエ「傷ついた心は治すことが出来なくて、小さな体はその身に宿した力を持て余していて」

 

ユエ「それをつけたあの男を……あの人が、なんでこんなことをするんだろうと何度も頭の中で鳴り響いていて」

 

――……

 

ユエ「……だけど、私はあの人に出会えた」

 

ユエ「夢にまで見た、外からの人。私を連れ出してくれる、救いの手」

 

ユエ「偶然だろうと何だって良い。きっと、彼じゃなくても助けてくれる誰かだったら、私はその人についていったかもしれない」

 

ユエ「でも、それでも」

 

ユエ「私は、私のことを『ユエ』と呼んで一緒に戦ってくれた彼の傍にいることを誓った」

 

ユエ「運命だろうと関係ない、偶然だろうとそんなのは後から言える。大切なのは今、築いてきたその道」

 

ユエ「『ユエ』は、例え何があろうともずっと彼の隣にいることを誓ったの」

 

ユエ「それが、『ユエ』の選択だから」

 

――そうだ、『ユエ』はそう選択した

 

――傷ついた過去なんてもういらない。新しく変えた仮面で新たな人生を生きていけばいい

 

――自分を封印したあの男も、滅んでいった吸血鬼族のことも、もう何もかも

 

――……でも

 

――もう、そんな風には考えられなくなってしまっていた。そうだろう?

 

ユエ「……人は、他者とのかかわりの中で自分を形成していく」

 

ユエ「ハジメという他人が、私を『アレーティア』から『ユエ』へと変えてくれた」

 

ユエ「人は、変われる。きっかけ一つで、変われる」

 

ユエ「……私は」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【魔国ガーランド】

 

――スタスタスタ……

 

ランデル「……そ、その。なぜ我々は呼ばれたのだ……? こんな深夜に……」

 

エーアスト「夜分遅くに申し訳ありませんランデル王子。それと、お付きのお二人も」

 

ミュウ「みゅ、ミュウは大丈夫だけど……」

 

レミア「……なぜ、私たちも呼ばれたんでしょうか」

 

レミア「王国の話や政治の話であるのならば、ランデルくんだけでいいはず……私たちのような亜人が、魔王様と対面だなんて……」

 

エーアスト「その魔王であるアルヴが、あなた方と話をしたいと申し出たのです」

 

ミュウ「え、ミュウたちを……?」

 

レミア「……なんのために」

 

エーアスト「……それについては」

 

――ギギギギッ……

 

エーアスト「アルヴ本人に直接お聞きください。さぁ、みなさま。こちらへ……」

 

………………

 

アルヴ「……来てくれたか、ランデル王子。それと、魚人族の親子よ」

 

レミア「ま、魔王様……」

 

ミュウ「……」ペコリ

 

ランデル「魔王アルヴよ、こんな時間に何の用で……」

 

アルヴ「ハイリヒ王国の王子、ランデル。そなたが聞かせてくれたあの言葉、その思い。嘘偽りはないとそう誓えるな?」

 

ランデル「……改めて言うのもあれなのだが……あの言葉に嘘はない」

 

ランデル「民が強くあってくれる国。強くなろうとして生きてくれる国」

 

ランデル「永遠に最強のままであることは無理でも、最強を目指しつづけてくれる国であってほしい」

 

ランデル「私は、そんな彼らの導となる威光を得たい」

 

ミュウ「……ランデルくん」

 

レミア「……」

 

アルヴ「……」

 

アルヴ「……くくっ」

 

ランデル「く……?」

 

 

アルヴ「はぁーはっはっはっはっはっは!! ここまで言い切られてしまうとはな! もう何も言い返せないよ少年!」

 

 

ランデル「!? あ、アルヴ……!?」

 

ミュウ「ま、魔王様の雰囲気が……かわったの……?」

 

レミア「……あなたさまは……」

 

エーアスト「……魔王アルヴ。やはりあなたは……」

 

アルヴ「……すまなかったねエーアスト。だますような真似をしてしまって」

 

アルヴ「ランデル殿下……いや、ランデル君。君の想いは確かに見せてもらった。何度も意地の悪いことや細かいところを指摘するような真似をして……悪かったね」

 

ランデル「え、え……?」

 

ミュウ「お、お母さん……魔王様、なんか様子が……」

 

レミア「……雰囲気が違う。あなたさまは、本当に魔王……?」

 

アルヴ「そこの婦人が感じている通りだ。私は、魔王ではない」

 

 

アルヴ?「とある理由によってこの肉体に宿った『過去の亡霊』。それが、私なんだ」

 

 

ランデル「ぼ、亡霊!?」

 

ミュウ「えっ、えっ、じゃあ魔王様ってもうどこにもいないの!? じゃあおじさんはだれなの!?」

 

アルヴ?「……そのことについて私としてもじっくりと話をしたかった。だが、無理だ。もう時間がない」

 

アルヴ?「彼が……フリードが用意してくれたこの状態も、そう長くはもたないんだ」

 

ランデル「状態……? フリード? あなたは、あなたは一体何を言っているんだ!?」

 

アルヴ「……エーアスト、頼めるかな」

 

エーアスト「お任せください」

 

――キィィィィィィッ……

 

ランデル「な、なんだ!? 空中に穴が……!?」

 

――……すぅぅぅぅぅ……

 

ミュウ「……? 穴の先に、何かあるの……」

 

レミア「あれは……お部屋……?」

 

………………

 

…………

 

……

 

【フェルニル内部】

 

バイアス「んー……うめぇなこのミカンって果物」

 

イシュタル「あ゛ー、姫様、姫様。そちらの雑誌を取ってくだされ」

 

リリアーナ「え、えぇ……どうぞ」ヒョイッ

 

イシュタル「いやぁ、助かりました。ははは……そこそこ時間が経ちましたが、そろそろでしょうな……ぷ、ふふっ。おもしろ……っ」

 

バイアス「……」

 

バイアス(すごいよな、このじいさん。一応、国の裏切り者なのになんでこんなリラックスできんの……?)ヒソヒソッ……

 

リリアーナ(こういった図太さがあるからこそ、聖教教会のトップに立てた……のでしょうか……)ヒソヒソッ……

 

――キィィィィィィィ……!

 

リリアーナ「……ん、えっ……?」

 

バイアス「うぉっ、空中に穴……!・」

 

 

ランデル「……ぁ、えっ……?」

 

 

リリアーナ「……えっ、えっ、えっ!? えっーーーーー!! く、空中に穴! 穴から弟!? ランデル!? 何ですかコレなんですかコレ!」

 

バイアス「う、っぉっ、なんだよオイコレ!? はぁ!? なに!? なに!?」

 

ランデル「あ……姉上ーーーーー!!」

 

――ダダダダ……ギュッ……

 

リリアーナ「あ、あなたランデル!? えっ、な、なんでフェルニルからこれが……!」

 

レミア「こ、これって……」

 

エーアスト「空間転移によって、迷宮攻略中のイレギュラーの拠点に繋げました」

 

「よくやってくれたエーアスト。あとは……」

 

――ザッザッザ……

 

アルヴ?「私の仕事だ」

 

エーアスト「……あなたには感謝していますよ。こんな形でとはいえ、あなたがまさか我々に協力してくれるとはね」

 

アルヴ?「正直に言うと君たちに対しては寛容になったわけでも許しわけでもない。あくまで、状況が私と『あの子』にとって有利に働いたのと……」

 

アルヴ?「……もはやあの神は取るに足らぬものになったから、だな。今は、とにかくあの子の所へと行きたい」

 

アルヴ?「私に残された時間は……もう少ないのだから」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

【氷雪洞窟】

 

――しゅぅぅぅぅぅ……

 

ハジメ「……手に、入ったんだな……最後の神代魔法の『変成』を……」

 

恵里「この魔法からは、魔力を通じた肉体に対する干渉を感じられる」

 

恵里「なるほどね……なんとなくだけれど、魔物の作り方ってものがわかってきたよ」

 

光輝「これを、俺たちに……か」

 

龍太郎「な、なんかすっげぇ使い方出来るんだろ? それこそフリードのようにすげぇ形態に」

 

恵里「アホ。やったら体に後遺症が残るぞ。下手な使い方はしない方が良いんだって」

 

………………

 

香織「ふふっ、みんな嬉しそうだね」

 

雫「まぁ、ね。なにせ、これでようやく元の世界に帰るための算段がついたんだもの。はしゃぎもするわよ」

 

雫「それで……その……どう、なのかしら……南雲君」

 

ハジメ「……ん? あ、あぁ……」

 

龍太郎「あ? どうしたんだよ?」

 

光輝「疲れてるなら休憩したらどうだ? お前もだいぶぐったりしてるだろ」

 

ハジメ「……ぁ、あぁ……いや、大丈夫だ。問題はない」

 

ハジメ「ユエ、準備に取り掛かろう」

 

ユエ「ん、ここで得た魔法の力で……異世界への道を作る」

 

………………

 

ハジメ「……とりあえず、俺はこれですべての神代魔法を手に入れた」

 

ハジメ「これらの魔法を習得することで得られる『概念魔法』。この力を得るには、すべての神代魔法の根源に触れることが重要と言われているが……」

 

光輝「お前の中にあった信仰による浸食はどうだ? すごかっただろ、頭痛が」

 

ハジメ「……今はもう、ない……と思う。たぶん、概念魔法を実質習得できるようになったから、問題なくなったから……なのかもな」

 

鈴「おぉー! じゃあよかったじゃん!」

 

恵里「少なくとも、今後のことでお荷物になることは避けられる……ってわけか」

 

ハジメ「あぁ……早速だが、これから概念魔法を付与したアーティファクトを作らなきゃならない。ユエ、来てくれるか?」

 

ユエ「ん。これからだね、ハジメ」

 

ハジメ「……ようやく、だな。ようやく、終わりが見えてきた」

 

ハジメ「すまないみんな。俺は少しユエと二人になる。ユエ、こっちへ」

 

ユエ「……ん」

 

……スタスタスタ……

 

光輝「……? いま、ユエの様子が……」

 

雫「どうしたの? 光輝」

 

光輝「……いや、気のせいかな」

 

恵里「さて、これでこっちのほうは帰れる算段が付いた。そこの人、話の方は覚えてるよね?」

 

ノイント「……はて、何のことやら」

 

恵里「すっとぼけんなアホ。っていうかわかってて言ってるだろ」

 

ノイント「心に余裕がありませんね。こういうのは軽く流した方がスマートという物ですよ」

 

恵里「こ、このやろぉ~~~~……っ」

 

鈴「ま、まぁまぁ……」

 

ノイント「……ふぅ。魔法を習得し、元の世界に帰る手段をあなたたちは手に入れた」

 

ノイント「その力があれば、現在の信仰の悪い流れもどうにかできるかもしれません。我が主は、駒である貴方たちに対して悪いようにはしないでしょう」

 

清水「そっちの方が何もしないっていうなら……」

 

檜山「ま、ついでにやっておいてやるか。言っちゃなんだが俺ら被害者だけど……」

 

恵里「変に波風経たせずにコトが終わるなら何でもいいでしょ……はぁ~、つっかれたなぁ……いろいろと」

 

鈴「でも、これで本当に終わり……やっと、なんだね……」

 

光輝「……」

 

光輝(……これで、これで本当に終わり……)

 

光輝(……終われる、のか……? 本当に……?)

 

――バシュゥゥゥゥゥゥゥ!!!

 

光輝「!? な、なんだ!?」

 

龍太郎「ぼ、暴風!?」

 

清水「これ、これって……二人のいる方じゃねぇか!?」

 

檜山「お、オイ! 南雲! ユエ!」

 

――キィィィィィィ……!!

 

雫「……! こ、これは……」

 

香織「……映像……?」

 

――キィィィィィ……

 

光輝「これは……オルクス大迷宮の内部……?」

 

龍太郎「……もしかして、これ……」

 

香織「……南雲君の、奈落に落ちた時の……」

 

檜山「……っ」

 

……………………

 

雫「……大変、だったのね」

 

清水「帰りたいって気持ちか……いまなら、すっげぇわかるかも」

 

恵里「……」

 

光輝「……」

 

光輝「……なぁ、おかしくないか。なんだかこの映像……」

 

――キィィィ……ィ、ィ……

 

龍太郎「……!? あ? なんか消えかかってねぇか!?」

 

清水「な、なんで!?」

 

――ィィィ……ィイ……

 

雫「き、消えてしまった……完全に……」

 

恵里「なっ、なんでだよ!? だって、ちゃんと神代魔法はそろってたんでしょ!?」

 

鈴「まだ、何か足りない物があるのかな……?」

 

光輝(……今の映像……)

 

光輝(……なんだか)

 

 

光輝(ユエのシーンに入った途端に消えたような……)

 

 

 

香織「え、どういうことなの? だって、今のって……」

 

ノイント「……概念魔法による力を付与したアーティファクトの条件の一つが『極限の意思』」

 

ノイント「先ほどの過去の記録が、その想いの根源であるとするのならば、あれこそが二人の心を支えていた物」

 

ノイント「それが消えたということは……」

 

ハジメ「……」

 

清水「ちょ、ちょっと待てよ! 南雲に帰る気がねぇって言いたいのかよ!?」

 

ノイント「……そうとも言い切れませんよ」

 

恵里「なに……?」

 

光輝「……極限の意思を支えきれなかったのが、もう一人の方だとしたら」

 

香織「それって……」

 

……………………

 

ハジメ「……っ、ゆ、ユエ……?」

 

ユエ「……」

 

――スッ……スタスタスタ……

 

龍太郎「あ……お、おい? ユエ?」

 

香織「ちょっと!? どうしちゃったのユエ!」

 

ユエ「……」

 

ノイント「……なるほど、そう言う事でしたか」

 

ハジメ「なっ、何か知ってんのかお前!」

 

ノイント「恐らくですが、あなた――」

 

 

ノイント「この迷宮を、ただ『攻略しただけ』で済ませましたね」

 

 

清水「え、それって……」

 

ノイント「迷宮に現れる影は人の心を惑わす。突かれたくない心の隙間を狙っている」

 

ノイント「その傷を受けたうえで、乗り越えてこそ『極限の意思』へ至るための段階たりえる。それなのに……」

 

ノイント「あなたは、その強い力を持って影の言葉をしっかりと受け止めきれず、その前に自らの力で倒してしまった」

 

ノイント「あなたの心には……いまだ晴れない深い影を抱えてしまっている」

 

香織「そ、そんな……!!」

 

光輝「ユエ……」

 

ユエ「……」

 

ユエ「ハジメ、答えてくれる?」

 

ハジメ「……な、何をだ」

 

ユエ「私、ハジメのことが好き」

 

ユエ「私を助けてくれて、一緒に歩いてくれて、暗闇の中で輝く月を私に見せてくれた」

 

ハジメ「あぁ、そうだ。俺もお前のことを愛している。お前は、俺の『大切』だ」

 

ハジメ「だから一緒に地球へいこう。俺たちで世界を超えよう」

 

ハジメ「俺たちはそのために今まで戦ってきたんだろ!?」

 

ユエ「……そうだね。だから、これからも……これからも、一緒に――」

 

 

ユエ「――いたかった」

 

 

ハジメ「……お、おい。何が言いたいんだ……? お前に、何が――」

 

ノイント「――ッ!! 全員、離れてください! 何がかこちらに近づいてきている!!」

 

光輝「! 構えろみんな!」

 

――……シュゥゥゥゥゥ……!!

 

龍太郎「ぬぉぉぉぉ!? く、空中に穴が!?」

 

光輝「な、なんだあれは……どこか、別の場所に繋がってるのか……?」

 

清水「……だ、誰か出てきたぞ……」

 

――スタスタスタスタ……ピタッ

 

アルヴ?「……久しぶりだね」

 

ユエ「……」

 

光輝「あ、あの姿……あの体……!」

 

雫「魔人族!?」

 

ハジメ「……誰だ、お前……」

 

アルヴ?「……初めまして異世界の少年少女たち」

 

アルヴ?「私はアルヴヘイト。君たちが戦っている魔人族の長、すなわち魔王――」

 

アルヴ?「と、呼ばれていた存在だ」

 

清水「魔人族の、魔王って……!」

 

恵里「……いや待て。こいつ、何か変だ」

 

鈴「ど、どうしたの恵理?」

 

恵里「コイツの体……どうも『ちぐはぐ』だ。体そのものと中に入っている魂その物が、どこか一致していない」

 

恵里「これは……魔王の肉体に、別の魂が入っている……いや、『いた』のか?」

 

恵里「……二つの魂が混在していた形跡を感じられる。元々あった魂が元の主導権を取り戻した……って言っていいのか……?」

 

アルヴ?「……ユエ、私が誰なのかわかるのかい?」

 

ユエ「……私も驚いてはいる。あなたがここにいることに」

 

ユエ「でも、不思議と納得している自分がいる。ここに来ることを、私は知っていた気がする」

 

アルヴ?「……改めて紹介させてくれ」

 

アルヴ?「私はアルヴヘイト。魔人族の王であり――」

 

 

ディンリード「吸血鬼族の姫の叔父、ディンリード・ガルディア・ウェスペリティオ・アヴァタール」

 

 

ハジメ「ユエの……親族?」

 

ハジメ「! お前、まさかユエを封じたっていう例の裏切り者か!?」

 

香織「ま、待ってください! 確かあなたたちはずっと昔に……」

 

ディンリード「そうだ。ずっと昔に死んでいる」

 

ディンリード「私はかつて、狂った神とその使徒たちによってこの肉体を利用されて……エヒトの眷属神アルヴヘイトによって乗っ取られていた」

 

光輝「け、眷属神……?」

 

――シュゥゥゥゥゥ……

 

エーアスト「そのことについては私から説明させていただきます」

 

清水「うぉっ!? ノイントがもう一人!?」

 

ノイント「……エーアスト。あなたもここに?」

 

エーアスト「そうですよノイント」

 

エーアスト「……あなたたちが魔人族の戦争と思っていたこの戦い。実は、魔人族にいる魔王は聖教教会が崇めているエヒトの眷属だったのです」

 

エーアスト「それもこれも、この盤上を盛り上げるための舞台装置。あの方は、そのためにディンリードの肉体にアルヴの魂を仕込んでいたのですが……」

 

ディンリード「しかし、魔人族の将軍であるフリードが、アルヴを打ち倒し、私の肉体に残留していた魂の欠片をかきあつめて……この肉体は、本来の所持者に戻すことが出来たわけだ」

 

恵里「あ、あいつが!? 自力で!?」

 

ユエ「……フリード……」

 

ディンリード「彼がアルヴを打ち倒せたのは、キミたちも知っての通りエヒトが弱体化したからだ。あの狂った神がもらった力が抜け落ちてしまい、それでも苦戦しつつ、何とか奴の魂だけを抹消させ……」

 

エーアスト「その肉体の元の所有者であるディンリードが取り戻した……というのが事の経緯です」

 

ハジメ「待て。そんなのどうやって……」

 

ディンリード「変成魔法さ。何とかアルヴを打ち倒した後、肉体の中に眠っていたほんのわずかな魂を引き出すことに成功したのさ」

 

ディンリード「そして、戦いの中で見せたであろう様々な力は……私が、アルヴによって支配されて、この力に宿った概念魔法の力を彼に少しだけ託したものだ」

 

ノイント「なるほど……眷属神である彼の力を半ば奪い返し、それをフリードに……だからあの者が……」

 

光輝「経緯はわかった。それで、あなたたちはここへ何しに来たんだ?」

 

ディンリード「……アレーティア。いや、確か今は『ユエ』という名前だったね。君に言いたいことがある」

 

ユエ「……はい、叔父さま」

 

ディンリード「……今、この世界は動乱の時を迎えている」

 

ディンリード「この世界を支配という形で統治し、遊びに遊んでいたエヒトはこの世界を見捨てるだろう」

 

ディンリード「おそらく、このままでは魔人族の者たちも、そしてこの世界で生きる多くの者たちがその拠り所を無くしてしまう」

 

ディンリード「今、それをどうにかできるのは……吸血鬼族の姫として、この世界でもっとも優れた力を持つキミが、この世界にいる亜人族たちを纏める力と声を持っていると……私はそう思っている」

 

ディンリード「それが、『アレーティア』としての生きていける道だ」

 

ハジメ「ま、待て!! お前、ユエに王になれって言ってんのか!?」

 

龍太郎「おいおいおい、そりゃないんじゃないかよ!」

 

香織「ストップ! 落ち着いて二人とも!」

 

ディンリード「……だけどね、キミにはもう一つの道がある」

 

ディンリード「それは、そこにいる少年と共に、『ユエ』として生きていく道だ」

 

ユエ「っ……!!」

 

ハジメ「えっ……」

 

ディンリード「……魔人族もこの世界の者たちも、今となってはただの重荷でしかないだろう。それらに見切りをつけて、新たな世界に行けば……きっと、キミは幸せになれるはずだ」

 

ディンリード「そこにいる彼が、キミの大事な人であり……キミのことを大切に想ってくれている人なのは……もう、わかっているからね」

 

ユエ「っ……叔父様……」

 

ディンリード「……アレーティア。君が許してくれるなら、言い訳をさせてほしい」

 

ディンリード「本当だったら、『アレ』に記録したモノで真実を伝えたかったが。私は――」

 

ユエ「待って、叔父様。いい、もう、いいの……」

 

ディンリード「……アレーティア……」

 

ユエ「……叔父様の言葉と、私のことを想ってくれていた……それだけで、もう……あなたは私のことを裏切ったのではないってわかったから」

 

ディンリード「……そうか……そう、だな……」

 

ユエ「だから叔父様、謝っちゃダメ。私ならもう……大丈夫だから」

 

ユエ「どの道を歩いていくかは……もう、決めている」

 

ユエ「私は……ちゃんと愛されていたって、わかったから」

 

ディンリード「……そうか」

 

ハジメ「……聞かせて、くれないか。なんでアンタは、ユエに『アレーティア』として生きる道を……その可能性を提示したんだ」

 

ハジメ「それが、ユエの考える道筋に……いらないノイズを残すだけじゃないのか?」

 

ディンリード「本当だったら、私も言わないつもりだった。いや、今でも彼女が幸せでいてくれるなら……彼女になんら不安のない、平穏な道を進ませたかったさ」

 

ディンリード「……南雲ハジメくん、だったか。なぜ、私がフリードの力で……一時的によみがえったと思う?」

 

ディンリード「それはね、彼が魔人族の後を誰かに託せる様にと……何かあった時のために、魔人族のために行動してくれる私を復活させたからだ」

 

ハジメ「っ……あいつが……」

 

ディンリード「彼は、絶対なる神への恐怖を跳ねのけた。だから、こうして私はここにいる。アレーティアのことを想えばこそ、幸せな道を歩んでほしいが……こうして、再び彼女と再会させてくれた彼への義理もある」

 

ディンリード「何よりも……私が意識を取り戻してからの時間は短いが、見てしまったのだ。魔人族が生きる国をその目で見て、彼らの生きる姿を」

 

ディンリード「だけど、それをアレーティアに押し付けるつもりはない。あくまで、選択の余地としてキミに提示したいというだけなんだ」

 

ユエ「……っ、おじ、さま……」

 

ディンリード「……この世界は、あともう少しで神の支配から抜けられる。その後の世界を、守るための守護者が……トータス、には……っ」

 

――ガクッ、ドサッ……!!

 

ユエ「っ!! お、叔父さま!?」

 

ハジメ「お、おい! どうしたんだ!?」

 

ディンリード「……限界が、来たみたいだ。どうやらもう……長くは持たないらしい」

 

清水「そ、それってどういうことだよ!」

 

恵里「……本人が直接言ってたでしょ。元々、彼の魂は肉体に残留していた残りカスを集めた物……」

 

恵里「もう、耐えられないんだ。魂その物が……」

 

檜山「……っ」

 

――キュッ……

 

ディンリード「……手を、握ってくれるか……アレーティア……っ」

 

ユエ「っ……はいっ! あなたの娘は……ここにいます!!」

 

ディンリード「……ッ、アレーティア……私は、君を愛していた。君がどのような道を選んでも、それは何ら恥じることも負い目を感じることもない」

 

ディンリード「少年よ、ハジメくんよ……今まで、アレーティアと共に居てくれて……あり、がとう……」

 

ハジメ「……っ……」

 

ディンリード「……あぁ、消える……消えていく……さらば、だ……わた、しの……ひ、め…………」

 

――ドサッ……

 

恵里「……魂の気配がどこにもない。逝って、しまったか……」

 

檜山「……すっげぇ綺麗な死に顔だったな」

 

清水「未練は何もないって感じか……」

 

――スタスタスタ……

 

エーアスト「……あなたが吸血鬼族の姫ですね」

 

ユエ「……ん、その通り」

 

エーアスト「アルヴヘイト……いえ、ディンリードの遺言では、あなたは彼の魔王としての地位を受け継ぐ資格があるとそう告げていました」

 

エーアスト「もしも、あなたが彼の遺言通りに魔王になるのであれば、魔国ガーランドにおいて魔王としての名乗りをあげてください」

 

エーアスト「その瞬間、あなたは魔人族の王として君臨し、ガーランドを統治するのです」

 

ハジメ「テメっ……!! なにをっ! 何の話をしてやがる!!」

 

光輝「その受け継ぐかどうかの話は、今さっきしたばかりだ! 身内が亡くなったばかりの彼女に、今その話は――」

 

ユエ「……お願い、黙って」

 

ハジメ「あぁ、わかってる。オイ、黙ってろよ神の木偶。こんな話、聞くつもりなんて……!」

 

エーアスト「……」

 

ユエ「……違う。あなたに言ってる」

 

 

ユエ「――少年。あなたにこそ、この件に口を挟む資格なんてないんですよ」

 

 

ハジメ「……ユ、エ……?」

 

ユエ「……エーアスト。案内しなさい。私を、ガーランドの城へ」

 

――シュゥゥゥゥゥゥ……

 

エーアスト「こちらの穴からお通りください。すでに準備は整ってあります」

 

ユエ「……ご苦労」

 

――スタスタスタ……

 

ハジメ「ゆ、ユエ!! オイ! どこに!」

 

ノイント「急いで追いなさい!! あの穴が閉じたら、追えなくなる!!」

 

恵里「み、みんな、急いで飛び込め!!」

 

清水「な、なんか忙しいな今日は……!」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――魔国ガーランド、城内】

 

――バババッ……

 

ハジメ「っ……こ、ここが」

 

光輝「魔人族の、王城か……!」

 

龍太郎「お、おい! それよりユエはどこへいったんだ!?」

 

雫「……! ね、ねぇ、あそこ……!」

 

香織「お城の……中庭……」

 

ハジメ「急ぐぞ! ユエはそこにいる!」

 

………………

 

【城内、中庭】

 

ハジメ「っ……ユエ! ユエ!」

 

鈴「ゆ、ユエ! 一体どうしちゃったの!?」

 

ユエ「……」

 

エーアスト「……あなた達までついてきましたか」

 

ノイント「……エーアスト、これは一体……」

 

エーアスト「アルヴヘイト……いや、ディンリードは彼女に二つの道を提示して見せました」

 

エーアスト「この世界で生きるか、そこにいるイレギュラーと共に生きていくか。彼女は、与えられた選択肢の中の一つを選んだ。だからこそ、この場を整えさせていただきました」

 

光輝「なぜ神の使途であるあなたがわざわざガーランドのために……」

 

エーアスト「彼女がこの国の王となれば、今まで我が主と深いつながりのあったガーランドに対して融通が利くようになる」

 

エーアスト「今後とも何かあった時のために、アルヴヘイトに変わる我が主と魔人族を繋ぐための橋渡しが必要なのです」

 

恵里「……それって、この国をエヒトの支配下に置きたいわけ?」

 

エーアスト「ご安心を。そのつもりはありませんよ」

 

恵里「なに……?」

 

エーアスト「あなた達も知っての通り、すでに我が主は弱体化している」

 

エーアスト「それだけではない。主は今回の遊戯を持って――」

 

 

エーアスト「盤上の遊戯を終了すると、我々に告げたのです」

 

 

恵里「っ……!? それって……」

 

清水「えっ、じゃあもうこの世界が荒らされたりすることはないってコト……?」

 

檜山「ちょ、ちょっと待てよ!? どういった心境の変化だよそれ!?」

 

エーアスト「……我が主の心のうちなぞ、使徒である私に知る術はありません」

 

エーアスト「なぜなら、元の世界に帰るあなたたちに取って……もう、無関係の話なのですから」

 

――ザッ……

 

ノイント「ならば、私にはその話を聞く権利がある、ということですね」

 

清水「ノイント!」

 

エーアスト「……ノイント? なぜあなたが」

 

ノイント「ただの駒であれ、彼らはこの件において弱体化した我が主のために奔走したことは事実」

 

ノイント「トータスの状況も、彼らにはとっては無関係な話になったとしても、この件に巻きこまれながらも協力してくれた彼らにも聞く権利がある」

 

ノイント「そうでなければ……気持ちよく帰れないでしょう、あなたたちも」

 

エーアスト「……報告では死んでいたと聞きましたが……さて、これはどういうことか……」

 

檜山「あ……? こいつが復活したのはエヒト関係ねーの?」

 

恵里「えっ、じゃあ誰が……」

 

………………

 

ユエ「……」

 

ハジメ「ゆ、ユエ……オイ、何を黙っているんだよ……」

 

ユエ「……ハジメ、あなたは私に月を見せてくれた。閉じ込められていた私に、この世界の月を、太陽を、私に見せてくれた」

 

ユエ「裏切られた心の傷はずっと癒えないままだったけれど、寄り添ってくれるあなたがいてくれたから、どんな苦難も進んでこれた」

 

ユエ「それはきっと、もう帰る場所のない私にとって、帰る場所を教えてくれたあなたがいてくれたから」

 

ユエ「……でも、もうダメなんだと思う」

 

ハジメ「だ、ダメってなんだよ!! なんで、そんなことを!!」

 

ユエ「……ハジメ、よく聞いて」

 

ユエ「もしも、あなたの両親が死んでいて……実は死んでいなかったという事実を知った時――」

 

 

ユエ「その両親が生きていたと知ったら……どう思う?」

 

 

ハジメ「っ……!」

 

ユエ「……この話、立場を逆にして考えてみて。私からすれば、帰る場所なんてないと思っていて、裏切られただけの思い出しかない家族に、しっかりと愛を教えてくれる人がいたんだって……分かったって話なの」

 

ユエ「あなたは、自分が故郷に帰れないって知ったらどう思う? ……あなたはきっと、妥協しながらもこの世界で生きてくれるかもしれない。帰れる場所がないからこそ、根を下ろして生きていくかも。そんな強さが、あなたにあることを、私は知っている」

 

ユエ「でも、あなたの帰るための原動力である家族は死んでいたと思っていたら、実は生きていたと知った途端――あなたはきっと、トータスを捨てて元の世界に帰りたがるはず」

 

ハジメ「だ、だけど……愛してくれたのはあの叔父だけで、吸血鬼族の国だって、もう……」

 

ユエ「そうだね。本当の意味で愛してくれたのは叔父さまと一部の家臣たち。国だって、もうない――ならば」

 

 

ユエ「作ればいい。故郷も、家族も、そのすべてを」

 

 

ハジメ「……は? つ、つくる……?」

 

ユエ「私は、この国に根を下ろし、神の支配から脱却し、もう誰にも負けない強い国を作る。もう二度と、神の支配による支配者を作らないために」

 

ユエ「それが、叔父様が残してくれたものを……希代の魔法適性を持ち、吸血鬼族の中でも優れた能力を受け継いだ私の使命」

 

ユエ「……だから、ハジメ。もうあなたは関係ないの」

 

 

ユエ「あなたに帰る場所があった様に、私にも帰る場所がようやく見つかった。それだけなのだから」

 

 

ハジメ「なっ……そ、んなっ……!」

 

ユエ「……」

 

――スゥゥゥゥゥゥ……

 

ユエ「――魔国の者よ。今、このトータスは新たな時代を迎えようとしている」

 

ユエ「長きにわたり神の支配によって縛られ続け、その身の未来をすべて悪しき者たちによって定められてきた」

 

ユエ「この国には魔王アルヴヘイトがいた。だが、神に抗うために勇敢にも立ち向かった王は……将軍フリードと共に志半ばに果てた」

 

ユエ「この世界には暗雲が立ち込めている。先も見えない、未来への道筋なぞ、もはやどこにもないと言っていいほどに……」

 

ユエ「……だからこそ!!」

 

ユエ「今こそ!! 我々は暗闇に立ち向かわねばならない! 暗雲を切り裂き、未来の道筋を自身の手で切り拓いていく!!」

 

ユエ「それが! 人間や亜人たちにはない、個々の強さを持つ我々の強さだ! 力だ!」

 

ユエ「魔人族の者たちよ!! 共に! 魔国の地と共に! この世界に、真の支配を広げていくのだ!!」

 

ユエ「聞け! 刻め!! 我こそが、この魔国の新たな王!」

 

ユエ「お前たちを光の道で導く『月光』!!」

 

 

アレーティア「我が名は『魔王アレーティア』!! お前たちを導く『月』なり!」

 

 

………………

 

光輝「っ……魔王アレーティア……!」

 

龍太郎「な、なにやってんだアイツ!? なんであんなことしてんだ!?」

 

エーアスト「……これで、この国も安泰でしょうね。まぁ、彼女ならばガーランドに害を与えるようなことはないでしょうから大丈夫でしょう」

 

ノイント「……」

 

エーアスト「さて、そろそろ時間です。我が主の下へ帰還し、報告に参りましょう」

 

エーアスト「早速…………っ? 今、何か……」

 

――キィィィィィィィ……

 

香織「……ね、ねぇちょっと待って。ユエの周辺、何か……」

 

光輝「っ……この反応! まさか!」

 

雫「南雲君!! ユエを!」

 

ハジメ「ッ! チィッ!」ジャキッ!

 

――ドパンッ! ドパンッ!!

 

「――えらい歓迎だな。まぁ、洗礼と言う事にしておこうか」

 

アレーティア「……あなたは」

 

ハジメ「ッ……シアといい、ティオといい……!!」

 

ハジメ「お前らッ!! 一体何なんだ!?」

 

「……名前、名前か。人は個を定義するのに名前を必要とする……『ステータス』に固執するが故、か」

 

ノイント「……また、あのようなのが……」

 

清水「……な、なぁ……アイツ……ユエの隣にいるやつって……」

 

檜山「……白い髪に黒いコート……眼帯こそつけてねーがアレは……」

 

恵里「……南雲に近い、よね……」

 

エーアスト「……馬鹿な。どういうことですか」

 

エーアスト「なぜ、我が主と同じ光を……」

 

「なに、そんな難しい話というわけじゃない」

 

「俺もまた、ほかの二人と同じ……そうだな。あえて俺に名前をつけるというのなら……」

 

 

魔神「魔神、といったところか? なぁ、俺の『大切』」

 

 

アレーティア「……来ましたね。あなたも、私の所に」

 

魔神「当たり前だろうが。俺はお前の『大切』で、お前は俺の『大切』だ」

 

魔神「そう思うだろう? なぁ、そこのお前」

 

ハジメ「っ……鏡映しみてぇな姿しやがって……!! なんなんだテメェらは!!」

 

魔神「ははっ、なんてこたねぇよ。俺はな、シアやティオの奴らと同じ……」

 

魔神「こうして、『形』になってほしいからここにいる。ただ、それだけさ」

 

魔神「なぜなら……俺たちこそが、定義としての神に近いんだからな……なぁ、そこの木偶人形さんたち」

 

エーアスト「……主への侮辱。その命を持ってあがなわせてもらいましょうか?」

 

魔神「やんねーよ。俺たちは俺たちで、やらなきゃいけないことがあるんでね」

 

――グイッ……

 

魔神「さぁ、いこうぜ。お姫様」

 

アレーティア「……えぇ、わかりました」

 

アレーティア「共にまいりましょう。この国と、世界のために」

 

――スゥゥゥゥゥ……

 

恵里「っ! あ、あいつら空を飛び始めた!?」

 

光輝「どこかへと消えていくつもりか!!」

 

ハジメ「ッッ!! させるか! させるかよ!!」

 

ハジメ「ユエっ! ユエぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

――シュバッ!! タンッ! タンッ……!!

 

龍太郎「お、おぉ! 空中を蹴りながらユエのほうに!」

 

清水「いや、でもアイツらの方が速い! ちょ……ちょっと!? 何かこう、飛び道具ねぇの!?」

 

光輝「俺のスキルがあるけど……ダメだ! 南雲を巻き込んでしまう!」

 

檜山「っつーかムリだ当てられねぇ! もう、ほとんど見えねぇぞ!」

 

雫「南雲君! 戻ってきて! 南雲君!!」

 

………………

 

ハジメ「っ……ユエっ、ユエっ!!」

 

アレーティア「……」

 

ハジメ「ユエっ……! 言ってたよな! お前に、俺のいる世界につれていってやるって!」

 

ハジメ「地球に行ったら、暮らしのことは俺が何とかするって! 何があっても、一緒なら最強だって!!」

 

――タンッ……タンッ……

 

魔神「……戦闘後の疲れと概念魔法の使用後だからな。そろそろ、落ちるぞコイツ」

 

アレーティア「構いません。行きましょう、共に」

 

アレーティア「あれはもう……過去の残骸でしかありません」

 

ハジメ「っ……ユエ! ゆ、ユエっ………………」

 

――ス、タッ……

 

ハジメ「ぁっ……!!!」

 

――……ゥウゥゥゥゥゥゥ……

 

ハジメ「ユエッ!! ユエェェェェェェェェェェッッ!!!!」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

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