【……とある迷宮】
――いやぁ、ね。思うよね。あぁ~……こんだけ時間がかかったんだなぁってさ
――あのころはさ、オーくんやみんなといろいろあってさ。ほーんと、辛いことも楽しいこともいっぱいあってさ
――でもね、思うんだ。あの頃の思い出があるからこそ、僕たちはこうして……ずっと頑張れたんだろうなって
――苦しい時も辛い時もさ、乗り越えてこれたんだよ。ずっと一人ぼっちでも、だから、こうして耐えられた
――……それが、さ
――……終わるんだなぁ
――……長かったなぁ
――……やっと、一人じゃなくなるんだなぁ
――……みんな、やっと終わるよ。やっと、約束を果たせるよ
――彼らはきっと、成し遂げる。この世界の神殺しを、この世界の不条理を、ぶっ殺してくれる
――……さて、いこうかな
――ミレディ・ライセン……最後の戦いに
………………
…………
……
【???】
――おぼろげながらも覚えているのは、以外にも私の父と母のことだった
――父や母は私の事を良く褒めてくれていた。お前は魔法の天才だと、お前は希代の魔術師だと
――……私はそれに乗せられたのだろうと、今にして思う。いや、褒められれば増長するのが子供だ。親が「わぁ~○○ちゃんすごいねぇ!」と言ったら、子供がその気になるのと同じようなものだ
――だから、誰かが悪いと言われたら……私が悪い。あの頃の気持ちがずっと終わらないままで……私は、自分ですべてを知った気になっていた馬鹿な子供だったのだろうな
――……だけど、大事だったのは
――『大人』とか『子供』とかじゃない。大事なのは、自分を見つめる事、自分を知ることだった
――そうすれば、自分の事だけじゃない。周囲のことだってちゃんと見てあげられた。私だって、自分の事を見つめなおす機会なんていくらでもあった。あったんだ……
――……そうだ、もう戻らない。あのころは
――故郷も、家族も、仲間も。だから、もう私しか残っていない
――だから、行こう。彼らと……ハジメたちの所に会いに行くために
――私が、いかねばならんのだ
………………
…………
……
【魔国ガーランド、城内】
雫「……」
香織「……」
ノイント「……」
雫「……っっ!! 見えた! あそこよ!! あそこの……雲の隙間! あそこから落下して来てる!!」
光輝「それは本当か!?」
ノイント「……空を飛んで捕まえればいいのですが……遠すぎますね。あれでは届きませんよ」
鈴「い、いくら南雲君でも受け身なしで落ちたら……!!」
光輝「龍太郎!! 俺を投げろ!」
龍太郎「いっ!? いいのかよオイ!!」
光輝「頼む! 今じゃなければ間に合わない! はやくっ!!!」
龍太郎「くっ……しくじるんじゃねぇぞ光輝!!」
――がしっ…………
清水「……えっ、えっ!? 何!? 何する気!?」
龍太郎「っふんっっ!! っっ……んうぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
――ぶうんっ! ぶうんっ! ぶぅんっ!!
檜山「ひ、ひぇぇぇぇ……ジャイアントスイングの要領でブンまわしてやがるっ……!?」
――………………ぶんっ!!!
龍太郎「ぜやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
恵里「っ! な、投げた!!」
――……ビュゥゥゥゥゥゥゥ……!!!!!
光輝「っ、南雲ォォォォォォォォォ!!!」
ハジメ「……………………っ」
光輝「っ、ウォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
――……ガシッ!!
光輝「っ! このまま、落ちるっ……!! 激突、するっ……!!」
光輝「っ……ならばっ!! 【限界突破】ァァァァ!!!」
――……ヒュォォォォォォォォ!! ドゴォオオンッ!!!
………………
龍太郎「っ! いた、あそこだ!!」
清水「だ、大丈夫かーーー!? 死んでねぇかーーーー!?」
光輝「……っ、なんとか、な……!」
龍太郎「光輝!!」
雫「光輝!」
香織「け、ケガの方は!?」
光輝「……っ、限界突破をして……地面に激突する寸前に技を放って、落下の衝撃を和らげた……」
光輝「南雲も……無事さ……」
龍太郎「っ、ったくっ……とんでもねぇ無茶をするぜ……まったくよ」
檜山「……南雲のやつは……ま、なんとか無事みてぇだな。外傷もねぇぞ」
香織「よ、よかったぁ……」
………………
光輝「……南雲の容体はどうだ?」
香織「目立ったけがはないみたい。ただ、精神的なショックが大きいのかな……瞳も虚ろで、目の前にある物を見れてないって感じ……」
檜山「ま、盛大にフラれたからな。そりゃ凹むってなもんだろ。こいつでもな」
香織「とりあえずは、様子を見ながら安静にしなきゃだめだと思う。それから、南雲君が起きるまでにこっちでの用事を済ませなきゃ……なんだけど……」
雫「っ……帰るための手段、か……」
檜山「あぁ……あぁそうだよ! そういや頼みの綱の帰る手段無くしちまっただろ!? そこはどうすんだよ!」
清水「いや、だからさ……そこはほら、エヒトが俺たちを元の世界に戻してくれるんだろ?」
恵里「じゃあ、その話が来るまでは待機してなきゃって話になるわけだけど……ねぇ、ノイント。それまで僕たち何してればいいの?」
ノイント「……エーアスト。あなたの所に主の声は」
エーアスト「今のところは、なにも。イレギュラーがこの反応、盤上の駒たちも我々の想定を超えた動きを見せてきている」
エーアスト「これまでは我々が彼らを管理してきましたが、ことこのようになってはこれからどんな形で話が転がっていくかわかったものではありません」
エーアスト「ですので、現状は待機せざるを得ないかと」
ノイント「……なら、私たち神の使徒は待機。異世界から連れてこられたあなた達も、そこにいるイレギュラー……南雲ハジメが目を覚ますまでハイリヒに戻るとよろしいでしょう」
光輝「……まぁ、そうなるよな。なるんだけど……うーーーーん……」
ノイント「? 何をぼさっとして……あっ」
龍太郎「……移動するためのワープ空間みたいなもんも、あのフェルニルっつーデケェ船を動かすのも……」
清水「知ってるの南雲だけだもんな。操縦の仕方さえ覚えていればッて言ってたけど、俺ら教えてもらってねーしな……」
鈴「ちょ、不味いじゃん!? じゃ、じゃ、どうすんの!? このままここで待機するの!? 一応敵の国だよ!?」
――ザッザッザ……
恵里「……んーーー……んん……? なんだこれ……」
鈴「? 恵理、どうしたの……?」
恵里「……おかしいな。この国、魔人たちの存在を感知できない……」
恵里「と、言うよりは……いない……? あいつら、みんなどこかへと出払っている……?」
鈴「えっ、なんで!?」
エーアスト「……もしや。神に選ばれた者たちとして我が主の下へと向かったのでは」
光輝「な、なんだそれ!?」
エーアスト「……今更隠しておいても無駄でしょうね。我が主は、魔人族の者たちに神に選ばれた民と偽って……彼らを纏めて盤上の駒にしようと、そういうシナリオを描いていたのです」
光輝「お、お前!!」
雫「待って光輝! ……しようとした、ってことは……今はもう?」
エーアスト「するつもりはこれっぽっちもありませんよ。そもそも、このゲームは失敗に終わったのですから」
エーアスト「ですから、描いたシナリオが崩壊した以上、もう魔人族は無用の存在。彼らのことはそのまま捨ておくはずだったのですが……」
エーアスト「……どういうことでしょうか。なぜ、彼らはどこにも……」
龍太郎「そ、そういやこれだけの騒ぎを出したってのによ……この城、兵士だとかそういったのぜんぜん出てこねぇぜ?」
清水「言われて、みれば……」
光輝「……神のシナリオが崩壊したのならば、彼らは不要……それならどこにも連れてかれていない……なら、いったいどこへ……」
ハジメ「………………」ムクリッ……
光輝「……!! な、南雲!?」
龍太郎「うぉぉぉぉぉぉ!! 無事だったか、オイ!」
檜山「ったく、どんだけ周囲に迷惑かけてんだ……おーい、返事できる元気はあんのかー?」
ザッザッザ……
雫「……? 南雲君?」
ハジメ「………………………………………………」
檜山「……おい、何か言えよ。お前、一応怪我はしてねぇんだろ?」
ハジメ「……」
檜山「……なんだな。お前の女については残念だな、とは思ってるよ」
檜山「でもな、んな事でうじうじ――」
ハジメ「……おん、な………………」
檜山「……? オイ、お前本当にどうし――」
雫「っ!! 檜山くん!!!」
檜山「あ、やえが――」
――っっブンッ!!! ドパァンッ゛!!!
檜山「んいぃ゛……っ!? ぃ、ぉおおおおおおお!?」
雫「っっ……!!」
――……シュゥゥゥッ……
清水「い、いまっ……!!」
恵里「っ……! 咄嗟に腕を引っ張らなかったら、檜山は打ち抜かれていた……!!!」
檜山「なっ、なななななっ……!! なに、ッスんだオイ!!! 南雲っ!!」
ハジメ「……」
ハジメ「……………………オイ」
檜山「あ、あぁぁ……? な、なんだよ……」
ハジメ「……もう、いいんだ」
檜山「……あ、あぁ……?」
ハジメ「もう、なにもかもが、どうでもいいんだ」
ハジメ「傍にいてくれたユエは、あいつはもういない」
ハジメ「――もう、なにも、かもが……」
ハジメ「――『消えちまえ』」
――ビュンッ!!! シュパァァッッッ!!!
檜山「っ……!!?? な、なんっ……! なにか、叩きつけて!!」
雫「馬鹿! ぼさっとしないで!! 早く逃げるのよ!!」
――ザッザッザッザ……!!
光輝「南雲……!? 南雲!? なんだ!? 一体何があったんだ!?」
檜山「わ、わからねぇよ! アイツ、いきなり暴走してやがんだ!!」
檜山「俺の横によ、何か……鞭みてぇなのが、ばしんって叩きつけられて……!! そしたら、地面が抉れて……!! 抉れて……!!」
龍太郎「オイおいおい!? 何がどうなってやがんだ!? 何で南雲の野郎が、あんな!!!」
――………………ヒュゥゥゥゥ!!!
恵里「言ってる場合じゃない!! こっちにも来る!」
清水「ぬぉぉぉぉぉぉ!! よけっ! 避けぇぇぇぇ!!!」
――ヒュバァァァンっ!! ビュンッ! バシンッ!!!
香織「で、でたらめにあたりを切り裂いてる……!? な、なんなの……アレ!?」
エーアスト「……接触するだけですべてを切り裂くアーティファクト……なるほど」
清水「なに、なに!? アンタ何かわかんの!?」
エーアスト「概念魔法……神代魔法すべてを習得し、その形を成した鞭の形状を模したモノ……」
エーアスト「おそらくですが、あの鞭らしきものに触れてしまえば、どんなものでも両断……」
清水「い゛! マジ!?」
エーアスト「……されるかもしれない、されないかもしれない」
清水「いやどっち!!!!」
香織「! きたっ!!」
――ヒュパァァァン!!
清水「っっっ……!! は、柱を壁にしてるから、たすかったぁっ……!!」
エーアスト「……これが、切れるか切れないか、の答えですよ」
香織「え……?」
エーアスト「あの者の鞭が本当にすべてを切り裂くことが出来るのであれば、この程度の柱、私たちごと切り裂けるはず」
エーアスト「それなのに、あの者の概念魔法が、何もかもを拒絶し、両断するアーティファクトにそれだけの力がない……ということは」
香織「……概念魔法は、極限の意思によって成立する……それが、その力が中途半端なら……」
清水「! アイツの意思は極限というほどではない……未完成の概念魔法!」
清水「いや、それだけじゃない! 説得できる余地がアイツにはあるんだ!!」
――ヒュパァァァンッ!!
香織「きゃぁぁぁっ!! すっごい衝撃!!」
エーアスト「では気づいたあなたが前衛に」
清水「死にに行けと!? モロ後衛ポジションの俺が前に出たら死んじまうよ!!」
清水「……あ、いや、待てよ……精神に問題がある……なら……」
清水「!! な、なぁ! お前、何とかあいつの所に俺を運んでくれよ!」
―――ヒュパァ!! ビュ、パアァン!!!
ハジメ「……もう、どうでもいい。なにもかも、なにもかも」
ハジメ「アイツが、いないなら……俺の隣に、あいつが……いないなら……」
――ザッ!
清水「南雲ォォォォ!!」
ハジメ「……」ピタッ
――ビュゥッ……ガシィンッ!!
ハジメ「っ……?」
エーアスト「……っ、『分解』する魔法を付与した……剣ですら、うけとめ、ますかっ……」
エーアスト「ですが、受け止めはしました。やりなさい、人間」
清水「っしっ……!! 南雲、すまん!!」
――ズズズズズッ……!!
ハジメ「っ、……っ……!!」
清水「俺の術は精神に干渉する……!! あの時と同じように、お前の心に訴えかけて、なんとかっ……!!」
ハジメ「ぐっ……ぐ、ぐ、ぐっ……!!」
――グググググッ……!!
清水「っ……!! な、んっちゅー拒絶……っ、ユエとの、あれ……めちゃくちゃ、堪えた、かっ……!!」
清水「あぁ、クソっ……!! も、もうちょっとだ……! もうちょっと、なんだっ……!!」
――ザザザザザザッ!! ガシィッ!!
ハジメ「っぐっ……!! うぅぅぅっ゛……!!」
清水「! 坂上!! 八重樫!!」
龍太郎「とにかく南雲を抑え込めばいいんだろ!? 何をやろうとしてるのかはなんとなくわかった!!」
雫「私たちが抑え込むから!!! あなたは彼の心に何度も訴えかけて!!」
清水「お、応!!」
清水「南雲っ……!! 南雲、南雲……!! たのむ、たのむっ……! いつものお前に、もどれっ……もどれっ……!!」
――キィィィィィ……!!
ハジメ「ぐっ、ぐぅぅぅぅっ……!!」
清水「もうちょっとだ……もう、ちょっとっ……!!」
ハジメ「ぐ、がぁぁぁぁっ!!」
――ブワッ……!!
雫「っ! む、鞭が!!」
龍太郎「やべっ……俺たちふせぐことできねっ……!!」
――ブンッ……!!
――……ガキィィン!!
ノイント「っ……『分解』の魔法なら、ここにもっ……!」
清水「の、ノイント!!」
エーアスト「っ……し、しかしっ……なんて強力な……」
ノイント「このままでは……おし、きられっ……!」
――キィィィィィ……
清水「……! な、なんだ……?」
ノイント「これは……私たちの体に、力が……」
エーアスト「みなぎって……くる……?」
清水「な、なんでだ……? 何で二人の力が強まって……!」
――ザッザッザッザ……
檜山「オイ! 無事か!?」
恵里「こっちのほうで助っ人を呼んできた!!」
清水「す、助っ人……?」
――……ザッ、ザッ……
イシュタル「……聖なる歌唱は、同じ神を信仰する者に力を与える。そう、このようにね」
清水「い、イシュタル!? なんで!?」
檜山「いまさっきよ! フェルニルのほうからオッサンたちや姫さんたちが来たんだ!!」
恵里「南雲が残した、何かあった時のための空間転移のアーティファクト。フェルニルに残してあったものを、リリアーナたちが使ったってワケ」
イシュタル「――……ふむ、歌の力でなんとか神の使徒の力を高めていますが……うむ、これはこれは……」
――グググググッ……
ノイント「っ……! そのうえで、力をあげていきますかっ……!!」
ハジメ「お、れにはっ……も、なにもないっ……!! おれにはっ、おれにはぁぁぁぁぁっ……!!!」
エーアスト「なんと、この力っ……ばけ、ものかっ……!!」
清水「っっ……! が、ぁぁぁぁぁぁぁっ!! だ、だめだっ!! も、はじ、っかれるっ……!!」
雫「ちょ、ちょっと!?」
龍太郎「お、オイ! 嘘だろ!? オイ!?」
――バチィィィンッ!!!
雫「きゃぁぁぁっ!!」
龍太郎「がぁぁぁっ……!!」
――ドサッ……
ノイント「っ、ふ、ふたり、っともっ……! ぐぅぅっ……!」
――ビュン……バシィンッ!!
ノイント「がっ゛……!! が、ぁあっ……!」ガクッ……
エーアスト「ノイント!!」
清水「ぐ、くそっ……お、俺の力じゃ……も、どうする、こともっ……!!!」
イシュタル「歌では力を弱まらせ、味方の力をあげることは出来ますが……まさか、これほどとは……!」
檜山「っだぁぁぁぁぁ……どうすりゃいいいんだ……マージでどーすりゃいいんだよこれぇ!!」
恵里「…………? ちょ、ちょっとまって……誰か、前に……」
――ザッ……
光輝「……南雲」
ハジメ「っ……あま、のがわ……っ!」
光輝「……何をするために……なにをすればいいのか」
光輝「わからない、か……」
光輝「……南雲、はっきり言わせてもらう」
光輝「俺はお前を必要だとは思っていない。元の世界に帰るために、お前の力『だけ』が必要なだけだ」
龍太郎「……!!」
雫「光輝!? あなた、何を言ってるの!?」
檜山「イ゛っ!? こ、このタイミングで!?」
香織「光輝くん! どうし――」
――スッ……
香織「……!? え、りゅ、龍太郎くん……?」
龍太郎「……アイツに、任せよう」
――
光輝「……俺たちにはお前の力が必要だ。お前の力が無きゃ、俺たちは元の世界に帰れないんだ」
ハジメ「……」
光輝「だから、お前の力が必要なんだ。お前がいなきゃ、俺たちは故郷に帰ることが出来ない。お前の故郷にだって……戻ることは出来ないんだぞ」
ハジメ「……もど、る……かぞ、く……」
光輝「……お前の所から、ユエは去っていった。それはもう、戻らない。ユエは去った、もういないんだ」
光輝「だけどお前には、まだ帰る場所があるだろ? そんなこと――」
光輝「――『冷静』に考えればわかる事だろ?」
ハジメ「っっっ……!!! 何がァァァァァァァァ!!」
――ビュンッ!!! バヂィィィンッ!!!
光輝「っっ……!!」
檜山「む、鞭がっ!!」
清水「アイツの肩に、食い込んでっ……!!」
香織「光輝くん!!」
龍太郎「やめろっ!!! 誰もアイツのところにいくんじゃねぇ!!」
雫「っ……! りゅ、龍太郎……!」
――……
光輝「っっ……なんだ、冷静に、考えられないのか……??」
ハジメ「でき、るかっ……冷静に、なんて……たい、せつが……『大切』が……おれ、から……はなれて……おれ、からっ……!」
光輝「あぁ、そうだな。それでも、ここで感情に任せたら、『大切』以外のものが消えてなくなる。ここで、冷静さを失ったら……お前は、大事な物を失ってしまうんだぞ……!!」
ハジメ「っ……俺の、だいじな……ものっ……っ、だけどっ……俺は……だったら、俺の、この感情は」
光輝「――そんなこと言ってる場合かっ!!」
ハジメ「っ……!!」
光輝「あれが見えないのか!? みんなパニックになっているんだぞ! お前がいないからだ!! 誰よりも! 勇者である俺よりも!! 力になるお前がいないからだ!!」
光輝「お前の力が必要なんだ! 帰るための力が! お前だって帰りたいんだろ! それが出来るのは!! 錬成士として天職であるお前だけだろ!? 前ばかり見てないで後ろもみろよ!!!」
ハジメ「――…………! それ、は……」
香織「……あ、あのことばって……」
――………………
――そんなこと言っている場合かっ!
――あれが見えないの!? みんなパニックになってる! リーダーがいないからだ!
――一撃で切り抜ける力が必要なんだ! 皆の恐怖を吹き飛ばす力が! それが出来るのはリーダーの天之河くんだけでしょ! 前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!
――………………
光輝「……はっきり言わせてもらう。俺は、お前に頭を下げるのが嫌だ。劣等感を刺激されるからすごい嫌だ。でも、今なら言える」
光輝「――ありがとう。あれがなかったら、今の俺たちはいなかった」
ハジメ「………………っ」
――フッ……ドサッ……
香織「南雲君!! 光輝くん……!!」
龍太郎「……なんとかなった……って感じだな」
光輝「……っ、すまない。誰か、けがの治療を……」
ノイント「私がやりましょう。その程度なら、どうにかできますよ」
清水「はぁ……一旦、何とかなったって感じだな」
檜山「さて、と……とりあえずはフェルニルに戻らなきゃだが……」
檜山「……どーなるかな、こっから」
………………
…………
……