生まれた時から最強だった   作:roborobo

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第36話

 

【フェルニル、会議室】

 

――ガヤガヤガヤガヤ……

 

ミュウ「わーーーーーーーー!!!! すっごい広いの! おっきいのーーーーーーー!!」

 

レミア「こらこら、ミュウ。はしゃいじゃいけませんよ」

 

ミュウ「えー……」チラッ

 

ハジメ「……ん、まぁ……」

 

ハジメ「……あっちのほうでキッズコーナーを作ってある。はしゃぐんだったらアソコのほうがいい。」

 

ミュウ「わーーーい!! おもちゃも!?」

 

ハジメ「……んまぁ、もちろんな」

 

ミュウ「やったやった! ……あ、それじゃあそれじゃあ……」

 

 

ミュウ「おねーちゃんたちとも遊ぶの! シアおねーちゃんは? ティオおねーちゃんは!?」

 

 

ハジメ「……っ」

 

光輝「……」

 

レミア「……」

 

――コソコソ……

 

レミア「ミュウ、パパたちはちょっと忙しいみたいだから……ランデル君と一緒に遊んでいましょうね」

 

ランデル「えっ……よ、余が……?」

 

ミュウ「? うん、わかったの!」

 

――ギュッ……

 

ミュウ「ランデルくん! あっちいこ!」

 

ランデル「え、あっ、ちょ、ちょっと……」

 

――タッタッタッタ……

 

レミア「……ごめんなさい、あなた」

 

ハジメ「いや、構わねぇよ。むしろ、助かった」

 

ハジメ「……これから話し合いをするのに、ミュウは必要ねぇしな。なんだったらレミア、お前もミュウの傍にいてやれ」

 

ハジメ「ここからは……俺がどうにかしなきゃ行けねぇ話だから」

 

レミア「……わかりました」

 

恵里「鈴、キミもあっち行ってなよ。子供をあやすのは得意でしょ」

 

鈴「あ、あはは~~~……私の使い方を心得ていらっしゃる! ……じゃ、じゃあいってくるねぇ……」

 

――コツコツコツ……

 

ハジメ「……待たせちまったな、姫さん。バイアス」

 

リリアーナ「構いませんよ、ハジメさん。あなたのほうも……迷宮のことや魔人族の国でもいろいろとあったでしょうから」

 

バイアス「こっちとしては話に支障をきたさねぇならなんでもいいしな」

 

ハジメ「助かる。それじゃあ……」

 

 

ハジメ「みんな、『今後』について話したい」

 

 

ハジメ「……みんなも知っての通りだが、俺たちはすべての迷宮を攻略した。これにより、俺たちはすべての神代魔法を習得し……」

 

ハジメ「『概念魔法』を手に入れる手段を得た。時間をかければ、きっと元の世界に帰れるアーティファクトが完成するはずだ」

 

――ザワザワ……

 

清水「……帰れる手がかりがここに来てようやく、なんだよな」

 

檜山「それってよ、どれくらいで出来上がるんだ?」

 

ハジメ「……それはちょっとわからねぇ。出来ることなら、神代魔法の組み合わせで、錬成の質もスピードもあがっている。それを加味しても、一か月以内で完成する、かも……」

 

ノイント(……異世界へ干渉するアーティファクトを、一か月以内で完成できると言い放ちますか)

 

エーアスト(つくづくイレギュラー……我が主が危険視するだけのことはありますね)

 

ハジメ「だから、俺たちはまだしばらくトータスで過ごすことになるだろう。それまでは……」チラッ……

 

リリアーナ「はい、全然かまいませんよ!」

 

リリアーナ「なにせ、南雲さんたちは……神によって騙されたとはいえ、この世界を救おうと奔走してくれた方々!」

 

リリアーナ「そんな方々をむげになんて絶対にしません!」

 

光輝「……そう、『リリィは』ね」

 

リリアーナ「……はい、『私は』」

 

リリアーナ「その、神の使徒の……ノイント、さん。先ほどの話は本当なのでしょうか」

 

ノイント「私がランデル王子の迎えに来た際に、ハイリヒの方へと向かうことになったのですが」

 

ノイント「……なんと、も……何といえばいいのでしょうか。言葉で表すには、今のあの国は……」

 

ノイント「『異様』……としか表現できません」

 

雫「ちょっと待って。今、あの国で何が起きているの?」

 

ノイント「……わかりません。いや、知ることが出来ないのです」

 

香織「できない……?」

 

ノイント「あなた方も知っての通り、我々神の使徒はこの世界の歴史の裏で、権力者たちを操り、我が主好みの盤上に変えてきました」

 

ノイント「ゆえに、この世界に関してはすぐさま知ることが出来ます。なぜなら、世界を管理するように命じられたのが我々、主の人形の役目なのですから」

 

ノイント「……の、はずなのですが」

 

エーアスト「おかしい、というのはこういうこと。我々には、我が主の声を聞くことが出来る。命じられた声のままに、世界に干渉し、人に接触し、盤上を整えられる。それなのに、いつのまにかすっぱりと、主の声が……」

 

光輝「聞こえなくなった……って、それって」

 

龍太郎「……例の弱体化じゃねぇのか。信仰が南雲のほうに逸れていったって」

 

清水「あー、んじゃさ。その信仰とやらが南雲のほうに逸れてたんだし、それならそろそろ――」

 

 

清水「……ん、アレ……? じゃあなんでアンタら声が聞こえねぇの……?」

 

 

ノイント「……そこなのです。もう信仰の流れはそこにいるイレギュラー……南雲ハジメの方には流れていない」

 

ノイント「いや、正確に言えば信仰そのものはまだ続いているのです。あなたを慕っていたあの女たちが、積極的に広めているのだから」

 

ハジメ「……」

 

エーアスト「それと、あなたを信奉する人間たちも、ね」

 

ノイント「現状のあなたが無事なのは、神代魔法習得による概念魔法で大衆の思念を拒むことが出来ているから」

 

ノイント「ゆえに、あなたの肉体に影響はなくとも大衆の信仰はいまだに我が神に注がれていない」

 

ノイント「そのうえ……『善のエヒト』、でしたか。厄介な物を作ってくれましたね」

 

ハジメ「既存の神は悪だって言われてもすぐには信じられねぇ。だから、何かあった時のために、悪い神様が良い神様を騙していたってことにすれば……今の信仰をスムーズにそっちに向けられるはずだ」

 

エーアスト「……今まで信じていた神をウソにして、より都合の良い神という受け皿を用意する。何とも人間らしい狡猾さ、ですね」

 

ノイント「だけど……」

 

ハジメ「……」

 

光輝「……歯がゆいな。南雲自身に影響はなくとも、いまだ信仰する者たちが後を絶たないなんて」

 

龍太郎「いや、でもよ……こういっちゃなんだけど、このまま戻ったら……大丈夫なのか? 俺ら……?」

 

雫「……信仰による影響はなくなっても、南雲くんを信仰する人たちが多くなってるわけだから……」

 

香織「行った先で、なにをされるか……わかったものじゃないよね……」

 

ノイント「あなた方の力があれば、現地にいる者たちなぞ物の数ではないでしょうが……」

 

エーアスト「そういう問題ではない……のでしょうね」

 

ハジメ「……まぁな」

 

檜山「へたをすれば、現地に到着して……純粋に歓迎してくれるとは思えねぇな」

 

光輝「っ……信じたくはないが……っ」

 

雫「……ねぇ、ちょっといいかしら」

 

 

雫「いっそ、この船に籠って、帰る手段が出来るまで待つって言うのは」

 

 

ハジメ「……そ、それは……」

 

雫「正直言って、今国の方に戻るのは……なにか、嫌な予感がするわ」

 

雫「このまま渦中に飛び込むよりは、このフェルニルの中で南雲君にアーティファクトに専念してもらったほうがいいかも」

 

リリアーナ「っ……それは……」

 

恵里「そのほうがいいだろうね。もう現状の荒れ具合は、本来コントロールしていたエヒトですらできなくなっているんだ」

 

恵里「しかも、なまじっかこっちは一つの国に対して『対抗しうる手段』すら持っている。さすがに戦闘……まではいなかくとも、トラブルを招きかねないのは事実だよ」

 

イシュタル「たいへんですなぁ、みなさん」

 

恵里「いやなに自分は関係ありません見たいな顔してんの?」

 

檜山「……アンタ、その肝心のエヒトを信仰してたんだから現状はアンタが邪教徒ってことになるんじゃねぇの?」

 

イシュタル「はっはっは。これでも対策はいろいろとしてあるのですよ」

 

檜山「うっわこの狸じじぃ……」

 

恵里「この船で大人しくアーティファクトを作って、それからリリアーナ姫やらトータス現地人の人たちを各地に送り返す……そのほうがいいかもね」

 

光輝「南雲、船の燃料はどれくらい持つんだ?」

 

ハジメ「……神代魔法によって、この船自体は半永久的に飛んでいられる。だから、八重樫や中村の提案は良いとは思う」

 

ハジメ「……思う、が……」

 

 

 

ハジメ「……俺は、このまま国の方に行きたいと思っている」

 

 

リリアーナ「!」

 

光輝「? 南雲……」

 

ハジメ「いかなきゃいけないのは……まず、今のハイリヒには、クラスメイト達がいる。全員帰ることを前提とするなら、そいつらをまず回収する必要がある」

 

ハジメ「後回しにしていたら、あいつらが何をされるかわかったもんじゃねぇ。なんせ、あいつらは『南雲ハジメ』のクラスメイトなんだからな」

 

龍太郎「! あり、うるか……いや、考えてみりゃそりゃそうだ。だって、この世界の連中からしたら……」

 

清水「そっか、言ってたもんな。俺たち地球人はトータスだとチートレベルに強くなれるって」

 

雫「南雲君までとはいかなくても、何かに巻きこまれる……最悪なことに、全然あり得るわね……コレ……」

 

ハジメ「確かにここでアーティファクトを作って、それから姫さんたちを現地に送り返した方が良いかもしれない」

 

ハジメ「でも、それでトータスの現地のやつらを……このままにしておくのは忍びない」

 

ハジメ「……今のハイリヒは、俺に原因があるんだからな」

 

光輝「! 南雲……」

 

ハジメ「だから、俺はハイリヒに戻りたい。どうせ、持て余した力だ」

 

ハジメ「何か解決できることがあるってんなら……尻ぬぐいくらい、させてもらうさ」

 

リリアーナ「!! ありがとうございます! 南雲さん!」

 

雫「南雲君……」

 

清水「……」フフッ……

 

香織(……南雲君、少しだけ変われたのかな)

 

………………

 

ランデル「……」チラッ……

 

………………

 

…………

 

……

 

【――夜】

 

【フェルニル、窓辺にて】

 

――ゴォォォォォォ……

 

光輝「……見慣れた景色が、近づいてきたなぁ」

 

光輝「……」

 

光輝(神代魔法はすべて習得した)

 

光輝(概念魔法もこの手にある)

 

光輝(エヒトも、もうこのゲームから手を引いている)

 

光輝(だから、問題その物は解決している。そのすべてが、時間が解決してくれる)

 

光輝(……だけど)

 

 

光輝(なのに、なんだ……? なんで、こんなに不安なんだ……? 俺は……??)

 

 

光輝(……)

 

――カツッ……!!

 

光輝「!! だ、誰だ!!」

 

 

ランデル「……っ!!」

 

 

光輝「……!? で、殿下……!?」

 

ランデル「っ……その、いや……」

 

ランデル「こ、これ!」

 

――ズイッ……

 

光輝「……あ、ええと……ココア?」

 

ランデル「さ、さっきキッチンの方でいれてきた」

 

ランデル「……そこで、飲まないか」

 

―――…………

 

光輝「あの、ごちそうさまです殿下。おいしかったです」

 

ランデル「う、うむ。当たり前だ! 将来のハイリヒの王として、これくらいの気遣いは出来ないとな!」

 

光輝「……ふふっ、さすがですね。殿下」

 

ランデル「……ぁ、うん……」

 

ランデル「……いや、まぁ、なんだ……」

 

ランデル「……その、天之河光輝。お前は、その……」

 

ランデル「――この世界に連れてこられて、どう思う」

 

光輝「この世界につれてこられて、ですか」

 

ランデル「……思えばお前たちは、この世界に来てから何も知らされないまま戦い続けてきた」

 

ランデル「右も左も分からないまま、だけど、与えられた使命の中でガムシャラに迷宮攻略にいそしんでくれた」

 

ランデル「そんなお前たちを……無関係なお前たちを……」

 

 

ランデル「我が国は、国の『功労者』にしてしまったのだ」

 

 

光輝「……殿下」

 

ランデル「本当だったら、お前たちは自分の故郷にいるべき者たちだ。こうしてここにいるのだって、ただ巻き込まれているからここにいるだけなのだ」

 

ランデル「……そうであることを理解しておきながら、それでなもお、お前には……頼みたいことがある」

 

――スッ……

 

 

ランデル「――異世界の少年、天之河光輝殿。私めに、剣術を教えていただきたい」

 

 

光輝「! 殿下……」

 

ランデル「あなた方は、元の世界に帰るべきなのだ。本来、他国との戦争はこの世界で蹴りを付けなければいけなかったこと」

 

ランデル「もうこれ以上、異世界のあなた方に責任を負わせるわけにはいかない。そのためには、私個人に力が必要だ。戦うための力が」

 

ランデル「……ハイリヒが着くまで、剣を教えていただきたい。ハイリヒは、次期国王である私が守る」

 

光輝「……」

 

 

――……カチャッ……

 

光輝「……恐らくだけど、もうこの世界に滞在できる時間はそう長くはない」

 

光輝「簡単な『型』くらいしか教えてあげられませんが……」

 

ランデル「……!! いや、十分すぎるくらいだ!!」

 

光輝「……じゃあ、いきましょう。今なら、練習場も空いてる」

 

ランデル「あぁ! わかった! ……それと」

 

ランデル「もう敬語は使わんでよい。もう、王と神の使徒という関係じゃなくなるのだからな」

 

光輝「……わかったよ、『ランデル』。稽古は厳しいけど、それでもいいかな?」

 

ランデル「舐めないでくれ『光輝』。これでも剣には多少覚えがある。物にして見せよう、八重樫流とやらを!」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――その日のランデルの夢】

 

――余は、今でも覚えている

 

――子供の頃の思い出を

 

――ハイリヒの思い出を

 

――傍にいる姉上、見守ってくれる父上と母上

 

――そして、ハイリヒで暮らす者たちを

 

――……そうだ、余は生まれた時からハイリヒの人間だった

 

――神の盤上で生まれた駒、そのうちの『モブ』でしかなかったが

 

――それでも、この世界は余にとって生きるべき世界だったのだ

 

………………

 

…………

 

……

 




第37話はR18短編として投稿しています
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