生まれた時から最強だった   作:roborobo

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第39話

 

【――遠い、遠い、昔の事……】

 

【――産まれたころの思い出】

 

【――とある世界、とある場所】

 

【――病院にて……】

 

――……ッタッタッタッタッタッ……

 

――バァンッ!!

 

父親「――はぁっ……! はぁっ……! はぁっ……!!」

 

父親「お、おぉぉぉっ……!! お、お、おまえっ……!!」

 

母親「……あなた。そんなに急いだら……この子が、びっくりしちゃいますよ……」

 

父親「ぁ、うっ……! だ、だってっ……! だって、お前っ……!!」

 

父親「つ、ついにっ……!! ついに、私にもッ……!!」

 

 

赤ん坊「……ぁうっ……あぅっ……」

 

 

父親「おっ……!! おおおおおおっ!! わっ、わぁっ……! これが、この子が! 私の子かぁ……!」

 

父親「せ、先生! この子は、この子の体は……!」

 

医者「元気な赤ちゃんです。男の子ですよ」

 

医者「母子ともに問題はなし。お母さん、頑張りましたね」

 

母親「っ……はい……!」

 

父親「う、うぅぅぅぅ~~~~! まさか! まさか私の所にこんなかわいい子供が生まれてきてくれるとは!!」

 

父親「もしも大きくなったら何をしようか……!! たくさん遊んで、いろんなことを学んでくれるならなんでもいいがっ……! やはり、魔法の才能をめきめきとのばして、自分のやりたいことややれることを見つけてほしい……!!」

 

父親「あ、そ、そうだ! まだこの子の名前を決めていなかったな! お前のほうは……」

 

母親「うふふ、いったいじゃないの。一緒に決めようって」

 

母親「……でもね、私のほうで良い名前を考えてあるの」

 

父親「おぉ、それはどんな名前だ! ぜひとも聞かせてくれ!」

 

母親「えぇ……この子の名前はね……どんなことでも鋭い観察眼を……本質を見抜いてくれる賢い子に育ってくれるように……」

 

 

母親「『真』や『本当』を意味する――」

 

 

………………

 

…………

 

……

 

【――トータス某所】

 

――ワァァァァァァァァァ……!!

 

――イヤッ! イヤァァァ!!

 

「た、たすけてっ! たすけてくれっ!! なんで、なんであなた方が!!」

 

ハウリアの男「なんで、だと? 強き者が、弱き者を嬲り者にして何の問題がある?」

 

――ビュンッ゛……!! ザグシュッ!!!

 

「ぎ、ぎあぁぁあぁぁっ゛……!!!」

 

ハウリアの男「これは自然の摂理だ。これは!!! 決して揺らがぬ万物の心理!!」

 

ハウリアの男「血を舐めろ畜生共!! 闇夜の月を見上げろ獣ども!!」

 

ハウリアの男「これこそが……魔王の名の下に名を連ねる!!! ハウリアの力だ!!」

 

ハウリアの男「ははははははははっ!!!!」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――トータス某所】

 

――ドォォォォォォンッ!!!

 

「な、なぜだっ……なぜ、古の竜の一族が……ここにっ……!!」

 

――……ザッザッザッザッ……

 

竜人の男「……ここにも、人間がいたか」

 

「っ……! ほ、本物だ……本物の、竜の一族……まさか、生き残りがこんなにっ……!」

 

竜人の男「そうだ。お前の言う通り、我々は竜の一族。分け合ってお前たち人間の命をもらい受けに来た」

 

竜人の男「恨むな……とまではいわん。だが、これより到来する新世界において、この世界を支配する魔王の下により……貴様ら旧時代の遺物の居場所なぞ、どこにもない……ということだ」

 

「ば、馬鹿なっ……ま、待ってくれ! 私は学者だ! お前たち竜人のことは少しだけ知っているつもりだ!」

 

竜人の男「……」ピクッ

 

「……竜人の一族に関して、知ることが出来る資料は少ない……それでも、必死に知ろうとはしてきたんだ……」

 

「かつて、竜人の一族は……その力を持って人間を護った。強き者も弱き者も、その牙と爪によって悪を滅してきた!!」

 

「私は……そんなお前たちを……あなた達を! 憧れて、調べたくて、学者としての道を選んだのだ!」

 

「なのに……なのになんだ!? このありさまは! これが、連綿と繋がれてきたあなたたち竜人の一族の……やることなのか!?」

 

「たとえ歴史の影に埋もれていようとも……あなた達の誇りは、今もこうして受け継がれている!!」

 

「書に記されたあなた達の誇りは……っ! どこに――」

 

――ザシュッ……!!

 

――……ドサッ

 

竜人の男「……そうだ。そうして、我々はお前たち人間によって見捨てられた」

 

竜人の男「こうして……お前たち人間がやったようにな……!!」

 

竜人の男「傍にいる者を護ろうとして何が悪い……! 自分たちの事を優先して何が悪い……!!」

 

竜人の男「あの方は……ティオさまはっ……!! その背中を押してくれた!!」

 

竜人の男「俺は……俺の家族のために戦うだけだ!!!」

 

竜人の男「魔王万歳!! 魔王万歳!! 我がブレスは!! 魔王を尊ぶ歓声の叫びと思え!!」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――トータス某所】

 

――……コツ……コツ……コツ……

 

――……スタッ……

 

シア「――……我が『魔王』。我々の『家族』が地方へと攻め入りました」

 

シア「奴らは蹂躙されるのみ……力はなく、数もこちらが上。質も数も上である我々であれば、やつらを皆殺しにするのなんて容易いこと」

 

シア「今は、我が家族に報酬を与えている所です。血も、肉も、その財貨も……我が家族には奪った分だけ与えさせております」

 

シア「我々の士気……いまや最高潮に高まっております」

 

――……コツ……コツ……コツ……

 

――……スタッ……

 

ティオ「こちらもぬかりありませぬ。かような脆弱な生き物、我が一族のブレスで蹴散らして見せた」

 

ティオ「……着々と、このトータスにて生きる者たちの数を減らしている」

 

ティオ「亜人が秘めたるその力は、人間どもと比べるべくもない」

 

ティオ「ましてや、我々の中に眠る力、そして、迷宮で得た神代魔法の力の前では……いかような力を持つ者があろうとも、前に立つことなぞ出来やせぬ」

 

 

アレーティア「――二人とも、よくぞ成し遂げました」

 

 

シア「……」

 

ティオ「……我が、魔王」

 

アレーティア「今、我々亜人の一族がこうして一堂に会し、心を一つにして全てを統べようとしている」

 

アレーティア「すべては――」

 

アレーティア「シアは、亡き母親とのために」

 

シア「……はい」

 

アレーティア「ティオは、誇り高き竜として」

 

ティオ「……」

 

アレーティア「我々は、志を一つにしてこの世界を一つにしようとしている」

 

アレーティア「神から解放され、自分の意志で、自分たちの力で……何物にも縛られずに、得た自由によって世界を統一する」

 

 

アレーティア「それこそが、『解放者』が目指した『自由の意志』による世界なのだから」

 

 

アレーティア「それならば――かの神の庇護下によって……たとえ、それが玩具として遊ばれてきた駒であろうとも」

 

アレーティア「この世界に、旧時代の人間たちに居場所なぞ、ありはしない」

 

アレーティア「踏み鳴らし、削り切り、我らの故郷とするために」

 

アレーティア「進みましょう、共に」

 

シア「……はい、我が魔王。我々の家族と共に」

 

ティオ「……その通り、我が魔王。我が一族と共に」

 

アレーティア「……それでは、続いて」

 

アレーティア「フェアベルゲンとハイリヒ……ここには攻め入らないように」

 

アレーティア「来るべき世界において、亜人族である彼らは我々の身内」

 

アレーティア「その時が来たら、彼らを迎え入れてあげましょう。それまでは、そこには手を出さないように」

 

アレーティア「そして、ハイリヒ……ハウリアの情報では、あちらのほうで南雲ハジメが帰還しているとのこと」

 

アレーティア「……あの者が本調子を取り戻したかはわかりませんが……竜の尾をふまないに越したことはありません。すべての準備が終わるまで、あそこには攻め入らぬよう」

 

アレーティア「……着実に、着実に踏み進めましょう」

 

アレーティア「その時は……近いですよ」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――遠い遠い昔の話】

 

【――……子供のころ】

 

――ボォォォォォッ!!!

 

父親「う、うぉぉぉぉ!! す、すごいぞ! お前、この年でもう魔術をコントロールできるのか!?」

 

母親「すごいわ……まだ10歳だというのにもうこんなに魔力を操れるだなんて……」

 

るーくん「何もおかしなことをしてませんよ、お父さん。魔力の流れを掴み、力を加えて操る。そのコツさえつかめば何にも難しくありません」

 

るーくん「ほらっ……この通り。僕はもう、大人でさえ操るのが難しいとされる上級魔術さえも利用できている。むしろ、周りの誰もが出来ない人たちばかりで辟易してるんですよ」

 

父親「む、むぅ……学校の先生もお前のレベルが高すぎて誰もついてこれないと言ってくるくらいだからな……」

 

父親「いやはや驚いた! この子には魔術の才能があると思っていたが、これほどとは!!」

 

父親「いやぁ~~~~! やはりうちの子は天才だなぁ! このままいけば国に……いや! 世界に名を刻む大魔導士になるやもしれん!」

 

母親「……」

 

るーくん「まったく、お父さんときたら……はしゃいじゃって……」

 

るーくん「……ただ、さっきも言った通り、周りのレベルが低くて困ってるんですよね」

 

母親「……」ピクッ

 

父親「レベルが低い、かぁ……うーむ……」

 

るーくん「まず、基礎的な魔術による理解が低い。その上、技術も未熟と来た」

 

るーくん「まともに操ることも出来ず、そのうえコントロールすら不安定。同い年で切磋琢磨しようにも、あれでは切磋できるはずもない」

 

るーくん「周囲のレベルが低いことだし……もっと年を重ねて、大人たちと肩を並べたいものです……」

 

母親「……ねぇ、るーくん。ちゃんと聞いてくれる?」

 

真実「? なんですか、お母さん?」

 

 

母親「あなた、学校では友達とか……ちゃんといるの?」

 

 

父親「? どうしたんだ?」

 

るーくん「……とも、だち……?」

 

母親「あなたの話を聞いていると、どうにも……周りと切磋琢磨しようって気持ちが感じられないの」

 

母親「口を開けば、自分の方が魔術を操るのに長けているとか、周りのレベルが低いとかそんな話ばっかり」

 

母親「……お友達と一緒に遊んだりとかしないの? なにか、趣味とかで盛り上がったりしないの?」

 

るーくん「……うぅん。べつに、ソンナの必要ないと思いますし……」

 

母親「必要ないって……そんな……」

 

るーくん「だって、話の内容が合わないんですもん」

 

るーくん「やれ、流行のファッションだとか最近出た映像作品にすごいハマっているとか」

 

るーくん「……クラスメイトの中にはしつこく話しかけてくる人もいるけど……ははっ、余計なおせっかいですよ、ほんと」

 

母親「そんな、おせっかいだなんて……」

 

るーくん「それにね、お母さんは勘違いしているけれど、同学年の中で自分の魔力を競い、好成績を残すのが生徒の本文なんですよ?」

 

るーくん「周囲にいるのは、その『数値』を競うライバルばかり」

 

 

るーくん「いわば、周囲にいるのは『敵』なんです。敵に対して、なんでへらへらする必要があるんですか?」

 

 

母親「……そ、それは……」

 

父親「う、うぅむっ……さすがに、それはっ……」

 

るーくん「……??? お父さんもお母さんも変なの」

 

るーくん「あーあ、それよりお腹すいちゃった。ご飯にしたい、ご飯!」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――???】

 

獣の神「近い」

 

竜の神「あぁ、近いな」

 

魔神「あぁ、近い……」

 

獣の神「神が、近づく」

 

竜の神「終わりが、近づいている」

 

魔神「俺たちが生まれてきたワケが」

 

獣の神「すべては、流れゆくままに」

 

竜の神「すべては、あの者たちの思うがままに」

 

魔神「人よ、神よ、『意思』ある者は『縋るもの』から決して逃れられん」

 

魔神「ましてや、今の今まで『縋るもの』による庇護で保たれてきたこの世界において……」

 

魔神「『自由の意思』を与えればどうなるか……わからないわけではあるまいて……ククク……」

 

獣の神「で、あるならば」

 

竜の神「解放者が自由を望むのであれば」

 

魔神「我らは形作ろうじゃないか」

 

魔神「お前たちが縋りつくものとして」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

【――遠い遠い昔】

 

【――とある世界、とある学校……】

 

【――朝の教室にて】

 

【――高校生ぐらいの時】

 

――キーンコーンカーンコーン……

 

ジェル(――月曜の朝、それは憂鬱な象徴)

 

ジェル(それは、ほかの生徒たちに取っては有意義なものなのだろうけれど、僕からしたら違う)

 

――ガラララっ……

 

ガラの悪そうな男たち「お、朝からぎりぎりかぁ~~~? キモオタくーんwwww」

 

ガラの悪そうな男たち「ま~~た自立思考型ゴーレムに美少女のガワかぶせてシコってんのかぁ~~~~wwwww」

 

ジェル(はぁぁぁ……まーた、あの連中……ほんと、懲りないなぁ)

 

ジェル(クラスでの魔力操作による成績……こっちのほうが上だって知ってんだろ? これだから格下は……)

 

ジェル(……まぁ、作ってるのは間違いじゃないけど……それに自分の趣味くらいいいだろ……ちぇっ、かっこいいじゃんか……)

 

ジェル(ゴーレムらしい無機質さに、名前も『数字』にちなんだ美少女天使たち! 学校が終わったらまたつくりにいこっと♪)

 

――コツコツコツ……

 

クラス一の美少女「……あ、おはよう! キミも来てたんだね!」

 

ジェル「ん、あぁ……おはよう」

 

クラス一の美少女「ふふっ、もうちょっと元気な声を出さなきゃ! そうやってたらくら~くなっちゃうよ?」

 

ジェル(はぁぁぁ~~~……まーた話しかけてきやがったよコイツ……いつもいつもおせっかい焼きやがって。それでこっちが迷惑してるって気づけないモンなの?)

 

ジェル(そっちが話しかけてくるから、僕が巻き込まれるのにさぁ)

 

クラス一の人気者「やめとけ、そいつにつきっきりになっていると疲れるぞ?」

 

クラス一の美少女「いいんだって。私はただ好きだからこうしてあげてるってだけなの」

 

クラス一の人気者「はぁ、まったく。おせっかい焼きだなぁ。オイ、【真実】……お前、さすがにちょっとは彼女に感謝した方が良いぞ。そうやってそっけなくしているから普段から――」クドクドクドッ……

 

ジェル(う、うるせぇ~~~~っ……はやくどっかいってくれよ~~~……こっちは授業が始まるまで寝てたいんだって……)

 

ジェル「……」

 

ジェル(これが僕の周囲。周りにいるのは、魔術学園という箱庭の中でしか関わることはない有象無象のあつまり)

 

ジェル(僕はこの学園で、魔術を極めるために日々、勉強に明け暮れている。いつかは父さんみたいな魔導士となり、この力を研究してより多くの成果を残すのが目的だ)

 

ジェル(……とはいっても、実のところを言うとそんな大それたものは抱いてはいない)

 

 

ジェル(なぜなら、僕はとくに『何者』かになりたいわけじゃないからだ)

 

 

ジェル(偉大な魔術を習得し、さらには後進の者たちに術式を残してより生活を楽にするような魔術を作り上げる……)

 

ジェル(ことじゃない)

 

ジェル(偉大なる先人から習い、多くの魔術を習得、開発し、国や世界の発展のために……)

 

ジェル(なーんてこともしたいわけじゃない)

 

 

ジェル(ただ、追及したいだけ。ただ、それだけなんだ)

 

 

ジェル(魔術の事を知れば知るほど、奥が深くて楽しくなってくる)

 

ジェル(仕組みを知るのが楽しい。魔術その物を作ることが楽しい。知的好奇心のままに、目の前にある物を貪っていくような子の感覚が、たまらなく楽しいんだ)

 

ジェル(だから、周囲なんてどうでもいい)

 

ジェル(コミュニケーション? それが何の意味がある)

 

ジェル(周囲との協調性? それを補えるだけの力と結果を出しているんだから、文句なんてないだろ?)

 

ジェル(他者との関りは必要最低限。必要以上につっかかってくるアイツらが悪い)

 

ジェル(……さ~~てと。今日の授業もちょっと居眠りしてからがんばりますかね……)

 

――ザワザワザワ……

 

クラス一の美少女「……ねぇ、ジェルくん。これ、知ってる?」

 

ジェル「……ん~~……? なに、これ……」

 

クラス一の美少女「ほら、最近ニュースになってるやつ……」

 

ジェル「……ん?」

 

 

ジェル「『魔術式の到達点、ついに発見』……?」

 

 

クラス一の美少女「ニュース、やってたでしょ? これまでずっと解明されてこなかった魔術式の極致、その力がついに開発されたって」

 

クラス一の美少女「いまはまだ未完成だけれど、これをさらに発展させれば……自然現象や物理現象……それどころか、私たちが意識として捉えている概念そのそのものにすら干渉できるすっごい物が出来上がるんだって!」

 

ジェル「……ふ~~ん……」

 

クラス一の人気者「ふんっ、やめておきなよ。そいつはなんだか無関心みたいだからさ」

 

クラス一の人気者「それに、その力って言うの……結構危なそうなんだよね。俺としても、あまり良い印象がないよ」

 

クラス一の美少女「え、なんでそう思うの?」

 

クラス一の人気者「有名な研究者が発表してたんだけどね。これだけ強すぎる術式を公表してしまえば、下手をすれば人間世界において……絶対に触れてはならない物に干渉しかねないかも……って話にもなってるんだ」

 

クラス一の人気者「なにせ、概念にすら作用するっていうだろ? ……正直言ってさ、怖いよ。こんなの持ち上げてるのなんて、正気じゃない」

 

クラス一の人気者「何か危ないことでも起きなきゃいいけどね……」

 

ジェル(あぶない……ね。どんな研究でさえ、探求しなければ何もわかりっこないんだ)

 

ジェル(その気持ちを……誰にも止められるはずがないのさ)

 

クラス一の美少女「そっかぁ……魔術を追求することって、良いことばかりじゃないんだね」

 

クラス一の人気者「う、うん。もちろん。だから、さ。魔術ばかり勉強するよりも、今日の放課後いっしょに――」

 

クラス一の美少女「あっ! だったらジェルくんも連れて行こうよ!」

 

クラス一の人気者「っ……あ、あぁ。彼も、か……うん、そうだね……」

 

クラス一の人気者「あ、でも彼が良いっていうかなぁ! ほらー、彼って忙しそうだし……」

 

ジェル「……あぁ、忙しいよ。悪いけど、二人で行ってきなよ」

 

クラス一の人気者「だってさ! いやぁ、仕方ないねぇ!」

 

クラス一の美少女「そ、そんなっ……」

 

ジェル(はぁ~~~……まったく……こっちを巻き込まないでくれよ)

 

ジェル(……なに残念そうにしてるのさ。それでこっちを見るなよ……)

 

ジェル(僕にとって、興味があるのは魔術だけだ)

 

ジェル(……自分にとって、興味がある物にしか興味を示さない。周囲なんて……)

 

ジェル(――どうでもいいのさ)

 

………………

 

…………

 

……

 

【――ハイリヒ王国 王城】

 

【……王の間】

 

――スタスタスタ……バタンッ!

 

ランデル「っ! あ、姉上……」

 

リリアーナ「……! ランデル……あなた、まだお部屋で休んでいなさいと言ったのに……!」

 

バイアス「あ? ……あぁ、確かおめぇの弟か……」

 

ランデル「申し訳ございません、姉上。ですが、私もハイリヒの王族。いつまでも……悲しみに暮れている暇はありませぬ」

 

ランデル「……父上が、亡くなられた。しかも、あのような形で……」

 

バイアス「……」

 

リリアーナ「……私たちは、南雲さんたちが事態収束のために船の方で待機してくれと言われていたとはいえ……」

 

リリアーナ「あなたたちが一番大変な時に……私は、あなたのそばにいてあげることが出来なかった」

 

リリアーナ「だから、本当はこのまま船の方で休んでいただければと思っていたのだけれど……」

 

ランデル「わかっております、姉上。でも、だからこそ、私は姉上の力になりたいのです」

 

――バサッ……

 

リリアーナ「! それは……」

 

ランデル「生き残りの兵士や負傷した民の数です。南雲ハジメ殿の所持しているアーティファクトをお借りし、すぐさま調べにいってました」

 

ランデル「また、念のために国の中だけではなく、念のために外を調べたところ……」

 

リリアーナ「……なにかあったの?」

 

ランデル「……周辺に、他所から来た亜人族が来た形跡が、あったとのことです」

 

バイアス「なっ、攻め入ってきたかあいつら!?」

 

――……トコトコトコ……

 

ミュウ「……それはないと思うの」

 

リリアーナ「? あなたは……」

 

ランデル「魚人族のミュウ殿です。私に力を貸してくれている協力者であります」

 

ランデル「彼女が言うには、亜人族たちの雰囲気には……敵意や殺意と言ったものはない、とのことです」

 

ランデル「これは憶測ですが、亜人族たちの準備が整っていないと思われます」

 

リリアーナ「準備が整っていない?」

 

ランデル「まず、攻撃の準備。ハイリヒを攻め入るには数が少なく、さらに遠方の方を調べてみても隠れた物は10にも満たない数とのこと」

 

ランデル「これだけならば、まだスパイや暗殺者を忍び込ませる……といったやり方も出来ましょうが……」

 

ランデル「はっきり言って申し上げますと、これは絶対にない、と言えます。なぜなら、ここハイリヒには、攻め入ることが出来ない絶対の理由がありますから……」

 

バイアス「……はっ。あの白髪眼帯野郎の存在か……」

 

ランデル「……南雲ハジメ殿の規格外的な強さがあればこそ、兎人族は強くなれた」

 

ランデル「その強さを嫌でも知っているからこそ、奴らは攻め入ってくることはしない。その程度の人数で挑むことが、いかにして自殺行為であることは、嫌でもわかっているでしょう」

 

バイアス「……ま、あいつから力をもらったからこそヘルシャーは滅ばされたわけだがな……あの兎どもに」

 

ランデル「現在、姉上は国の復興のために尽力を尽くしていただいておりますが……その頭数に、私めを……!」

 

リリアーナ「……まったく、この子ときたら……」

 

リリアーナ(この子も、いつの間にか大きくなっている……)

 

リリアーナ(こうして、目を離している間に……こんなにも立派になっているなんて、ね……)

 

………………

 

【――ハイリヒ王城 食事の間】

 

………………

 

イシュタル「……」モグモグモグ……

 

レミア「その、よろしいのでしょうか……私が、このような場所で食事だなんて……」

 

イシュタル「よろしいのでは? どちらにせよ、今はとにかく頭数がいりますので」

 

イシュタル「ん、ん゛っ……この後、たくさん働いてもらいますので……ね」ゴクンッ

 

レミア「私はそれで構いません。どのような形であれ、皆さんのお力になれるのであれば……」

 

レミア「……思う所は、その、ありますが……」

 

ノイント「ほう」

 

エーアスト「思う所、とは」

 

レミア「亜人である私が、このような場所にいることが……です」

 

レミア「……私たち亜人は、人の許しによって生かされてきました」

 

レミア「フェアベルゲンと言った奴隷として目を付けられていた者はあまりにも多い。同じ亜人として、あなた達に良い感情があるかと言われたら……」

 

ノイント「……ですが、あなたは魚人族。あなたがたは聖教教会によって、その身は保障されてるはずでは?」

 

レミア「保障されているはずの私の娘は、攫われて売り飛ばされるところでした」

 

イシュタル「……ほほう、そのようなことが」

 

レミア「これから先は、きっと変わる。良くも悪くも、きっと亜人族の奴隷うんぬんの話なんて、言ってられなくなる」

 

レミア「……時代が変わる節目に、私は立っている……のですね」

 

イシュタル「その通り。事ここに至っては、もはや亜人も人間も関係ありませぬ」

 

イシュタル「みなで力を合わせて、共に立ち向かう……そうでなければ未来は切り拓かれませぬ」

 

レミア「……イシュタル、さん……」

 

ノイント「イシュタル……」

 

エーアスト「……」

 

レミア「……」

 

ノイント「……」

 

エーアスト「……」

 

レミア(その亜人を奴隷にしてきた聖教教会のトップがそんなセリフを……?)

 

ノイント(操ってもいないのによくスラスラとあんなきれいごとを吐けますね)

 

エーアスト(これが人間の強さ……いや、強かさ……)

 

――シュルルルッ……

 

イシュタル「……それに、現在の聖教教会という形だけのコレにも……まだ残っている者は居りまする」

 

イシュタル「一部の者には、エヒクリベレイについて知らない。いまだ、善のエヒトがこの世界を見守っていると信じる者はおるのです」

 

イシュタル「……ただ、善の神という概念は南雲ハジメ殿が考えた物であるのですが……ふむ、ふぅむ……これは……」

 

レミア「……あの、ところで。そちらの手紙は……?」

 

イシュタル「先ほど、南雲ハジメ殿がアーティファクトによって調べた情報です」

 

イシュタル「……数日前、こちらに向かってるリベラ―ル司祭が……」

 

 

イシュタル「殺害された……とのこと」

 

 

レミア「り、リベラ―ル司祭……?」

 

イシュタル「聖職の身でありながら自由奔放なお方でな。亜人族の奴隷の身分に対し、疑問を投げかけた途端、辺境の地に飛ばされた方です」

 

イシュタル「シモン・リベラ―ルと孫娘のシビル・リベラ―ル。こちらに向かう途中で、たまたま出会ったハウリアによって……というわけですな」

 

レミア「……っ」

 

イシュタル「いやはや……この方、私が投獄の身になっている間、しばらくは聖教教会のトップに置き、混乱の中の聖教教会とハイリヒの関係を保つために送られてきたわけです」

 

イシュタル「何という因果か……この者が殺され、これで聖教教会はトップ不在の、文字通りがらんどう。まとまりは完全になくなったわけですな」

 

イシュタル「さて、そうなると……おやぁ? ここで聖教教会を治められる者が一人しかいませんなぁ?」

 

レミア「………………あなた、長生きしますよ」

 

イシュタル「まぁ、少なくとも生き急いでいる亜人よりかは」

 

ノイント(こっちが何もしなくても十分に盤上を面白くしてくれたのではないでしょうか。この方)

 

エーアスト(これは優秀な駒ですね)

 

………………

 

【――ハイリヒの王城、クラスメイト達が暮らしていた寮】

 

――……カチ……カチ……カチ……

 

ハジメ「……そろそろ、か」

 

 

ハジメ「……みんな、聞いてくれ。あいつが、俺を迎えにやってくる」

 

 

光輝「……迎えにって……」

 

龍太郎「今の今まで……俺たちンところに顔を出してきた……」

 

雫「夢の中のアイツ? なんで今になって……?」

 

ハジメ「それは俺も不思議に思っていた。いつもいつも……夢の中で話しかけてきて、ずっと俺たちに接してきたアイツ……『声の主』……」

 

香織「……思えば、あの人は……南雲くんだけでなく私たちにも話しかけていた……」

 

鈴「あの話しぶりや……そして、だいぶ前の魔人族によるハイリヒの襲撃の時に出会った声の人……でも、それならあの人は……」

 

檜山「……間違いなく、あいつはトータスのやつで。そして、それで異世界の住人である俺たちに話しかけられた……ってことは」

 

清水「その……ど~~~考えても……」

 

恵里「……エヒトと同等の存在……と思えるやつ、だね」

 

ハジメ「…………エヒトと同等……対等な存在……」

 

 

ミレディ「あ、あの……そんなのがいるなんてボク初耳なんだけど……?」

 

 

ハジメ「……ん、まぁ……そっか。そういえばお前が知る機会なんてぜんぜんなかったもんな……」

 

檜山「南雲はだいぶ前に合ってたっぽいけど、俺たちはここらへんで初対面だしなぁ……」

 

ミレディ「だ、だって……あの糞野郎が……自分と同等の存在を許すか……見逃すか……?」

 

ミレディ「何がどうなって……この盤上の外を荒らす獣、竜、魔の神……さらに、エヒクリベレイ……?」

 

ハジメ「……」

 

ハジメ(ずっと、ずっと気になっていたことがあった)

 

ハジメ(奴は別の世界に干渉できる……トータスの住人でありながら、異世界人である俺たちに、だ)

 

ハジメ(それは、つまり……そんなアイツがエヒトと同等だというのならば……)

 

ハジメ(奴は異世界人であり、エヒトも……異世界人……ということになる)

 

ハジメ(ならば、考えられるのは二通り……)

 

ハジメ(異世界に干渉できるほどの……超常的な力を持ったやつが二人いるか……)

 

ハジメ(……あるい、は……)

 

――キィィィィ……!!

 

ハジメ「っ! きたっ……!!」

 

光輝「……感じる。アイツの雰囲気が……」

 

ハジメ「……たぶん、アイツの所に行くのは俺だ」

 

ハジメ「話を付けて、いろいろと聞いてくる」

 

ハジメ「――いってくる、みんな」

 

――バタンッ……

 

光輝「南雲!!」

 

香織「南雲くん!!」

 

龍太郎「……行ってきたか……アイツ」

 

雫「今は夢の中……ってことね。何かがわかればいいのだけれ――」

 

檜山「お、オイ! こっち、こっちも!!」

 

 

ミレディ「…………」

 

 

雫「え、なに――! み、ミレディさん!?」

 

清水「あ、あれぇ!? こっちも!?」

 

恵里「なんでこっちのほうまで……」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――遠い遠い昔】

 

【――とある世界、とある場所】

 

【――魔術師の研究所にて】

 

【――往年……】

 

――パチパチパチパチパチッ……

 

――「おめでとうございます! 所長!!」

 

――「ついに概念魔法の開発に成功しましたね!」

 

所長「はははは……なに、そこまで持ち上げんで良い」

 

――「いやいや何を言いますか!」

 

――「御年70を超えて……我が国、いや世界一の魔術研究家のあなたが! ついに概念に干渉するという術式を完成させたのですよ!!」

 

――「っくぅ~~~~! 苦労が報われる感じ……いやぁ、いいなぁ!」

 

所長「はっ、ははは……」

 

所長(……はぁ、まったく疲れる)

 

所長(私はただただ……自分のやれることをやろうとしただけ)

 

所長(功績や栄光も、結局は過程でしかない。それを、宝石の如くありがたがるコイツラは何ともまぁ惨めなものだ)

 

所長(……思えば、遠くに来たものだな)

 

所長(友を作らず、家族を作らず……かつての血縁者や親友と呼べるような薄いつながりさえも……今では私から切り離されていった……)

 

所長(……今となっては残された物は魔法だけ……か……ははっ……)

 

所長(……後悔なんて、ない)

 

所長(凡人は子をなし、血を残し、明日を作る)

 

所長(奴らが生きる土台、この世界を形作る魔術を発展させたのは私だ)

 

所長(口うるさく言葉を挟んできた連中も……)

 

所長(あれだけおせっかいを焼いてきた奴らも……)

 

所長(どいつもこいつも……我が才能によって横にも、後ろにも、並ぶことも出来ずに置いていかれた)

 

所長(そうだ……私は『おいていった』んだ)

 

所長(置いてかれたわけではっ……断じてないっ……!!)

 

………………

 

…………

 

……

 

――ドォォォォォンっ!!

 

『緊急避難警報発令! 緊急避難警報発令!!!』

 

『現在、魔術師たちによって発動された【概念魔法】が発動し、自然界に大きな事象が発生しています!』

 

『津波、地震、あらゆる現象が発生しているため、外に出るのは大変危険です!!』

 

『みなさん! どうか、どうか家から出ないように! 自宅で待機していてください!!』

 

『今から救助隊が向かいます! どうか! どうか家から出ないでください!!』

 

………………

 

――バァンッ!!

 

研究員「しょ、所長!! どちらに行かれるのですか!」

 

所長「どこへだと!? 決まっているだろう!! 【概念魔法】によって、別世界へと逃げ出す!」

 

研究員「な、なんですって!? まさか、このまま逃げるおつもりですか!?」

 

所長「逃げるつもり……だと!? この世界の荒れようを見てみろ! 地は割け、風は吹きすさび、雷は絶えず落ちてくる!!」

 

所長「このような事が起きて……世界と共にするつもりはない!! 私は逃げる! 逃げて、生き延びる!!」

 

研究員「そ、そんな……自分のいた世界を見捨てる……というのですか……!」

 

所長「あ、当たり前だ……!! 自分の命がかわいくて……何が悪い!!」

 

研究員「お、お待ちください! 所長!! お願いです! それならば、それならば私も! ぜひ、私めも!!」

 

所長「っ……い、いいだろう。なら早くしろ! もうすでに、ほかの者たちも異世界へと逃げ出しているはずだ!!」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――遠い遠い昔】

 

【――……名前のない世界にて】

 

………………

 

リーダー「……なにを、いっている……?」

 

同郷の者「もう、おわりにしたい。私はそういったんだ」

 

リーダー「……なにっ……なに、いってっ……だって、これから……」

 

 

リーダー「これからなんだぞ!? 私たちは!!」

 

 

同郷の者「……」

 

リーダー「我々がいた世界が消えて……幾年……この異世界に来てから……私たちは懸命にこの世界を育ててきた……」

 

リーダー「我々の産み出した魔法によって! この文明のレベルが低いこの世界で!!」

 

リーダー「我々は世界の神だ! 共にこの世界を賑わせたではないか!!」

 

リーダー「それなのに!! お前は……っ、お前も!! 私の前から消えると言うのか!! 私のっ! 前からっ!!」

 

同郷の者「……もう、いいんだ」

 

リーダー「あ゛ぁ゛!?」

 

同郷の者「もう、十分じゃないか……この世界は、十分に育った。我々が育てた――」

 

 

同郷の者「【異世界トータス】……もう、この世界は神なんていなくても……十分にやっていけるよ」

 

 

リーダー「っ……!! 逃げる、というのか……お前は……!!」

 

同郷の者「違う、逃げるんじゃない。みんなの所に帰るんだ」

 

同郷の者「お前も一緒に帰ろう。みんなと一緒に行こう。もう十分やってきたじゃないか」

 

リーダー「だ、だまれだまれだまれぇ!!」

 

リーダー「私は! 私はこの世界の神だ! お前がその座を降りると言うのならば! 私だけでもっ……!! 私だけでもずっとここに居座ってやる!!」

 

リーダー「消えろ! 消えろ、臆病者め! この世界は……私だけのものだ……!!」

 

同郷の者「……いつだっていい。私は、お前が私たちの所に帰ってくることを……祈ってるよ」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――神の間】

 

………………

 

…………

 

……

 

「――……ジメ……南雲ハジメ!!」

 

ハジメ「っ……!! こ、ここはっ……」

 

ミレディ「……よかった。気がついたみたいだね」

 

ハジメ「みれ、でぃ……この場所、もしかして……」

 

ミレディ「……空気を、感じる。何か、似たようなものを……私は、ずっと前からこの空気を知っている……」

 

ハジメ「知っている……って……まさか、ここが……」

 

ハジメ「……いや、待て。それはおかしいぞ……」

 

ミレディ「? 何がおかしいのさ」

 

ハジメ「お前、今さっきこの空間について知っているって言ったよな」

 

 

ハジメ「……俺も、この場所を知っている……いや、来たことがある」

 

 

ミレディ「は!? ちょっとまって、どういうことだよ!?」

 

ハジメ「……ずっと前からだ。この場所は、俺はずっと前から足を運んでいた」

 

ハジメ「この世界の空気感、ここで感じられる雰囲気……」

 

ハジメ「そうだ、これは……天之河たちも体験しているはずの……あの場所っ……!!」

 

ハジメ「……まてっ、ちょっと、まてっ……でも、それじゃあここはっ……」

 

 

――……ほぉ、このような場所に客人とはな……

 

 

ミレディ「っっ゛……!! お、お前っ……!! おまえ、はっ……!!」

 

ハジメ「……お前……」

 

――……久方ぶりだな、『イレギュラー』……いや

 

 

エヒト「――南雲ハジメよ……ミレディ・ライセンよ」

 

 

ミレディ「……ほんとうに……ほんっとーーーーにっ……久しぶりだよ……このクソ野郎……!!」

 

ハジメ「……お前……確か……山のほうで逃げ回ってから……」

 

エヒト「……っ、あぁ、そうだっ……!! 私は! あの無様な逃げ恥を晒し!! 今もこうしておめおめと生き続けている!!!」

 

エヒト「その上、今では世界中の信仰が……貴様に集中している! 我が神の威光は、すべて! 何もかも! 奪われようとしている!!」

 

ミレディ「ははっ、ざまぁみろだなっ……だったら、ここでお前の首に手が届く……ってことでいいんだよねぇ!!」

 

エヒト「愚かな解放者めっ……!! 貴様らのような愚図どもにっ……この、このエヒトがっ……! 神である我を脅かそうなど……!!」

 

――シュバッ……!

 

ミレディ「っ……! 剣を錬成した……!」

 

エヒト「……これ以上の恥、拭うには貴様らを葬らねばならん……!! 我が屈辱、この怒り! かならず、かならずや貴様らの血で拭って見せる……!!」

 

ハジメ「………………」

 

エヒト「最終決戦だ!! 貴様らの戦いに乗ってやる! この崩れ去った盤上が遊べぬのならば! 貴様らという玩具で興じてやる!!」

 

エヒト「狂い踊れイレギュラー共!! その身、その魂!! 子々孫々にまで業火に焼かれるがいい!!」

 

ミレディ「何やってるのさ!! 銃を構えて! やつが、奴がくる!!」

 

ハジメ「………………い、いやっ……でもっ……!!」

 

エヒト「相手になってやるぞ……イレギュラー!!」

 

ハジメ「い、いや……だからっ……!!」

 

ミレディ「ちょっと!! 戦わなきゃいけないときに! 何をして――」

 

 

ハジメ「――『お前』、何やってるんだよ!?」

 

 

ミレディ「……え、ちょ、ちょっと……?」

 

エヒト「……なにとは、なんだ」

 

ハジメ「な、なにって……全部だ! ここにあるもの、全部!!」

 

ハジメ「……ここに来てから、ずっと感じてたんだ。この空間、ここの雰囲気……ここは……」

 

ハジメ「――『夢』だ……ずっと、俺の心に干渉してきた……ずっと前から繋がっていた空間だ……!!」

 

ミレディ「は、はぁ……? ちょっと、なにいって……」

 

ハジメ「……なら、おまえは……」

 

エヒト「……」

 

エヒト「………………」

 

エヒト「…………………………」

 

――……カラァンッ……

 

ミレディ「……? 剣を、置いた……?」

 

エヒト「……」

 

 

エヒト「陰キャぼっち高校生さんちーーーーーーーっすwwwwwwwwwwwwwwwwwこうして顔合わせるのマジで初めてだねwwwwwwwwマジでwwwwwwwwwww」

 

 

ミレディ「………………………………………ぁ………………?」

 

ハジメ「………………っ!? ぁっ、や、やっぱり……っ……!!」

 

エヒト「え、なになにwwwwwwww別に戦うつもりないよwwwwwwwぜんぜんwwwwwwwwww」

 

エヒト「いや、ほんとさぁwwwwwwwww今トータスすごいことンなってんねwwwwwwwwwwなんであーなったのかマジでわからんわwwwwwwwなにあれwwwwwww」

 

エヒト「っつーかさwwwwwwwお前、いろいろあったよなぁ、ほんと!! 地球でお前と話してからさはぁ! ここまで話がこじれるとは思わなかったもんwwwwwwwwwwww」

 

ミレディ「は、ち、地球……??」

 

エヒト「神だ悪魔だとか言ってるうちにwwwwwwwwもう取り返しつかなくなってるしwwwwwwwほんと、どーしてこーなったんwwwwwwwwww」

 

エヒト「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

エヒト「wwwwwwww…………www……………………ww………………」

 

エヒト「……………………………………………………………………」

 

エヒト「はぁ~~~~~~~~~~~~………………」

 

エヒト「……」

 

ハジメ「……」

 

エヒト「その」

 

エヒト「うん」

 

 

エヒト「改めて名乗らせてもらう。私はエヒト。真名……あぁ、というか本名は、私の世界で『真』を意味する『エヒト』をもじって『エヒトルジュエ』。地球にいたころのお前の夢の中にちょくちょく干渉していたのは私だ」

 

 

――スタスタスタ……ドサッ……

 

エヒト「よっこいせ……っと」

 

エヒト「……あ、好きなところに座っていいぞ。何もないから『床』もないんだ。座っても尻はいたくならん」

 

ハジメ「……」スタスタスタ……ドサッ……

 

エヒト「……ミレディ、お前は座らないのか?」

 

ミレディ「……ぇ、ぇ……???」

 

エヒト「……まぁ、立ったままでもいいが」

 

エヒト「……」

 

ハジメ「……」

 

ミレディ「……………………???????」

 

エヒト「……」

 

エヒト「あ゛ーーーーーー……どこから話したらいいんだ、これ……」

 

エヒト「……まず、先に言わせてもらおう」

 

 

エヒト「私にお前たちに対して敵意も害意もとっくにない。お前たちの戦いは、すでにここに来た時点でもう終わっている」

 

 

ミレディ「……………………………………は……………………?」

 

エヒト「……時間は少しだけある。お前たちは、この話を聞く権利があり……私は、話さなければならない責任がある」

 

エヒト「今、私を含めてこのトータスで起きている事情。そして――」

 

 

エヒト「お前たち地球の高校生が、この世界に召喚される経緯について」

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

 

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