生まれた時から最強だった   作:roborobo

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第40話

 

【本編】

 

 

【――遠い遠い昔】

 

【――トータスの果て】

 

【――どこにでもあるけど、どこにもない場所】

 

――神よ、あぁ尊き我らが光よ……

 

エヒト「……」

 

――我らをお救いください……

 

――弱き、迷い、惑う我らを導いてください……

 

――あなた様から見て塵芥でしかない我らを、どうか……どうか……

 

エヒト「崇めよ」

 

――……

 

エヒト「我を崇めよ、下等生物共」

 

エヒト「矮小なるものどもよ」

 

エヒト「この尊き光の前に立つことすら許されない、視界に入れる事すら憚られる大いなる者」

 

エヒト「それこそが私、私なのだ」

 

エヒト「お前たちの前にいるのは、お前たちを産み落とせし偉大なる者」

 

エヒト「ゆえに、我はお前たちに敬意を表さぬ、感謝を表さぬ、見返りなんて与えるはずもない」

 

エヒト「なぜならば……お前たちは、我のためにいるのだから」

 

――……おお、神よ……神よ……

 

――我々を……

 

――人間を……

 

――亜人を……

 

――魔人を……

 

――救って……

 

――救ってください……救って……

 

エヒト「縋れ、縋れ、縋れ」

 

エヒト「縋りつく信仰の力が……我が力だ……!!」

 

エヒト「そうだ、その通りだ……! この世界には、私しかいない……!」

 

エヒト「お前たちには……私しかいない……!!」

 

………………

 

神の使徒「我が主よ。地上の人間たちが順調に数を増やし続けています」

 

エヒト「……そうか」

 

神の使徒「特に人間族の増加ペースが、年々増していっています。魔人族、亜人族と違い数が多さが有利になっているため、ほかの種族と違い太平の世が続いているようです」

 

神の使徒「また、こちらは亜人族のデータですが……こちらは減少傾向にあります。人間族と比べて力はありますが、数が少ないゆえに『種族』としては人間たちに上回られているようです。そのためか、彼らの中には二種類の亜人族が生まれました」

 

エヒト「従う者か、逃げる者たちか」

 

神の使徒「はい。住める土地を追いやられて、逃げ出した者たち。地上には、人間たちや魔人族が干渉できないとされる『森』があると言われています

 

神の使徒「そしてもう一つ。人間族に益をもたらすために、人間族の庇護下に置かれている亜人族たち。『海人族』」

 

神の使徒「そして魔人族。こちらは現在、他国やほかの種族と干渉することなく、比較的平穏に過ごしているようです」

 

神の使徒「話を続けますが――」

 

エヒト「なぁ、神の使徒よ。私はお前を作り上げてから、いったいどれだけの月日を重ねたかな」

 

神の使徒「……すでに500年以上も前かと。作り出しては滅ぼし、作り出しては滅ぼしていく」

 

神の使徒「盤上のゲームを円滑に進めるために、進行役を仰せつかったのがその時のことです」

 

神の使徒「我が主であるエヒト様の命令に従い、盤上の駒を、国を、種族を操りつづけてきました。今後も、あなた様のご意志のままに――」

 

エヒト「ふむ、もちろんそのつもりだ。お前は我が盤上を操るための人形。それ以上の価値なぞ、ありはしない」

 

エヒト「だが、な……正直言って、名前がないのは中々に不便だ」

 

エヒト「我が魔法によって造られえたお前たちは、しっかりとその役目を果たしてくれている。だが、黙々と作業に没頭してくれればいいと思って造りだしたお前たちだが、さすがに呼び名が無ければ面倒だ」

 

エヒト「……ふむ。ここは人形らしく、シンプルに数字で呼ぶことにしよう。ただし、一号機だとか二号機だとかそういったものではなく……そうだな、華のある名称を。うむ……」

 

エヒト「まぁいい。これについてはあとで考えることにする。お前は地上へと向かい、この前私が目を付けた国に接触を図り、戦争を引き起こせ」

 

神の使徒「……神の意志のままに」

 

エヒト「………………」

 

………………

 

エヒト(……あれから、どれだけの月日が経ったのか。先ほどの人形が言っていたように、アイツらを作ったのが500年以上前)

 

エヒト(同志と共に作り上げた『トータス』に残った私は、この世界における神として君臨した。人間族は聖教教会を作りだし、私を唯一なる神として崇めながら、日々信仰による力を私に捧げてくる)

 

エヒト(そして、作り上げるだけ作り上げたら、あとは捨てるかのように世界を滅ぼしていく。過去も未来も関係なく、我が気持ち一つで積み上げてきた歴史も、世界も、そうして滅ぼしてきた)

 

エヒト(今、この世界で私と対等に立てる者はどこにもいない。私こそが唯一無二であり、私こそが自立し、独立した、ただ一個の存在なのだ)

 

エヒト(並ぶものなき、上に立つものもいない。この私を頂点としたトータスでは、私こそが盤上を見下ろすプレイヤーその物だ)

 

エヒト(誰も、私と肩を並べる者はない)

 

 

エヒト(ましてや、味方とも言えるモノも、敵と言えるものも……どこにもいやしないのだから……)

 

 

 

………………

 

…………

 

……

 

【――月日が流れて】

 

エヒト「……」

 

エヒト「ええと」

 

エヒト「こっちは……これで、何度目だろうな」

 

神の使徒「こちら、○○○回目になりますね」

 

エヒト「ん、もうそれだけ経ったのか……じゃあ、ふむ……」

 

エヒト「やるとするか。この世界も滅ぼしてしまえ。終わったら、次の世界もつくりあげる」

 

神の使徒「神の意志のままに」

 

エヒト「……ふぅ~~…………」

 

エヒト「……」

 

エヒト(あれからさらに経った。神の領域にて身を置き、使徒と言葉を交わすだけの生活。それが、今の私)

 

エヒト(世界を作って、生物を作り上げて、そのたびにゲームがスムーズに進むようにと手を尽くしてきた)

 

エヒト(創る、壊す、造る、壊す、産み出して、殺す)

 

エヒト(どれだけの信仰が我に注がれただろう)

 

エヒト(どれだけの憎悪と悪意が、我に注がれただろう)

 

エヒト(それでも、目の前にあるこの行為を……ただただ好きだからと選んだ物に目を付け乍ら進んでいく。ただ、それだけだ)

 

 

エヒト(周囲なんてどうでもいい。これが、今の私のやりたいことなのだから)

 

 

エヒト「……ただ」ボソッ

 

神の使徒「……? いかがいたしましたか?」

 

エヒト「……いい。お前ははやく地上に戻れ」

 

神の使徒「……わかりました」

 

――タッタッタ……

 

エヒト「……」

 

エヒト(敵が、いない)

 

エヒト(友が、いない)

 

エヒト(身内が、いない)

 

エヒト(見知った顔がどこにも、いない)

 

エヒト(だけど、道具は『ある』。ただ私を肯定するために産み出された機械人形。私を神として産み落とされる神の使徒たちが)

 

エヒト(しかし、アイツらは所詮、人形に過ぎない。その人形が、我が意思を組んで命令のままに動いているだけに過ぎない)

 

エヒト(道具はある。しかし、味方はいない)

 

エヒト(『ある』ものは『ある』)

 

エヒト(ただ、『いない』というだけ)

 

エヒト(……)

 

エヒト(いつからだ)

 

エヒト(世界を破壊するのに、ただ淡々とした作業になりかけていたのは)

 

エヒト(いったいいつからだ)

 

エヒト(破壊される世界を眺めて、心が動かなくなったのは)

 

エヒト(誰よりも到達できない至高の領域に届いたというのに。ここには、誰もいない)

 

エヒト(……家族、友、仲間……私にも……いた気がする……)

 

エヒト(いた……か……? いた、のか……?)

 

エヒト(……)

 

エヒト(まぁ、どうでも……いいかもしれんな。考えるだけ無駄だ)

 

………………

 

…………

 

……

 

 

【――月日が流れて】

 

神の使徒「異世界へ向かう?」

 

エヒト「そうだ。よりゲームを盛り上げるために、駒を増やすことにした」

 

エヒト「その内容がコレ……この世界、トータスにおいて力を発揮できる異世界の人間たちをこの世界に連れてくる。それが私の目的だ」

 

エヒト「この世界に異世界の人間を転移という形で誘拐し、やつらを魔人族と戦わせる。ククク……きっと面白い娯楽になると思うぞ」

 

神の使徒「……我が主。我が主に異を唱える形となってしまいますが……ご質問が」

 

エヒト「申してみろ」

 

神の使徒「なぜわざわざ異世界から人間を……それならばこの世界にいる者たちを利用すれば……」

 

エヒト「言ったはずだ。飽きたと」

 

エヒト「毎度毎度同じ世界だけで支配と破壊を繰り返し、そのたびに盤上をリセットしては再び同じ世界を始めていく」

 

エヒト「至高のご馳走を毎度繰り返していたら舌が慣れるのと同じだ。私はそろそろ新しい味を知ってみたい」

 

エヒト「切り拓くぞ。新たな世界を。まだみぬ世界をも支配し、その世界にて優秀な駒を手に入れる」

 

エヒト「そのためにも……今や肉の体を持たぬ私には、新たな依り代が必要だ。肉の器たる人間が必要なのだ」

 

神の使徒「……なるほど。我が主のお考えに及ばず、恥を知るばかりです」

 

神の使徒「きっと、その世界へと向かえば……我が主にも並ぶような者たちが――」

 

――ガキィンッ!!

 

神の使徒「っっ……わ、わが、あるじよっ……なに、をっ……」

 

エヒト「……我と、並ぶ者……だと?」

 

エヒト「いつからそのような言葉を吐けるようになった? 誰が、誰と、対等だと?」

 

神の使徒「ぐ、うぅぅっ……」

 

エヒト「我こそが唯一にして絶対の神。この世界、トータスの神」

 

エヒト「それを、私と対等? 見つかるかも? だと?」

 

――ぐ、グググググググッ……

 

神の使徒「ぎ、ぃあっ……ぁ、あぁっ……」

 

――……バキンッ……!!

 

――……ドサッ……

 

エヒト「……ほかの者よ。ほかの者たちよ。いるか」

 

エヒト「ここにある人形を処分しろ。私の意を酌めぬ無能なぞ、無用だ」

 

エヒト「……」

 

………………

 

エヒト(誰も、いなかった)

 

エヒト(私が思えばあらゆるものが形となって目の前に現れた)

 

エヒト(私が想えば周囲は私の意を酌む者が、どんな望みも叶えてくれた)

 

エヒト(周囲とは、私を想い、信仰する者だけでいい)

 

エヒト(並ぶ者無きゆえに、私はどこまでいっても私でしかなく、ゆえに私は唯一無二の存在)

 

エヒト(だからこそ、私のこの状況を言葉で言い表すのならば、孤独というよりは孤高)

 

エヒト(並ぶ者無き者、至高の存在、それこそが神である私)

 

エヒト(そうだ。私は神だ。神であり続ける。それは昔から変わらない。たとえ誰かが口を挟もうとも)

 

エヒト(誰かが私を阻もうとも)

 

 

エヒト(私には、『敵』なぞ存在しないのだ)

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

【――地球】

 

――スゥゥゥゥゥ……

 

エヒト(……ふむ。ここがトータスとは別の世界……異世界か)

 

エヒト(確か……世界の構造は私とほぼ同じ。あまねく宇宙の中にいくつもの星々があり、その中にある銀河星雲……の、さらに幾粒の星の内の一つ)

 

エヒト(その星の名前がこそが『地球』であり、ここはその地球という星の中にある日本列島という島……いや、『日本』という国か)

 

エヒト(文明の発展ぶりは……なるほどな。この『程度』か。多少は気になって足を運んでみた物の、文明レベルとしては……今まで見てきたところでは中の上、といったところか?)

 

エヒト(近代的建築物がいくつも乱立し、機械技術がかなり発達しているな。私が暮らしていた世界と比べたら文明のレベルこそ落ちるモノの、まぁ、私がいたところは技術レベルその物が末期だったからな。まだまだ発展途上であるこの世界に、そのようなものを求めるのは酷という物か)

 

エヒト(……さて、使徒どもが言うにはこの付近にいると言っていたな……)

 

エヒト(ビル、駅、いくつもの一般住宅……探させてみた物だが、中々にわかりやすくて助かるな。魔法を抜いて技術レベルが下、という以外では私がいた世界とほぼ同じなのかもしれん)

 

エヒト(……むっ……!! あれはっ……!!)

 

――ザワザワザワ……

 

 

光輝「――おはよう、香織」

 

 

「や、やだぁ! 天之河くんよ! すってきぃ!」

 

「わ、わ、天之河先輩だぁ……!! いいなぁ、あの人いっつもかっこよくてっ……!」

 

「あんな人が彼氏だったら、とっても自慢できるんだろうなぁ~!」

 

――ザワザワザワ……

 

エヒト(……この盛り上がりよう。そして、何よりも年若い者たちが集まるこの施設……『学校』か? 教育施設もちゃんとあるのだな)

 

エヒト(いや、それよりもあの少年は……!! ここからでもはっきりと伝わってくるほどの、この高純度の魔力……そして、その質! 間違いない! あの少年こそが、神である我が器に相応しい少年なのだ……!!)

 

エヒト(クククク……いいぞ、いいぞ……!! 頭の中にシナリオが浮かんできた! あの少年を利用し、新たな盤上を整えようではないか!!)

 

エヒト(さて、そうなれば……あとはこいつを連れていけばいいだけか。どれ、そろそろこっちのほうは召喚するだけ。準備はほとんど終わっている)

 

エヒト(まずは……この少年が通っている教室に向かい、召喚の陣を敷くための準備をしよう)

 

………………

 

龍太郎「よ、おっはよう」

 

――ザワザワザワ……

 

香織「おはよう。龍太郎くん、光輝くん」

 

雫「あら、おはよう」

 

――ザワザワザワ……

 

鈴「ねぇねぇ、聞いてよぉ。エリリ~ン!」

 

恵里「も、もう。どうしたの鈴ったら」

 

――ザワザワザワ……

 

清水(……寝てるふり……寝てるふり……虐められないようにおとなしくしてよ……)

 

――ザワザワザワ……

 

檜山「でよぉ~~! この前のあのキモオタの反応がよ!」

 

――ザワザワザワ……

 

エヒト(……ふぅん? なるほどな。こういった連中か)

 

エヒト(優秀そうな生徒もいるが、ガラの悪い連中もいる。教育施設としてはそこまで上質な場所ではないのか?)

 

エヒト(いや、金でねじ込むような親もいるか……ククっ、そういうところもほぼ同じような世界……なのだな)

 

エヒト(……うん?)

 

――スタスタスタ……ガラッ

 

 

ハジメ「あ、あはは……ギリギリセーフ……」

 

 

エヒト(……遅刻、か。まぁ、こういった不出来な生徒もいるのだろう)

 

檜山「ぎゃはははは! なーんだお前!! まーた遅刻かよキモオタ~~~!!」

 

エヒト(……)ピクッ

 

ハジメ「あ、あははは……」

 

香織「おはよう、ハジメくん! 今日も遅刻しちゃったね」

 

ハジメ「あ、あははは……いやぁ、この前もちょっと家の都合でね……」

 

光輝「香織……あんまり南雲を甘やかしちゃダメだぞ? こいつはいつもいつも遅刻してばかりなんだから」

 

ハジメ「あ、あははは……その、改善するように頑張るよ」

 

………………

 

エヒト(……)

 

エヒト(……なんだ)

 

エヒト(なんだろう、こいつは)

 

 

エヒト(……なぜだか、シンパシーを感じてならない)

 

 

ハジメ「ははっ……まぁ、僕には僕のペースがあるから……」

 

香織「そ、そっかぁ……そうだね……」

 

エヒト(……周囲からかけられる言葉に対して生返事で返し、授業も学校でもやる気を絶対に見せるつもりはない)

 

エヒト(それでいて、他人と足並みをそろえようとせず、いつもいつも自分の趣味と好きな事しか頭にないから……周囲から常に浮きがちで……)

 

エヒト(……こいつは、なんなんだ)

 

エヒト(力も魔力、さきほどの光輝なんかよりもずっとずっと劣る存在)

 

エヒト(それなのに、なぜ私は)

 

エヒト(コイツを見た途端、何かが心の中で引っかかり始めてるんだ……??)

 

エヒト(……)

 

エヒト(知りたい)

 

エヒト(知ってみたい)

 

エヒト(お前は誰だ、お前は一体何なんだ)

 

エヒト(……)

 

エヒト(私は、このまま帰ってもいい)

 

エヒト(すでに目的は果たした。このままトータスに戻り、ここにいる天之河光輝を召喚するために帰らなければならない)

 

エヒト(その時は、無関係のこいつらが何人か連れていくことになるだろう。それでもかまわぬが……)

 

エヒト(……だけど、だけど……私は……)

 

エヒト(……)

 

………………

 

…………

 

……

 

 

【――とある日の夜】

 

【――ハジメの夢の中】

 

………………

 

ハジメ「……ん、あれ……」

 

ハジメ「え、あれ……? ここどこ……?」

 

 

エヒト「……」

 

 

ハジメ「ん……んんんっ!? え、光の人影……!? ゆ、幽霊!?」

 

エヒト「あ、え、いや……」

 

ハジメ「だ、だれ? 誰なの!? ねぇ……怖いよぉ!!」

 

エヒト「……ん、ん~~……」

 

エヒト(……)

 

エヒト(コイツに関して、知りたくなってきた)

 

エヒト(自分の中にある疑問を、そのままにしたくなかった。だから、コイツの事を多少なりとも知ろうと思ったのだが……)

 

エヒト(……考えてみれば神の使徒に対して命令することはあっても、明確な他者との会話なんて……)

 

エヒト(…………しまったウン千年ぶりか。他人と会話するときはどうすればよかったか……)

 

エヒト「……ん、んん~~~~……」

 

 

エヒト「……ち、ち~~~~~すwwwwwwwwwwwオタクくんなにやってんのwwwwwwってか遊んでもらっていいwwwwwww」

 

 

ハジメ「……へ、な、なに……?」

 

………………

 

エヒト(……ファーストコンタクトがこれであっていたかなんて私にはわからない)

 

エヒト(だけど、どのように接して、どのような形で南雲ハジメという人間を知ることが出来るのか。そのための会話能力が必要だと、私はそう判断した)

 

エヒト(そのために、まずは真似た。かつて、私に挑んできたトータスの解放者たちを。かの反逆者たちを)

 

 

エヒト(――ミレディ・ライセン。やつの口調を多少真似ながら、南雲ハジメに接する。その後は、コイツと会話を重ねながら微調整を繰り返していけばいい)

 

 

エヒト「いやまぁwwwwwwwwそういうことだからさwwwwwwwwwちょっとなんか遊んでいこうよwwww」

 

ハジメ「え、えっ……? で、でもここって……」

 

エヒト「あ、夢だからwwwwwここ夢wwwwwwww夢の中だからさぁwwww気にしなくていいよwwwwww」

 

ハジメ「あ、そう……そう、なの……?」

 

エヒト(……会話を出来るようになった、な)

 

エヒト(元々、こんな道化の真似事に抵抗はない。いくつものゲームの中では、わざわざ間抜けな役柄を演じて世界を滅びに導いたことがあったからだ)

 

エヒト(……こうして、私はこいつと……南雲ハジメと顔見知りになった)

 

………………

 

ハジメ「――……とまぁ、これが僕の学園生活だけど」

 

エヒト「……………………」

 

ハジメ「まぁー、ね。僕ってさ、もう就職先もそのためのスキルも身に着けているんだよ」

 

ハジメ「だから学校での生活なんて、あんまり力を入れたくないんだよね。もうやることなんて決まり切っているし」

 

エヒト(……………………)

 

エヒト(会話を続けていくついに、だんだんとこいつの心の内を聞けるようになった)

 

エヒト(……すごい)

 

 

エヒト(何がすごいって既視感がすごい。どこかで見たことがあるとかじゃなくて、『やったことがある』レベルのことなんて滅多にない経験だ……)

 

 

エヒト(デジャブかなんかか? 見れば見るほど自分に当てはまっているようで怖いぞコイツ)

 

エヒト(消極的で排他的、夢に対する一直線っぷりは感じられるから周囲に対してなんら関心がない)

 

エヒト(そして、何が酷いって……こいつ自身が恵まれた環境ゆえに自分のことを顧みぬことをまったくしない……というよりは、その機会がないからだ)

 

エヒト(………………)

 

ハジメ「あ、ねぇねぇ。夢の中なんだからさ。またゲームでも出して遊ぼうよ」

 

ハジメ「ここ、ほんと便利だよね。夢の中でゲームをやっても明日にはぜんぜん響かないんだもん」

 

エヒト「そりゃぁ……まぁ……」

 

エヒト(概念魔法で造りだした一種の精神世界だからな。ここにいれば時間も流れんし、元の世界に戻っても肉体に疲労は残らん)

 

ハジメ「しかもこうやって念じただけですぐさまゲームが出てくるんだよ? ……うわっ、すっげ。これ中古市場でめちゃくちゃプレ値がついたやつじゃん……」

 

エヒト(そりゃまぁ、産み出せるだろうよ。人間の精神性が形となって現れるこの場所では『望めば』どんなものも形になる)

 

エヒト(……それにしても。いや、先ほどから思っていたのだが……)

 

エヒト「ここには、他人がいないんだな」

 

ハジメ「? 他人?」

 

エヒト「この場所を作ってから思ったことがある。ここは、お前の心が形作る場所。お前の精神性が形となるこの場所では、お前が望んだモノがこの空間に現れる」

 

エヒト「だというのに、この場所には……モノや道具はあっても人はいない。楽しみを共有する誰かがいないのは、どういうことだ」

 

ハジメ「……ん~~~~~~……」ガリガリガリ……

 

ハジメ「ん、なんていうかさ。別に気にすることじゃないと思うんだよね。ボクとしてはさ」

 

エヒト「……なんだと?」

 

ハジメ「あんまりこういうこと、ほかの人には喋らなかったんだけどさ。ボクってさ、自分にとって興味のあること以外って基本的にどうでもいいんだよ」

 

ハジメ「ゲームや漫画とか。そういうのが大好きなオタク一家だからさ。好きになったことを好きなだけやりたいから。それで口を挟んでくるのなんてただ邪魔なだけでしかないし、あんまり関わりたくないんだよね」

 

エヒト「……」

 

ハジメ「世の中にはさ、自分にない物を感じて求めようとして、手に入らなくてさ。それで苦しむ人たちが大勢いるわけじゃない?」

 

ハジメ「……不毛だと思うんだよね。その時その時に、自分の手の中にあるモノだけで満足してさ。何物強請りをするよりも、今自分の傍にあるものを大事にしていけばいいんだよ」

 

ハジメ「だから、それで手に入らないって感じたらすぐに苦しんじゃう。コンプレックスや嫉妬とか……劣等感ってのが生まれちゃう」

 

エヒト「……」

 

ハジメ「だからさ、ボクは今の自分に満足しているよ。だって、これ以上求める必要がないんだから」

 

エヒト「……」

 

ハジメ「それでさ、ボクに何の用があるの? なんか話したいことでもあるの?」

 

エヒト「……いや」

 

エヒト「お前の言うゲームに付き合ってみたい」

 

………………

 

 

 

 

エヒト(……正直に言おう。私は驚いていた)

 

エヒト(生まれた時から自分は満たされていた)

 

エヒト(家に恵まれ、才能に恵まれ、気質が自分が求めていたものと合致していた)

 

エヒト(ゆえに、自分には欠落したモノがなく、求める必要性もなければ、他者を求める必要もなかった)

 

エヒト(自分の中で完結しているがゆえに、他人を、能力を、より上へ上へと求めるという行動。それその物が私には不要な感情となっていた)

 

エヒト(痛いほど、嫌なほど)

 

エヒト(私は、この少年と似ていた)

 

エヒト(……)

 

エヒト(知りたいと、思った)

 

エヒト(自分が満足できる範囲の中に身を置き、それ以外を必要としない所に共感したこの少年のことを)

 

エヒト(どんな人物なのかと、もっと知りたくなった)

 

………………

 

神の使徒「……我が主よ。例の計画についてですが」

 

エヒト「ん、あぁ……」

 

エヒト「……」ソワソワ……

 

神の使徒「……? エヒト様、何か気がかりでも?」

 

エヒト「……いや、気にしなくていい」

 

――ガタッ……

 

エヒト「用事を思い出した。しばらく空けるぞ」

 

神の使徒「は、御心のままに」

 

………………

 

――ガチャガチャガチャッ……

 

ハジメ「っだぁぁぁぁぁぁ!! ちょ、ないでしょここで青コウラとかさぁ!! なんで引くわけ!? なんで引くわけ!?」

 

エヒト「っばぁぁぁぁぁかっ!! 最後の最後に勝つのはなぁ!! 諦めない、やつ、なんっっだよっ!!」

 

エヒト「はい一位!!!」

 

ハジメ「はーーーーーー!!! 糞ゲー!!! これ糞ゲー!!! やってらんねーーーーーーー!!!」

 

ハジメ「ほかのやろう! ほかの! ほら、あれ! パーティーゲームのやつ!」

 

エヒト「周回は99にしておけ!! こっちでも引き離してやる!!」

 

――ガチャガチャガチャッ……

 

――カチッ、カチカチカチッ……

 

ハジメ「……んーーーー……そろそろ覚めないかな。この夢」

 

エヒト「ん、なんだ。そろそろ飽きたか?」

 

ハジメ「まぁ、さすがにね。なんかずーっとここにいる気がするし」

 

ハジメ「ゲームもこんだけバラエティ豊かなもので遊びすぎるとちょっと飽きるね」

 

エヒト「なら次は映画でも見るか。お前が考えれば映画館だってつくれるぞ?」

 

ハジメ「は? マジで……? え、ちょっと、どん程度のモンが見れるの……?」

 

……………………

 

ハジメ「す、スゲェェェェェェェ!! 名作長編映画をスクリーンで! しかも最高レベルの音質と迫力の大画面!」

 

エヒト「……なんとまぁこだわり派なお前らしい。シートの質感がチープな劇場のソレとは比較にならんぞ」

 

ハジメ「あ、始まる始まる! 見よう見よう!」

 

……………………

 

エヒト(……夢の世界では時間の流れが止まる。どれだけ遊んでも、どれだけくつろいでいても、私の指先一つでアイツは元の時間、元の世界の空の下に戻れる)

 

エヒト(その間、私は……楽しんでいた。いつか来るであろう計画の日が来るまで。南雲ハジメと……遊んでいた)

 

エヒト(それは……私が生きてきた中で、初めて他者との交流だった……のかもしれない)

 

エヒト(……)

 

エヒト(初めて、だった)

 

エヒト(誰かと遊ぶことも、誰かに共感し、心を通じ合わせたことも)

 

 

エヒト(私にも、誰かと楽しむ心を持っていたことに……初めて気づけたのだ)

 

 

エヒト(………………)

 

エヒト(だからこそ、気になってしまった)

 

エヒト(私はこれまで、自分の知らないことや知ろうとしたことは自分の中で分析し、調べてきた)

 

エヒト(ハジメとの関係だってそうだ。こうして奴と知り合い、楽しみを共有してきた中で、私にも他者との交流で心を通じ合わせる心がある事をしった)

 

エヒト(じゃあ……ほかの者たちは?)

 

エヒト(ハジメという人間がいたからこそ、人と交流することの楽しさを見出せたのなら)

 

エヒト(ほかの者たちでも……もしも、同じように共感、共有『できたかもしれない』って……なったら……?)

 

……………………

 

 

エヒト「……お前、学校での話ってしないんだな」

 

ハジメ「んー、だから言ったじゃん。必要ないんだって」

 

ハジメ「前にも言ったでしょ? ボクはさ、もう就職先も決まってるしそのためのスキルだって身に着けている」

 

ハジメ「学校でのことなんて、もう必要ないんだよ」

 

エヒト「いや……だが……お前の世界のこと、少し調べてみたんだがな」

 

エヒト「お前の世界では学校に行くのは勉学を収めて、良い学校に行くか、良い会社に就職するか。そのためのスキルを磨く場所だと聞いたぞ」

 

ハジメ「? それがなにか?」

 

エヒト「お前はただ行っているだけ、とは言っていたがな……じゃあお前は、何のために高校に行っているんだ?」

 

ハジメ「なんのため、って……」

 

エヒト「学校に行っても眠ってるだけで勉強は不真面目。テストの点数はいいかもしれないが、クラスメイトとの交流しようとしないから関係性は最悪」

 

エヒト「……いじめっ子として接触してくる一部の者はともかく、それでお前を庇わないのはそういう所にあるんじゃないのか?」

 

エヒト「悪意を向けてくる連中には敵意を持って接しなければ、やられっぱなしで当たり前だ」

 

エヒト「ほかのクラスメイトたちもそうだ。いじめに加担せず、お前のことを誰も庇わないのは、お前自身が誰かと関わろうとしないからだ」

 

エヒト「善意を持って接しなければ、誰もが善意で返してくれるはずが――」ズキッ

 

エヒト(……? なんだ、今、胸が……)

 

ハジメ「……関係ないでしょ」

 

エヒト「……それだけじゃないぞ。お前は就職先が決まってるからどうでもいいと言っているがな……お前の親が最後までお前の面倒を見てくれると……本気で思ってるのか?」

 

ハジメ「……」

 

エヒト「お前の親は……はっきり言って、仕事の内容が不安定だ。漫画の打ち切り、業界もしくは会社の経営不振で一気に生活が傾く場合だってある」

 

エヒト「特に、お前の両親はサブカルチャー系の文化だから余計に煽りを受けやすい。稼げるときは一気に稼げるが、落ちたら本当に一瞬だ」

 

エヒト「何よりもな……親だっていつまでも生きているわけじゃない。なんらかの事故で死ぬか、働くことも出来ずに介護しなきゃいけなくなるのかもしれな――」ズキッ……

 

エヒト(……っ、またか……なんだ、今の痛み……)

 

エヒト(まぁ、私の時は親が認知症になる前に亡くなったから……そこそこ運がよかったんだがな)

 

ハジメ「……それは」

 

エヒト「それなのにお前は、自分一人で生きていける能力を身に着けてると言いながら、それで使える力というのが親の七光りありきの技術のみ。お前ひとりで成せるもの、残せるものがあるのか?」

 

ハジメ「……あのさ、関係ないでしょ」

 

エヒト「……なに?」

 

ハジメ「いや、だからさ。関係ないじゃん」

 

ハジメ「これはボクの人生だし、ボクが決めることだ」

 

ハジメ「そりゃ、人から見たら気に入らないところはあるだろうけどさ。口を挟む権利なんて、そっちにはないでしょ」

 

エヒト「……はぁ~~~~……あのなぁ……」

 

ハジメ「っていうかさ、なに? いきなり。どうしてそんな説教まがいなこと言ってくるのさ」

 

エヒト「なっ、なんでって……なんで、ってっ……」

 

エヒト「………………」

 

 

エヒト(あれ……マジでなんでだ……?)

 

 

エヒト(……待て。待て待て待て。なんで、私はいきなり説教なんて始めたんだ)

 

エヒト(コイツを見ていてイラついた。コイツを見ていて、何か口を挟んでやりたくなった……あぁ、そうだ。その気持ちは間違いではない)

 

エヒト(いや、だけど……それが、なんでいきなり……)

 

エヒト「……ぁ、そ、それはっ……」

 

ハジメ「確かに今後の人生で、父さんや母さんたちと何らかの理由で離ればなれになるかもしれないよ」

 

ハジメ「でも、その時はその時さ。そんなこと、考えたって仕方ないじゃないか」

 

ハジメ「ボクにはボクなりの生き方がある。誰の邪魔にもなってないのに、口を挟まれる筋合いはないでしょ?」

 

エヒト(……コイツの言う通りだ。そうだ、関係ないはずだ。自分が生きている人生を、どうしてほかの連中に口を挟まれなければならない……?)

 

エヒト「っ……! ふんっ、確かにお前の言う通りだな。お前の人生はお前のモノだ。自分が生きたいと思った道筋を生きていけばいい」

 

エヒト(だけど……いや、仮に……そうだとして……もしも、人との関りが……本当に大切だとしたら……)

 

エヒト「だけどな。お前が思うよりも、生きていく中で誰ともかかわらない者なんていやしない。お前が思っている以上に……お前を想う者たちが大勢いるんだ!!」

 

エヒト(本当は……私は、力だけが、才能だけが突出しているだけで……心その物は人間だとしたら……)

 

エヒト(何よりも……今、こうして目の前にいるコイツを説得しようとしている……その時点で……私は……)

 

エヒト(私は、とっくに――)

 

 

エヒト「人は……一人で、いきていく、ことは……でき、なっ…………っ」

 

 

ハジメ「……? ちょっと? どうしたの?」

 

エヒト「……今日は、もう……帰る」

 

………………

 

【神の間】

 

エヒト「……」

 

神の使徒「我が主、計画の日は近づいております」

 

神の使徒「準備の方はちゃくちゃくと整いつつありますが……」

 

神の使徒「……エヒト様?」

 

エヒト「……」

 

エヒト「……」フラフラッ……

 

神の使徒「……エヒト――」

 

エヒト「いい、口を挟むな。あっちに行っていろ」

 

――スタスタスタ……

 

エヒト「……」

 

エヒト(なんだこれは)

 

エヒト(ここは、私が作り上げた領域だ)

 

エヒト(トータスは、私が作り上げた箱庭だ)

 

エヒト(力を振るい、命を刈り取り、悪戯に世界を乱し続けたのが私だ)

 

エヒト(だけど、だけど)

 

 

エヒト(――今まで、私は『こんなもの』を……楽しんでいたのか……?)

 

 

エヒト(身内も、顔見知りも、故郷の者たちも)

 

エヒト(それらを追い越して、置いてけぼりにして)

 

エヒト(そうして得た場所が、地位が、こんなもの……? こんなものを、私は欲していたのか……?)

 

エヒト(どこまでも昇り続けるかわからない……誰とも肩を並べることもなく、誰とも視線を交わらせることもなく)

 

エヒト(周囲には、ただ私の事を全肯定してくれる人形が囲んでくれるだけの箱庭)

 

エヒト(誰とも競うことなく、誰からも想われることもなく、誰からも意識を向けられることはない)

 

エヒト(……当たり前だ)

 

 

エヒト(だって、私が何も、誰にも与えなかったのだから)

 

 

エヒト(私は誰かと競うことをしなかった。才能があるから、というのもあった。だけど、それ以上に他者を同等であり同格であることを認識せず、邪魔な存在としか思わなかった)

 

エヒト(誰からも想われなくて当然だ。だって、私から誰かを想ったことなんてなかったのだから。肯定してくれる家族や一部の知り合いたちは、私の事を見てくれた。だけど、それ以上に気持ちを持って返すことをしなかった)

 

エヒト(誰からも、意識を向けられることはなかった)

 

エヒト(敵意も、愛情も、憎悪も、尊敬も、殺意も、親愛も……年を取れば、私から離れていき、私もそれでいいと思って誰にも、何も『返さなかった』)

 

エヒト(……これが、こんなのが……?)

 

 

エヒト(こんなのが……いまの、わたし……???)

 

 

………………

 

エヒト「よ、遊びに来たぞ」

 

ハジメ「あー、来た来た」

 

ハジメ「……結局なんだったの? あのお説教」

 

エヒト「……気にしなくていい。虫の居所が悪かっただけだ」

 

ハジメ「ふぅーん」

 

ハジメ「あ、じゃあさ。今日はあれだしてよ、あれ。ちょっとこっちにカタログがあるんだけどさ――」

 

エヒト(……わかったことがある。コイツを見ていて、胸が痛みを覚えた理由が)

 

 

エヒト(コイツは私だ。私その物だ)

 

 

エヒト(周囲に気を遣うことなく、自分の思うがままに生きようとして)

 

エヒト(そうして置き去りにした物の大切さを知らないまま生きてきた奴)

 

エヒト(……)

 

エヒト(だけど)

 

エヒト(ハジメ、お前は違うだろう)

 

エヒト(生まれも能力も、はっきり言って私の方が優れていたと胸を張っていえる)

 

エヒト(……いや、最悪な方向に合致してしまった……と言えるだろう)

 

エヒト(環境と才能が合致してしまったがために、私は引き返せないところまで進み続けてしまった)

 

エヒト(お前はまだ、どこかしらで躓き、自分を振り返られるだけの余地がある)

 

エヒト(お前は私と比べて、気にかけてくれる周囲もいれば、人間関係の構築をやり直せる余地がいくらでもある)

 

 

エヒト(……この『ゲーム』を中止する。滞りなく終わらせ、お前たちを無事に地球へ戻れるようにしよう)

 

 

エヒト(……これはただの自己満足だ)

 

エヒト(自分はもうやり直せない。だから、こうやってやり直せる奴に干渉して、自分の愚かさをやり直した気になりたいだけだ)

 

エヒト(……もう、それしか)

 

エヒト(やれることが……ないのだ……)

 

 

 

【――前日】

 

エヒト「でさ、でさ。こう言ってやったわけ。お前、それのどこが○○やねん! ってね!」

 

ハジメ「ああ、ふーん」

 

エヒト「んだよ、釣れないな。ほら、もっと話を弾ませろって。こうやって久々に話しかけに来たんだからさ」

 

ハジメ「ああ、はいはい。分かりましたよ」

 

エヒト「でさでさぁ、この前だってこう言ってやったのよ。お前は○○かーい! ってね!」

 

ハジメ(……人物……ヒト、ひ、と……? あ、うん。何を隠そう、その姿とやらがまっったく見えないのだ。というか、声だけしか聞こえないのだ)

 

ハジメ(そして、もっと言えばこの状況は夢だ。ベッドの布団にくるまって明日も学校へ行くぞと思っていた時だ。そういう時になると大体『コイツ』は話しかけてくる)

 

エヒト「ねぇねぇ、もうちょっとお話しようってばぁー」

 

ハジメ(はいはいムシムシ。夢の世界の住人さんさようなら。ボクは現実という過酷な戦場に行かなくてはならないのだ)

 

ハジメ(……ま、明日になったらまたお話し相手になるからさ)

 

エヒト「……」

 

エヒト「ハジメ、明日は……『いろいろ』と大変かもしれない」

 

エヒト「もしも、その苦難を乗り越えたならばお前は……私と顔を合わせる時が来るだろう」

 

エヒト「その時、お前は……」

 

ハジメ(え、ちょ、何言って――) 

 

エヒト「……ハジメ、お前はなってはならない。歩んではならない。お前は、私と同じ過ちを……」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

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