生まれた時から最強だった   作:roborobo

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第41話

 

【――現在】

 

【神の間】

 

………………

 

エヒト「――これが、ゲームの真相と、お前たちが召喚されるまでの経緯だ」

 

ハジメ「……」

 

ミレディ「……」

 

エヒト「……正直に言わせてもらおう。今、お前たちを取り巻く状況とこの世界で起きていることに関しては、私ですら把握してない『何か』が大きく渦巻いている」

 

エヒト「だからこそ、すでにこの状況は私が改心する前のゲームのシナリオや、それ以降の計画から大きく逸脱してしまっている」

 

エヒト「ゆえに、まだ何か気になるところや知らないところがあるならば、ここで聞こう」

 

ハジメ「……ええと……あぁ……」

 

ハジメ「その、聞かせてくれ。お前は……こう言ってたよな。もうこのゲームを続行するつもりはない。とっとと終わらせるつもりだったと」

 

エヒト「そうだ。その点については、ウソ偽りはない」

 

 

ハジメ「なら聞かせろ。なんで、俺たちを召喚した?」

 

 

エヒト「……」

 

ハジメ「お前はもう、俺たちを巻き込むつもりはなかったと、そう言っていた。だったら、そのまま俺たちをトータスに召喚することなく、トータスで起きていたことを内々で処理していきゃいい」

 

ハジメ「俺を……改心させる、というのならなおのことだ。そんなだったら、わざわざクラスメイト事召喚するよりも、俺だけを……いや、それこそ召喚前のようにちょくちょく俺にだけ接すればいいはずだ。それを、なんでお前は……」

 

ハジメ「やめようと……プランを変更する前の、クラスメイトを盤上の駒にする計画を……そのまま推し進めたんだ?」

 

エヒト「……言い訳がましいかもしれんが、私としてもこれ以上お前たちを巻き込むつもりはなかった。これについては本当だ」

 

エヒト「改心する前の私の目的は、天之河光輝という器の入手のみ。お前たちというクラスメイトたちがついでに召喚されるかもしれない……という、もしものケースは、ゲームを盛り上げるための駒になるだろう……その程度にしか考えていなかった」

 

エヒト「だが、お前たちを召喚するしかなかった。私が組み立てたゲームのシナリオは、エンディングに向けて話を進めなければならなかったからだ」

 

エヒト「……それは、そこにいるミレディのためでもあるからだ」

 

ミレディ「……」

 

ハジメ「? なに……?」

 

エヒト「先ほども言った通り、私の目的は『私が消えた上でのトータスの安寧』。その次にあるのは、私の個人的な目的である『ハジメと人間関係の改善』だ」

 

エヒト「お前たちも知っての通り、私は人間や多くの種族たちの畏怖や信仰によって神格を得た存在だ。ゆえに、長い年月を重ねたことによって得た信仰によって、今の私が形作られていると言ってもいい」

 

エヒト「……だが、それは言い換えてしまえば、この世界には超常的な魔法の力を持っている『だけ』の人間ですら、神にすらなりうるための土台が出来上がっている、という裏付けにもなるわけだ」

 

エヒト「そこで、じゃあ悪いことをしてきましたからすぐに死にます……となってしまえば……」

 

ハジメ「……! お前という神は消えて居なくなっても……」

 

ミレディ「ほかの誰かが神になる……か。いや、させられるのか……」

 

ハジメ「……て、それって……!」

 

エヒト「あぁ、お前も考えている通りだ」

 

 

エヒト「ヘルシャー帝国を脱した時、人の信仰によって『魔王』を押し付けられていた時のお前が、まさにその状況だったわけだ」

 

 

ハジメ「……っ!!」

 

ミレディ「……? 神? 魔王……?」

 

エヒト「説明は後でさせてもらうぞ、ミレディ。さて、話を戻そう」

 

エヒト「この仕組み……いわゆる、この世界による『法則』があることはわかったはずだ」

 

エヒト「何も知らない者に押し付ければ、人格を塗り替えらえた『怪物』が産まれてしまう」

 

エヒト「そして、もっと最悪なのは……何ら『形のない何か』に、『形のある何か』を産み出してしまう……というケースもありうる、という事だ」

 

エヒト「だからこそ、私はこのゲームを演じなければならなくなった。異世界にやってきた勇者たちが、狂った神を打ち倒して元の世界に帰る」

 

エヒト「元々あった信仰はそのままに、スムーズに信仰の対象を移し替え、イレギュラーを引き起こすことなく、この世界が平和になれるようにと」

 

ハジメ「……だから、俺たちを呼び出した……いや、呼び出すしかなかったのか」

 

ハジメ「あの時の聖教教会や王国には、俺たちが召喚されることは話がついていた。この時点で、ゲームの主導権を握っていたお前が『やっぱりやめた』となれば……」

 

エヒト「スムーズにはいかなくなるだろう。下手をすれば、この世界は方向性を見失った混乱に陥っていたに違いない」

 

エヒト「……最初に言った通り、現状が成功したとは……絶対に言えない状況ではあるがな」

 

ミレディ「……」

 

ハジメ「……ゲームのシナリオは、出来上がっていた。トータスが平和を取り戻すためには、信仰という人間の思念によるバランスの崩壊を防ぐために、用意していたシナリオ通りに進めて、『狂った神』が打ち倒される必要がある」

 

ハジメ「……っ! そうか、神山の時の醜態……命乞いをしていたあれは……」

 

エヒト「異世界の勇者が狂った神を打ち倒し、真の神を見つけ出す。そのためには、今の今まで神の座に腰を下ろしていた私が、自ら醜態をさらす必要があったのだ」

 

エヒト「正直に言うと……そこで『エヒクリベレイ』といった真の善なる神を考え付いてくれたのは幸運としか言いようがない。あれのおかげで、今の今までこの世界を支配してきた私は、めでたく倒されるべき敵となり、この世界をお前たち人間に託すための作業がスムーズになったのだから」

 

エヒト「……狂った神によるゲームが行われる。盤上の上で人を狂わせていた神は、異世界の勇者たちによって打ち倒されて、人間の手によって取り戻される」

 

 

エヒト「それこそが、ゲームを始める前に……正気に戻ってしまった『狂った神』の役割だ」

 

 

ハジメ「……もう一つ聞かせろ。お前、俺の事をサポートしようって言ってたよな」

 

ハジメ「元々、召喚されるのは天之河だけで……ほかはおまけだった……そう言ってたよな」

 

ハジメ「なら、なんで俺を奈落に落ちるのを防がなかった? 俺に対して友好的だったのなら、なんで助けようとしなかった……?」

 

エヒト「……すまなかった。その点に関しては、白状しなければならないところがある」

 

 

エヒト「気づけなかったし、間に合わなかったんだよ」

 

 

ハジメ「……え、なっ、お前……自分で神だって……」

 

エヒト「……さっきも言ったが、私は結局、神を名乗る人間でしかない。この盤上をコントロールするためにも、ある程度はお前たちから目を離さなければいけなかった」

 

エヒト「だから、お前が奈落に落ちて豹変して……ユエを見つけて、神代魔法を習得したあたりから……ようやくお前たちを発見した」

 

ハジメ「……お、お前っ……それでよく神だなんて名乗れたな……」

 

エヒト「……まぁ、なんだ。何度も言うようで悪いが、神を名乗る人間でしかないんだ」

 

 

エヒト「そもそも、だ。ユエの存在を知っていたのならば、最初から天之河光輝を含めたクラスメイト達を召喚してなかったんだ。この時点で、私にそれほどの目利きなんてなかったんだよ」

 

 

ハジメ「む、むぅ……」

 

エヒト「狂っていた神は……神と思い込んでいた人間は、どうにかして世界を住民たちに返せるか考えた」

 

エヒト「だから、新たなシナリオを組み立てた」

 

エヒト「狂った神を演じつつ、お前たちクラスメイトをフォローし、出来る限り世界を元に戻そうとした」

 

エヒト「だけど、結果は……」

 

ハジメ「……ユエ、シア、ティオの離反。さらには、三人の神に、俺が考え出したはずの『エヒクリベレイ』を名乗る謎の存在が現れた」

 

ハジメ「そして、お前のこれまでのうろたえ具合……どう考えても、当初の計画通りに事は運んでねぇ……ってことで良いんだよな、コレ」

 

エヒト「……返す言葉もない。ヘルシャーあたりまではイレギュラーが起きたりした物の、それでも順調に事は運べていた」

 

エヒト「ハジメを含めたクラスメイト達の活躍、各々の精神に干渉して改心するためのきっかけを与えてきた」

 

エヒト「トータスの者たちはこれまで縋ってきた神が狂った者であり、ミレディが望んでいた自由なる意思の下で考えられるようにした。少なくとも、私は神山での魔人族侵攻での醜態は、そのきっかけの一つになるだろうと、そう演じたつもりだ」

 

 

エヒト「――この状況に陥るまでは、な」

 

 

エヒト「お前を慕っていた少女たちの裏切り、ソレに付き従う神を名乗る三人組、さらには出現してきたエヒクリベレイを名乗る謎の存在……」

 

エヒト「もう、お前たちもわかっているはずだ。この状況は、すでに私の手から離れてしまっている。もう誰にも、この私にでさえコントロールできないほどに」

 

ハジメ「なら、どうするつもりだ」

 

エヒト「……」

 

ハジメ「状況は混沌としている。俺たちどころかお前ですらどうにもならない」

 

ハジメ「そんな状況下で、俺たちはどうすればいい。お前は、なにをさせたい」

 

エヒト「……現状、ないと言っていい」

 

エヒト「今のお前は、これまでに巡ってきた迷宮による神代魔法を習得している。それらによって概念魔法を得るに至ったのであれば、お前は私の手を借りずとも元の世界に帰ることが出来るだろう。ただ……ユエのような魔法に長けた才能を持つ者がいない以上、異世界に渡るためのアーティファクトを作れるかはわからんが……」

 

エヒト「だけど、これだけは言える」

 

 

エヒト「私ならば、このままお前たちを元の世界に返してやれることが出来る」

 

 

ミレディ「……っ」

 

ハジメ「……聞かせてくれ。とりあえずは……お前は敵ではなく、俺たちを元の世界に返してくれる『味方』……で、いいんだな?」

 

エヒト「……そうだ」

 

ハジメ「俺たちが今まで歩んでいたこの道のりは、お前が地球側もトータス側も穏便に終わらせるつもりで話を運ぶため……どこまでもお前の手の平の上だった。それについては理解した。納得できるかは……別の話だがな」

 

エヒト「……ハジメ」

 

ハジメ「……フン。今更、お前にあれこれ言ったところでどうにもならねぇんだろ。ただ、巻き込んだ以上……責任を取るつもりなら最後まできっちりとやってもらう」

 

ハジメ「お前に文句を言うのも、その面をぶん殴るのもその後だ」

 

エヒト「……わかった」

 

ミレディ「……」

 

ハジメ「それで、帰るためにはどうすればいいんだ」

 

エヒト「とりあえずは、地上に降りてもろもろの説明をしたい。お前のクラスメイト達と一度合流し、このまま元の世界に帰るか、それとも――」

 

 

ミレディ「ねぇ、ちょっと待ってよ」

 

 

ハジメ「……み、ミレディ……」

 

エヒト「……」ピタッ

 

ミレディ「ねぇ、ちょっとさ、ねぇ」

 

ミレディ「……なに、なんなの……?? なんの、話をしてるの……???」

 

ハジメ「お、オイ……どうし――」

 

ミレディ「い、いやいやいや……どうしたも、こうしたも……さ……」

 

 

ミレディ「いや――なんで、お前が普通に話してんの……???」

 

 

エヒト「……」

 

ミレディ「いやっ……だっっ……ってさぁぁっ……おまえ、っさぁぁぁっ…………」

 

ミレディ「ぼ、ぼくたちっ、にっ……あんなっ、あんな、ひっっっっどいこと、してさぁぁっ……」

 

ミレディ「み、みんなっ……あんなに、がんばってっ……ぼく、お前と……交渉、してさっ………………」

 

ミレディ「それが……なにっ……? なんだよ……? 改心しました……?? はぁぁぁぁ……????」

 

エヒト「……ミレディ」

 

 

ミレディ「――ぶはっっっ゛wwwwww ぶははははっはっwwwwwwww」

 

 

ハジメ「っ!?」ビクッ!!

 

エヒト「……っ」

 

ミレディ「ちょっwwwwwwちょっとなにそれっwwwwwwwは、なになに、つまりこういうことwwwwwww」

 

ミレディ「何百年もwwwwwwww何千年もwwwwwwあ~~~~~~~んだけボクたちの時代を、荒らしてさぁぁwwwwwwwww」

 

ミレディ「みんな死んでさwwwwwwwwみんな踏みにじってさwwwwwwwみ~~~~~~~~んな、お前がわるいのにさぁぁぁぁぁぁぁwwwwwwwwww」

 

ミレディ「ぜんぶぜんぶwwwwwwwwwお前みたいな糞野郎をぶっっっっっっっっころしたくてさぁぁぁぁぁぁぁwwwwwwwこっちさぁぁぁぁwwwwwwwみんなで準備いっぱいしてさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁwwwwwwwwwww」

 

ミレディ「それがwwwwwwwwwwそれがwwwwwwwwww」

 

 

ミレディ「他所の世界に行ったら客観的に見つめなおせたから改心しましたとかさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

 

ハジメ「み、ミレディ!!」

 

エヒト「……」

 

ミレディ「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

 

ミレディ「はぁ~~~~~~~~~~…………………………wwwwww………………wwwww……………………」

 

ミレディ「………………wwwww………………www……………………」

 

ミレディ「……」

 

 

ミレディ「死ねよ、お前」

 

 

ハジメ「……み、みれ――」

 

ミレディ「ッッッッッっ゛ねよお前ェェェェェェェェェェ゛ーーーーーーーーー!!!!!」

 

ハジメ「っ!?」ビクッ゛!!

 

エヒト「……」

 

ミレディ「お、おまえぇぇぇぇぇぇぇぇ゛え゛!!!!! なにっっっ、なにがっ゛!!!! なにがぁぁぁぁぁぁっ!!! 正気に!! 戻っただぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ゛!!!!!」

 

ミレディ「お、おまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ゛!!!! なんでっ゛!! なんでっ、おまえっっっっだけがぁぁぁぁぁぁぁぁっ゛!!!!!」

 

ミレディ「あああああああああああああああああああああああ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ゛!!!!!!!!!」

 

エヒト「……」

 

ミレディ「死ねっっっっ!! 死ねよっ!! お前っっっ!!!」

 

ミレディ「なんでっ、なんでっ、なんでっ!!! お前がっっ……!! お前がっっ!!! お前だけがっ、自分の叶えたいことを叶えようとしてるんだよ! お前だけがっ、自分の未練と向き合っているんだよ!!!」

 

ミレディ「お前のせいで、たくっっっっさんの未練を抱えた人がいるのに!! どうしてっ、どうして、お前だけ!!!!」

 

ハジメ「み、ミレディっ……その、お、おいっ……」

 

エヒト「やめろ、ハジメ。私が自分で蒔いた種だ。こいつには、私を罵る権利も資格もある」

 

エヒト「……だけどミレディ。それは無理だ。出来ない。私は、しばらく死ぬことは出来ない。いや、それどころか――」

 

 

エヒト「今この場で死ななければならないのは、お前の方だミレディ」

 

 

ハジメ「――っ!? はぁっ!?」

 

ミレディ「っっ゛!? な、なに、いってっ……」

 

エヒト「……」

 

エヒト「……お前とは長い付き合いになるからな。語らねばなるまい。それは――」

 

 

エヒクリベレイ「大衆の信仰の力が、彼女にも影響を及ぼすかもしれない……だろう? エヒト」

 

 

エヒト「――っ!! え、エヒクリベレイ!?」

 

ハジメ「お、お前っ!!」

 

ミレディ「!!」

 

エヒクリベレイ「やぁ、お邪魔するよ三人とも。ここは広い場所だな。神の領域として……相応しいじゃないか、エヒト」

 

エヒト「な、なぜここに貴様がいる!? この場所は私や限られた者しか……!!」

 

エヒクリベレイ「何を言っている。そのトータスの者たちが、私を神として崇めてきたのではないか」

 

エヒト「……!? な、なに……?」

 

エヒクリベレイ「渦巻く思念、集まる大衆。あの者たちは、神を求めている。縋る者を求めている」

 

エヒクリベレイ「しかし、いつの時代も自分たちが崇める者が絶対的な存在でいてもらうためには……そのための『敵』を欲するはずだ」

 

エヒクリベレイ「エヒトに匹敵するほどの、伝説を背負いし存在……それが何なのか、知っているはずだよ?」

 

ハジメ「……ま、まさかっ……!」

 

エヒト「……っ」

 

 

ミレディ「……えっ、えっ……?」

 

 

ハジメ「っ……! 神代の反逆者……いや、解放者……!!」

 

エヒクリベレイ「……かつて、狂った神であるエヒトに逆らいし反逆者たち。その伝説がどのような形であれ、彼らの名前はしっかりと歴史に刻まれている」

 

エヒクリベレイ「つまり、どのような形であれ、彼らはエヒトと肩を並べるほどの伝説をその身に宿しているわけだ」

 

エヒクリベレイ「そうなれば……彼らという存在を、どのように扱うだろうね。これから先、トータスの住民たちは……反逆者という、エヒトに並ぶほどの伝説の『素材』は」

 

 

エヒト「……例え、それが良い方向だろうと悪い方向だろうと……大衆が、自分たちの意に沿うような……『神』や『悪魔』にさせられる可能性がある」

 

 

ハジメ「っ……!!」

 

ミレディ「ぁ……あぁ……!?」

 

エヒクリベレイ「……そこはそう言ってあげるべきだよエヒト。『都合の良い神様』か『都合の良い悪魔』とね」

 

エヒクリベレイ「地球の宗教でも、信者が少なかったり資料が少ない信仰は、そのまま誰にも訂正されることなく神や悪魔として知られることになってしまう。歴史とはそういうものだ」

 

エヒクリベレイ「エヒトという、すべてを知った上で神の座に座っていた物がいなくなれば、その途端に君たち解放者たちは、後のトータスの住民たちに取って都合の良い形に変えられていくだろう」

 

ハジメ「……前の……俺みたいに……」

 

ミレディ「そ、そんな……そんなっ……!!」

 

エヒクリベレイ「そうならないためにも、かつて解放者がいたことを徹底的に破壊する。そのためにも、名前が残らないようにする」

 

 

エヒクリベレイ「それが、ミレディに対する償いの一つ……そういうことだろう? エヒト」

 

 

ミレディ「お、お前……」

 

エヒト「……もう、この世界は私ではコントロールできん。力も失いつつある今、お前という存在を抹消させなければ……トータスの者たちに何をされるかわからん」

 

エヒト「これからのトータスは、きっと……今よりも混沌とした時代がやってくる。元々、私がこの世界の生態系をコントロールし、あらゆる地の文明や信仰を作り上げてきたのだ」

 

エヒト「それを……抜き取ってしまえば……」

 

ミレディ「……な、そんなっ……なんで、なんでっ……!!」

 

ハジメ「っ、ミレディ……」

 

エヒクリベレイ「……おや、何をそんなに悲しむ必要がある?」

 

エヒクリベレイ「キミはこう願ったはずだ。すべての生物は、神や超常なる存在によって自由を奪われてはいけないと」

 

エヒクリベレイ「見給えよ。今、すべての命が自由に振舞っている。エヒトの支配がなくなった今、自分こそが新たな支配者になろうと必死になっている」

 

ミレディ「……うそだ」

 

エヒクリベレイ「どんな時でも、笑顔でいることは大切なのだと」

 

エヒクリベレイ「見給えよ。今、すべての命が自由になっている。今まで虐げられてきたモノが、嘲笑われた者が、今度は自分たちこそがと言いながら他人を踏みにじった笑顔を浮かべて嗤っている」

 

ミレディ「う、うそだぁぁ……!!!」

 

エヒクリベレイ「誰かに支配されることなく、自分たちの『意思』で、命じられることなく決断していく」

 

 

エヒクリベレイ「喜ぶんだミレディ。キミが数千年間待ち望んでいた『自由なる意思』は、このトータスにおいて常識となった。矛盾しているよ?」

 

 

ミレディ「――うそだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

――ヂャキンッ!!! ドパァンッ!!

 

エヒクリベレイ「……いきなりだね。ハジメ」

 

ハジメ「……テメェ、何者だ。いったい、何のつもりだ……!!」

 

エヒト「貴様っ……いったい何を企んでいる……!」

 

エヒクリベレイ「企んでる……ね。はっきり言って、邪な考えを抱いているキミは何も言われたくないかな、エヒト」

 

ハジメ「……? 邪な考え……?」

 

エヒト「な、何を言って……」

 

エヒクリベレイ「……ミレディのため? ハジメのため? すごいなぁ、キミは……よくそんなことを大っぴらに言えたもんだね?」

 

 

エヒクリベレイ「どこまで行っても……自分のためにしかやってないと言うのに」

 

 

エヒト「……っ!」

 

ミレディ「な、なにいってっ……」

 

エヒクリベレイ「改心、か。なるほど、確かにミレディからしたらふざけるなといった話だろう。被害を受けた被害者からしたら溜まった話ではない」

 

エヒクリベレイ「だけどね、さっきのエヒトの話にはつけたさなきゃいけないことがたくさんある」

 

エヒクリベレイ「まず、一つとしてね……彼がキミたちのためだと言っている行動は……すべて自分の為なんだよ」

 

エヒト「っ! や、やめろっ!!」

 

ミレディ「……自分のため?」

 

エヒクリベレイ「なぁ、エヒト。この幾年……どうだった? お前は、この世界を箱庭にしてすごい楽しんでたじゃないか」

 

エヒクリベレイ「人間をたくさん蹂躙してきた。すべての命をおもちゃにしてきた。だけど……おかしいねぇ?」

 

 

エヒクリベレイ「キミの胸の中には、罪悪感があるんじゃない。『後悔』の念だ」

 

 

ハジメ「……後悔だと?」

 

エヒクリベレイ「あぁ、そうさ。エヒトが抱いているのは後悔さ」

 

エヒクリベレイ「……もちろん、傷つけてきたことじゃない。彼が本当に後悔しているのは――かつての、友の、同郷から背中を向けたことだ」

 

エヒト「っ!!! や、やめろっ! やめるんだ!!! 『消え失せろ』!!」

 

――バシュウゥゥッ!!

 

エヒクリベレイ「概念魔法による攻撃か……そんなこと、しても無駄だよ。私には通じないさ」

 

エヒクリベレイ「……彼はね、かつて友と破った約束を……今ある世界を、トータスに託して消えていこうといった誘いを……蹴ったことを今になって後悔しているんだ」

 

エヒクリベレイ「だから、彼が今やってるこの行為は……その時のやり直しのつもりってわけ」

 

エヒクリベレイ「自分でぐちゃぐちゃにしておきながら、やっぱり後悔したからやり直す……砂場の砂遊びのごとく、不毛でばかばかしい行為ってことさ。笑えるだろう?」

 

エヒト「だ、『黙れ』!! 『黙れ』!『黙れ』!『黙れ』!!!」

 

エヒクリベレイ「やり直したかったんだろ? これをやっておけばチャラになると思ってたんだろ?」

 

エヒクリベレイ「ミレディたち解放者が好きなようにされるのは事実だ。でも、だからこそ……ミレディたちのためだと言いながら力になることを、彼女たちのためになることをやろうとしている。それが、自分にとってやり直したことになるからだ」

 

エヒト「『黙れ黙れ黙れ』!!!」

 

エヒクリベレイ「そう、やり直し……ハジメへの説教もそうさ」

 

エヒト「っっ……!!!」

 

ハジメ「……え、俺……?」

 

エヒクリベレイ「人と関われ、社会と関われ、どれだけ恵まれた力を持っていても、他者と関わらなければ成長することが出来ない……なぁ、エヒト……」

 

 

エヒクリベレイ「言われたことだよなぁ? 全部、キミがね」

 

エヒト「『黙れぇェェェェェ』!!!」

 

 

――バシュゥゥゥゥ……!!

 

ハジメ「……っ、ま、全く効いてない……!」

 

エヒクリベレイ「……キミたちとの別れは近い。挨拶に……と、思ってね」

 

エヒクリベレイ「さて、私は帰らせてもらうよ」

 

――シュゥゥゥゥ……

 

 

ミレディ「待ちなよ! キミは、いったい何を企んでいる!? この世界を支配して、何を!?」

 

エヒクリベレイ「それはちょっと違うな。私が世界を支配してるんじゃない。人自らが、私に世界を明け渡してるってだけなのさ」

 

エヒクリベレイ「それじゃあね、三人とも。ま、後悔しないようにするといい……そこの神様気取りの彼みたいにね」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

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