生まれた時から最強だった   作:roborobo

42 / 51
第43話

 

 

 

【――……】

 

【――…………】

 

【――………………】 

 

【朝のニュースです】

 

【今日の天気です】

 

【今日は全国的に晴れ模様ですね。絶好の洗濯日和です】

 

【午後からはやや曇りが立ち込めるようです】

 

【ですが、雨の心配はありません】

 

【次のニュースです】

 

………………

 

…………

 

……

 

【――ハジメの中】

 

――やぁ、聞こえるかい

 

――……ずっと、見ないふりをしているね

 

――でも、もう無理だよ

 

――もう、キミは……目を逸らすことは出来ない

 

………………

 

…………

 

……

 

【………………】

 

【地球】

 

【早朝】

 

【ハジメの家】

 

――……スタスタスタ……

 

――ガチャッ……

 

ハジメ「んん、おはよう。父さん、母さん」

 

菫「あら、ハジメ? 珍しいわねー、あんたがこんな時間に起きてるなんて」

 

愁「ほんとだよなぁ。いつもは時計に助けてもらってるのに」

 

ハジメ「……は、ははっ。そりゃ、ね。僕だって成長するから、さ」

 

菫「ふふっ、そうね」

 

『――次のニュースです。○○県○○市にて○○才の男子小学生が行方不明に……』

 

愁「おいおい。ここ隣県じゃないか……橋のすぐ向こう側だぞ」

 

菫「最近物騒ねぇ。あなたも気を付けなさいよ? 特にボーっとしがちなんだから」

 

ハジメ「……うん、そうだね」

 

ハジメ「っと、そろそろ時間だ。じゃあ、行ってくるよ……父さん。母さん」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――学校】

 

――スタスタスタ……

 

――ガララララ……

 

近藤「お~~~~~!! キモオタぁ! まーた遅刻かぁ!!」

 

ハジメ「……あ、あはは……」

 

「ま~~たエロゲとかやって夜更かしとかしてたのかよぉ~~~~!!」

 

「きっっしょ~~~! 最近の人さらいとかぜってぇ一枚かんてるぜ~~~!!」

 

ハジメ「そ、そんなことないよ~」

 

檜山「………………」

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「おはよう、檜山君」

 

檜山「…………………………おう」

 

近藤「? え、檜山……?」

 

「あれ、お前……南雲と親しかったっけ……」

 

檜山「……別に」

 

――スタスタスタ……

 

香織「おはよ、南雲君」

 

ハジメ「……あ、おはよう。白崎さん」

 

光輝「よっ、おはよう南雲」

 

ハジメ「おはよう天之河くん」

 

龍太郎「うーっす」

 

ハジメ「おはよう、坂上くん」

 

雫「……南雲君、おはよう。あっちのほう……檜山君の方は相変わらず?」

 

ハジメ「あ、あははは……んまぁ、いつも通りかな」

 

雫「……そう」チラッ……

 

檜山「……」

 

ハジメ「……」

 

――ガラララっ……

 

愛子「はーい! みなさーーん! 朝のホームルームを始めますよ~~~!!」

 

………………

 

――カリカリカリ……

 

愛子「えー、いいですねー? ここ、テストに出ますよー?」

 

鈴「え~~~? 愛ちゃん先生ほんとに~?」

 

恵里「あ、あはは~……この前のテストのときに授業内容の問題でなかったもんね……」

 

愛子「ちょ、ちょっと~~~~!!」

 

――………ハハハハハ……モー、アイチャンッタラー……

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「……? なん……」カサカサッ……

 

清水「しっ……こっち向くな……」ヒソヒソッ……

 

ハジメ「……清水……くん……」

 

ハジメ「……手紙……? ノートの切れ端を小さく折りたたんだ……?」

 

清水「馬鹿、こっちみるな……いいから……」

 

ハジメ「……?」カサカサッ……

 

――放課後、駅前に集合……(檜山)

 

ハジメ「……檜山、くん……」チラッ……

 

檜山「……」プイッ……

 

ハジメ「……」

 

愛子「はーい! みなさーん! 次の授業もがんばってくださいねー!」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――駅前のファーストフード店】

 

ハジメ「ええと……ここらへんだよな……」

 

ハジメ「あ、あそこか……おーーい! みんなーーー!!」

 

香織「……あっ、南雲君!」

 

光輝「ん、来たみたいだな」

 

龍太郎「さっすが優等生だな。こういう時も遅刻はしねぇもんだ」

 

ハジメ「ははっ、まあね」

 

ハジメ「……集まってるのって、9人くらい?」

 

龍太郎「あぁ、『残ってる』連中だけだな」

 

光輝「みんな、レストランにいるぞ。はやくいこう」

 

………………

 

檜山「え~~~~、みなさん。なんのかんのでお疲れさまっした~~」

 

檜山「はいっ、とりあえずかんぱーい」

 

――パチパチパチパチ……

 

恵里「にしてもまぁ……命がけの戦いの祝賀会が近場のファミレスとはね」

 

清水「ま、しょうがないよ。こういっちゃなんだけど、俺たちのこづかいでイケる場所なんてたかがしてれるしさ」

 

鈴「えー、でもここって安くておいしいんだよ? ポテトフライ注文しよーっと!」

 

雫「あら、私も頼もうかしら。ねぇ、パフェもいっしょに注文してくれる?」

 

香織「あ、私も私も!」

 

光輝「ははっ、みーんな好きなように注文しなよ」

 

光輝「……お前も何か頼むんだろ?」

 

ハジメ「ん、あぁ……うん」

 

………………

 

檜山「……さーてと。ちょっとした腹ごしらえも終わって……っと」

 

檜山「んじゃ、天之河」

 

光輝「……本題に入ろうか」

 

 

光輝「――俺たちは地球に帰ってきた。帰ってきて……一か月経った」

 

 

ハジメ「……もう、そんなに経つんだね」

 

龍太郎「……あの戦いが……冒険が、一か月も前、か……なんか、信じられねぇな」

 

雫「ね。ほんと……あそこにいた時は今にも心が折れそうになったけど……」

 

香織「過ぎ去って行っちゃえば……全部、思い出なんだね」

 

光輝「帰ってきてから、俺たちは力を失った。トータスで発揮できる力は、トータスでしか力を維持出来ない」

 

清水「だからこそ、俺たちは召喚されたわけだからな。上位の世界の住人は……トータスでしか力を発揮できない、だっけ?」

 

光輝「だから、ここに戻るまでにいろいろと準備をした。俺たちは所持していたアーティファクトをすべてあちらに置いていき、力を発揮できないようにすべてを捨てた」

 

光輝「……そして、南雲は……」

 

香織「……元の姿……召喚される前の姿に、変成魔法で戻して……」

 

檜山「いつものオタク姿のコイツにってなわけだ」

 

ハジメ「は、ははは……」

 

光輝「南雲は元の姿に戻った。それは、彼自身がトータスで得た力に対して未練がないからだ」

 

光輝「あの世界で得た錬成や神代魔法は、すべては元の世界に帰るための手段でしかなかった。彼は、目的を達した以上、もう自分には不要なものだと見切りをつけ、普通の人間として生きることを選んだんだ」

 

光輝「これで……もう、お前はあの世界によるイレギュラーではなくなった。お前が背負うべき責任も、なさなければならないこともなくなった」

 

光輝「その上で聞きたい。確認をかねて、な」

 

光輝「……みんなの、体や心の方はどうだ?」

 

ハジメ「……あの世界で起きた体と心の傷は、塞いである」

 

ハジメ「体の傷は、いくらでも治せるからね。元々が、魔物を喰ってばぐった魔力を有しているんだ。それを変成魔法と組み合わせた回復は、城の兵士たちに刻まれた『傷跡』を跡形もなく消し去ったよ」

 

ハジメ「記憶の処理も……ここは体以上にしっかりと処置を施したよ。彼女たちに刻まれた心の傷は、ふとした拍子で戻ることは絶対にない。僕が保証する」

 

鈴「……教室にいたみんなや……愛ちゃん先生……だれも、覚えていないんだよね」

 

恵里「城で起きた陰惨で享楽的なお祭り騒ぎ……あんなもん、とっとと忘れておくに限るさ。そうでもなきゃ、今頃死んでるよ」

 

清水「フラッシュバックかぁ……エッグいって聞くもんなぁ。見た感じ、みんな後遺症とか残らなそうだし……これでよかったんじゃねぇかな」

 

光輝「良かったというより……そうしたほうがよかったし、そうするしかなかったんだ」

 

光輝「みんながみんな、巻き込まれただけの被害者だ。戦いも傷も、受ける必要のないものだった」

 

光輝「だから、あそこで手に入れたもの事、ぜんぶあっちのほうに置いてきた。そういうことだろ、南雲」

 

ハジメ「……うん、そうだね」

 

清水「いや、でもさ。お前としてはそれでいいの?」

 

恵里「奈落に落ちた時の姿のままの方がさ、良かったんじゃない? あっちのほうが何かと便利でしょ?」

 

ハジメ「……ボクも思ったんだ。あの力があれば、いろいろ便利だろうって」

 

ハジメ「でも、もういいんだ。ボクがあの時欲した『最強の力』は、元の世界に帰るためだけの力だったから」

 

ハジメ「魔物も、人も、多くの命を奪ってきた。そのことに、人としての心が残っていると……思うところが、あったりはするけど……」

 

ハジメ「それでも、今はこの世界で生きる南雲ハジメとして、今のままでいようと思う」

 

ハジメ「……もう、『魔王』である必要なんてないから」

 

ハジメ「それは、自分で自分の周囲を変えるって決めたキミが言ってたことでしょ」

 

清水「……そうか。そう、だな」

 

ハジメ「……あ、でさ。みんなはどうなの? ここに戻ってきたから」

 

龍太郎「ははっ、なんだよ藪から棒に」

 

龍太郎「……ま、なんも変わってねぇよ。俺たちはいつも通り、平凡な日常ってやつを送ってる」

 

龍太郎「ただ、前よりは今の生活がすっげぇありがたく感じてな。噛みしめるように生きてる」

 

光輝「……俺もだな。今回の召喚で、自分を見つめ直すいいきっかけになったと、俺は思う」

 

光輝「三人はどうだ? ここ最近、何かいいことはあったか?」

 

清水「あー……」

 

恵里「……」

 

檜山「……この前よ、抜き打ちのテストを受けただろ?」

 

檜山「俺、そん時の点数が万点近かったんだよな」

 

雫「あら、すごいじゃない」

 

檜山「檜山君、勉強頑張ったんだね」

 

檜山「……あぁ」チラッ

 

ハジメ「……?」

 

檜山「……まぁな。俺も、坂上と同じように、今の生活のありがたみを感じてるってワケよ」

 

檜山「で、そっちはどうよ」

 

恵里「……私はそんな変わらないかな。今の生活に関しては、特に不都合とかあるわけじゃないしさ」

 

恵里「ただ、ね」チラッ

 

鈴「……」コクリ……

 

 

恵里「……最近、ちゃんとした親友が出来たってのが、私から言える事かな」

 

 

雫「……そっか」

 

鈴「……ふふっ」ニコッ

 

恵里「ま、私の話はこれでおしまい。もう、意中の……いや、意中だった彼は私の事を見向きもしないだろうしね」

 

光輝「それでも、中村ならいい男に巡り合えるさ。俺なんかよりも、ずっといい男にさ」

 

恵里「そりゃどーも」

 

清水「……あ、次は俺か。あーーー……俺、か……」

 

清水「……ん、ごほん。いや、実はな」

 

清水「俺、今度の連休に家族で旅行いくことになったんだよね」

 

ハジメ「え、清水君が?」

 

香織「清水君の……確か、ちょっと仲が悪いんだっけ?」

 

清水「……うん。実はさ、トータスから帰ってから家族と話したんだ」

 

清水「いろいろとさ、面食らってたよ。当たり前だよな。母さんや父さんからしたら、ちょっと数時間合ってなかっただけで精神的に成長してたんだからさ」

 

清水「家族と話し合って、兄貴や弟と話してさ……」

 

清水「……少しだけ、だけどさ。前よりは家の中が明るくなった気がするよ」

 

清水「あ、それとさ。南雲、ありがとな。お前の親の漫画、弟がすっげぇ気に行ってたよ」

 

ハジメ「ほんと? うわ、読んでくれてたんだ……」

 

清水「今度出る最新刊も買う予定だからさ、親御さんに言っといてくれよ。面白かったですってさ」

 

ハジメ「ありがと。そう言ってもらえると、きっと母さんも喜ぶよ」

 

ハジメ「……あ、だったら今度家に来ない? きっと母さんたちも喜ぶよ」

 

清水「え、ま、マジで? ……あ、じゃあさ。遠藤も呼ばねぇ? アイツもさ、漫画に興味あるっぽいんだよね」

 

雫「おーっと。ここからは私も話に参加させてもらうわよ。ほら、私だってちょっとだけ発表しようかなって思ってたんだから」

 

龍太郎「おー! 聞かせろ聞かせろ!」

 

光輝「少し興味があるな。どんな話だ?」

 

雫「んー、実はね」

 

 

雫「なんと! このたび彼氏が出来ましたー!」

 

 

光輝「――っ!? ま、マジで!?」

 

香織「ちょっ、雫ちゃん!? それ本当!?」

 

雫「……って言ってもね。この前、告白してきたほかのクラスの男の子がいたのよ。その彼にオーケーを出したってワケ」

 

雫「見た感じはね、まぁまぁ……誠実そうかなぁ~ってところだった。顔だって平凡、性格は……ちょっとお調子者なところもあるけど人当たりはよさそうだったわ」

 

雫「ちょっとだけ、ね……頼りない所があるから。話していて、協力してあげたいなーって」

 

檜山「い、いやいやいや……なんでまた?」

 

龍太郎「……こういっちゃなんだけどよ、お前って……お姫様になりたいタイプだったろ?」

 

龍太郎「それって、お前が付き合いたいタイプの男とは真逆じゃねぇか?」

 

雫「うん、私もそう思う。でもね、そんな彼だから……ちょっと付き合ってみようかなって思ってたの」

 

恵里「……あ~~……なるほど。そういうわけね」

 

清水「あの、どゆこと……? おしえてくんない……?」

 

雫「……私ね、きっと異性に対してかなり憧れを持っていたんだと思うの」

 

雫「ううん。むしろ、もっと酷い。素敵な誰かが、私の所に来てくれて、私のためになんでもしてくれる……そんなことを、自分から動きもせずにず~~~~っと願っていたのね」

 

雫「口を開けば、餌をくれるひな鳥みたいに……皮肉ね。名前の通り、幸せが水の雫のように、自分の所だけに落ちてきてくれるって信じていたのね」

 

雫「だから、いっその事こっちから拾うことにしたってワケ! で、異性との恋愛観に夢を見るよりも、もっとカジュアルにいこうってこと!」

 

鈴「わ、わ~~~……シズシズったらサバサバしてるなぁ」

 

ハジメ「この調子だと、学園の二大女神って評判も消えてなくなりそうだね。まぁ、二人にとってはそっちのほうがいいだろうけど」

 

雫「そうね。元々、欲しくてもらっていたわけじゃないもの。あんなレッテル」

 

雫「ず~~~~っとさ。私、いろんなところで、いろんな場所で……自分に関係ない場所で自分に関係のないレッテルを貼られ続けてた」

 

雫「でも、やっと気づけたの。周りからそう思われていて、我慢が出来ないなら自分で動くしかないって。状況も印象も、自分で本当にやりたいってことをやっていれば……気にならないんだって」

 

雫「それを……南雲君を見て、学べたわ。私」

 

ハジメ「…………」

 

雫「……私は私よ。私の好きなように生きていたい。まぁ、これが私なりの答えかな」

 

鈴「……そっか。そっかぁ……」

 

光輝「ん、それじゃあ……最後は香織かな? なんか発表してみてよ」

 

香織「はいはーい! ええとね、私はぁ~~……」

 

 

香織「あ、実は地球に帰還するまえに檜山君とセックスしておいたの」

 

 

光輝「………………………………………………………What?????????????」

 

龍太郎「あ……あ……???」

 

清水「あ、な、なんだぁっ」

 

雫「詳しく」

 

雫「説明しなさい」

 

雫「今私は冷静さを欠いているわ」

 

檜山「……………………」

 

香織「いや、なんて事はないよ。手っ取り早く処女を捨てておきたかったなぁって」

 

雫「はぁ!?!? そ、そんなことのために!?」

 

光輝「い、いやいやいや……そ、それで、なんで檜山!? え、てか……お前、お前!? なんで言わなんだよ檜山!!」

 

檜山「…………………………」

 

ハジメ「……ねぇ、ちょっと待って。いま、手っ取り早く捨てたかったって」

 

香織「ん~~~……私もね、雫ちゃんみたいにはやく処女を捨てておきたかったなぁとは思ってたんだ」

 

香織「いらないなって思ってたの。二大女神のレッテル。私が、ただ生まれ持っていた容姿ってだけで周囲を振り回しちゃう」

 

香織「そうしているうちに、私は無意識のうちに誰かを傷つけてきたから」

 

香織「そうでしょう? 南雲君」

 

ハジメ「…………白崎さん」

 

香織「だからね、特に付き合うつもりはないけど、それなりに女性経験があって下手じゃない人に手伝ってもらおうと思ったんだよね」

 

ハジメ「いやだいぶ酷くない!? それに付き合わされる檜山君の気持ちは!?」

 

檜山「……いきなり言われてフリーズしてよ。部屋で待ってたらマジで来てよ」

 

檜山「そのままインサートしたら特に続けることなく、血が流れてるのを確認したらその場で解散よ」

 

檜山「スタンプラリー感覚で処女を適当に捨てる女初めて見た……」

 

光輝「う わ ぁ」

 

清水「こ れ は ひ ど い」

 

恵里「これ、異性を逆にしたらトップカーストのイケメンが適当な芋女でちゃちゃっと童貞を捨ててるのと一緒だよね……」

 

鈴「かわうそ……」

 

龍太郎「……な、なぁ……こ、この後の話って……」

 

光輝「……特に続ける内容、ある?」

 

清水「話の落ちとしてはこれ以上ない位のモンだったろ……」

 

ハジメ「あ、ええと……じゃあ……解散。かいさーん……」

 

………………

 

ハジメ「……はぁぁぁぁ……なんか、いろいろあったなぁ」

 

ハジメ「……一人での帰り道、か。母さんたちには連絡を入れてあるし……帰り道に中古本屋にでも寄るか」

 

ハジメ「……」

 

 

ハジメ「『本当は、気づいているんだろ』……か」

 

 

ハジメ(……ずっと、ずっと。地球に帰ってきてから頭の中で響いていた)

 

ハジメ(頭の中で語り掛けてくる声。ボクに訴えかけてくる、心の声)

 

ハジメ(それは、きっと……)

 

 

檜山「……おい、南雲」

 

 

ハジメ「! 檜山君……どうしたの?」

 

檜山「……帰り道同じなんだよ」

 

檜山「ついでだ。ちょっと話しときてぇ」

 

………………

 

檜山「やめさせるか? 近藤たちのアレ」

 

ハジメ「……」

 

檜山「ここ最近よ、お前のほうもクラスの行事なんかでちょくちょく参加して来てるだろ?」

 

檜山「それもあってか最近はクラス内でもお前の悪印象もなくなってきたし……あのままじゃ近藤達が目を付けられる」

 

檜山「今度、あいつらにそれとなく注意をして――」

 

ハジメ「いや、近藤君たちには僕から言うよ」

 

ハジメ「……ああいうのは直接言わなくても先生あたりに言って注意してもらえば、なにもしてこなくなるからさ」

 

檜山「……ふーん。あっそう」

 

――スタスタスタ……

 

檜山「……」

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「僕さ、この前クラスメイトの子としゃべったんだ」

 

檜山「……」

 

ハジメ「その時にさ、なんて言われたと思う?」

 

ハジメ「……『南雲って、思ってたより喋りやすいんだな』ってさ。そう言われたよ」

 

ハジメ「……その時にさ、僕……気づいたんだ」

 

 

ハジメ「――今まで、『何も』してこなかったんだなって」

 

 

檜山「……」

 

ハジメ「話しててさ、わかっちゃったんだよ。みんな、僕に対して悪印象を抱いていたのは、それ以上に印象に残ることを僕がしてこなかったからだ」

 

ハジメ「卒業後の道すじが安定しているから、何もしなくていい。だから、クラスメイトの事なんてどうでもいい」

 

ハジメ「そういった、他人との関係性を軽く見ていた結果、僕は……異世界に来てから誰からも庇われなかったし、馬鹿にされていた」

 

 

ハジメ「それが――あの『奈落』に繋がったんだ」

 

 

檜山「い、いや……それは……」

 

ハジメ「……檜山君。たぶん、僕は自分にとって価値のある物を見出さなければ、きっと興味なんて抱くことなく……そのまま立ち去ってしまうタイプなのかもしれない」

 

ハジメ「興味のない物を、価値のない物を見出せなければ、それらを不要と断定して僕は簡単に切り捨てられる」

 

ハジメ「だから、そう。今、価値があると思っているものでさえも……それが、価値のない物と思い始めたら……」

 

檜山「価値を見出せない……? ちょっと待て、それってどういう……」

 

ハジメ「……僕は……」

 

――ピタッ……

 

ハジメ「……ごめん。ここからは遠回りして帰りたい」

 

檜山「……」

 

ハジメ「きっと、僕と君は仲良くなることはない。僕が改心したり、キミが改心することはあっても、友達になることはない」

 

ハジメ「……何事もなく、クラスメイトのままでいよう。僕も、明日からはそうするから」

 

檜山「……あぁ。また明日」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

【――翌日、午後】

 

【……教室にて】

 

――カリカリカリ……

 

愛子「いいですかぁ。次の試験にはこれが出ますからねぇ」

 

――カリカリカリ……

 

ハジメ「……」

 

ハジメ(ずっと、ずっと思っていた)

 

ハジメ(価値ってなんだ、生きるための理由ってなんだ、僕は何のために生きているんだ)

 

ハジメ(……僕にとって、人生とは趣味のついでにあるものだった)

 

ハジメ(漫画が面白い、ゲームガ楽しい、アニメが好き。だから、僕も同じ……創作者としての道を選んだ)

 

ハジメ(自分の好きなことを好きなだけやれて、それがお金になることが僕にとっての好きな道だった)

 

ハジメ(でも、だけど)

 

ハジメ(ゲームが、面白くない)

 

ハジメ(漫画が、面白くない)

 

ハジメ(アニメが、面白くない)

 

 

ハジメ(この世界に帰ってきてから、何も――面白くない)

 

 

ハジメ(何も考えずに、自分にとって間違っていない道だと信じて歩ける道だと思っていた)

 

ハジメ(でも、違った。僕は、今の自分に疑問を抱いてしまっている。今の生き方は――どこか、間違っているんじゃないかって思い始めている)

 

ハジメ(今まで、僕は自分にとってなんてことはない、何でもないものだと思っていたモノも、かけがえのない、得なければいけない大切なものだって気づいた――いや、気づいてしまったんだ)

 

ハジメ(それなのに、僕は……今の自分の、自堕落な生き方を、ただ親から与えられ続ける今の生き方を――)

 

 

ハジメ(必死になって取り戻そうとしていた。あの、奈落に落ちて変心し、幾多の屍を積み上げてでも)

 

 

ハジメ(これが――僕が手に入れたかったものか?)

 

ハジメ(これが――愛する彼女たちから見放されてまで選んだ道なのか?)

 

ハジメ(これが――凌辱と蹂躙によって尊厳を踏みにじられてきた者たちの中で、平然と日常を過ごすこれが……僕が得たかったものなのか?)

 

 

愛子「……南雲君? あの、南雲君……??」

 

光輝「……? 南雲……?」

 

香織「あれ、どうしたんだろ……」

 

雫「……ねぇ、彼……」

 

龍太郎「……顔色悪くねぇかアイツ……」

 

ハジメ「……」

 

 

ハジメ「う」

 

 

愛子「? な、南雲君?」

 

ハジメ「う」

 

ハジメ「う」

 

ハジメ「う」

 

ハジメ「う」

 

ハジメ「うぇ」

 

 

ハジメ「うぼぉ゛ぇぇ゛ぇ゛ぇええ゛ぇ゛っっ゛ッ゛っ゛!! う゛っ゛、う゛ー゛-゛っ゛!!!」ビチャビチャビチャッ!!

 

 

愛子「な、南雲君!?」

 

光輝「南雲っ!!」

 

香織「ちょっ、ちょっと!?」

 

雫「ほ、保健室!! いや、その前に雑巾!!」

 

恵里「ちょ、清水! お前、掃除箱近いんだから持ってこい!!」

 

清水「お、おおうっ!!??」

 

………………

 

…………

 

……

 

【――夢の中】

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「……あ、あれ……」

 

ハジメ「ん、え、あ、あれっ……? ここ……」

 

 

エヒト「……久しぶりだな、ハジメ」

 

 

ハジメ「っ!! え、エヒト……!? え、なんでここに……」

 

ハジメ「あ、じゃあここって……」

 

エヒト「あぁ、久しぶり……というやつだ。元気そうだな」

 

ハジメ「げ、元気そうだなって……ちょっと待ってよ。トータスの事は? あっちでの問題は解決したの?」

 

エヒト「安心しろ。私の方で残せるものは残してきた」

 

エヒト「亜人たちによる異世界の侵略が起きないよう、あれから次々と神の使徒を製造し続けた」

 

エヒト「今ではきっちりとやつらを抑えられるように、神代の魔法による異世界召喚を何とか防いでいる」

 

ハジメ「じゃあ、それならこの世界が侵略されたりって言うのは……」

 

エヒト「……残念ながら、ゼロというわけではない」

 

エヒト「奴らも、日に日に力をつけて行っている。きっと、それこそ魔王として恐れられていたお前以上の力をその身に宿しているだろう」

 

エヒト「……だから、私も出来る限りこの地球の方で――もしも、本当にもしも……やつらが攻めてきても大丈夫なように施しておくつもりだ」

 

エヒト「それが……このゲームを始めた私の、後始末というものだ」

 

ハジメ「……エヒトは、それを僕に伝えに来たの? あっちの世界の事情を話すために……」

 

エヒト「……いや、実のところを言うとだな……お前に伝えなければならないことがある」

 

ハジメ「? 伝えなければならないこと?」

 

エヒト「……」

 

 

エヒト「――私はもう、長くはない」

 

 

………………

 

…………

 

……

 

【――現実、保健室】

 

ハジメ「…………………………」

 

光輝「……だいぶ収まったな」

 

龍太郎「いやぁ~、すっげぇビビったぜオイ。体調悪かったんかな」

 

雫「何があったか知らないけど、一人で抱え込む必要なんてないのにね。休めるなら、休んじゃえばいいのよ」

 

檜山「ま、元々が学校の事をオマケ程度にしか考えてなかったもんな。むしろそっちのほうがいいんじゃね?」

 

――コツコツコツ……

 

香織「おまたせ、みんな。先生が南雲君のお父さんとお母さんに連絡してくれたみたい」

 

香織「一応、このままお父さんが車で来て、それから病院にいくみたい」

 

雫「そっか……なら安心ね」

 

龍太郎「にっしてもよぉ、なんでまたコイツ吐いたんだ……? 今朝話してた時は何ともなかったんだけどなぁ」

 

檜山「いきなり、だったよな。なんか悪いモンでも食ったんじゃねぇの?」

 

光輝「……奈落の事を思うと笑えないな」

 

檜山「あ、やめて? マジで受け止めるのやめて……?」

 

――スタスタスタ……ガラララ……

 

愁「う、うぉっ!? なんだこの大所帯!?」

 

香織「あ、南雲君のお父さんですか?」

 

愁「お、おぉ……? もしかしてクラスメイトの……」

 

光輝「ええとですね、ちょっと説明させていただきますが――」

 

………………

 

愁「そ、そうか。いや、すまなかったねみんな。いやぁ、いろいろと心配かけて申し訳ない」

 

雫「あ、いえ……」

 

龍太郎「いやぁ、構わねっすよ。南雲のやつも、体の調子はどこもおかしくなさそうだったし……起きたらそのまま病院いったほうがいいっすよ」

 

愁「……あ、ありがとう。まさか、ここまでハジメのことを心配してくれているとは思わなかったよ」

 

檜山「……あの、ちょっと気になったんスけど。南雲の奴って、家では学校のこと……」

 

愁「あんまり話してくれないんだよね。家でのことが楽しいから、学校でのことが印象に残らないって言ってたから」

 

檜山「……」

 

香織「……そう、なんですか」

 

愁「それだけにね、ちょっと驚いてるよ。まさか、こうやって心配してくれている友達がいてくれることに」

 

愁「なんだまったく……こいつもこいつで教えてくれればいいのになぁ。今度の誕生日、プレゼントのグレートをさげてやろっかな」フフフッ……

 

光輝「………………えっ、誕生日!?」

 

香織「南雲君、誕生日近いんですか?」

 

愁「おや? それも言ってないのか?」

 

愁「……来週なんだよ。そのためのケーキも選んでいる所だったんだ」

 

龍太郎「うっわマジかよ! 言えよこいつ~~」

 

雫「……あ、それだったら……私たち、参加してもいいですか?」

 

愁「おぉ!! 来てくれるのか! そう言ってくれると大変うれしいよ!」

 

雫「ね? あなたも来るでしょ?」

 

檜山「……は!? 俺も!?」

 

光輝「どうせここまで来たんだ。一蓮托生、だろ?」

 

香織「ね。どうせなら、清水君や恵里に鈴も……みんなでいこうよ」

 

光輝「俺たちも南雲の誕生日会に参加させていただきます。当日は、俺もプレゼントを持ち寄りますから」

 

愁「お、おぉ~~~~…………!! そう言ってくれるとうれしい……!」

 

愁「……ふふ。ハジメのやつ、早くおきないかなぁ……」ワクワク……

 

………………

 

…………

 

……

 

【――今日のニュース】

 

――次のニュースです

 

――行方不明者、いまだ見つからず

 

――ここ数日、○○県○○市で行方不明になる者たちが増え始めています

 

――警察は必至の捜査に当たる物の、現地の協力者を得ても一向に見つかる気配はありません

 

――警察は頻発する行方不明者には関連性と言い、事件性がある物として捜査本部を設置するとのことです

 

――現地では、被害者の声を聞いて、少しでも多くの情報を得るために操作を続けるとのことです

 

――寄せられた情報には、このようなものがありました

 

――『あ、あぁ……みた! みたんじゃよ! わしは、みたんじゃ!!』

 

 

――『夜の空に……ウサギの耳を生やしたようなもんたちがな! 人を攫って行くのを見たんじゃ!!』

 

 

――警察は以下の証言を聞き、この連続行方不明が組織的誘拐であると断定

 

――これをみているみなさん。どうか、有用な情報があれば警察に提供をしてください

 

――……以上です。それでは、次のニュースです

 

………………

 

…………

 

……

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。