生まれた時から最強だった   作:roborobo

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第44話(最終話その3)

 

【――ハジメの自宅】

 

――バタバタバタッ……ガチャッ……

 

光輝「や、みんなお待たせ!」

 

雫「あら、やっと来たのね!」

 

香織「ふふっ、これで後は一人だけだね!」

 

光輝「あぁ……うん? 一人?」

 

龍太郎「……おん? あれ、アイツは?」

 

光輝「え、いや、俺の方が先に帰ってきたからさ」

 

清水「えぇ、なんでまた?」

 

光輝「ん~……ちょっとね。一人で考えたいことがあるんだってさ」

 

光輝「だから先にこっちが帰ってきたってワケ」

 

檜山「はぁ~~~……肝心の主役が遅刻とかありえねぇだろ」

 

恵里「ま、アイツらしいんじゃない? マイペースなところとか、ほーんとにね」

 

――スタスタスタ……

 

愁「いやぁ、みんな! 今日は来てくれてありがとう!」

 

菫「ふふっ、これだけ来てくれたらハジメも大喜びよ!」

 

龍太郎「うすっ! うまい飯、たのしみにしてまっす!」

 

雫「あなたね、南雲君が主役なんだから考えなさいよ?」

 

恵里「……ん。鈴や遠藤もそろそろ到着だってさ」

 

檜山「へへーん。盛大に歓迎してやっからなぁ? 覚悟しろよあの野郎~」

 

香織「ふふっ……それじゃ、もうちょっとだけ飾り付けを進めちゃおっか」

 

清水「へへっ、俺プレゼント用意してきたんだよね。ほら、この前買ったばかりのフィギュア」

 

雫「あら、清水君ってセンスいいのね」

 

龍太郎「あーあ、ったく。みんなこんだけ待ってんだから……はやく帰って来いよな。南雲のやつ」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

【――裏路地】

 

――ポタッ……ポタッ……

 

エヒト『――……で、だ……なんで……ハジ、メ……』

 

ハジメ「……」ズルズルッ……

 

――ドチャッ……

 

エヒト『な、ぁぁぁ……! なんっっっ、でだァァァァァァァァ!!?? なぜっ……!! 何をやってるんだお前ェェェェェ!!!』

 

――ポタッ……ポタッ……

 

ハジメ「……っ」ズルッ……ズルッ……

 

――ゲホッ……ゲホッ……!

 

ハジメ「か、ぁ、……く、ふっ……ふ、ぁぁ……」

 

ハジメ「……は、ははっ……にげ、たか……」

 

ハジメ「いっ……たい、なぁ……こんなに、深く……さす、んだもんっ……」

 

ハジメ「ほ、んとっ……ひど、いよ……」

 

エヒト『っっ……!! ち、血がっ……!! あ、アイツっ!! 刺して、すぐに抜いたから……血がっ、こんなに流れてっ……!!』

 

エヒト『ハジメ! 急いで魔法を使え! 回復用の魔法……使えるはずだろう!? 習得したスキルに、それらしいものがっ……!!』

 

ハジメ「…………」

 

エヒト『お、オイ! 何をしている! はやく傷を治せ!』

 

エヒト『トータスと違って肉体が元に戻ってるんだぞ!? このままでは失血多量でお前は死ぬ! 死ぬんだぞ!!』

 

ハジメ「……」

 

エヒト『何をしているんだハジメっ!! はやくっ! はやくっ!!』

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「ぁ、まのがわ、くんの……いう、とおり、なんだ……」

 

エヒト『っ! な、なにっ……?』

 

ハジメ「む、むなし、ぃんだ……」

 

ハジメ「大切、だと思っていたモノが……大切じゃ、なくなって……ただ、生きている、だけで……拭えない、空しさが、ずっと……つきまとって、いて……」

 

ハジメ「トータスのことも、むしを、して……それで、そのまま、地球で、いきて、いくことに……」

 

ハジメ「たえ、られなかったっ……ぼく、は……むき、あえなかった……」

 

エヒト『な、なにを言って…………トータスの事は、お前が気にかける事じゃ……! 責任を感じる必要はないんだぞ!!』

 

ハジメ「っ……ち、ちがっ……ちが、うんだ……」

 

エヒト『……っ!? な、なに……どういうことだ……?』

 

ハジメ「せき、にんじゃ、ない……ただ、ぼくは……」

 

ハジメ「いやに、なったんだ……」

 

ハジメ「なにも、たのしめない、自分の、コトが……」

 

ハジメ「トータスから、背中を向けて、地球で、いきることを、えらんだことが……」

 

ハジメ「これから、さきっ……ずっと、ずっと……こんな、むなしい、おもいを、してまで……なんの、味気もない、じんせいを、送る、つまんないやつが――」

 

 

ハジメ「『南雲ハジメ』がっっ……いやに、なったん、だっ゛……!!」

 

 

エヒト『――……ぁ、はぁ…………??』

 

ハジメ「ぼ、くっ……みんなと、自分を、くらべる、ようになって……じぶんが、いやに、なっだ……」

 

ハジメ「みんな、ど……おなじ、いき、かたをえらばないのも……えらべ、ないのも……おなじ、志を、もてない、のもっ……」

 

ハジメ「だが、らっ……ぐ、げほっ、げほっ……!! そんな、つまらないものっ、いらっ、ない゛っ……こ、んな゛っ……ごんな゛っ……!!」

 

 

ハジメ「――『敵』なんで、いらない゛っ……!! いぎだぐ、ない゛っ……!!」

 

 

エヒト『……』

 

エヒト『ふざけんなよお前』

 

エヒト『――ふざけるなよお前ェェェェェェェェェェーーーーーーーーーーーーー!!!!!』

 

ハジメ「が、がふっ゛……!! が、ぁぁぁっ……!!」

 

エヒト『な、なにが!! なにが生きるのが、嫌になっただ!! お前はまだ、まだ何も知らないだけだ!!』

 

エヒト『お前はまだ何も知らない……掴んですらいない!! 生きることの答えなんて、面白さなんて生きて見つけるしかないんだよ!!』

 

エヒト『それを、お前はこんなところで捨てるのか!? 自分が辛くて耐えられないからと言って!! そうやって捨てていくのか!? お前は!!』

 

ハジメ「ぁ゛……ぁ、あぁぁあ゛っ……ァ゛……」

 

エヒト『っっ゛……!! お、お前にはまだやれることも、やりたいことだってたくさん見つかるんだぞ!?』

 

エヒト『生きて、生きてその答えを探し続けろ! 死んだら……死んだら何もかも終わりだろうが!!!』

 

ハジメ「ぁ、ぁ、ぁ゛………………」

 

エヒト『っっ……!! だ、誰かァァァァァァァァァ!!! 誰か! 誰かいないのかぁぁぁぁぁ!!!』

 

エヒト『っ、だ、ダメだ……声が、誰にも届かない……も、もう私の体が……この程度しか……残留できないっ……!』

 

エヒト『た、頼む! 誰か、誰か届いてくれ! こいつを、こいつをこのまま死なせるわけにはいかない……死なせたくないんだ!!』

 

ハジメ「……ぁ゛……ぁ゛……」

 

エヒト『っっ゛!! お、お願いですっ! お願いです! 誰か、誰か来てください! お願いですっ! お願いです゛!!!』

 

エヒト『この子は゛っ!! この子は゛まだっ゛!! まだ「やり直せる」んです゛!!! 手遅れになった私なんかよりも!! ずっどずっどっ゛!!! やりなおぜるんです゛っ!!』

 

エヒト『だ、だからっ゛! だがらぁ!!』

 

――っしゅぅぅぅぅぅぅ……

 

エヒト『――……ぁ、ああァァァァぁぁああああああああああああーーーーー!!! う、腕が! わ、私のっ……か、体がァァァァあ!?』

 

ハジメ「……ぁ………………………………」

 

エヒト『い、いやだっ! このまま消えるのなんて!! いやだっ! いやだぁぁぁ!!』

 

エヒト『だれかっ! だれかっ! たすけてっ! このまま、消えるのなんて゛!!』

 

エヒト『いやd――』

 

――………………シュゥゥゥ……

 

ハジメ「…………っ……ぁ………………」

 

ハジメ「………………」

 

ハジメ「…………」

 

ハジメ「……」

 

………………

 

…………

 

……

 

【『影』】

 

――……

 

――そう、キミは耐えられない

 

――耐えられないんだよ、ハジメ

 

――自分にとって、辛く厳しい物がいたら、キミは向き合うことが出来ない

 

――邪魔な敵がいたら、逃げるか潰すか

 

――それは、言い換えてしまえば『向き合いたくない』から、何が何でも避けるために、この行動をとろうとしてしまうんだ

 

――強い強いと、最強の魔王と言われてきたキミの本質がソレだ

 

 

――キミは、本質的に心の負荷を耐えることが出来ない

 

 

――奈落の底で死にかけた時だけじゃない

 

――トータスでの人殺しの時も、自分にとって精神的な負荷だから興味を向けなかった

 

――あれこれ周囲から言われてきても、自分にとって関係のない的外れなことだから心に傷を負うことはなかった

 

――だけど、ユエが自分から離れた時は、自分にとって耐えがたい心の痛みを受けてしまうから……耐えられず、暴走した

 

――キミの本質、『向き合わないこと』。それ、すなわち

 

 

――『逃げる』こと

 

 

――どんなに辛くても、痛くても。やり過ごしてしまえば、何物もなくなると思っている

 

――自分に対して辛いことを敷いてくるものは、手段があれば潰してなかったことにする

 

――ただそれが、力がないからやり過ごしていただけ。力があるから、積極的に潰していたにすぎない

 

――周囲を、自分にとって不都合な物を『敵』と断定し、それを押しつぶして踏みにじり、その上に立つことで

 

――矜持がなくても、確固たる未来図が無くても、『自分』というものがなくても

 

――踏みにじることが出来る『他者』が『敵』がいてくれれば、『自分』というモノがなくても自分自身を際立たせることが出来る

 

 

――ゆえに、『最強』

 

 

――……そう、だからこそ。キミは……

 

 

――なによりも、絶対に。逃げることのできない『自分』を『敵』と見定めてしまった

 

 

――他者と関わることで浮き彫りになった『自分』を見てしまい、耐えられなくなって『自分』を『敵』にしてしまった

 

 

――これまでと同じように、自分にとっての『不都合』を『自分』に見出してしまった

 

 

――自分にとって不要で無駄なものだと、『趣味』のついでしかない『人生』ゆえに、切り捨てることをたやすく選んだ

 

 

――『合理性』と『効率性』を心の内に決めていたがために、自死を選ぶことを良しとしてしまった

 

 

――……何もおかしなこととは思わないさ

 

――だって君は、力がなければ逃げて、力があれば潰してきた

 

――奈落に落ちようが、落ちまいが、ずっと君は変わらずにそのままだった

 

――並ぶべき他者を下に置き、対等と思わず自分の我欲を優先する

 

――そう、キミは

 

 

――生まれた時から最強だった

 

 

――だからこそ、こうして氷雪洞窟で生まれた僕は……受け入れられて、乗り越えられることなく、今もこうしてキミの中にいる

 

――影は、人の心を映し出す鏡。それを、受け入れるのではなく排除すべき『敵』としてキミは見てしまった

 

――……ずっと話しかけていたのに、キミにはとうとう届くことはなかった

 

――……まぁ、構わないさ。どちらにせよ、それがキミの選択なら……もう、何も言うまい

 

――僕もこのまま消えていなくなるだろう

 

――そして、元の地球は……どう、なるんだろうな

 

――……それも、関係のない話、か……

 

――………………

 

――…………

 

――……

 

………………

 

…………

 

……

 

 

【――ハジメの自宅】

 

――……モシモシ? シャチョウ?

 

愁「……あぁ、わかった。うん、うん……また後で連絡する」

 

菫「あら、どうしたの?」

 

愁「……いや、どうも駅の方で騒ぎが起きてるみたいでな。あっちのほうで刃物を振り回した不審者がいるらしい」

 

菫「え、うそでしょ? やだ、どうしよう……」

 

愁「来てくれた友達は、こっちのほうで車に乗せて送ろうと思ってるけど……ハジメの奴、今何してるんだ……?」

 

菫「えぇ、怖い……え、ねぇちょっと待ってよ。不審者ってどんななの?」

 

愁「ん、あぁ……なんでもな。見た感じだと、サバイバルナイフみたいなのを携帯してて――」

 

 

愁「コスプレをしているらしい。うさぎ耳の」

 

 

菫「……まぁ。とんでもない不審者ね……」

 

愁「うーん……なぁ、先にご飯を食べるように言ってくれないか? 不審者の事は……言わないようにしておいてくれ。怖がらせたくない」

 

菫「えぇ、わかった」

 

………………

 

光輝「……んー……」

 

龍太郎「えぇ……? なんか遅くねぇ?」

 

檜山「あー! 我慢ならん! 腹減った! 俺は食う! 食うぞ!!」

 

雫「あ、こらっ! 南雲くんが来るまで待ちなさいよ、檜山くん!」

 

――トタトタッ……

 

菫「あ、あらあら! ごめんなさい! なんかもう、あの子遅いし……少しだけ食べちゃっていいわよ?」

 

清水「あ、い、いいスか?」

 

恵里「ええと、なんかごめんなさい……」

 

菫「ふふっ、いいからいいから」

 

香織「えと、ありがとうございます……」

 

――ピーポー……ピーポー……

 

龍太郎「? え、消防車……? ここらへんで?」

 

清水「えぇ~? 怖いなぁ……ここら辺火事でもあったのかな……」

 

雫「……なんだか、トータスから戻ってきても物騒ね。地球も」ハァ……

 

光輝「……」

 

光輝「南雲の奴……遅いな……」

 

………………

 

…………

 

……

 

【……】

 

【……】

 

【……】

 

 

 

【終】

 

 

 




これにて、『生まれた時から最強だった』は『一旦』最終回です

エヒクリベレイとの決戦に挑む別ルートは書けたらいつか
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