【――ハジメたちの場所】
――タッタッタッタッ……
ハジメ「……ええと、その、もう一度確認するよ……」
ハジメ「さっき助けてくれた……レミアに似ているキミが大人になった……」
ミュウ「……お久しぶりです。『ハジメさん』。あれから、20年……ですね」
ハジメ「に、20年っ……!?」
エヒト『待て、どういうことだ。いったい、何が……』
エヒト『……あ、いや……そうか。私の声は聞こえな――』
ミュウの隣にいる青年「いいえ、聞こえてますよ。『エヒト様』」
エヒト『っ!? 残留思念でしかない私の声を拾える、だと……!?』
ハジメ「ちょ、ちょっとストップ。なんでそこにいるキミがエヒトの声を聞くことができるの?」
ハジメ「アイツはもう、その存在そのものが消えかけているんだ。声を聞くには概念魔法を習得しなきゃ――」
ミュウの隣にいる青年「習得しているから、ですよ。あれから20年……あなたが育ててくれたおかげで、自分は強く成れた。だから、攻略できた」
エヒト『迷宮の攻略、だと……? 馬鹿な、そんな短期間で……』
ハジメ「……待ってくれ。いま、ボクが育てた……って……」
ミュウの隣にいる青年「……」
――……シュルルルルルッ……パサッ……
ハジメ「え、あ、帽子――っ!!! う、うさぎ耳……!?」
エヒト『……まさか、コイツ……』
ミュウの隣にいる青年「……お久しぶりです、ハジメさん。あの頃の言葉を使うのならば、ボス……と言った方がなじみ深いかもしれません」
パル(ミュウの隣にいる青年)「必滅の……は、もういいでしょう。あのパルです。今はミュウ様の護衛を務めています」
ハジメ「……あ、あぁ~~~~……! え、うわっ、背が伸びて……」
パル「えぇ、それはもうおかげさまで……しっ! 敵が近づいてきています! この道を曲がりましょう!」
………………
――タッタッタッタッタ……
ハジメ「……! あともう少しだ! アソコあそこ! あれ、実家!」
パル「引き続き周囲の警戒を。ミュウ様、ハジメさんの傍に」
ミュウ「ありがとうございます。パル。夫のランデルからは?」
ハジメ(……夫!?)ピクッ!?
エヒト『……ケッコンしてたのか』ボソッ……
パル「すでに、ハジメさんの家でご家族とご友人を保護していることかと」
ミュウ「着き次第ゲートの準備を進めましょう。街の被害があまりにも大きい……到着次第、そのままトータスの方へと戻らねばなりません」
ミュウ「……ハジメさん。その、説明に関してですが」
ハジメ「あ、いや、いい。とりあえず、キミたちの素性だとか背景に関しては……後回しにした方がよさそうだ」
ハジメ「……説明は作業と並行してでもいいから教えてほしい。家の法には、天之河君たちがいるんだろ? なら、話もそれでいいはずだ」
ハジメ「それと……」チラッ
エヒト『……私ですら知らないことが多すぎる。いったい、何があった……?』
エヒト『私はトータスから少しだけ身を引いたくらいの事しかしていない。それなのに、なぜ、こんな……地球がハウリアたちに狙われているんだ……?』
ミュウ「……その様子だと何も知らない様子……いえ、仕方のないことですね」
パル「……見えました。急いで家の中に入りましょう。ハジメさん、エヒト様。こちらへ」
………………
…………
……
【――どこにでもあり、どこにもない場所】
………………
――ザッザッザッザ……
亜人兵「……我が魔王、アレーティア様。例の異世界侵略を終えて帰還しました」
アレーティア「よくぞ成し遂げました。では、その地で得た技術と武器は?」
亜人兵「ははっ、こちらに」
――ザラッ……
亜人兵「今回侵略した地では、トータスやこれまでの魔術の力が宿った世界と違い、その世界独自の特殊な術式がいくつか発見されました」
亜人兵「こちらは、今回習得した魔術の一覧でございます。より詳しく書き記したモノは、また後で部下に運ばせます」
アレーティア「……ふむ。この魔法……私なら使いこなせそうですね」
アレーティア「わかりました。では、下がりなさい」
亜人兵「ははっ」
――ザッザッザッザ……
アレーティア「……ふむ……『魔神』。いるのでしょう、出てきなさい」
――シュウゥゥゥゥゥゥゥ……
魔神「……よぉ、俺の魔王様。俺なんかに何の用かな?」
アレーティア「あなた、他の神と繋がっているのでしょう? 部下であるシアとティオたちの様子は?」
魔神「ククっ、安心しろ。異世界侵略ならつつがなく進んでいる」
魔神「相も変わらず、シアはその剛腕でもって現地にいる連中を叩き潰していきやがった。ティオのブレスも、あらゆる人間どもを焼き捨てている。すべてが、灰と炭に変えやがったよ」クククッ……
アレーティア「……そうですか」
アレーティア「…………あれから、どれほど経ったのでしょうね。この『世界では』」
魔神「だいたい20年だな。お前が概念魔法を習得して、トータスの時間の摂理に干渉してから……もうそれだけ経っている」
魔神「……ハイリヒの方を見て見るか? あの子供たちも大人になっているぞ」
アレーティア「……いいえ、興味ありませんよ。少し、振り返りたくなっただけですから」
――……コツコツコツ……
魔神「……ほぉ? 見ろ、アレーティア。二人とも、帰って来たぞ?」
アレーティア「……」
――コツコツコツ……ピタッ……
エヒクリベレイ「……やぁ、元気かな? 魔王アレーティアさま」
アレーティア「えぇ、元気でやっていますよ。善神エヒクリベレイ」
アレーティア「……それと、そちらの方もね」
「――はっ……言われるまでもねぇよ。俺はそこらのザコと違うんだ……ザコとはな」
大魔王ハジメ「アレーティア、シア、ティオ。この俺、大魔王ハジメがいる限り……この亜人の軍団は誰にも止められねぇよ」
………………
…………
……
【――ハジメの家】
――タッタッタッタッタ……ピタッ
ハジメ「父さんっ! 母さんっ!!」
愁「っ! ハジメ! 無事だったか!」
菫「はぁ、よかった……! 本当に、よかった……!」
――ギュッ……
ハジメ「っ……父さん、母さんっ……」
龍太郎「……な、なんだ。その、良かったな……」
光輝「あぁ、まったくだ」
ハジメ「うん、ありがとう二人とも……みんな……」
ハジメ「……」
ハジメ「……ん? あれ? え、なんでみんなボクの家に……?」
雫「あ、あ゛~~~~~………………」
香織「いやぁ~~~~……はい、まぁ……」
清水「ちょ、ちょっと。なんか、説明したげて!」
恵里「……いや今更取り繕ったって遅いだろもう。サプライズ誕生日パーティーしようって話だったって言えばいいじゃん」
ハジメ「え、あぁ……あ、あーー……」
ハジメ「あ、そっかっ……そういえば、今日がそうだったね……その、ありがとね?」
エヒト(思っていた以上に気まずいことになってんな)
ハジメ「いや、だってしょうがないでしょ……こっちもうっかり忘れてたんだし……」ヒソヒソ
龍太郎「おいおい、独り言を始めやがったぞ。誰かいるのか?」
光輝「……アイツしか見えない、独り言を言う相手……ってなると、喋れるやつってなれば……」
香織「……いる、のかな……あの神様」
檜山「はいはいどーいたしまして。それよりもだ。オイ、ランデル。解説、してくれるんだろうな」
――ザッザッザ……
ランデル「お久しぶりです、ハジメさん。お元気そうでなによりです」
ハジメ「ランデルっ……えっ、彼がランデルっ!? うわ背ぇデッカっ!? 顔もイケメンじゃん!!」
ランデル「お恥ずかしながらあれから二十年ですので……」
ランデル「それと……エヒトさま。あなたもお久しぶりです。いろいろと……消え損ねましたね。あなたも……」
清水「えっ、えっ!? いるの!? どこにっ!? どこにっ!?」
恵里「まぁ、ここにランデルたちがいる時点でトータスの関係者が集合していることはわかりきったことだけどさ……」
ハジメ「っ……! やっぱり、見えているんだ……」
光輝(……ここにいるのか、エヒトが)
雫(姿が見えないってことは、やっぱり概念魔法に関係する事……かしら)
エヒト『……お前も、か。よもやこのような形で再開するとは夢にも思わなかったぞ』
エヒト『聞かせろ。お前たちに何があった。私が知らない間に何があった』
エヒト『……私はトータスからこの地球に転移した際、まだ数日しか経っていない。それなのに、なぜトータスの時間の流れが……地球と比べて早くなっている?』
エヒト『トータスで……何があった?』
ランデル「……あなた方が疑問に思うのはもっともな事」
ランデル「だからこそ、今はとにかく……我々を信じて、このままついてきてほしい」
ランデル「ミュウ……パル。ゲートの準備を」
ミュウ「えぇ、わかったわあなた」
パル「お任せください」
――キィィィィィィ……
ハジメ「っ!! あれはっ……ゲート……!?」
エヒト『馬鹿な……これほどの強い力……まさか、本当に概念魔法を習得したと言うのか……!?』
菫「ね、ねぇ……いったい何が起きているの?」
愁「は、ハジメっ。お前ッ、なにに巻き込まれたんだ……?」
ランデル「……ミュウ」
ミュウ「……ゲートが完全に開くまで、まだ時間がかかるわ」
ランデル「わかった……申し訳ありません。ハジメさんのお父さん、お母さん。今は、二人に詳しい説明をしている暇がないんです」
ランデル「みなさん、手短に説明します。これから、みなさんには――」
ランデル「トータスへと足を運び、魔王アレーティアと善神エヒクリベレイの野望を阻止していただきたい」
ハジメ「っ……! まさか、これは……ユエがっ……!?」
エヒト『そ、そんなバカな!? 奴らが概念魔法や異世界を渡ることがないようにと、何重にも概念魔法による結界を張っておいたんだぞ!? 私が、いつ消えてもいいようにと!』
ランデル「……あなたがトータスや異世界である地球の事を想って行動してくれたのは分かる。だけど、それはすべて無駄に終わってしまったのです」
エヒト『な、なにっ……?』
ランデル「順を追って説明しましょう。奴ら……エヒクリベレイと亜人の軍団は、他の世界を侵略するために、その力を付けるために計画を立てていました」
ランデル「……実行に移したのはあなたがトータスに結界を張り、消滅の準備を進めようと地球へ向かった直後。神であるあなたが不在となったトータスにて、やつらの計画は動き出した……!」
エヒト『わ、私が不在の間に……そんなことが……』
エヒト「いや、だが待て。だとしてもどうやってあれだけの力を!? あれだけ大勢の力を持ちし者を、どうやって見つけた!?」
ランデル「……他の世界に渡るためには概念魔法を得るしかない。そのためには、迷宮を攻略し、概念魔法をその身に宿すしかない」
ランデル「ここまではよかった。迷宮を攻略して、神代魔法を習得することは、彼女たちの実力であれば決して困難ではなかった。だけど、エヒトさまによって張られたトータスを包む結界によって、地球を含めて他の異世界に侵攻することは叶わなかった」
ランデル「……そこで、アレーティアは閃いたのです。ならば、結界を超えればいい。自分たちの持つ概念魔法その物を強固なものにしてしまえばいいと」
ランデル「そこで思いついたのが、『時間』。あいつらは、こともあろうに時の流れが遅くなる空間で自分たちを包み込み、その中で結界を破るための力を習得しようと、何度も魔法の実験を繰り返していたのです」
光輝「……出来るのか……そんなことが?」
ハジメ「……空間魔法や変成魔法……神代魔法は『理』に干渉することで生み出される力だ。元々、それらの力をベースとしたり混ぜ合わせるなどして強力な魔法その物を作り出してきた」
ハジメ「時間の流れを遅くさせる特殊な空間……造れなくはない、かもね」
清水「……あぁー、所謂精神と時の部屋みたいなもんか」
檜山「おぉっ! 有名な漫画のあれ!」
恵里(こういう時サブカル知識があるとスッと情報が出せて便利だなぁ)
ランデル「奴らが作りだした『時の流れを遅くさせる空間』。その中で、自分たちと同じように神代魔法を継承した者たちを次々と作り上げてきた」
ランデル「多くの亜人たちに力を。才能ある者はより力を引き出されて。更には自分たちの中に眠る力をより高みへと導くために、強く、強く、強く」
ランデル「そうして、異世界侵略を盤石のモノにするために、さらに奴らは次の一手を打ちました」
ランデル「それが……こうして、二十年ぶりのあなた達との再会に繋がるのです」
龍太郎「……?? え、いやいやいや……それがどうして今のお前たちに繋がるんだよ」
ハジメ「………………」
ハジメ「っ!! 時の流れを……地球とトータスとの流れを『ズラした』のか!?」
清水「えっ、……ま、マジでっ……!?」
エヒト『っ……!!』
ランデル「……その通りです。話が速くて助かります」
ランデル「ハジメさんもご存じ、神代魔法は理に干渉する力。そのうちの一つ、重力魔法は『星に干渉する魔法』」
ランデル「すなわち、トータスを『星』、地球を『異星』として仮定し、これらの時間の流れを噛み合わないようにズラしたのです」
龍太郎「ま、待て待て待てっ!? 何でそんなことを!? なんでまたンな大がかりな仕掛けを!?」
エヒト『……反逆者を向かわせないためか』
ハジメ「ボクたちよりも強くなるため。そして、こちらから干渉を受けさせないためだね」
光輝「……っ! 外界からの接触を断つためか!」
ランデル「その通りです。魔王アレーティアたちにとって、ハジメさんたちこそが計画を破壊する可能性を秘めた唯一なる存在なんです」
ランデル「すなわち、我々トータスの世界にとって上位世界と言える地球の人間たちが、こちらに干渉できないようにするための対策。時の流れが速くなれば、その分だけハジメさんたちよりも強くなれる。なにせ、積み重ねるための時間が沢山あるのだから」
雫「……」
香織「……」
檜山「……なぁ、ちょっといいか」
檜山「それじゃあ、アイツらがここに来たのって」
清水「……侵略のめどがついたから……ってことなのかな」
ランデル「……それは」
ミュウ「我々が来たから、ですよ」
檜山「? ええと、それって……」
ハジメ「……そうか、キミたちが来てくれたから……!」
ランデル「えぇ、その通り。我々は、奴らの計画を掴んだ。奴らの計画を阻むためには、トータスでの力を得て、その能力を使いこなせる上位世界の皆さんしかいない」
ランデル「それを察してか、奴らはこの地球に攻め込んできたんです。再び、魔王ハジメがトータスに戻ってこないようにと。その力が、自分たちに向けられないようにと」
檜山「お、オイオイオイ……それじゃあお前がアイツらを招いたのか!?」
恵里「……いや待て。これって言いかえれば……」
清水「あっ……あぁっ! あいつらが南雲や俺たちより強くなる前に……お前たちが来てくれたってことになるのか!!」
ランデル「……遅かれ早かれ、彼らはどっちに転ぼうとも地球に攻め込んでいました」
ランデル「トータスの時間の流れ速い。今いる魔王アレーティアが老衰で亡くなった時……世代交代をすれば、より力が積み重ねられていく。地球に攻め込む計画を立てる者たちが現れた時、そうなれば魔王ハジメや上位世界のみなさんの力では太刀打ちできなくなる……!!」
ランデル「いまだ! 今しかないんです!! 奴らを倒す瞬間は! そのチャンスは!!」
光輝「……ら、ランデル……」
ランデル「みなさん!!! 私は、みなさんが受けた心の傷が……どれほど深いのか知っています!!」
ランデル「私も共有している! その気持ちは、痛いほどよくわかるっ!!!」
ランデル「わかるからこそ、トータスに戻ってほしいのです!! 今ここで戦わなければ、地球にいるあなたがたの……家族だって危ないんだ!!」
ランデル「お願いですっ……どうかっ……どうかっ……!!!」
ハジメ「……」
エヒト『……ハジメ、お前はどうする』
ハジメ「……」
――スタスタスタ……ピタッ
ハジメ「……ランデルさま。一つ、お願いがあります」
ハジメ「奴ら、亜人の軍団を消耗させ、一気に決着をつける作戦があります」
ランデル「っっ!!! ま、真ですかハジメさんっ!!!」
ハジメ「えぇ、ですからどうか……」
ハジメ「ボクのことを信じてください。ボクのやることに……」
ハジメ「何があっても驚かないでくださいね」ニッコリ
ランデル「……あれ、イヤな悪寒が……」
光輝「おー、なんか久々だなぁこの感じ」
龍太郎「嫌だなぁ、頼れるけど何か『やらかして』どうにかしてくれるんだろうなって感覚……」
檜山(あ、後ろの二人も頼む相手間違えたかなって顔してる)
………………
…………
……