【――夢の中】
………………
ハジメの影「人が人たらしめる物とは何だと思う?」
ハジメの影「古来より問われ続けてきた人のアイデンディティ。人は生まれながらにして価値を持って生まれてくることはない。血の繋がり、生まれた先の良縁、持って生まれた才能。産まれるべくして付随してきた物は、確かにその人物について回ってくるものだ」
ハジメの影「けどね、だからといってソレがそいつにとっての必要性があるもの……とは限らないのが人間の面白い所だ」
ハジメの影「優れた血を持って生まれれば、血に付随する優れた環境がついて回るが……」
ハジメの影「同時に、血から逃れることはできず、逃げたいと思った者からすれば自身を縛る鎖となる」
ハジメの影「そして、自分を縛る鎖に囚われたものは、鎖その物から逃れるために相反する行動をとる。ある意味、本来の意味でのコンプレックスってのはココからくるもんなのさ」
ハジメの影「人は外界の刺激を受けることで、自分という人間を摩耗していく。そうして得た自分自身の形で、自分という人間たらしめる物をみつける」
ハジメの影「そうして、削って、削って、削り続ける自分探しという終わりなき旅路。そうまでして人を苦しめてまで、自分を追い込むための物って何だと思う? なぁ、ハジメ」
ハジメの影「……言うまでもないさ。人は、自分が確固たる自分を持って生まれることは決してない。生きていく中で、自分の芯でいてくれるものを人は求める」
ハジメの影「いわば、『ステータス』さ。目に見える形あるものを、自分たちにとっての生き甲斐だと信じる者は……かなーりいるのさ」
ハジメの影「そして、そんな揺るがぬステータスこそが……ほかならぬ神。さて、南雲ハジメ。キミは……」
ハジメの影「……いや、もう言う必要はないか」
ハジメの影「キミはもう、ボクの声なんて聞こえない」
ハジメの影「キミはもう、自分の影と向き合うつもりがない」
ハジメの影「なら、こんな独り言に意味はないか」
………………
…………
……
【――どこにでもあり、どこにもない場所】
――ザッザッザッザッザッザ……
――ザザッ……
「……ご報告いたします。魔王様」
アレーティア「……異世界侵略の進捗は?」
「進んでおります。地球を含めてあまたの魔法世界、進んだ技術力を秘めた文明世界、あらゆる歴史の世界観を模倣した異世界……」
「今、あらゆる場所で我々の支配下に置かれ、次々と魔王軍の従順な奴隷と化しております」
「このまま進めば、いずれはすべての世界を統べる日も遠くはないでしょう……!」
アレーティア「……わかりました。下がりなさい」
アレーティア「次も良い報告を聞かせてくれることを……願っていますよ」
「はは、失礼いたします……」
――ザッザッザッザ……
アレーティア「……」
アレーティア(次々、と……世界侵略が進んでいる、か)
アレーティア(いったい、どれほどの時間が経っただろう。トータスのほうでは20年ほど経った。何かあった時のために、部下たちも我々も力を付けた)
アレーティア(……我々の世界に手を出せるほどの実力者なんて、普通はいない。神代魔法を習得し、兵士たちの何人かも私と同じ力を得ている)
アレーティア(その上、こちらには……)
――コツ……コツ……コツ……
大魔王ハジメ「よぉ、ユエ。元気そうじゃねぇか」
エヒクリベレイ「ふふふ。あまり根を詰め過ぎないようにな」
アレーティア「……えぇ、お気遣いどうも」
アレーティア「それよりも……ハジメ。部下たちに与えたアーティファクトは?」
大魔王ハジメ「あぁ、しっかりと使いこなせてるみたいだ。なんせ、改良に改良を重ねたドンナーを全員が所持しているんだからな」
大魔王ハジメ「それらに加えて、オリジナルがいくつも開発して見せた多くの武器や技術、それに合わせて生み出されたアイディアの産物は俺の頭の中にある。物質だって、今もこうして生み出し続けている」
大魔王ハジメ「安心しな。俺が俺である限り、力はこうしてお前たちに与えられていく。ククっ、まさに最強の軍団ってわけだ」
アレーティア「……そうですか。それはそれは頼もしい限りで」
アレーティア「……」
アレーティア(……大魔王ハジメ。私たち亜人の軍団が、私たちのことを助けてくれる魔王様の存在を願ったことで産まれた……いわば、神代魔法によって生まれたハジメのコピー)
アレーティア(彼がいてくれるおかげで、私たちはどんどん強くなる。武器の精製技術、それに伴ういくつもの武器の使用方法。元々優れた能力を持っているのではなく、誰もが戦えるように武器を持たせて戦わせるという発想……)
アレーティア(それゆえに、私たちの軍団は最強。最強の力を施してくれるからこそ、私たちは強い)
アレーティア(そうだ……力を分けてくれるから、私たちは強いんだ)
アレーティア(こうして、力を分けてくれる誰かがいるから強い。それは……)
アレーティア(……オリジナルであるハジメは……最初から必要じゃなかった――)
――………………
――ザッザッザッザッザ……
エヒクリベレイ「……おい、部下が戻ってきたようだぞ」
アレーティア「! 隠れなさい、ハジメ」
大魔王ハジメ「……へ、はいはい……」
「ほ、報告いたします魔王様」ザッ……
アレーティア「? あなた……さっき現場に戻ったはずでは?」
「え、エヒクリベレイさまっ……!? ま、まさかあなた様がこのような場所に……かの大魔王と並ぶ方をこの目で見ることが出来るとは……!!」
アレーティア「……待ちなさい。それはどういう意味ですか」
「っ……じ、実は先ほど、ハイリヒ王国を監視している部下から連絡が届きまして」
「――……南雲ハジメさまが……トータスに戻ってきたのですっ……!!!」
――ガタンッ……!!
アレーティア「っ……今の話は……本当ですか……」
エヒクリベレイ「ほぉ……これはこれは……」
「は、はいっ! はいっ!! かの邪知暴虐!! あまねく生を踏みにじる最強の魔王!!」
「あのお方が、この地に戻ってきたのです!! きっと、我々亜人の軍団をお救いに!!」
アレーティア「待て、彼がこの世界に来ているって……そんなのどうやって……」
アレーティア「っ……いや、そもそも『彼』の事だ。理由はどうであれ、世界を渡れる力を持ちし者。きっかけが何であれ、誰かの手引きがあろうとも、なにがしかの形でココに来ることは予想出来ていた……っ」
エヒクリベレイ「さて、どうするアレーティア。この状況を……」
アレーティア「……この、状況を……っ」
「ま、魔王様! ここでハジメさまが我々についてくれるならば……きっと、より戦力になるはずです!!」
「父と母はいいました! 我々の種族はハジメさまがいたからこそ強く成れたのだと! ハジメさまがいるからこそ我々は蹂躙する側に回れたのだと!!」
「今、我々の部下も熱を上げて魔王到来を心待ちにしております! 聞こえるでしょう、大魔王様を待つ我が同胞の声を!」
――魔王! 魔王! 魔王!
――魔王! 魔王! 魔王!
――魔王! 魔王! 魔王!
――魔王! 魔王! 魔王!
アレーティア「……」
エヒクリベレイ「……くくっ……っくっくっ……」
大魔王ハジメ(……)コッソリ……
「聞こえますか!? 聞こえますでしょう!? 話に聞いていた大魔王さまが……この世界に来てくれるんだ!」
「万歳! 万歳! 大魔王様万歳!!」
「あぁ、どうか! どうか、『また』我々に英知を授けてくださいませ!!」
アレーティア「……」
アレーティア「……ふっ、ふふふっ……」
アレーティア(……おかしいな、笑っちゃうな)
アレーティア(誰も……ハジメの名前を呼ばないんだなぁ……)
エヒクリベレイ(……)
エヒクリベレイ(奴が元の世界に帰還してから、入れ替わるように信仰によって形を成した『大魔王ハジメ』)
エヒクリベレイ(こいつの存在は、本質的に生成魔法によって形成された魔物となんら大差ない。人間からの恐れ、畏怖。亜人たちによる羨望の眼差しと信仰――それと同時に、施しを受けたいと言う利己的な想い)
エヒクリベレイ(そんなハジメ本人が消えてからは、自分たちにとって利益となる物を施してくれる大魔王……という名の人形を、亜人たちはありがたがっている……奴こそが本物のハジメのように)
エヒクリベレイ(何とも間抜けな話だな。力や施しをもらえるのならば、誰でもいいからこうして尻尾を振る。自分たちを助けてくれるから)
エヒクリベレイ(何者かに取りつかれながら、こうして必至に縋りつくさま……はてさて、こいつらは20年前の奴隷として虐げられていたころと何が違うのやら……)
………………
…………
……
【ハイリヒの城】
――……シュゥゥゥゥゥ……スタッ
ランデル「それでは、人数の確認を」
ハジメ「おっし……それじゃあ1!」
光輝「に、2!」
龍太郎「3!」
雫「4!」
香織「こ、これ言わなきゃダメなんだね。ええと、5!」
檜山「ああっと、6」
恵里「……7」
清水「は、8で」
鈴「9だよ!」
光輝「以上、魔王軍討伐隊のメンバーはコレで全員――」
ハジメ「いや、ちょっと待て。まだ数え上げてないのがいる」
ランデル「? え、まだって……」
ミュウ「これ以上は誰も……」
――スタスタスタ……
エヒト「いいや、私がいる」
ランデル「っ!! あ、あなたは……」
エヒト「……久方ぶり……と、なるのか。大きくなったな、ハイリヒの王子よ」
ランデル「……もう、王子ではありませんから。今はこの国の立派な王ですよ」
エヒト「そうか。そう……なのか」
――ヒソヒソッ……
光輝「えっ、えっ……なんでエヒトが姿を現しているんだ……? さっきまで目に見えないくらいにぼやけていたのに」
ハジメ「単純な話さ。ボク自身が概念魔法で『信仰』という概念を向けてやったってだけ」
ハジメ「アイツはすでに信仰心が途切れて消えかけだったからね。『信仰』という『概念』その物を『魔法』として利用できるのならば、それを扱えるボクならアイツを延命させられる」
ハジメ「まぁ、ガス欠の車にガソリンを注いでやったみたいに考えればいいよ」
光輝「なる、ほど……?」
ランデル「……あなたが私たちに世界を託し、神としてもエヒト個人としても役目を終えて消えゆこうとしていた」
ランデル「私たちは、託された存在。形はどうあれ、この世界を始まりの時から管理し、我々すべての種族が産まれ、今に至るまであなたの庇護下にいた」
ランデル「それが、盤上の駒であろうとも」
エヒト「……あぁ、そうだ。お前たちは私の駒だった。ゆえに、盤上の遊戯を投げ捨て、せめて最後は神としての役割を全うするために、出来る限りのことは残しておいた」
エヒト「反逆者たちが残した迷宮をハイリヒに再現させ、簡易的な迷宮を設置させた。これによって、各地の国に足を運ばずともお前たちはこの国の中で神代魔法を習得できるようになった」
エヒト「それ以外にも、各種アーティファクトの設計図や敵である亜人族がお前たちを襲撃した際に、撃退できるようにと残した数々の策」
エヒト「上位世界であるハジメたちのいる地球の人間でなくとも、トータスの現地人であるお前たちでも対処できるようにと私は残せるものは残してきた」
エヒト「そして、万が一にも……トータスや地球以外の異世界に侵略を起こさないよう、他の世界に立ち入らないように概念魔法による結界を張った……」
エヒト「……それでも、お前たちは……追いやられてしまった……のか」
ランデル「……返す言葉もございません。地球でご説明した通り、奴らは異世界に向かうための算段は、確かに企てていました。そのためにエヒト様が他世界に侵略させないよう、結界を張ってくださったのもその通りでした」
ランデル「ですが、奴らはあろうことか『異世界の外』ではなく『異世界の中』……すなわち、このトータスの中で使える物を利用して強くなることを選んだのでございます」
檜山「まぁ、それ以外に強く成り様がねぇからな。ありもので自分たちを強化しようってことにしたわけか」
ランデル「その通りです。魔王アレーティアを含めて、亜人の軍団は次々と世界各地の迷宮を攻略するために独占し始めました。力を蓄え続け、次々と素質ある物を部下とし、異世界侵略のための準備をこのトータスの中で行っていた」
雫「それが……さっきも言っていたトータスと地球の時間の流れをズラして……私たちの所に助けを求められないようにしていたって話よね」
香織「……ねぇ、それってよくよく考えたら……」
香織「トータスそのものはどうなってしまったの? ハイリヒの人たちや、他の国の人たちは……?」
ランデル「……長々と説明するよりも、外の景色を見てくださったほうが話は早い」
ランデル「ミュウ、みなさんを案内してくれ」
ミュウ「えぇ、あなた……さぁ、ハジメさん。みなさん。城の外へご案内いたします」
………………
リリアーナ「っ……! お久しぶりです……香織さんっ! 雫さん!!」
香織「り、リリィ!」
雫「わっ、わっ……すっごい大人っぽくなったわね!」
鈴「って言っても本当に大人だしね! それにしてもすっごいキレイ……! 」
――コツコツコツ……
バイアス「ま、俺の嫁さんなんだからソリャ当然だろ」
檜山「お、おぉ~~~……めっちゃ渋いっ!」
バイアス「ははっ、そりゃどうも。こちとらまだまだギンギンよ。亜人共が襲い掛かろうが、あの魔王様が残してくれた人形兵器がある限りは持ちこたえられるさ」
バイアス「んまっ、その年齢に見合わない年の取り方をしたかもしれねぇけどな。ははっ」
清水「二十年だもんなぁ。父親のことを考えると似た感じのイケオジにもなるかぁ」
光輝「ええと……それじゃあ今の二人ってハイリヒにおける立場は?」
リリアーナ「……立場、ですか」
バイアス「ん、あぁ……」
光輝「? 何を言い淀んでいるんだ? あれから二十年経っているんだし、リリィとバイアスもこの王家の人間なんだから――」
バイアス「待て。その前にお前たちにはっきりと言わなきゃいけないことがある」
光輝「?」
ハジメ「……」
バイアス「……ハイリヒ、か。悪いけどな、その名はもうこの世界において意味はなくなっちまった」
バイアス「王家はな、実質取り潰されたんだよ。それも『国』ごとな」
光輝「……な、なに……?」
エヒト「待てっ! それはどういう意味だ!」
ハジメ「さっき、外の方を見てきてって言ってたよね」
ハジメ「……何があるんだ。街の方に」
バイアス「……これが、この国の現状だ。この窓のカーテンを開くと、な――」
――シャァァァ……
光輝「――っっ!! えっ……!!」
エヒト「…………そ、そんなっ……ハイリヒがっ……ハイリヒのっ……『外』が……」
エヒト「『ない』っ!? 何もない、空虚の大穴が広がっている!?」
リリアーナ「……そうですか。見るのは初めてなんですね」
檜山「い、いやいやいや! 何がどうなってんだよコレ!?」
檜山「国の外が断崖絶壁になってるっつーか……いやこれ、国の周囲がくり抜かれたように周りに穴が出来てるっつーか……!!」
恵里「それだけじゃないぞ。その穴の向こう側……地平線が見えるくらいに何もない。このハイリヒの国だけを残して、何もないみたいになっている……」
清水「こ、これじゃあ孤島みてぇ……えっ、マジで何があったの……?」
リリアーナ「……アレーティアが率いる亜人の軍団は、自らが異世界への行き来が可能だと分かった途端、自分たちの拠点を他の世界に移そうと計画していたそうです」
リリアーナ「そうして、その次に行ったのが――トータスの、ハイリヒ以外の国の『抹消』。奴らはあろうことか、この世界にある土地、空間という概念そのものすらも消し去り……この世界を空っぽの空洞にしようと企んだのです」
リリアーナ「それが、今のハイリヒの外の現状。何もない空間が広がっているのは、奴らがこのトータスを無用の長物として消し去ろうとしているからです」
香織「そ、そんなっ……海も、空も……全部消してしまうってこと!? 一体何のために!?」
バイアス「理由としてはいろいろあるぜ。まず、俺たちがアイツらより強くなり、土地の奪還をした時に仕えなくすること。もう一つは――」
ハジメ「……『信仰』を一つたりとも残さないため……増やさないため?」
檜山「はぁ!? 人間を消すってんならともかくなんで土地まで!?」
バイアス「……いや、南雲ハジメの言う通りだ。信仰において『土地』やそれらに紐づけされる『場所』ってのはかなり重要でな。そもそも、神代魔法に関連付けされた迷宮その物が、古来からの信仰を集めた重要な土地になってんだ」
バイアス「もしもそれらを奪われて、ハイリヒの者たちにとって有利に運ぶ『きっかけ』になったら……ってなわけよ。だから……」
リリアーナ「もう、このトータスには……ハイリヒ以外の国……いや、土地や空どころか『空間』その物すら残っていないのです」
エヒト「ば、馬鹿な……わ、私が残したこの世界が……」
エヒト「ど、同胞と共に作り上げたこの世界を…………そんな……」
ハジメ(……エヒト……)
光輝「じゃ、じゃあ……正真正銘……今のトータス……いや、ハイリヒで戦える者や物資って……」
リリアーナ「かろうじて他の国々から避難してきた者たちや……」
バイアス「エヒトさまとやらが残したモンをどうにかやりくりしながら状況を打破してきたって感じだな」
ハジメ「……ミレディは」
バイアス「……あいつはもういねぇ。魔力その物が消えてなくなって、魂もどこかへと消えた」
リリアーナ「彼女自身、もう役目を終えていましたから。これ以上、友の亡きがらが汚されるのを……見たくなかったんでしょうね」
ハジメ「……」
光輝「……そうか……」
香織「……ミレディさん」
エヒト(………………)
エヒト(これが、今のトータス)
エヒト(同胞と共に作り上げ、盤上として遊び)
エヒト(それが、その最後がコレなのか)
エヒト(……………………)
ハジメ「……」
ハジメ「聞かせてくれ、ボクたちは何をすればいい」
リリアーナ「……ハジメさん」
リリアーナ「いえ、魔王ハジメさま」
リリアーナ「これより明日、今いるハイリヒの民たちに、魔王として宣言してください。『我々は勝つ』と」
………………
…………
……
【――異世界トータス近く、別の異世界にて】
――緊急連絡! 緊急連絡! 緊急連絡!!
兵士「ど、どうした! 一体何の騒ぎだ!?」
「報告いたします!! 報告いたします!!」
「たった今、連絡が入りました! トータスのハイリヒへと向かった偵察隊からの連絡です!!」
「大魔王ハジメが……!! 今、トータスにその姿を現したと報告が!!」
兵士「な、何ィィィィ!!!???」
エヒクリベレイ「…………ふむ」
アレーティア「……そうですか」
「そう、そうなのです! あの、あの大魔王ハジメさまが! そのお姿を現してくれたのです!!」
「我々の救世主が! 我々の神が! 我々の魔王が! 畏怖すべき、尊敬すべきあの方が!!」
「現在、多くの同胞と共にトータスへと向かう準備を進めています!!」
「我々をお救いになった大魔王様のことだ……きっと、今回も我々をお救いになられるでしょう……!!」
「ハイリヒに現れたのも、きっとやつらを殲滅し、憂いを断ち切るためにほかならない!!」
アレーティア「……わかりました。我々も向かう準備を整えましょう」
アレーティア「いきましょう、エヒクリベレイ」
アレーティア「……それと、影にいる彼も……ね」ヒソヒソ……
エヒクリベレイ「……あぁ、もちろんだとも」
兵士「こ、こうしてはおれん! 早速、魔王様のお迎えする準備だ!」
「は、はいぃぃ!!」
………………
アレーティア「どうみますか?」
エヒクリベレイ「どう、みる……ね。現地に行かなければ何とも言えないな」
アレーティア「……もうトータスに関わらないと思っていたのに。もう、地球に閉じこもると思っていたのに」
アレーティア「考えられる点としては、やはり反撃……ちっ……ランデルたちを取り逃がしたのは痛かったか……」
エヒクリベレイ「だが、それよりも心配すべきは奴の言動だ」
エヒクリベレイ「今こうしてハジメが祭り上げられているのは、本人がいないからこそ神格化出来ただけだ。それを、本人が出てきてしまったのなら……」
アレーティア「えぇ、そうですね。奴の事だからハイリヒに加担するのは目に見えている」
アレーティア「……『大魔王ハジメ』は、いまどうしているのですか?」
――コツコツコツ……
大魔王ハジメ「ふん、俺ならここだぜ。魔王様よ」
アレーティア「今すぐハイリヒに向かいます。あなたのオリジナルが、かの世界にて姿を現しました」
アレーティア「このままいけば、奴はハイリヒに加担する姿を兵士たちに見られてしまう……そうなれば、大魔王ハジメに対する信仰心によって成り立っている今の現状が崩れ去ってしまう」
アレーティア「……今では大分力をつけることが出来ましたが……何をしでかすかわからないイレギュラーです。現地へ向かいますよ」
………………
…………
……
【――トータス、ハイリヒ。王城の前にて】
――ザワザワザワザワ……
――な、なぁ……見て見ろよ……!
――すげぇ……あれが大魔王様だ……!!
――ハジメさま~! 私の事を見てぇ!
――私のことを踏んでくださーーーーい!!
――ザワザワザワザワザワ……
光輝「……すごい数だな。これがハイリヒに残っている人間の数か」
ランデル「見ての通り、ここには多くの人間族、亜人族、魔人族の生き残りがどうにか手を合わせて生きてきました」
ランデル「衣食住や住める場所……それらはすべて、エヒト様やハジメさんが残してくれたアーティファクトによって問題は解決された。こうして生きているのも、あの人のおかげなのです」
ランデル「あなた方を助け出すために、地球へと向かったパルもその一人。その点を考えれば……ハジメさまに対する信仰心はかなり高いと言えるでしょう」
光輝「まぁ……だろうな……」
――ザワザワザワ……
龍太郎「にしてもすっげぇ人の波だぜ。世界が狭まっても、国そのものは残ってるからなぁ……そりゃ十分広いかぁ」
香織「この人たち全員が、ハジメくんを信じている……いや、大魔王ハジメを信じているんだね」
雫「……でも、まぁ。しかたないっちゃ仕方ないでしょ。彼らからしたら、それだけが心の支えだったんだから」
清水「同時に敵にとっても魔王ハジメは心のよりどころだったみたいだからな。なんっていうかさ……アイツもアイツで、自分のやれる範囲の事をやっていただけでしかないのに……大変、なんだなぁ……」
――キョロキョロ……
鈴「ええと……その肝心の南雲くんは? ぜんぜん姿を現さないけど」
恵里「……そろそろスピーチの時間だ。アイツ、マジで何してんだ?」
ランデル「えっ、ま、まだ来ないのですか? 来てくれなきゃさすがに困るのですが」
檜山「……ぁ、いや待て待て!出てきた出てきた!」
檜山「ほら、あれを――――み、……………………………ろ、よっ……………………?」
光輝「……」
光輝「……」
光輝「えっ」
光輝「えっ」
光輝「……」
………………
兵士「いました! あれが、ハイリヒの城!! 中央広場で人が集まっております!!」
アレーティア「っ……なんという人だかり。まだまだこれだけの数の人間を残していましたか」
エヒクリベレイ「さすがにこれ以上は近づけんぞ。エヒトが残した結界で、国の中に入れん」
兵士「おぉぉおおおお……! 偉大なる大魔王様! そのお姿を! そのお姿を現してくださいませ!!」
アレーティア「!! でたっ! あれ、が………………………………………………」
兵士「うぉぉぉぉぉぉぉ!! 出た、出た! ついに、でたっ!!!」
兵士「大魔王、ハジメ―――――さ、ま…………………………………………??」
………………
――ザワザワザワ……
檜山「………………ぇ、ぇ、ぇっ?」
香織「………………」
雫「……な、にあれ……」
龍太郎「……な、なぁ……なんで、あいつ……」
ハジメ「……」
龍太郎「………………」
龍太郎「は、裸で……出てきてんだ………………???」
ハジメ「………………」
ハジメ「…………………………すぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
ハジメ「ふぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~~………………」
ハジメ「………………」
――スッ……
ハジメ「ごめんなぢゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!」
ハジメ「う、う、う、う、うそをづいでまじだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ハジメ「ぼ、ぼ、ぐはっ゛!!! ほ、ほんとうは、なにもでぎないんですっ!!! なんっっっっっにもできないんですぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
――ザワザワザワザワ……
――えっ……えっ……えっ……?
――な、なんで……な、えっ、なに、えぇ……?
――えっ、あれって……ハジメ、さま……だよな……
――う、ウソじゃねぇよ! ほら、ステータスプレートの確認も出来るんだぜ!? あれ、本人だよ!?
ハジメ「じ、じづはぁぁぁぁっ゛!! ぼ、ぼくはっ! ほんどぉはぁぁぁぁっ゛!!! エヒトさまから力をもらっていただけのっ゛!! ただのこどもだったんでずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
ハジメ「戦った伝説もっ!! 今までの功績も!! ぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんぶづぐりものぉぉぉぉぉぉぉぉぉ゛!!!!」
ハジメ「ほんどぉはぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ勇者やほかの人たちにだずげでもらっただけのざこだったんでずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
――ザワザワザワ……
――えっ……はぁ、えぇぇぇぇ~~……??
――あ、じゃあこの強さって……全部アーティファクト由来……え、ウソでしょ……?
――な、なんだよそれ……じゃあ、どうすんだよ亜人たちの侵略とか……
ハジメ「こ、ここまでかぐしどおしてだんだけどぉぉぉぉぉぉ!! も、もぉげんがいがぎぢゃっでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
ハジメ「だ、だがらぁぁぁぁぁぁぁぁ!! は、はくじょうずるごとにじまじだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ハジメ「だだがえないんでずぅぅぅぅぅぅぅ!! ごめんなじゃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
――ザワザワ……!!
――………………ざっ……
――ふざけんなお前ェェェェェぇぇェェェェェーーーーーー!!
――ど、どうするんだよぉぉぉぉ!! お、俺たちどうなるんだよぉぉぉぉぉぉ!!!
――い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! も、もうこの世界はおしまいよぉ!!
――こ、こんな屑を信じていただなんて……!!
ハジメ「ごめんなじゃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
………………
ランデル「……」
ランデル「あの」
ランデル「なんですあれ」
光輝「いや、見ての通りですよ」
光輝「大衆の面前でふりちん土下座してるんじゃないですか」
光輝「……」
光輝「……」
光輝「なにあれ」
香織「……」
香織「おお」
………………
兵士「……」
エヒクリベレイ「……」
アレーティア「……」
アレーティア「??????????????」
………………
…………
……
【――心の中】
ハジメの影「???????????」
………………
…………
……