生まれた時から最強だった   作:roborobo

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第8話

 

【──ハジメの夢の中】

 

ハジメ「あっ、クソっ! このっ、なんだこのっ!!」

 

──ク、クククっ……! なんとも無様な姿ではないか南雲ハジメ……っ!

 

ハジメ「こんなっ、こんなことってあるのかよっ……!? 俺が、こんな一方的に……!!」

 

ハジメ「ま、まだだ! まだ逆転の芽はある!」

 

ハジメ「奈落でも生き残った! 迷宮を攻略してきた! 俺には、俺には負けないほどの経験と戦いが積まれてきたはずだ!!」

 

ハジメ「こんなっ、こんな場所でっ……負けるだなんてっ……!!」

 

──残念っ……! 現実、これは現実……!!

 

──お前の力では私に及ぶことは決してない! 私に立ち向かった末路! それがコレだァ!!

 

──失せろハジメェっ!!! チェックメイトだぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

ハジメ「や、やめろーーーー!!」

 

 

[──you win!!!]

 

 

ハジメ「あ゛あ゛あ゛あ゛ア゛゛--------っ!!! クッソ、ありえねぇだろオイ!! んだこのクソコンボォォ!!」

 

──あははははははは! バーカバーカ!! お前が迷宮攻略だと称して現実を生きている間に私はここでこっそり対策を取っていたのだ!!

 

──ククク……悔しかろうて、悔しかろうて……今なおこの対戦ゲーは日夜ファンたちが考察を積み重ねている……

 

──リアルが充実している人間にこのゲームはクリアできましぇぇぇぇェェッぇん!!!

 

ハジメ「つーかテメェ!! 人がこんな苦労している間にゲームの腕を上げるとか何つー神経だ!!」

 

ハジメ「……あぁ、クソっ……お小遣いの都合でプレイを断念していたこの新作アーケードゲームがプレイできるなんてって……喜んでいたのに……」

 

ハジメ「二重……! 敗北感が二重に襲い掛かってきやがる……クソっ! ダブルで悔しい!!」

 

──そして私はダブルでうれしい。あー、敗北者の喚き声が気持ちいいですわ

 

ハジメ「ぶっっっっっとばしてぇぇぇぇぇ……」

 

………………

 

──で? で? 次は何をする?

 

──ここらでアーケードゲー以外に何かやってみるか? それで飽きたなら携帯機も用意してあるぞ? ス〇ッチとかP〇4とか

 

ハジメ「……古い機種ない? 最近のは昔のゲームプレイできなくてさぁ」

 

──んー……あぁ、あるある。ほれ、wi〇uとP〇3だ

 

ハジメ「おー……あ、すっげ。俺のアカウントだ」

 

ハジメ「……にしてもすげぇなこの空間。まさかお前が念じれば元の世界のゲームを引っ張り出せるとは思ってなかったぞ……」

 

──基本的に『夢の中』だからな。私がこう、と思えばどんなものも出る

 

──そしてゲーム機が出せるならアーケードゲームもプレイできるのも道理よ……

 

ハジメ「ヤバい、今まででお前と知り合えてよかったって部分が出てきた。ちょっと感動……」

 

………………

 

ハジメ「あーヤバい……この辞め時を失ってプレイに没頭するのほんと久しぶりすぎる……」

 

ハジメ「違うんだかーさん……寝てる、寝てるから……怒らないで」

 

──オイオイオイ、故郷に思いを寄せるなんて……

 

──……いや、寄せるか。もうだいぶ経ってるもんなぁ

 

ハジメ「まぁな、このゲームとか……あと原作の漫画とかもうほんと……俺の青春だよ」

 

──……お前の父親と母親、畑は違ってもどっちもクリエイター関係の仕事に就いてるんだっけか

 

ハジメ「ん? まぁな」

 

──ふーん……

 

──……ちょっとさ、お前の話とか聞かせろよ

 

ハジメ「? まぁ、いいけど……」

 

ハジメ「……前にも言っただろうけど、俺の親はクリエイター関係の仕事に就いている」

 

ハジメ「父親の名前は南雲愁(しゅう)。ゲームクリエイター関係の会社を運営している社長だ」

 

ハジメ「母親は南雲菫(すみれ)。人気少女漫画家でめちゃくちゃ売れっ子だ」

 

ハジメ「どっちも世間ではその名の知れた二人でな……俺がオタクのような人間になったのも、言っちゃなんだけど……この二人の影響があってこそなんだ」

 

──……親御さんのこと、尊敬しているのだな

 

ハジメ「……お前、知ってるだろ。俺がいじめられっ子なの」

 

ハジメ「昔からトラブルに巻き込まれやすい体質でな……なんでか知らないけど、いろんなやつらにつっかかれて、それで学校に行くのも嫌だったときがあった」

 

ハジメ「そうしているうちに、中学校とかに行くのが嫌になって……その時の父さんと母さんが、深く突っ込んでこなかったのを覚えてるよ」

 

ハジメ「行きたくないってことを、こっちが言わずとも理解してくれた。精神的に不安定だったときは、父さんの会社や母さんの仕事場でちょっと働かせてもらって……そこで仕事による技術を身に着けたんだ」

 

──……素敵なご両親だな

 

ハジメ「……あぁ、俺が帰りたいって気持ちもわかるだろ?」

 

──しかし、それだけ人気クリエイターなら家なんかもデカいんじゃないか?

 

ハジメ「そりゃな。クリエイター云々を抜きにしても父親が社長だから近所の家と比べて結構デカいぜ?」

 

──おんやぁ、自慢話かなぁ?

 

ハジメ「あー、そりゃもちろん自慢話よ。足を伸ばせる湯船きんもちぃぞぉ?」

 

──……

 

──……正直な所を言うと、異世界に連れてこられたこと、スッゴイ嫌だっただろ。お前

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「ハッキリ言って、もうあれこれ言ってもしょうがねぇだろって部分もある。現実をしっかりと直視して、それでもあきらめない気持ちで……」

 

ハジメ「元の世界に戻って見せる。それが俺の信念だ」

 

──……そうか……

 

──……

 

──……なぁ、お前は元の世界で、『何を』してきた?

 

ハジメ「? 『何を』……?」

 

ハジメ「いや、だから、俺はいろいろとオタクな活動を」

 

──違う、そこじゃない。お前の実家の話じゃない

 

 

──お前、学校で『何か』したことあるか?

 

 

ハジメ「……? いや、えーと……そりゃ……」

 

ハジメ「……んー…………」

 

ハジメ「とーくーにー……ない? ない、かな……?」

 

──……

 

ハジメ「あんま目立ったこととかしてないんだよな。俺」

 

ハジメ「元々、進路は決まっていたし、卒業できるほどの成績は収めていたし」

 

ハジメ「だから……学校のことで思い出深いことなんて……」

 

──そんなわけないだろ?

 

──学校には学校行事があるはずだ

 

──体育祭、文化祭、発表会、試験、修学旅行に卒業旅行……

 

──……あるはずだろ?

 

ハジメ「んー……んー……」

 

ハジメ「……一応、どれも参加してたけど、徳に思い至るものなんて……」

 

ハジメ「……あっ! あったあった! 確か去年の体育祭!」

 

──……体育祭?

 

ハジメ「あぁ、俺が参加してた時のことなんだけどさ。当時クラスにいた真面目な奴がいて……あぁ、劣化光輝って言うのかな。クラスには一人いる感じの真面目なタイプ?っていうか……」

 

ハジメ「こう、俺に言ったんだよ。もっと練習に参加しようよって、努力すればもっと早く走れてたかもしれないよって」

 

──……

 

ハジメ「……まぁ、あんまり気にかけない様にしてたんだけどな」

 

──……なんで?

 

ハジメ「だって、学校行事なんてどうでもよかったし、学校なんて卒業したらもう誰とも会わないだろ?」

 

ハジメ「本気で付き合う必要もないだろ。『どうでもいい』んだよ」

 

ハジメ「学校で知り合ってるだけの、そんな関係なんだから」

 

──……

 

──ハジメ、お前は『変わった』って、言ってたな。あの奈落の一件で

 

ハジメ「……あぁ、変わったって思ったよ」

 

ハジメ「自分の世界に帰れるなら、俺はなんでもするって……」

 

──……本当に、そうなのかな?

 

ハジメ「は?」

 

──……

 

──ハジメ、実はお前に一つ隠していたことがある

 

ハジメ「……何をだ」

 

──……お前を奈落に突き落とした犯人を私は知っている

 

ハジメ「……」

 

──……知りたいか?

 

ハジメ「……クラスメイトの誰かなんだろ。それでもって、俺に対してそうするほどの相手……」

 

ハジメ「……四名ほど思い当たる人物がいる」

 

──例のグループと人数が一致してるな。もう答えは出てるんじゃないか?

 

ハジメ「……」

 

──……

 

──なぁ、お前って檜山と光輝という人物をどう思う?

 

ハジメ「……後者はともかくとして前者は答えと受け取っていいのか?」

 

──なぁに、こっからは単なる雑談だよ

 

──……聞かせてくれよ。どう思う?

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「天之河は、はっきり言ってとんでもない思い込み野郎だ」

 

ハジメ「自分のことを正しいと信じ込み、自分が望んだことなら何でも思い通りになると思い込んでいる」

 

ハジメ「しかも、そこに才能が備わっているのがタチが悪い。自分のわがままを貫きとおせる実力と環境が、あいつ自身を無意識のうちに増長させてしまった」

 

ハジメ「しかも何か不都合な現実があれば、自分の中で都合よく解釈する勇者(笑)。救いようがないし……救う気もなければ関わりたくもない」

 

ハジメ「……まあ、そうなる上での何かの環境が……過去にあるんだろうが。それ以上は俺が知りようがないな」

 

──……すごいな。お前、ほとんと天之河と話したことないんだろ?

 

──その洞察力……天職によって授かったものだけでは説明がつかないな。元からこうだったってコトか……

 

ハジメ「正直、学校にいた時からめんどくさいやつだったよ」

 

ハジメ「こうして離ればなれになって……清々したかな。そう考えると奈落に落ちたのも実はラッキーって気持ちがあるかもな」

 

ハジメ「……次は檜山……檜山、だが……」

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「生粋の負け犬。これが、檜山大介だ」

 

──うわーお、ばっさりじゃん

 

──……言い切れるだけの何かはあるのか?

 

ハジメ「とんだ小悪党だよ。あいつのことはクラスの中だけでなく、たまーに学校の外でも見かけたことがあるからよくわかる」

 

ハジメ「アイツは基本的にガラの悪い強者にこびへつらうんだ。自分よりも年上の、明らかにやくざみてぇなのにへこへこしてな」

 

ハジメ「しかもあいつは自分から何かをしようとはしない。媚びを売っている強者のおこぼれを預かる、見下げ果てたやつだ」

 

ハジメ「チンピラ、単なるバカ、自分より強いやつがいればソイツにへりくだって頭を下げる小物。どうあがいてもかわりゃしねぇし、どうにもならねぇやつだ」

 

──……んー、なんか結構ぼろくそだけど……

 

──ちょっぴり個人の恨みあったりする? やっぱり

 

──この場でぼろくそに言うあたり、内心はそれらの言葉を投げつけてやりたかったんだろ?

 

ハジメ「……別に。ただ、あの頃は争いごとが嫌いだったし……仮に絡まれても土下座してやり過ごしてただろうさ」

 

──……やり返そう、とは思わなかったんだな

 

ハジメ「そうすれば争いが始まる。ハッキリ言ってさ、めんどくさいんだよ」

 

ハジメ「アイツらとは関わりたくないし、なのにあっちから一方的に絡んでくるしで……」

 

ハジメ「何があっても無視をして……卒業にまで持ち込めばそれでオーケーかなぁってさ」

 

──……だけど、学校生活を考えたらそいつらは邪魔になるだろ?

 

──対処しようって気にはならなかったのか?

 

ハジメ「ならないね。そいつらは特に邪魔でしかないし、俺にとっては単なる障害物だ」

 

ハジメ「……もしかして対処って話し合いか? そんなもんが通じるもんかよ。特に天之河に至っては、お得意のご都合解釈を押し付けて自分の我を貫き通すだろうさ」

 

 

ハジメ「話し合いも無駄。何をしても無駄。それがソイツらなんだよ」

 

 

──……そうか、そうだったんだな……

 

──……わかった、雑談はここまでだ。さて、お前の現状だが……

 

ハジメ「……ここは夢だよな。覚めたら明日だから……」

 

ハジメ「あ、そうだそうだ。明日はグリューエン大砂漠へ行くために、その途中でホルアドによる予定がある」

 

ハジメ「イルワの頼みごとがあってな。ま、そこはついでだ。用事を済ませたらすぐに次の場所へ向かうよ」

 

──……そうか

 

ハジメ「……! 夢から覚める時間が来たか」

 

──……また、会おうハジメ

 

ハジメ「あぁ、次はもっと面白いゲームを頼むぜ」

 

──……ふふっ、期待しておけ

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

【ギルド、ホルアド支部】

 

遠藤「──ってことで頼む!! みんなをっ、救ってくれ!!」

 

ハジメ「……」

 

遠藤「メルド団長も……騎士団員たちもっ……みんなみんなっ、殺されたっ……! このままだと、天之河たちもいつまで持つか……!!」

 

ハジメ「……」

 

遠藤「このままだと白崎さんもヤベェ! 一刻の猶予もないんだ!!」

 

ロア「俺からも頼む……と、言っておこうか」

 

ロア「お前の話は聞いている。ウルの町での無双……その力があれば、オルクスにいる魔人は敵じゃねぇだろ。それこそ……」

 

 

ロア「──『魔王』と呼ばれるくらいにはな」

 

 

ハジメ「勘弁してもらいたいものだな。俺はいくらなんでも魔王ほど弱くはねぇよ」

 

ロア「ふっ、魔王をザコ扱いとはな。これは大きく出たな」

 

ミュウ「そうなの! パパはとーっても強いの!」

 

ロア「ははっ、そうかい」

 

ハジメ「……」

 

ハジメ(フューレンを出た後の俺たちは、イルワの手紙をホルアドのギルド支部長であるロアに手紙を渡した)

 

ハジメ(俺たちの金ランクへの昇格要請と便宜……今後、もっと俺たちがこのトータスで行動しやすくするためにだ)

 

ハジメ(……ただ、ちょっとした成り行きでフューレンに巣くっていた犯罪組織をぶっ潰し、奴隷にされていたミュウという少女を助けたというおまけはあったが)

 

ハジメ(そう思ってここに来たら……『コレ』だ。オルクスで魔人族に絡まれた大ピンチの光輝たちを救ってくれと言ってる遠藤……)

 

ハジメ「……遠藤、ハッキリ言ってお前たちはクラスメイトという関係で、それ以上の関係はない」

 

遠藤「なっ……」

 

ハジメ「俺は俺だ。魔人族との戦いなんて知ったことじゃないし、元の世界に戻るために戦うだけだ。お前たちの事情なんて知らないね」

 

遠藤「そ、そんなっ……」

 

ハジメ「……と、言いたいところなんだがな」

 

遠藤「えっ?」

 

ハジメ「そうは問屋が卸さねぇんだろ。支部長さんよ」

 

ロア「……依頼を出そう。『勇者たちの救出』だ」

 

ロア「さすがに無条件ってなれば上がいろいろと利用しようとしてくるだろうしな。対外的に、ってやつだ」

 

ハジメ「だ、そうだ。おら、案内しろ」

 

遠藤「わ、わかったって……ったく、お前ほんと──」

 

 

遠藤『変わった』なァ……」

 

 

ハジメ「……かわった、ね」

 

ハジメ(……あぁ、そうさ。俺は変わったさ。変わらなければ、生き残れないからだ)

 

ユエ「行こう、ハジメ。私は、ハジメの行くところならどこへでも……」

 

シア「もっちろんですぅ!」

 

ティオ「ふふふっ……まったくご主人は」

 

ハジメ(……)

 

ハジメ(本当は切り捨てればそれでいいのかもしれない)

 

ハジメ(だけど、頭のなかで繰り返すように反響する……先生の『寂しい生き方』が心をかすめる)

 

ハジメ(……本当は、それ以上に夢の中が気にかかるけれど)

 

ハジメ(……)

 

ハジメ(まぁ、いいだろう。あの月下の語らいで、守ってくれると言ったアイツを……白崎を放っておけない)

 

ハジメ(アイツを助けることが、きっと寂しい生き方から……脱出できると思うから)

 

ハジメ「……ただ、このままだとヤバいかもな」

 

遠藤「えっ、な、なにがだよ」

 

ハジメ「戦ってるのが、天之河ってところだ」

 

ハジメ「あいつは……あの時は言わなかったが、奴にはどこか戦争ではないと考えている節がある」

 

ハジメ「そこに、人間に似た敵……はたして、命を奪えるか……」

 

遠藤「で、でも! 殺されかけてんだぜ!? さすがに天之河も……!」

 

ハジメ「……急ぐぞ。このままじゃ手遅れになる」

 

 

【……数日前、光輝が見た夢の中】

 

 

──……敏腕弁護士

 

──……子供のころからの夢、『ヒーロー』

 

──……なんともまぁ、お粗末でちっぽけなものをお持ちのようだな……なあ?

 

光輝「……お、お前は……」

 

光輝「!!! 思い出したぞ! お前は、以前に俺をこの世界に連れてきた……!!」

 

光輝「……いや、でも、おかしいぞ。俺は、確か寝ていて……ベッドの上で……それで……」

 

光輝「……いや、ここは夢……『夢』なのか!? まさか!?」

 

──おぉ? これは驚きだなぁ。まさか自力で夢の中の世界に気づくとは

 

──……や、これはかーなーり、ビックリ。勇者と呼ばれるだけのことはあるわけだ

 

光輝「くっ……! な、なにが驚きだ! おどけやがって!!」

 

光輝「剣……鎧……! クソっ、夢の中だから……武器は持ち込めないか……!!」

 

──く、ククク……なんともまぁ、無様な姿よ

 

──あぁ、哀れな光輝君。かわいそうな光輝くん!!

 

──特別な力も、そのご自慢の能力も! 今こうして晒されているままのお前はなーんにも出来ないまま! なんともまぁ滑稽よ!

 

光輝「滑稽……滑稽だと……!」

 

──あぁ、そうだろう? なにせ……

 

 

──お前は、人殺しの戦争の中にいながら夢物語にいると思い込んでるんだからな

 

 

光輝「……は、え……?」

 

──意識していなかったのか? この戦いは最初から戦争だ。血で血を洗い、命を奪うための戦いだ

 

──お前、この『戦い』をなんだと思ってたんだ?

 

光輝「そ、それは……」

 

光輝「! みんなを! みんなを守るための戦いだ!

 

──『みんな』? 『みんな』って、誰?

 

光輝「だ、だれって……それは……」

 

──クラスメイトのこと? それともトータスにいる人たちのこと?

 

──……あぁ、もしかして光輝くんってみーんな救おうとしてるわけ?

 

──わぁぁぁぁ、つよいゆうしゃさまだぁ、こうさんしまーす

 

──……そんな考えで、解決できると思ってるの? マジで?

 

光輝「そ、れは……そうさせて……」

 

──いいや、出来ないね。出来るはずもない

 

──敵も……魔人族も同じ命であり文化を持っている。そうなれば、徹底的に抗ってくる

 

──自分たちの国を守るために、自分たちの種族を守るために

 

──……そう、自分たちの国を守るため、人間を守るためにお前たちを召喚したようにな……

 

光輝「……ぁ、あっ……」

 

──……お前には、非凡な才能があった。ありすぎた

 

──その才能と他者に好かれる人徳があったがゆえに、お前は己の欠点と向き合う機会を与えられることがなかった

 

──……ハッキリ言って、哀れだと思うよ。お前には、『機会』がなかったんだ

 

光輝「……『機会』……?」

 

──……

 

──人が、人が何かに『成る』とき、どうやって変わると思う?

 

光輝「……そ、それは……」

 

光輝「……経験?」

 

──ん、近い。もうちょっと掘り下げよう

 

──なら、その経験を得られる場所とは?

 

光輝「……『環境』……?」

 

──……もう一声

 

光輝「……『社会』……?」

 

──……おしい、もういっちょ

 

光輝「……」

 

光輝「……?」

 

光輝「……ん?」

 

 

光輝「……『出会い』……? 『他人』……?」

 

 

──……正解だ、と言っておく

 

光輝「えっ、これが……?」

 

──その通りだ。天之河光輝。それが、答えだ

 

──……ヒトは、誰しもが知能と意識を与えられてこの世に生を受ける

 

──生まれ持った……知的生物は、すくすくと成長していく中で、知能を高め、やがては確立した『己』を、『個』を得ていく

 

──だが、ヒトが一人いるだけでは何かを得られるきっかけは得られない

 

──どれだけ頭をひねって考えようと、自分一人では答えとなるものは導き出せないからだ

 

光輝「……だから、他人と関われと? いや、関わることで考え方をひろげろ、と……?」

 

──……

 

 

──ヒトは、一人で生きることは絶対に出来ない

 

──自身を近く出来る己と、己を認識してくれる他人がいて、己自信を深めていく

 

──ゆえに、ヒトはそんな環境を……『社会』と呼ぶのだ

 

 

光輝「……お前は、いったい」

 

──……『協力者』と言っておく。こうしてお前にアドバイスを与えるのは、そんな私の経験則によって、お前を深めるためにある

 

光輝「協力者……?」

 

──天之河光輝。お前は、基本的に善に寄った人間だ。その善性があるがゆえに、他者を慈しみ、労わるという事を行動に移すことが出来る

 

──実行できるだけの行動力を併せ持ち、多少のことなら成し遂げられる才覚を持ち合わせている。統率力と行動力により、お前の力で他者のよりどころなりえる

 

──……だが、それらによって裏付けされる自身その物が、お前自身のエゴと重なり合ってしまい……

 

──その正義の否定が、己の否定に繋がり、拒絶反応を出してしまう

 

光輝「……っっ!!」

 

──……心当たりはある、か。当たり前だよな。お前、だいぶ前に例の皇帝にボコボコにされて……言われてたもんな

 

──思うところは、あるんだろう? お前自身の正義に、揺らぎがあることが

 

光輝「……だ、だまっ……!」

 

──耳を閉じても無駄だ

 

──目を逸らしても無駄だ

 

──ここではお前の心に語り掛けている。夢であり、心の世界。絶対に、お前をこの事実から目を逸らさせない

 

光輝「だ、だけどっ、俺はっ……!!」

 

──……そして、何が最悪なのか

 

──それは、お前自身が、その正義によって裏付けされた自身によって人格形成されたがために……

 

──己の悪意やエゴを……正義や理論武装で纏い、自分のわがままをさも正論のようにすり替えてしまう

 

──だからこそ、そんな耳の痛い現実から目を逸らすために、お前は耳を閉ざして、心の防衛反応のままに取り繕う

 

 

──それが……お前の『ご都合解釈』の真実だ

 

 

光輝「……っっ!!」

 

──自分を否定されたくない。自分の正義を、自分を否定されたくない

 

光輝「やめろっ……!」

 

──ずっと正しいままの自分でいたい

 

光輝「やだっ……!」

 

──だから、ずっと自分のことが好きな人たちに囲まれていたい

 

光輝「いやだっ……!!」

 

──……だから、自分の気に入らない人間は消えてほしい

 

光輝「っ! やめろっ!!」

 

──……なぁ、そんな脳内都合解釈するような人間が……奈落に落ちた邪魔者に対して、哀れな死者だと思うか?

 

──本当は、内心喜んでいたんだろう。邪魔者が消えてよかったと

 

光輝「そ、れはっ……!!」

 

──……お前の中でそう片づければ、それでいいだろう

 

──だが、お前が向き合わない限り……

 

──彼(クラスメイト)らは死ぬぞ

 

光輝「──……っ……」

 

──……お前は、このままでいいのか

 

──お前だけが、ずっと都合の良い夢に逃げていいのか

 

──本当はもう、分かってるはずだ。ここまで、言われてるのだから

 

──……天之河。お前が、お前の信じる正義のままに生きると言うのならば

 

 

──どうか、お前に正義を教えた祖父の言葉を忘れるな

 

 

光輝「……」

 

──……あとはお前次第だ

 

光輝「……」

 

──……さて、夢から出る時間、か……

 

光輝「ま、待ってくれ。お前は一体……」

 

──……時が来れば、わかるさ

 

──だけど、この雑談の記憶はお前から奪っておく

 

光輝「……えっ!?」

 

──安心しろ。あくまで記憶を奪うだけだ

 

──お前が、ここで何を感じたか、何を思ったかは残る

 

──あとは……お前自身が向き合うんだ

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

 

【オルクス大迷宮】

 

遠藤「み、みんなぁ! 無事かー…………えっ……?」

 

ハジメ「……オイ、これはどういうことだ」

 

ユエ「……話が、ちがう……」

 

シア「な、なんですか、これ……?」

 

ティオ「……これは……」

 

ハジメ「なんで……」

 

 

ハジメ「……『勝ってる』んだ……?」

 

 

カトレア「が゛ぅ゛っ……!! が、はぁ゛っ……!!」

 

光輝「……無駄だ。お前はもう動くことは出来ない」

 

カトレア「お、おば゛ぇ゛っ……!!」

 

光輝「……手足の付け根は切った。詠唱を封じるために口を踏み砕いた。お前に出来る限りのことをやらせないために、手を尽くした」

 

光輝「……」

 

──ビュンッ……ザシュッ……!!

 

カトレア「っっっ!!! ォ゛っ、オ゛っ……!!」

 

光輝「……目も切った。お前が、捕虜になるなら仲間に治療させる」

 

光輝「……そこで、眠っててくれ」

 

………………

 

香織「南雲、くん……!! 南雲くん……!!」

 

ハジメ「あー、抱き着いてくるのは良いんだけどな……」

 

ユエ「むぅ……」

 

ハジメ「周りの視線がすっげぇ痛いから……その、離れてくれ」

 

光輝「……」

 

檜山「……」

 

雫「お、驚いたわ……あなた、本当に南雲くん……なのよね」

 

ハジメ「あー、そうだそうだ。お前たちの知ってるハジメさんだ」

 

龍太郎「マジかよ……てっきり死んだかと……」

 

ハジメ「俺も驚いているよ。ただ、存外しぶといらしい」

 

香織「メルドさんも治療した……! あとは、そっとしておいてあげれば大丈夫だよ!」

 

ハジメ「そうか……で、いろいろ聞きたいことがある」

 

ハジメ「天之河……あれは、お前がやったのか」

 

光輝「……あいつが、メルドさんを人質にし始めたところで、力が沸き上がったんだ」

 

光輝「どうやら『限界突破』の更なる力を引き出せたらしい。それで、なんとか逆転出来た」

 

光輝「その……手間をかけさせたな。駆けつけてくれて、ありがとう。それと……」

 

光輝「……生きてて、よかったよ」

 

ハジメ「……」

 

雫(……? 光輝、なんか変わった……?)

 

ハジメ「……実の所を言うと、驚いている。お前が、あんな手段を取るなんて……」

 

光輝「……しかたない、戦争だから……何て言ったところで。そんな言葉で納得できるほど、俺はまだ割り切れない」

 

光輝「だけど、あそこで……殺すまでは出来なくても、再起不能に落とさなければ仲間が死ぬ、みんな殺される」

 

光輝「決断が、必要だったんだ。みんなを守れる決断を……」

 

ハジメ「……勇者であるはずの、お前がか」

 

光輝「……南雲、お前は勘違いしている」

 

ハジメ「なに……?」

 

光輝「……なんでか知らないけどな、考えるきっかけが出来たんだ」

 

光輝「俺たちは、神に選ばれた使徒かもしれない。だけど、それ以前に俺たちは学生なんだ。地球の、平和な日本人なんだ」

 

光輝「そんな平凡な人間が、地球人が……突然この世界に連れてこられたなら、何が何でも生きなきゃいけないんだ」

 

光輝「俺は……俺の無責任な言葉でみんなを扇動してしまった。みんなを先導してしまった」

 

龍太郎「……」

 

雫「……光輝」

 

光輝「それならば、俺はせめてその責任を取りたい。みんなをだれ一人、欠けさせないために」

 

ハジメ「……それが、お前が勇者でいられなくてもか」

 

光輝「そうだ、それでいい」

 

 

光輝「俺が守りたいのは『自分』じゃない。俺の信じられる『正義』を守りたい」

 

 

光輝「だから、この正義に誓って言うよ」

 

光輝「……南雲、生きててくれて、本当によかった」

 

ハジメ「……」

 

ハジメ(なんだ、これ)

 

ハジメ(天之河は、『聞き分けが悪くて』、『人の話を聞かないやつ』だったのに……)

 

ハジメ(なんで……なんで……?)

 

ユエ(……こいつの目、色が違う……)

 

ユエ(ティオには遠いけど……何かを成し遂げる目をしている……少なくとも負け犬の目じゃない……)

 

ハジメ「……とにかく迷宮から出るぞ。ついてこい」

 

光輝「……みんな! 怪我をしてる者がいたら香織に治療してもらえ! 支え合って迷宮から脱出するぞ!」

 

メルド「……光輝」

 

光輝「……」

 

メルド「俺たちは……この国は……お前たちに人殺しを……」

 

光輝「メルドさん、その先はもう言わないでください」

 

光輝「……覚悟は出来ています。とにかく……」

 

カトレア「っ……!!」ビクゥ!!

 

光輝「……こいつを連れて行きましょう」

 

 

 

檜山「……」

 

恵里「……」

 

………………

 

【オルクス大迷宮、入場ゲート広場】

 

ミュウ「パパー! すっごい、すごいの!」

 

シア「ふぇー、絡んできたチンピラがぼろくずのようですぅ……」

 

ハジメ「ったく、絡んできやがって……」

 

香織「……な、南雲君……すごいね……」

 

光輝「……お前、結構その子たちに慕われてるんだな」

 

ハジメ「……変な目で見るなよ」

 

光輝「みないよ。人の女に目をかけるほど下品じゃないさ」

 

龍太郎「す、すっげぇ美人……改めてみると……」

 

鈴「うぅ……助かってよかったよぉエリリン……!」

 

恵里「……そ、そうだね。よかったよね」

 

檜山「……」

 

檜山(白崎……あいつに、あんなべったりして……)

 

檜山(……あんな、キモオタと……)

 

ハジメ「……さて、これからギルドの方に戻らないとな」

 

香織「! な、南雲君……本当にいっちゃうの……?」

 

ハジメ「……俺がここに来たのは依頼で来ただけだ。用は終わった。お前たちとはここでお別れだ」

 

香織「……そ、そうなんだ」

 

光輝「……」

 

 

光輝「南雲、香織を同行させてやってくれないか」

 

 

ハジメ「……なに?」

 

檜山「っ!!!」

 

恵里「……っ」

 

香織「光輝くん!?」

 

雫「こ、光輝……?」

 

光輝「……彼女の回復魔法は強力だ。香織の力は、きっとお前の冒険の役に立つはずだ」

 

光輝「ただ、香織が抜ける穴はデカい。交換条件……一方的なものになるけど……」

 

光輝「お前がもしも地球への帰還方法を見つけたら、俺たちにも教えてくれ」

 

光輝「この戦い、心に負担を負って引きこもってるのもいるんだ。せめて、彼らだけは地球に帰してやってほしい」

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「本当に一方的だな。それでこれからも協力しようってのか?」

 

光輝「……いや、逆も用意するつもりだ」

 

ハジメ「逆……?」

 

光輝「俺たちが見つけたら、お前にも教える」

 

光輝「……そして、どちらに転ぼうとも」

 

光輝「俺たちと帰ることを約束してくれ」

 

ハジメ「……なにを、舐めたことを──」

 

光輝「香織は、ずっとお前のことを心配していた」

 

ハジメ「……っ」ピタッ

 

光輝「お前が行方不明になった後も、お前のことをずっと心配していたんだ」

 

光輝「不甲斐ない俺たちのことを恨んでくれても構わない。俺たちに力が足りないがゆえに、お前を……奈落に突き落として……」

 

光輝「お前を……大人しいお前を冷酷な人間に変えさせてしまった」

 

ハジメ「そ、れは……っ」

 

光輝「クラスメイトのことを信じられないなら、それでいい。お前の心の距離感が、信頼関係よりも利己的なつながりでしか信じられないなら……」

 

光輝「俺たちを利用する気持ち、それでもいいから接してほしい」

 

香織「……光輝、くん」

 

ハジメ「っ……!! ふざけたことを言うな!!」

 

ユエ「は、ハジメ……!?」

 

ハジメ「俺はもう、お前たちとは関係ない! 無関係だ!」

 

ハジメ「元の世界でも単なる同郷の人間でしかない! お前は単なるおせっかいで、邪魔なやつだ! それは変わらない! 永劫に!!」

 

光輝「……」

 

ハジメ「俺はもう変わったんだよ! 奈落で変わった! 命だってたくさん奪ってきた!!」

 

ハジメ「それに、もしも俺をクラスメイトだと言うなら……」

 

──ガチャッ……

 

檜山「! じゅ、銃……!」

 

ハジメ「お前は、結局その魔人族の女を殺せなかった……!」

 

カトレア「っ……っ……!!」

 

ハジメ「自分だけキレイごとを並べ立てて、イヤなことに目を背けておきながら……何がクラスメイトだ……!」

 

ハジメ「それとも何か……? お前はそいつを殺せるのか? あ゛ぁ゛!?」

 

光輝「……」

 

──シャキンッ……

 

ハジメ「──……えっ……?」

 

カトレア「っっ……!? !?!?」

 

光輝「……思えば、こいつにはいろいろと情報を聞きたいと思っていた」

 

光輝「いや……言い訳だな。そう言い聞かせて、殺すことを避けようとしてたんだ」

 

龍太郎「こ、光輝!?」

 

雫「ま、待って!!」

 

光輝「……俺はもう、逃げない」

 

──ビュンッ……!! ザシュッ!!!

 

ハジメ「なっ……!!」

 

ユエ「っ!!」

 

シア「み、みちゃだめっ……!」

 

ミュウ「……っ」

 

ティオ「……死んでおる。完璧に……」

 

光輝「……南雲」

 

光輝「これで、お前と『並んだ』」

 

ハジメ「……ぁっ…………」

 

光輝「……ハッキリ言わせてもらう。俺は、お前に嫉妬していた」

 

光輝「香織と一緒に居るお前を、妬んで……それを、関わってくれるお前に嫉妬して、それらしい言葉でお前に嫌味をぶつけてきたんだ」

 

光輝「だから、これは本心だ」

 

光輝「俺は、お前のためになることをしたい。もう、お前を一人にはさせない」

 

ハジメ「あ、まのがわっ……」

 

光輝「押しつけがましい、おせっかい焼きな善人バカなら」

 

 

光輝「そうだ、それでいい。それなら、『孤高の人殺しを一人ぼっちにしたくない』という俺のわがままを……お前に押し付けさせてくれ……」

 

 

ハジメ「……」

 

雫「……で、でも……これで敵の手掛かりが消えた」

 

龍太郎「……しょうがねぇだろ。どっちにしろ、本当に言う事を聞くかどうか……わからねぇんだからな」

 

ハジメ「……」

 

ハジメ(……ちがう、ちがうちがうちがう!!)

 

ハジメ(こいつが変われるわけがない! あいつは……天之河はそんな人間じゃない!!)

 

ハジメ(洗脳か!? それとも、それともっ……! 神の力が、こいつに干渉してるのか!?)

 

檜山「……」

 

ハジメ「……! 檜山っ……」

 

檜山「っ……」ビクッ

 

ハジメ「……お前、炎魔法が好きだったよな」

 

檜山「……」

 

ハジメ「それこそ……相手をぶっ飛ばしてしまうくらいに」

 

檜山「……」

 

ハジメ「……」

 

ハジメ(さっきから、こいつが静かなのが気になる……)

 

ハジメ(あれだけ白崎に執着していた……こいつが……?)

 

ハジメ(……こいつは、いったい……)

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

 

【……数日前、『何回目』かの檜山の夢】

 

檜山「でっよぉぉぉぉぉぉぉ!!! いやもう、ほんとウケるんだけどさ!! ソイツめっちゃとちってOBに追いかけられまくり!!」

 

檜山「いやマジマジ最高にウケるんだぜぇ!? もう、ズボン脱げてぺろーんってしちゃってさ!」

 

──はははははははは! そりゃ愉快な話だ!

 

──それでそれで!? 話の続きは!?

 

檜山「へへへっ、あぁいいぜ。もっと聞かせてやるよ」

 

檜山「んでなぁ、そのOBは繁華街で脱泡ハーブとか売っててよ……」

 

………………

 

──いやー、面白かったぁ!

 

檜山「だろぉ? いやぁ、あんまこういうの話す機会なかったしさぁ」

 

檜山「なーんか、たのしい時間を過ごせた気がすんわ! あんがとな!」

 

──ハハハハ……いやいや、それはどういたしまして

 

──こう見えて結構暇な立場でね。たまにはこうして雑談するだけでも気が解れるからうれしいよ

 

檜山「お? マジ? んじゃあなぁ……もーっと面白い話あるんだけど聞く?」

 

──おぉ! お前のアウトローな人間関係話は結構おもしろいしな! 聞かせてくれよ!

 

檜山「へへっ、いいぜ」

 

………………

 

──あー……笑った笑った! いやもう、捧腹絶倒!

 

檜山「だろだろ? 女と話すための自慢話やタネはいくつか用意しておくもんだぜ」

 

──へー、意外や意外……あれ? もしかしてお前ってモテる……?

 

檜山「……ん、まぁな。元々、学園生活はエンジョイしてる方だしさ。こう見えて元カノも何人かいるんだぜ?」

 

──あらー、それじゃあ檜山くんったら下の経験は……

 

檜山「ばっちし♡ チューガクん時に適当に付き合った女とな!」

 

檜山「ま、お互いに飽きて適当に分かれたんだけどな。ヤりたいだけの女なんていくらかいるからソイツ呼び出せばいいだけだし」

 

──はぇー……結構楽しんでんなぁ人生

 

檜山「そりゃ当たりめぇだろ。人生一つしかねぇんだからよ。欲しいもんはぜーんぶ欲しがって当たり前なわけ」

 

檜山「欲しいもんは下級生からぶんどってたし、喧嘩も……まぁ、そこそこ勝てたりはしてるけど」

 

──でも弱いヤツとかなんでしょ?

 

檜山「……う、うるへぇー」

 

──へー、じゃぁだとしたら……

 

──……白崎香織も、欲しかったんだろうな。そうまでした

 

檜山「……」

 

──あ、触れてきやがったなこいつって顔してるね今

 

檜山「……」

 

──……前にも言ったけど、別に責める気はないよ。ただ、お前のことを知りたいだけだ

 

──お前が白崎を欲しがったのは

 

檜山「ヤりてぇから」

 

──あらシンプル

 

檜山「あとめっちゃ美人だから」

 

檜山「学校の二大女神って、それだけでもう欲しくなるじゃん」

 

檜山「そいつと恋人になれば、周りの連中にも自慢できるしな。いわばトロフィーよトロフィー」

 

檜山「……ほしくって、さ」

 

──……

 

檜山「……ほしかった、はずなんだけど……な」

 

──……言い当ててやろうか

 

──お前はもう、白崎に対してそれだけの『価値』を感じ取れてないんだろ

 

檜山「……っ」

 

──……当然だろうな。人を死に追いやるというのは、並大抵の行動じゃない

 

──人生に大きな傷を残すし、その後の人生において決してぬぐえない経歴を残す

 

──お前には、さんざんそう説いてきたし、『彼女』にも関わらせないようにしてきた

 

──そんな……小悪党と呼ばれてるお前でも、もう気づき始めてるんだろう

 

 

──……『罪悪感』に

 

 

檜山「……」

 

──……人間、生まれながらにして悪人はいない。あるのは、善も悪もわからぬまっさらなままに生まれてくる子供だ

 

──子供は、生きている内で、いろんな人とかかわって成長する。善か悪かを自分の判断で決め、清濁を併せ持つ『大人』になる

 

──……故に、ある程度内面的に成長し、考えられるお前は……白崎という人物を、他者の命を奪ってまでの価値を見いだせなくなってきた

 

──この時点で、お前は単純な悪と善で分けられなくなってきた。いや、己のエゴが悪と知り……向き合ってしまった。

 

──檜山、お前は……どっちになれるんだろうな

 

檜山「……」

 

──……ふむ、ちょっと趣向を変えよう

 

──檜山、お前の子供のころからの話を聞かせろ

 

檜山「は……?」

 

──お前の昔の話、家族との話を

 

檜山「……」

 

檜山「俺んちはさ、別に恵まれてるわけでもなければ、特に特別なことはない一般家庭だよ」

 

檜山「親父もお袋も、ちょっと過保護な部分もあるけど俺のことに口を出してこない。ただ……」

 

──ただ?

 

檜山「……親父もお袋も、何かあれば駆けつけてきてくれた」

 

檜山「ガキんときにクラスメイトにけがを負わされて、すっげぇ剣幕で相手の親に怒ってな。けがをさせたんだ、治療費はいらないからせめて謝れって」

 

──すごいな。子供のためにそこまでしてあげられる親なんて、そうそういないよ

 

檜山「……かもな」

 

檜山「だから、なのかな。親父もお袋も、何があっても俺の味方だって言って……」

 

檜山「……なんでも、言う事を聞いてくれて、おもちゃもゲームも誕生日やクリスマスじゃなくても、買ってくれて……」

 

檜山「……ははっ、なんだこれ……おれ、甘やかされて生きてきたんだなぁ……っ」

 

──……

 

──お前に、一つ言っておくことがある

 

檜山「えっ……」

 

──……

 

 

──南雲ハジメは生きている

 

 

檜山「──ッッッ!?!? なっ、なんっ……!?」

 

──あいつは、実は奈落に落ちた後、魔物を倒せるほどの力を手に入れたのだ

 

──すでにオルクスから脱出を果たしたが、とある用事でまたその奈落に向かう予定だ

 

檜山「あいつが……生きてた……?」

 

檜山「あのキモオタが……」

 

──……今回の雑談は、お前の記憶を消させてもらう

 

──だが、この話を聞いたうえでのお前の想いはそのまま残る

 

檜山「……」

 

──檜山、お前はどうしたい

 

──何もかもほしいと思って、どんなものでも欲しいと抗おうとして

 

──薄汚く、小悪党と呼ばれようとも……それでも強請ってきたお前は

 

──次に『ほしいもの』は……なんだ……?

 

檜山「……」

 

檜山「……い……」

 

──……

 

檜山「っ……たい……っ!」

 

 

檜山「あやま゛りっ……だぃっ……!!」

 

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

 

【──現在】

 

光輝「……えっ、檜山……?」

 

香織「檜山くん……?」

 

檜山「……」

 

 

檜山「あの日、お前を奈落に突き落としたのは俺だ」

 

 

ハジメ「はっ、だろ……な──ぁ、ぇっ……??」

 

恵里「っっっ!?!?!?!?」

 

檜山「俺は、白崎のことが好きだ」

 

檜山「学校にいた時からそうだった。すっげぇ美人な女がいて、そいつがどうしても欲しくて、お前に関わっているのがすっげぇむかっぱらが立って……」

 

檜山「だからチャンスだと思った。ベヒモスとの戦いのとき、あの魔法の雨の中で、お前を殺せると思ったんだ」

 

ユエ「ま、まって……それじゃあ……!!」

 

光輝「ひ、檜山っ!! おまえっ!!」

 

檜山「っ…………う、うらむ、よなっ……そりゃっ……」

 

檜山「……それに、それだけじゃない」

 

檜山「実は、闇魔法の適性を活かして……魔人族に取り入ろうとしたやつがいる……!」

 

光輝「な、なに!?」

 

恵里「ッッ!!??」

 

鈴「え、エリリン……どうしたの?」

 

檜山「焦るよな。俺が香織を手に入れられるように、俺に話を持ち掛けてきたのは……テメェなんだからな……」

 

恵里「あっ、ああぁ……!!」

 

鈴「え……えっ……??」

 

光輝「……なんだと……」

 

雫「こ、光輝!! 離して! し、死んじゃう……!!」

 

檜山「ぐっ、げほっ、げほっ……」

 

光輝「……っ」

 

檜山「……南雲、その、俺が、やったんだ……」

 

ハジメ「ぁ……えっ、あっ……??」

 

檜山「おれが、わるいんだ……俺が、女欲しさに……まが、さした……」

 

ハジメ(まて)

 

檜山「おまえ、をっ……変えたの、わっ……ぐ、ぅ゛っ……おれ、の、せいだ゛っ゛……」

 

ハジメ(まてまてまて)

 

檜山「ご、め゛っ……ごめ゛、なざ゛っ゛……っ゛!! ごめ、゛ァ゛っあ゛っ……あ゛あ゛……!!!」

 

ハジメ(お前は、小悪党だろ)

 

ハジメ(女欲しさに粗末な悪意を持っていたクズだろ……)

 

ハジメ(な、なんで……なんであやまってっ……?)

 

光輝「……っ、その、南雲すまない。俺も、突然のことで混乱している」

 

光輝「本来であれば、お前はこいつの……命を奪っても許される立場だ」

 

ハジメ「あ、え、えぇっ……??」

 

光輝「……だけど、まだすこし待ってほしい」

 

光輝「例えお前を変えるきっかけになっても、こいつ自身の力は必要だ」

 

光輝「お前だって、手駒はいるはずだ。こいつの処罰は……すべてが終わってからでも……」

 

光輝「……中村も含めて、な」ギロッ……

 

恵里「ひっ……」

 

ハジメ「……るぞ」

 

ユエ「えっ……?」

 

ハジメ「か、かえる、ぞ……」

 

ハジメ「すこし……ゆっくり、したい……」

 

ユエ「は、ハジメ待って!」

 

光輝「……その、ユエさん」

 

ユエ「? な、なに……?」

 

光輝「……」

 

光輝「今まで、ありがとう」

 

ユエ「えっ……」

 

光輝「見ただけで、なんとなく分かる。キミたちが、あいつの支えになっていることも」

 

光輝「香織を同行させるのも、ひとえに……信頼できるクラスメイトならアイツも気を許してくれると思ったからだ」

 

光輝「どうか……あいつの側にいてあげてほしい」

 

光輝「あいつは……前々から人を突っぱねる部分があったからさ」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

 

 

【……その日の夜、ハジメの夢の中】

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「なんで」

 

ハジメ「なんで」

 

ハジメ「なんで……?」

 

──うぃいいいいいいいいいいいっす! ハジメきゅーん! ゲームやろうぜー!!

 

ハジメ「……」

 

──……ノリわるっ

 

──じゃあちょっと別パターンで、おーい南雲ー(いそのーのニュアンスで)

 

ハジメ「……」

 

──……

 

──今日の迷宮のことでか

 

ハジメ「……なんで、知ってんだ」

 

ハジメ「いや、知ってて当たり前か……」

 

ハジメ「考えりゃ……わかりそうなこった……!」

 

ハジメ「俺一人だけなんて……ありえない!! 他のクラスメイトにも、干渉している可能性があったんだ……!!」

 

──……

 

ハジメ「答えろ……! あいつらに何をした……!」

 

ハジメ「洗脳か! それとも認識の改変か!?」

 

ハジメ「……それとも誰かが成り代わって……」

 

──あれは本人たちだ

 

──まぎれもない天之河光輝と檜山大介

 

──ただ、彼らをお前のように夢の中で話しかけたのは確かにやった

 

ハジメ「……だろうな。お前は、この力でアイツらになにをしやがった……?」

 

──……く、ククク……くくじゅうはち……!!

 

ハジメ「! お前……やっぱり……!」

 

ハジメ「あいつらがああなるなんて、あり得なかったんだ……! やはり、なにか洗脳を……!!」

 

──知られたらしょうがないな……教えてやるよ……!

 

 

──『人生相談』

 

 

ハジメ「……は……?」

 

──いや、人生相談だって

 

──あのくらいの歳の子ってだいぶ不安定だからねぇ。だから年上のアドバイスを炸裂させたってわけよ

 

ハジメ「……は? いや、だって、洗脳……」

 

──……なんで洗脳なんだ?

 

──どうして洗脳したなんて思うんだ?

 

ハジメ「……あい、つらは……救いがたいくらいに、我の強い奴らだった」

 

ハジメ「そんな連中が……『変わる』わけがない……別の人間にならない限り……」

 

──……

 

──なんで、変わらないなんて思えるんだ?

 

ハジメ「なに、いって……?」

 

──人は、他者と関わるなかで自分の見識を広めていく。自身の中の固定概念を崩し、他者と感覚と知識を共有し、やがては広い社会の中で馴染んでいく

 

──誰しもが、変わることが出来る。いや、変わらざるを得ないというよりも……その人間の延長戦の上で、ヒトは変わっていくのだよ

 

ハジメ「……あ、天之河は正義をこじらせたバカで……檜山は……救いようのない負け犬で……」

 

──なんで、彼らが変われないと思っているんだ?

 

──天之河光輝

 

──思い込みの激しさはあれど、行動力に対して能力が釣り合い、思慮の浅さはあれども他者との接触を深めてきた

 

──檜山大介

 

──浅はかで軽薄な性格ではあれど、社会性と行動力に突出しており、特に目的意識や執着を持つことによる実行力を備えていた。それが、善であれ悪であれ、だ

 

──……これらの共通する部分は、彼らには成長できる余地があったということだ。彼らにも、誰かと関わる中で、誰かと考えを共有し、『変わる』こと……

 

──すなわち、成長する機会さえあれば、彼らは変われたのだよ

 

ハジメ「ち、違う……違う!! そんなっ、そんなはず……!!」

 

──……お前、まだ自分の『矛盾』に気づかないか?

 

ハジメ「…………へ?」

 

──善人バカの子供は大人に成長できる

 

──軽薄な人物は、自分の行いを改めて前に進める

 

──そんな彼らが『変われ』たのに……

 

 

──そのほかでもない……気弱で戦う事を恐れていたいじめられっこが、『魔王』に『変われた』のにか……??

 

 

ハジメ「──……あっ……」

 

──そうだ、そうだったんだよ

 

──そのほかでもない、お前自身が、他者や環境の中で『変われた』人間ではないか

 

──これまでのことを振り返ってみろ

 

──お前は、奈落の底という『環境』によって戦う事を覚えた

 

──それによって冷徹な行動を取れるようになり、命を奪う事をいとわない性格になった

 

──だけど、ユエ、シア、ティオに出会う中で……彼女たちの存在がお前をつなぎ留めた

 

──ティオの件なんてまさにそれじゃないか。お前、ユエという『他者』がいなかったら……ティオをどうしていた……?

 

ハジメ「それ……っ、それ、は……」

 

──……なによりも、ヒトには欠点があり、長所がある

 

──……これは、私個人の意見なのだがな……

 

 

──お前ってさぁ……ほんとうに『変われ』てるの……?

 

 

ハジメ「……な、なに言ってるんだ? 俺は、変わっちまっただろ?」

 

ハジメ「自分の故郷へ帰るために、俺は『敵』を皆殺しにしてきた! そのためなら、俺は切り捨て……」

 

──あ、そこそこ。それ、ずーっと気になってたんだよね

 

──あの愛子先生の話を聞いてたらさ、どーもさ

 

 

──お前、学校での生活の時からぜーんぶ切り捨ててない?

 

 

ハジメ「………………えっ、えっ……??」

 

──……お前、自分の学校生活のこと、よーく思い返してみろ

 

──なにか一つでも学校で打ち込んだことがあったか? 何か一つでもみんなと団結して……何かをやり遂げようとしたことがあったか……?

 

ハジメ「……ぁ、いや、それは……おれは……」

 

──就職先が決まってるからって言ってよたな?

 

──自分の進路が決まり切ってるからって、誰とも関わる必要がないからって……

 

 

──自分から貴重な学校生活とクラスメイト達との交流を……自分から『切り捨て』て『寂しい生き方』を選んでたよなぁ??

 

 

ハジメ「──っっ!!!」ゾッ……

 

──お前は自分で足るものを知っていた。だから誰とも関わるつもりがなかった

 

──他者との交流こそが、ヒトを変える。だが、それは言い換えれば他人と関わろうとしない限り人は変われない。ぼっちのままだったら、絶対に何にもなれないんだよ

 

──ましてや、お前は自分の進路を親が用意してくれると言って、学校の勉強にすら打ち込んでこなかった。お前が成し遂げたことは……実は『一つもなかった』

 

──お前は他者との交流を拒絶し続けた。他人は必要ないと断定してたからだ

 

ハジメ「そ、そうだ! あいつらはただの同郷で! クラスメイトというだけの……!!!」

 

 

──だからイジメられた

 

 

ハジメ「……ぁ、ぅ……ぁ……」

 

──……当たり前だよな。お前は、白崎香織の好意を無下にしてきた

 

──どんな形であれ、お前は彼女の好意を邪魔なものとして『切り捨てた』

 

──そうなれば必然的に彼女の親友はお前をよく思わない。結果、お前は檜山立ちに目を付けられた……いじめという行為は褒められたものではないが……

 

──他人なんてどうでもいいと断定し、何もしようとせず、自分からいじめられるドツボにはまった。ただそれだけじゃないのか?

 

ハジメ「そ、れは……それ、は…………!」

 

──でもお前は何もしなかった

 

──お前は一度でも天之河のことを拒絶したか? 何を言ってもどうしようもないと、お前自身が勝手に解釈して、最初からあきらめていたんじゃないのか?

 

──お前は一度でも檜山のことを非難したか? イジメるのはやめてよと……抵抗すらしなかったんじゃないのか?

 

──そして、香織のことも……

 

ハジメ「あっ、あっあっ……!!」

 

──お前がクラスメイトから拒絶されるのは当たり前な話だ

 

──誰とも関わろうともしない、周りなんてどうでもいい、学校なんてただの通過点……

 

──他人なんてどうでもよくて、自分の気分を害する『敵』と断定し……交流を一方的に拒み続けてきた……

 

──……ねぇ、ハジメくん

 

 

──キミってさ、どこが『かわった』の……?

 

 

ハジメ「…………めろっ……!!」

 

──……なぁ、思えばさ。お前の父親って社長で家がデカいもんな。っということは、何をせずとも将来が安定した環境……自身の才能によってわがままがまかり通っているな

 

──自身で勝手に相手はこうだと『ご都合解釈』し、恵まれた環境だから自分の欠点を見つめる機会がないほどに『環境に恵まれて』、与えられたものばかりで実は『自分から得たモノは何一つとしていない』……

 

──……誰かさん二人の言葉をお前に当てはめるなら……そういうことじゃないのか……?

 

ハジメ「やめろっ……やめろっ……!!」

 

──……虚飾に包まれた、お前自身をよーーーーーーーーーーーーーく見てみろ

 

 

 

──親の七光りで甘やかされたガキが、あの学校にいただけだ

 

 

 

ハジメ「あっ………………ぁっ……!!」

 

──ねぇねぇ、聞かせてくれない?

 

 

──キミって、あの二人とどう違うの?

 

 

ハジメ「…………っ…………」

 

──……

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「なんの、つもりだ」

 

──お前と雑談がしたい。だから、こういうことを言った

 

──お前が家族を大事にしているのも、家に帰りたい切なる願いは本物だろうよ

 

──……ただ、このまま帰っていいのか、不思議に思ってな

 

ハジメ「……」

 

ハジメ「……ねかせて、くれ」

 

ハジメ「今は何も……考えたくない……」

 

──……わかった

 

──……

 

──寝たか

 

──……悪いことをしたとは思っているよ

 

──だけど、お前はどうしても向き合わなければならないんだ

 

──それがせめて……トータスで初めて出来たかしれない……

 

──私の『友達』に出来ることだと思うから

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

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