転校先で美少女ガールズバンドのデスボイスボーカルとしてお迎えされた件について   作:クワガタ信者

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第11話 お弁当は冷めてもうまいものを作るべし

 四時間目の授業終了のチャイムが鳴る。

 俺達購買組にとっては戦闘開始の合図以外の何物もない。

 

 ドドドドドドと生徒諸君共が教室の扉を開けて勢いよく廊下に躍り出る。

「走るなよー」と英語の担当教師の注意する声が後ろから聞こえてくるが、気にする者など誰もいなかった。

 

 購買で人気なのはカツパン、コロッケパン、カレーパンと言った男子高校生御用達のガッツリしたパンだ。すぐに売り切れてしまう。メロンパンやチョココロネ、クリームパンといった女子人気の高いパンもウカウカしてると無くなってしまうぞ。

 

 ちなみに生徒全員が戦場に赴くわけではない。弁当を持参している者や、あらかじめコンビニ等で買っておいた者は、悠々自適と教室で机をくっつけて卓を囲んでいた。

 

 そしてこの俺、須賀雅貴はいうと先ほど言った通り持参組ではなくバリバリの購買組だ。

 本来ならば他のサバイバー達と共に戦場に出なければならない立場ではあるのだが、ここに例外がある。

 俺はのんびりと立ち上がり、ゆっくりと購買へと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 螺旋階段を下りたその先、我らの戦場がある。

 

「おーやってるやってる」

 

 案の定、購買は激戦区とかしていた。

 

「おばちゃんこれお願い!」

「カツパン売り切れ!? そんなー!」

 

 ある者は戦利品を勝ち取り、ある者は悔し涙を啜りながら妥協する。それがここの日常だ。

 

 もちろんこの学校に学食や手作りの弁当はある。ラーメンや丼物、日替わり定食といった様々なメニューが取り揃えてある。俺も食べたことあるがかなりレベルが高い。

 だが、うまさの代償としてそこそこ割高だ。なので、なけなしの小遣いを食費にあてたくない生徒が購買に群がるのだ。

 

 さて、購買組である俺がどうして悠々自適にバトルを眺めているかというと――

 

「あれ?」

 

 ふと見覚えのある生徒を見かける。スラッと高い身長に人形のように整った顔立ち。青みがかった黒髪をまっすぐにおろした少女。 塚見幸だ。

 彼女は購買に群がる群衆を眺めていた。

 右へ左へとウロウロしたかと思えば、生徒の群れへと入っていく。が、押し返されてしまった。

 何度かトライしたようだが、結果は変わらず。

 

 さあて、どうしたものか。真琴とはこの前のスタジオ練習で多少打ち解けた感があったけど、塚見さんとは一度たりとも口を交わしていない。俺のやることなすことにびっくりする程無反応だった。

 

 さて、困っていることは火を見るよりも明らか。だがここで馴れ馴れしく声をかけたとしよう。

 

『やあ、塚見さん。何かお困りか?』

『馴れ馴れしく話しかけないで。バンドが一緒とはいえ私はあなたとお友達になった覚えはないわ。親しいと思われるのも嫌だから私の前から消えて』

 

 なんて言われたらショックで十七年は寝込む。ストレートな美人にストレートに辛らつな言葉を投げられると人死にが出るぞ。

 

 見なかったことにして引き返すのは簡単だ。

 でも――

 

『ほら、あたしらって結構ぐいぐい行くタイプじゃん? でもギターの子は結構控えめな子だから、仲良くしてあげてね』

 

 こんなことで迷ってるなんて、恋に見られたら『情けないぞー!』ってドツかれるかな。

 いいじゃないか。俺みたいな奴がきつい言葉投げつけられても。慣れてるだろうが。

 橘さんならどうする? 決まってる。あの人はきっとどんな結果になろうが自分のしたことに後悔なんてしないだろう。

 

「困ってる?」

 

 意を決して話しかけた。

 塚見さんはキョトンと首を傾げた。 あれ? もしかして俺のこと覚えてない?

 

「俺だよ俺。須賀雅貴。ほら、この前holicで一緒だった、ぎゃーって叫んでた奴!」

 

 俺はマイクを持って叫ぶジェスチャーをしてみせた。それを見て塚見さんは「ああ」とようやく合点がいったそうだ。

 

「いやさ、困ってるように見えたから。欲しいパンでもあるの?」

 

 そう言うと、塚見さんは購買の方に目を向けた。

 

「メロンぱん」

「いくつ?」

「ひとつ」

「メロンパン一つね。オーケー、俺に任せて」

 

 意を決して群衆の中に飛び込む。まるで生き物の体内のように激しくうごめく人の群れは、俺の体をガリガリと粉砕した。

 

「ぐおおおおおおおあああああああ!!」

 

 満身創痍になりながらも最前線へとたどり着く。メロンパンラスイチ、取った。

 

「これ! これお願いします!!」

 

 購買のおばちゃんにお金を渡して戦場から離脱する。もうへろへろだ。

 

「塚見さん、これ」

 

 おぼつかない足取りで歩きながら塚見さんにパンを渡す。

 

「あ、ありが――」

「みゆきちゃーん、パン買えたー?」

 

 声の方を見ると、数名の女子生徒が塚見さんに手を振っている。

 みゆき、つかみゆき、つか・みゆき、ということか。

 

「行ってあげなよ。待ってるよ」

 

 俺がそう言うと、塚見さんはトコトコと女子生徒の方へとかけていく。途中で振り返り、ペコリとお辞儀してくれた。

 

「さて、もうそろ収まるかな」

 

 戦いのピークは既に超えている。もう数分経つと、人気商品は売り切れて一先ず落ち着くようになる。

 残ったのは人気の少ない商品のみ。だが、これが狙いだ。

 あんぱんを二つ。これさえあればいい。むしろこれ以外は不要。不人気商品のあんぱんは必ずと言っていいほど売れ残る。

 

「はい撤退撤退っと」

 

 目当ての商品を手に入れた俺にとって、ここはもう用がない。階段を上がって教室に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 開けっ放しのドアから自分の教室に入る、なんだかクラス内の雰囲気が妙だ。

 

(おい、来たぞ)

 

 こそこそと自分に向かっての陰口が聴こえた気がする。

 まーたなんかやいのやいの言ってるのだろうかと考えながら自席に向かうと、既に誰かが座っていた。女子生徒が頬杖を突きながら窓の外を眺めている。

 

「ん」

 

 彼女も俺に気付いたようで、こちらに振り返った。

 

「橘さん!?」

「おかえり須賀君、待ってたよ」

 

 俺の席に座っていたのは橘さんだった。

 なるほど、クラス内の雰囲気がおかしかったのは橘さんが尋ねてきたからだってわけだ。

 しかも俺の席に座って俺のことを待っていると来た。 

 

「待ってたって、また何か用事?」

「用事ってわけじゃないわ。一緒にお昼でもどうかしらと思って」

 

 橘さんがそう言うと、様子をうかがっていた周囲がざわつき始める。

 

(橘さんとお昼だって!?)

(う、羨ましい……羨ましすぎる)

(畜生、なんであいつばっかりあんないい思いできるんだよ……!?)

 

 周囲の羨望の視線が向けられる。

 

「い、いいけど。ここで?」

「もちろんいつもの場所で。ここじゃ落ち着かないでしょ?」

 

 (((いつもの場所ってどこだよ!?)))

 

 周囲がそう突っ込むのを聞いた気がする。

 

「さ! お昼休みも限られているし、行きましょ行きましょ♪」

 

 橘さんは俺の手を握ってグイグイと引っ張ってく。

 チラリと後ろを振り返ると、池谷を含めた周囲の嫉妬の眼差しがこちらに向けられていた。

 

 池谷、血涙流してるよ。こわっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもの場所、というのは前に橘さんに連れてこられた旧音楽室だった。

 ここに立ち入るのは二度目だろうか。そういえば橘さんはここを私たちのたまり場と言っていたな。

 

「普段はここで友達とお昼を?」

「基本的には真琴と幸の三人で食べているの」

 

 なるほど。シュガースポットのたまり場ってわけだ。

 橘さんはお弁当箱を開けながら答える。

 肉や野菜、色とりどりの食材が入っていたとても美味しそうなお弁当だった。

 

「それで他の二人は?」

「真琴は担任に呼び出されてるから今日は来れないそうよ」

「なんかやらかしたの?」

「真琴は成績がちょっとね……」

「ああ、そういう」

 

 意外だな。『私、しっかりものですよー』って顔してるに。まあ、勉強なんて向き不向きあるよな。

 

 中学の時隣の席だった奴の話なんだけど、そいつは授業もしっかり受けて努力しているのに成果が振るわなかった。頑張る姿を見ていたたまれなくなった俺は、効率のいい勉強法を教えてあげようかと話しかけた。コミュ障ぼっちなりに勇気を振り絞ってね。そしたら「誰?」と返された。悲哀を感じるね。俺に。

 ざけんなよあんなに一緒にいたじゃん。隣の席ってだけだけど。

 

 まあ勉強は努力した分だけ伸びるって言うけど、それでも最低限の素質は必要だと思うよ。俺もそれなりに勉強しているけど成績はせいぜい中の上から上の下ってとこだし。

 ちなみに英語だけはめちゃくちゃ得意だ。

 なぜならポストハードコアやスクリーモは日本のバンドでも英語の歌詞が多いから。

 歌詞の和訳を調べたり正しい発音で歌えるように練習したりと英語に触れる機会が必然的に多くなったので、読み書き喋りはかなり得意だ。

 実は机の引き出しに英語で書いた詩を綴ったノートだってある。誰にも見せられないけど。

 

「地頭は悪くないんだけどね。どうも机の前でジッと座ってられないみたいで」

「……女児?」

「幸が言うには授業中基本寝てるか音楽を聴いてるらしいわ」

「ダメな子すぎる……」

 

 学生の本文は勉強なんだから最低限やっとこうぜまこっちゃん。今度教えてあげるから。

 あ、「誰?」っていうのは勘弁ね。僕、泣く。

 

「ただ、体育だけは評価5以外取ったことないそうよ」

「鼻の下に絆創膏貼ってるわんぱく小僧?」

 

 勉強できなくて運動できるのってなんか典型的って感じ。

 ちなみに俺も運動はそこそこできるぞ。小学生の時はサッカー少年だったからな。ドリブルが得意だぞ。一人で練習できるから。

 パスとシュートは無理です。一人じゃできませんから(泣)

 

「で、塚見さんは?」

「来てないってことは華道部の子達と食べてるんでしょうね」

「へえ。塚見さん華道やってんだ。かっけー」

「あの子も文武両道だからね。それより」

 

 橘さんはパンをかじる俺をじとーっとした目で見る。何か言いたげな目だ。

 なんだろう。俺の顔に何かついてる?

 

「須賀君、お昼それだけ?」

 

 橘さんは俺の手に持っているパンに目を向けた。

 

「そうだけど」

「私思うのよね。素晴らしい歌を歌う為には心身ともに健康でなければならないって」

「ほう」

 

 同感だね。ボーカルなんてスポーツやってるのと同じだ。特にスクリームボーカルは息を吐く量が段違いに多い。肺活量を鍛えるべきだ。

 サッカーやってる暇なかったわ。水泳でもやってればよかった。

 

「うら若き食べ盛りの男子がお昼ご飯あんぱん二個だけってどうなの!?」

 

 橘さんはビシィっと俺の手にあるあんぱんを指差した。

 

「いやいや、お昼時にはあんぱんと牛乳って相場が決まってるでしょ」

「刑事ドラマの張り込みじゃないんだから。ちゃんとタンパク質も取りなさい。あんぱんと牛乳じゃ持たないでしょ?」

 

 ちなみに持参してきた水筒には牛乳が入っている。

 

「ほう、これをただの牛乳と申すか」

 

 口をニヤリと吊り上げながら俺は言う。

 

「この牛乳の中にはホエイプロテインを混ぜこんでいるのさ! 動物性タンパク質とカルシウムが入った完全栄養食品だ!」

 

 ババーンと水筒を掲げる。これがね、うまいんだ。水で割るより甘味や風味が増してまろやかなんだ。コクが深まるんだ。

 

「お野菜は?」

「ビタミンは、こう!」

 

 ピルケースから大量のサプリメントをジャララと取り出す。マルチビタミン、ミネラル、コエンザイムQ10も豊富だ。喉にいいぞ!

 

「完全な栄養バランスだろう?」

 

 ドヤ顔を決めながらそう言った。

 

「嘆かわしいわね」

 

 はあ、と橘さんは目元に指を置きながらため息をついた。

 

「あのね須賀君、サプリメントは足りない栄養素を補うために使うものなの。サプリメントに頼ってるだけじゃあその内体壊すよ」

 

 そう言って、橘さんはオレンジ色の野菜を差し出してくる。

 

「はい、どうぞ」

「ニ、ニンジンいらないよ!」

 

 ニンジン、ピーマン、トマト。昔から俺の嫌いな食材だ。 苦手野菜四天王と呼んでいる。

 

「アレルギー?」

「いや、そうじゃないけど」

「何か食べれない理由が?」

「……味がちょっと……」

「子供じゃないんだから好き嫌いしないの。ニンジンはビタミンだけじゃなくカロテンや食物繊維が多く含まれてるのよ」

「いや、俺はまだ未成年だからまだまだ子供だし。そもそも味覚なんて人によって異なるんだ。大人だからってそういう差別はいけないよ。俺は昨今の情勢に適合した多様性を尊重するグローバルにクールな男なんだぜ。だから不当な価値観の押し付けには屈しないよ!」

「屁理屈」

 

 問答無用とばかりに橘さんは俺の口にニンジンを突っ込む。しまった、一瞬のスキを突かれた。

 あれ、でもこれって間接キス……

 

「ん、赤くなってどうかした?」

「なんでもありません」

 

 意識した途端、こっぱずかしくなってしまった。

 高校生にもなって間接キスぐらいで何を赤くなっているんだと思われるかもしれないが、ぼっち歴年の数の俺には女子と間接キスする機会など一回たりとも与えられてこなかったのだ。今回初間接キスだ。無理もないだろう。

 

「ほら、全然食べれるじゃない。食わず嫌いって奴?」

「……どうでしょう」

 

 噛んでも噛んでも味がしない。もうそれどころじゃない。知らなかったなー。間接キスってオブラートにもなるんだ。今度から嫌いなものを食べるときには橘さんに食べさせてもらおうか。

 

 ごくんと飲み込むと、橘さんはニコッと笑顔になって俺の頭に手を伸ばした。

 

「ちゃんと食べれたわね。偉い偉い♪」

 

 彼女は俺の頭をなでる。女子に頭を撫でられるのも初めてだ。思えば橘さんは俺にたくさんの初めてをくれる気がする。毎日ご飯食べさせてほしい。

 

「よし! じゃあ、ご褒美にお肉あげちゃう!」

 

 橘さんはハンバーグの一切れを俺に差し出す。

 

「はい、口開けて?」

 

 これって俗に言う『あーん』とやらでは……!? さっきのような不意打ちで口に入れられたのとはワケが違う。こちらからもそれに応え、口へと迎えなければならない。

 さすがにそれはハードル高い! てか恥ずかしい!

 

「た、橘さん。これはさすがに――」

「あっあっ、落ちる落ちる!」

 

 かなり大きめの肉厚ハンバーグにかかっているソースが今にも零れ落ちそうだ。

 

「ほらほら早く!」

「あっ、ちょっ、まっ!」

 

 ――ええい、ままよ。俺は一口でハンバーグにかぶりつく。

 

 ……こ、これは……!!

 

「うまっ! うんっめえええよ!!」

 

 デミグラスソースとジューシーな肉汁が絡み合い、絶妙なハーモニーも生み出している。

 冷めてもわかる旨味、いや、冷めてるからこそ誤魔化しがきかない。アツアツ補正がないから真に味のレベルが浮き彫りになるんだ!

 

「橘さん、これめっっっっっっちゃうまい!!!!」

 

 感動するくらいうまい。うますぎるっ!

 

「そ、そう?……よかった。作った甲斐があったわ」

「えっ、これ手作り?」

「ええ。まあ、昨日の夕飯の残り物だけど、よろこんでもらえて何よりだわ」

「すごいな橘さん。料理もできるんだ」

「ふ、普通よこれくらい! 誰だってちょっと練習すればできるんだから」

 

 橘さんは顔を赤らめさせながらそう言った。

 料理の腕もパーフェクトだなんて。やっぱり一流だよな橘さんは。

 

「うん……そうよね……そうだ……それがいい……」

 

 橘さんは口に手を当てながらなにやらぶつぶつと呟いている。

 

「よし、須賀君!」

「あっはい」

 

 と思ったら勢いよく名前を呼ばれた。なんでしょうか。

 

「私は我がバンドの重要な要であるスクリームボーカルの健康を危惧しています」

「は、はあ……」

「なので、須賀君のお昼は私が作ることになりました!」

「えっ」

 

 な、なんだってー!?

 

「『なりました』って、そんな満場一致で決定したかのように言われましても」

「私の弁当食べるの嫌?」

「うっ」

 

 決して嫌だなんて虚言、言えるはずがない。弁当はうまいし橘さんの手料理を毎日食べれるなんて夢のようだ。

 

「でも、悪いよ。手間じゃんそんなの」

「須賀君、普段料理しないでしょ」

 

 ぎくっ。何故ばれた

 

「一人分も二人分も手間はあんま変わらないのよ?」

「そ、そうなんだ」

 

 料理なんてカップ麺と冷凍食品しか作れないんだよね。 え、それは料理じゃないって? それはそう。

 

「じゃあ、その分の食費は支払うよ」

「いいっていいって。私が好きでやってるもの」

「あ、ごめん。その辺ちゃんと清算できないなら受け取れない」

「えっ」

 

 お金の問題はシビアに扱うべきだ。金の切れ目が縁の切れ目って言うしね。

 俺はワリカンする時も一円単位できっちり清算するべきだと思ってるタイプだ。まあ、あくまで自分はそうしたいってだけで、人にまでうるさく言うつもりはないが。

 

「どうする? キチンとお金を受け取るか、この話をなしにするか」

「ちゃ、ちゃんとしてるのね。須賀君」

 

 これに関しては親の教育がよかったのかもしれないね。

 

「わかったわ。お代は頂きます」

「じゃあまずは見積もり書を頂いても……」

「そこまで!?」

「ごめんごめん、冗談。でも大まかな金額は出してほしい」

「わかった。そんなに高額にはならない思うから安心して。学食よりかは安いから」

 

 そう言って橘さんは食べ終わった弁当箱を片付けた。

 

「よろしくお願いします」

「いえいえこちらこそ」

 

 俺が頭を下げると、橘さんも便乗してお辞儀した。

 

 こうして俺の昼食は華やかに彩られることになった。

 

「あ、そうそう、来月ライブあるから須賀君も曲覚えてね」

「えっ」

 

 えっ、じゃねぇよ俺。

 そりゃバンドなんだからライブくらいあるだろうよ。

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