転校先で美少女ガールズバンドのデスボイスボーカルとしてお迎えされた件について   作:クワガタ信者

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第13話 真琴オリジン☆

 父は私が生まれる前、社会人バンドを組んでいた。

 

 ジャンルはメタル全般。メンバーも全員メタラー。その中でもそれぞれ好きなジャンルがあったそうだ。だからいろんなジャンルのメタルを演奏していたらしい。

 

 父は私が産まれたことでバンドに割ける時間がなくなり、やがてそのバンドを脱退した。

 その後もそのバンドは新しいメンバーを追加し、細々と音楽活動を続けていた。

 脱退後も父とバンドメンバーの関係は非常に良く、プライベートで親交があった。

 新しく入ってきたメンバーに、赤ん坊の頃の私はおしめを変えてもらったこともあったらしい。

 

 幼稚園の頃から、私は父に連れられて彼らの演奏を聴いていた。

 もちろん、未就学児の頃からライブハウスの大音量を聴いていたら耳によくないので、イヤーマフで耳を守っていた。

 いろんなジャンルに触れた。ヘヴィメタル、デスメタル、シンフォニックメタル、スラッシュメタル、様々なジャンルのメタルを幼い頃から聴いていた。

 つまるところ私はメタルの英才教育を受けていたことになる。

 

 小学生の高学年になっても私は、相変わらずメタルを聴いていた。

 この頃になるとライト層に受ける様なポップ寄りのメタルは聴き飽きていた。さらなる刺激を求めて色々調べていた。

 そこで出会ったのがゴアグラインドだ。グロテスクな世界観、刺激的なサウンド、頭をかち割るようなガテラルボイス。同年代よりもませている私にとっては、大変魅力的に見えた。こんなものを聴いている私は、きっと他の人とは違う特別な人間に違いないとも思っていたのかもしれない。

 

 今の時代、高学年にもなると小学生でもスマホを持たされる。

 クラスのグループラインなども作られており、各々がチャットしたり面白い動画などを好き勝手に貼ったりしていた。

 女子界隈では、可愛らしい動物の動画が流行っていた。私も塾帰りにyoutubeで見つけた猫の動画をグループラインに貼り付けた。

 

 ――つもりだった。

 

 だがうまくそのURLはコピーされておらず、代わりにグループラインに流れたのはグロテスクなミュージックビデオのゴアグラインドの動画だった。

 しまった、と思った時には既読は一つ付いていた。急いで送信削除した時にはもう遅かった。

 

 次の日、教室に入ったらクラスの男子達が私を茶化し始めた。

 

「お前こんなの聴いてるなんて気持ち悪いよ」

 

 既にクラス中に拡散されていたのだ。陽気な男子たちがこぞって私を笑う。

 

 恥ずかしくって、悔しくて、後悔した。あの時動画を貼らなければよかったと。

 私はその場で泣き出してしまった。仲が良かった女子たちは私に味方をして男子たちを糾弾し出した。こういう時の女子の団結力は中々目を見張るものだ。

 一気に男子たちの形勢は悪くなり、一先ず騒動は沈静化した。

 しばらく男子達からの疎まれるような視線は未だに覚えている。

 

 ある時、私はトイレで聴いてしまった。仲がいいと思っていた、味方をしてくれた女子たちが私の陰口を叩いていたのである。

 

「真琴ってちょっと変だよね」

「ね。なんか皆と違うって言うか、普通じゃないよね」

「あんなの聴いてるんだもんね。やばいって」

 

 ある意味で女子は男子よりも残酷だ。味方をしてくれたと思いきや、本人のいないところで平気で陰口を叩く。

 私が驚いたのは、あの時一つだけ付いた既読は女子のものだということ。

 私は顔がかわいいから、私のことを好きな男子は一定数いた。それが気に食わなかったのか、その女子は男子たちに私が誤送した動画を拡散したのだ。全ては私を陥れる為に。

 

 私は人間不信になり、学校に行かなくなった。

 家でずっと音楽を聴いて家で引きこもっているだけの毎日。

 最初はメタルやゴアグラから離れようとした。流行りのジャンルやアーティストを聴いていたが、クラスメイト達がそれらを好きだと言っていた事を思い出してイヤホンを投げた。

 

 気が付いたら私はゴアグラを聴いていた。嫌なことを思い出してモヤモヤするけど、これが一番落ち着いた。激しいサウンドや汚い下水道ボイスがクラスメイトの顔を塗りつぶしてくれた。彼らは絶対にこれを聴かない、だからここにはいない。この汚水処理場が私の唯一の居場所だった。

 

 結局私はメタルを嫌いになんてなれなかった。

 

 しばらくして私を心配した父が「久しぶりにライブハウスでも行かないか」と誘ってくれた。またいつものように父の仲間達の演奏を聴くのだと思った私は、今の惨めな自分を彼らに見られのは嫌だと断った。しかし、どうやら今回父が行く予定のライブに彼らはいないらしい。

 乗り気ではなかったが私の荒んだ心を少しでも晴らしてくれるのならなんでもいいやと思い、久しぶりに外へ出た。

 

 ライブハウスで父は知らない人達と握手をしていた。なんでも、大学時代の友人らしい。彼らも社会人バンドとのことだ。

 そのやりとり隣でぼーっと眺めていたら、ふと横から声をかけられる。

 

「あなたのお父さんもバンドマンなの?」

 

 私と同い年か一つ上の女の子だった。とても可愛らしく元気な子。私とは大違い。

 

「私のお父さんとお母さんね、今日ライブやるんだ! すっごいかっこいいんだから!」

 

 女の子は父と話している男女を指差した。どうやらこの女の子は、父の友人達の娘らしい。

 

「あなた、何が好きなの?」

 

 女の子は続ける。

 

「私ね、ポストハードコア!」

 

 ポストハードコア、私も通っている道だ。有名なバンドは一通りさらっている。

 

「わ、……私は……」

 

 ここで私はやらかす。この子は私より浅い。私はもっと深いところに手を出している、と。

 

「ゴ、ゴアグラインド……」

 

 女の子はキョトン、と首をかしげて不思議そうな顔をしていた。

 

 やってしまった。また気味悪がられる。そう思った頃にはもう遅い。

 女の子はスマホでゴアグランドを調べ始めた。youtubeが開かれ曲が流れ始める。

 彼女はポカーンとした顔でそれを聴き、やがて顔を上げた。

 

『気持ち悪い』、そんな言葉を覚悟していた。すると――

 

「すごい! こんなジャンル初めて知った! あなた詳しいのね!」

 

 私の手を取り、彼女はキャッキャッと飛び跳ね始めた。

 

「同年代のメタル好きな子と初めて会えた! めっちゃ上がる♪」

「あ、……うぇ……」

「わたし、さくら。あなたは?」

「ま、真琴……」

「真琴! 私達、友達になりましょう!」

 

 その天真爛漫な笑顔は私を眩しく照らした。

 

 しばらくして、さくらちゃんの両親のライブが始まる。

 私はさくらちゃんと一緒にそのライブを眺めていた。

 さくらちゃんはジャンプしたり頭を振ったり全力で楽しんでいた。

 

 ああ、こうやって好きなことを全力で楽しんでいいんだ。

 私の好きを肯定してくる人がいるんだ。

 私を見つけてくれる人がいるんだ。

 

 それが嬉しくて嬉しくてたまらなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 ていうかさくらちゃん超かわいいマジ天使わたしのマイエンジェル好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好きかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使天使私の一個上?じゃあ先輩じゃんさくら先輩さくら先輩さくら先輩さくら先輩さくら先輩さくら先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩先輩一生お慕い申し上げまするスクールライフ一緒に満喫したいそうだ登校しよう一緒の中学校に行こうお昼とか一緒に食べるんだ私の手作り弁当を先輩に食べさせながら先輩の手作り弁当を食べたい食べさせ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ愛っこ最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高最高お母さん明日学校行くからあと料理教えてー

 

 

 

 

 

 

 

 こうして先輩に脳を灼かれた私は無事復学した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺は絶対に真琴の好きを否定したりはしない、全部受け止める』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 

 まあ、先輩ほどじゃないですけど。

 ちょっと脳が火照ったのは認めます。

 精々がんばってくださいね? 須・賀・せ・ん・ぱ・い☆

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