修学旅行当日。
「うわ…A組からD組まではグリーン車だぜ」
「
いつもの差別的待遇に苦笑をうかべるE組一同。
「うちの学校はそういう校則だからな。入学時に説明したろう」
「学費の用途は成績優秀者に優先される」
「おやおや、君達からは貧乏の香りがしてくるねえ」
そしていつものように嘲るD組担任の大野と、生徒の田中と高田。しかし棗にはひとつ疑問点があった。
「ねぇ菅ちゃん」
「どうした歌川」
「普通車とグリーン車って何がどう違うん?」
一同、唖然。本校舎組もE組も関係なく、皆が目が点になっていた。
「……マジか歌川」
「だって新幹線なんて幼稚園くらいの時に乗ったっきりなんだもん。わからん」
「えー…」
そんなことあるのか…と全員が思った。本校舎組も珍しく何も言わずに固まっている。
そのタイミングで、何やら煌びやかな格好をしたイリーナが到着した。
「ごきげんよう、生徒達」
「ビッチ先生何だよそのハリウッドセレブみたいなカッコはよ」
「フッフッフッ…女を駆使する暗殺者としては当然の心得よ。狙っている
「目立ち過ぎだ。着替えろ。どう見ても引率の先生の格好じゃない」
すかさず烏間のダメ出しが入った。どう見ても引率の先生の格好ではないとのことだった。
「堅いこと言ってんじゃないわよカラスマ!!ガキ共に大人の旅の…」
「脱げ。着替えろ」
物凄い剣幕にこっちまで威圧されそうになる。
イリーナは新幹線に乗車したあともずっといじけていた。
「高い服とかはよくわからんけど、イリーナ先生の服凄くかわいかったのになぁ」
「まぁ…烏間先生の言う通り、引率の先生の格好って感じではなかったけど…」
「残念ねー」
三班は七人グループの為、棗は一人あぶれ、他の座席に座っていた。メンバーとしては、磯貝、片岡、木村、矢田、棗の5人だ。
「歌川さんってなんかこう、俺らとちょっと違う感じするよな」
「E組とか本校舎とかあんまり気にしてない感じだよね」
「それはそうね、あんま気にしとらんな。興味ないからな」
寧ろ気にしすぎでは、とも思うが、人には人それぞれ抱えるものがあるのでそうもいかない。
「興味ないの?」
「うん。本校舎の人たちのこと、同じクラスだった人以外顔も名前もほとんど覚えとらんし、同じクラスの人も必要最低限以上に話す相手おらんかったしね」
基本的に趣味の合う人間としか深く関わらない為、友達という友達は竹林のみである。同じクラスであった渚も、よく会話を交わすようになったのはE組に入ってからだ。カルマはたまに話しかけてくれてはいたが、授業をバックレて、いないことの方が多かったのでこちらも会話が増えたのはE組に入ってからだ。
「私としてはE組の方がクラスメイト皆いい人で雰囲気いいし、自分に合ってると思うから卒業までこのクラスがいいなって思う。殺せんせーのお陰で成績も上がって来てるし、自分にとっていい環境で成績あげられるならそれが一番やから。折角学費払って貰ってるのに成績落としちゃったのは親に申し訳ないな〜とは思うけど、E組になってから成績が明らかに伸び始めてるし、私が今のクラス楽しいって思えてるならそれでいいんじゃないって感じなんよね」
「へぇ、いいご両親だな」
「そーなんよ、自慢のお父さんとお母さんやけん」
「というか、本校舎のヤツらに興味ないっつってもさ、色々言われんのはいい気はしないんじゃね?」
「それはそう。まぁでも、蚊の鳴く声みたいなもんだし…」
「蚊!」
木村たちは棗の喩えに腹を抱えて笑う。
「この学校、フィクションみたいな制度にフィクションみたいな人で溢れてて逆におもろいな〜って思ってる」
棗は元々悪意に鈍感な上、あからさまな悪意を向けられたことがないので、こんな風に学校総がかりで虐めをしてくるような状況は最早フィクションやん、と認識していた。ダメージが少ないのはそれも理由のひとつだと思われる。
「凄いね…」
矢田は思わず感嘆の声を上げる。棗のように、最初からE組であることをコンプレックスに思っていない生徒は非常に珍しいからだ。成績不振で落ちた者だと尚更。
「自分ではよーわからんけど。多分私がアホなだけなんよな。でも、何言われても私は私やけん。皆も、何言われたところで皆の良さが損なわれるわけやないし、堂々としてていいと思うよ」
深いのか浅いのかいまいちよくわからない話が続いたが、ここからまた話題が変わり、皆会話を大いに楽しむ。そうやって話に花を咲かせている間に、京都駅へと到着した。
例によってA組からD組までの本校舎生徒が泊まるのは高級ホテル。E組は旅館。しかし棗個人的には旅館の方が好みなので特に何も気にしていない。
「…1日目で既に瀕死なんだけど」
「新幹線とバスで酔ってグロッキーとは…」
「大丈夫?寝室で休んだら?」
グロッキーになった殺せんせーを労る言葉をかけつつ暗殺を図る岡野たち。いつものこととはいえ、やはり奇妙な光景である。
「いえ…ご心配無く。先生これから一度東京に戻ります…」
「え??」
「枕を忘れてしまいまして…」
「あんだけ荷物あって忘れ物かよ!!」
三村が思わずツッコみたくなる気持ちはよくわかる。どうやら殺せんせーは枕が変わると寝られないようだ。
そして向かいの席では、神崎が何かを探している。
「どう?神崎さん、日程表見つかった?」
「ううん…」
「神崎さんは真面目ですからねぇ…独自に日程をまとめていたとは感心です。でもご安心を…先生の手作りしおりを持てば全て安心…」
そんな分厚いしおりを持って歩きたくないから皆わざわざ自分たちで日程表を作っているのである。
そんなこんなで、修学旅行1日目は幕を閉じた。棗は明日に備えて、消灯時間には布団に潜り込んだのであった。
棗ちゃんは地方出身。
九州の訛りがベースだけど、ネット文化にも染まっているので他の地方っぽい似非方言も混じった独特な話し方になっています。
これでも地元(出身地)の上の世代の人たちからすると大分訛りが薄い方。