【完結】その生徒、暗殺者に非ず。   作:クリオネf。t

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修学旅行其の二

 2日目は主に、国に雇われたスナイパーとの暗殺の協力であった。

 

「遅いよ、殺せんせー」

「にゅやっ!失礼。自分が主役の時代劇に酔ってまして」

「なんだそりゃ」

「清水寺、もうとっくに廻っちまったよ」

「では二寧坂でお土産探しと行きますか」

「どうせ甘いモンしか興味ねーだろ」

「でも私もお土産探しはしたいなー」

 

 そういうわけで、3班は二寧坂へ向かうことに。

 

「先生、あぶらとり紙使ってみなよ」

「うーん…ベトベト取れたら恥ずかしいですねぇ…」

 

 (先生の肌だとあぶらとり紙どんな風になるんかね…?)

 

「いいからいいから」

 

 そうやって原があぶらとり紙を貼り付け殺せんせーの気を引いた時、スナイパーがライフルを撃った。しかし、貼り付けたあぶらとり紙に引っかかって銃弾は貫通せず。

 

 (……どういう仕組みなんやろ)

 

 まるで嘘のように殺せんせーの粘液があぶらとり紙に付着し、クッションの役割を果たしたようだ。

 

「言わんこっちゃない…こんなに粘液が取れてしまった。弾丸も止めるくらい」

「凄いですね、どうなってるんですか?ちょっとひとつ貰ってもいいですか?これ」

 

 棗は粘液の付着したあぶらとり紙を物珍しげに見つめている。殺せんせーは「構いませんよ」と言って一枚渡してくれた。

 

「わー、不思議な感触。スライムっぽいような?」

「よく触れんなお前」

 

 寺坂が引き気味で言う。仲良しこよしするつもりはないと言っていたものの、棗のあまりの無害さに何やかんや馴染みつつあった。

 

「おや?渚君の班から電話です」

 

 (先生の着信音チャイムなんや)

 

「もしもし? …!! それで今どこに…!?」

 

 電話に出た瞬間、殺せんせーの表情が強ばる。何かトラブルだろうか。血相を変え、「先生ちょっと行ってきます!!」と言いマッハで立ち去ってしまった。

 

「…それじゃあ私たちは二寧坂行こっか」

「そだね!」

 

 残された3班は、再び殺せんせー抜きでコースを廻ることになった。一行は次の目的地である二寧坂まで向かう。

 

「あれ、棗ちゃん?」

 

 道中で、そんな声をかけられた。誰かと思ってそちらを見遣れば、故郷(じもと)の同級生だった。そして、親友の姿もある。修学旅行の時期と場所が同じだからもしかしたらすれ違うかもね〜、とメッセージのやり取りをしたのは記憶に新しいが、まさか本当に出会うとは。

 

「おー、皆久しぶり〜。杏子(きょうこ)ちゃん久しぶり!まさか本当に会えるとは思わんかったー」

「久しぶり〜、なっちゃん。ほんとよ、ビックリしたー」

 

 思わぬ再会にお互いに喜びを分かちあっていると、現在の同級生たちが「誰?」という顔をして彼女らを見ていた。

 

故郷(じもと)の同級生だよ。こっちは親友の杏子ちゃん」

「歌川ってなんか訛ってんな〜とか妙に田舎くささあるな〜とか思ってたけど、ガチで地方出身?」

「うん。元々は九州におったよ。こっちに来たのは小六になった時やね」

 

 父親の仕事の都合で家族4人で引っ越すことになったので今椚ヶ丘市にいるというわけなのだが……田舎くさいと思われていたのか。確かに棗はどうも故郷(じもと)の感覚が抜け切れない部分もあるが、自分では大分椚ヶ丘の生活にも慣れてきた方だと思っていた。しかし現地の人から見るとそう見えてしまうようだ。それもアイデンティティである。

 

「なっちゃんたちは今から二寧坂?」

「うん。杏子ちゃんはどこ行くと?」

「私たちは清水寺だよ」

「そっかー。お互い楽しもうね!」

「うん、そうだね。もっと話したいけど、お互い時間もあるけんね」

 

 お互い班行動なので、班の仲間に迷惑はかけられない。そんなわけで、短い再会を楽しみ、両班は別れたのであった。

 


 

 その夜。

 棗は4班のメンバーと一緒に旅館のゲームエリアにいた。ゲームは好きだが家庭用ゲームやスマホ用のソーシャルゲームをメインにプレイする棗は、ゲームセンターは滅多に行かない。商業施設内に併設されているゲームセンターに何となく立ち寄るくらいだろうか。

 4班…渚たちの班は、やはりトラブルに巻き込まれていたらしい。その過程で、神崎がゲームが得意だということが判明したそうだ。棗はアーケードゲームはほぼやらないし、ゲーム好きとは言ったがお世辞にも上手いとは言えない。どちらかと言うと、自分がプレイするより他人がプレイするのを見ている方が好きなタイプであった。唯一得意と言えるのはスマホ向けのリズムゲームだろうか。

 

「うおお…どうやって避けてるのかまるでわからん…!」

「恥ずかしいな、何だか」

「お淑やかに微笑みながら手つきはプロだ…!」

「凄い…!意外です、神崎さんがこんなにゲーム得意だなんて」

 

 上手い人のプレイは見ていて面白い。杉野の言うとおりどういう手の動きをしているのかは見ていてもさっぱりだし、真似しようと思っても出来ないだろう。

 

「黙ってたの。遊びが出来てもうちじゃ白い目で見られるだけだし。でも、周りの目を気にしすぎてたのかも」

「ほーん…」

 

 棗にはよく分からない感覚だった。棗の家族は、まず父親がゲームや漫画、アニメが好きなタイプの人間だ。物心ついた時から父がゲームをする姿を見ていた。棗が二次オタになったのもその影響が大きいだろう。弟も同じだ。母も、オタクとまではいかないが、それなりに漫画やアニメを楽しむタイプ。家族全員が共通のものを嗜んでいた。それに、家族が誰かの趣味を否定したりする人間ではなかったというのも、棗が好きなことを隠すという感覚をいまいち理解出来ない理由のひとつだろう。

 

「服も趣味も肩書きも、逃げたり流されたりして身につけてたから…自信がなかった。殺せんせーに言われて気づいたの。大切なのは、中身の自分が前を向いて頑張ることだって」

 

 よくわからないけれど、今回の出来事を通して神崎は自分と向き合うことが出来るようになったようだ。凄いな、と思う。自分と向き合うというのは、難しいことだ。自分自身を見つめて、時には躓きながらも前へ進む人は、とても尊敬する。

 

「そう言えば家の人が厳しいってことは、神崎さんは家庭用のゲームはやったことないってこと?」

「そうだね、そういう環境じゃなかったから」

「私は逆にこういうアーケードゲームあんまりやったことないな。まぁそもそもゲームは好きでも上手くはないし、どちらかと言うと他の人がしてるの見る方が好きなタイプやけん」

「そうなんだね」

「ゆきちゃんって呼んでもいい?」

「いいよ。私も棗ちゃんって呼ぶね」

 

 まさか違う班の人と仲良くなれるとは思っていなかった。でも、誰かと仲良くなれるというのは嫌いではない。神崎は穏やかでいい子だし、これからもたまに話が出来たらいいなと思う。

 そして入浴を済ませ消灯時間前。女子部屋では、絶賛恋バナが開催されていた。棗は思わず顔を顰める。恋バナは苦手だ。好きな相手や気になる相手というのはそう簡単に他人に話すものではないし、他人のそういう相手にも興味はない。つまり、棗にとっては何がどういう風に面白いのか、今のところあまり理解の出来ない話題なのである。二次元ならば別だが。

 

 (寝てもいいかな……)

 

「はいはーい!私は烏間先生!」

「はいはい、そんなのは皆そうでしょ。クラスの男子だと例えばってことよ」

「えー」

「うちのクラスでマシなのは磯貝と前原くらい?」

「えー、そうかな?」

「そうだよ。前原はたらしだからまぁ、残念だとして…クラス委員の磯貝は優良物件じゃない?」

「顔だけならカルマくんもかっこいいよね」

「素行さえ良ければねぇ」

「そうだね…」

「うーん、でも意外と怖くないですよ」

「普段は大人しいし」

「野生動物か」

 

 棗が無言で空気に徹している中、皆大変盛りあがっているようだ。明日に備えて寝たい。気になる相手はいないことはないが、倉橋同様クラスの男子ではないし。

 

「さっきから空気に徹してるけど、歌ちゃんはどうなのー?」

「え?あー。そーだな。渚くんかな?」

 

 面倒だな、と思いつつそう答える。

 

「ほう…その心は?」

「単純にビジュアルが好み」

 

 恋愛的な意味合いはない。棗は身長低めでかわいらしい男子が好みなので、渚と答えただけだ。まぁ、渚は穏やかで話しやすいし、個人的に好感が高いのもある。

 

「神崎さんは?」

 

 深堀りはされず、中村の興味はすぐに次の人へ移った。

 

「え?私は特には…」

「えー、ホントかなぁ?うりうり!」

「男子だって皆気にしてるぞ〜!うりうり!」

 

 神崎が気になる男子はいないと言うと、茅野と中村が神崎をくすぐり始めた。浴衣から除く生脚が大変エッチでよろしい。棗はガン見した。あと、女の子同士のじゃれあいも大変美味しいのでいくらでも見ていられる。

 

「おーいガキ共〜。もうすぐ就寝時間だってこと、一応言いに来たわよ」

 

 そこへ現れたのは、見回りに来たイリーナだ。その割には手に酒を持っているが。

 

「一応って…」

「どうせ夜通しお喋りするんでしょ?あんまり騒ぐんじゃないわよ〜」

「先生だけお酒飲んでずる〜い」

「当たり前でしょ、大人なんだから」

「そうだ!ビッチ先生の大人の話聞かせてよ」

「はぁ?」

「普段の授業より為になりそう」

「何ですって!?」

 

 イリーナが加われば花も増えるし、眼福である。それにイリーナの浴衣姿は大変けしからんのでもっと拝みたい。寝ようと思っていた棗だが、すぐにそう切り替えた。

 イリーナの話によると、彼女はまだ20歳なのだそうだ。経験豊富なのも勿論あるだろうが、欧米人は日本人からすると大人びて見えるらしいので、それもあるのかもしれない。生脚を晒しながら酒を嗜む姿が最高に色っぽく、それだけで白飯三杯くらいはいけそうだ。

 

「経験豊富だからもっと上かと思ってた」

「ねー。毒蛾みたいなキャラのくせに」

「それはね、濃い人生が作る色気が…誰だ今毒蛾つったの!!」

「ツッコミが遅いよ…」

 

 ちなみに言ったのは岡野である。他の生徒も割とそうだが、特に岡野はイリーナに対してちょいちょい失礼な気がしてならない。でも、こうやってツッコミを入れるイリーナは活き活きしていて棗は好きだ。

 

「いい?女の賞味期限は短いの。あんた達は私と違って…危険とは縁遠い国に生まれたのよ。感謝して全力で女を磨きなさい」

「ビッチ先生がまともなこと言ってるー」

「なんか生意気〜」

「舐めくさりおってガキ共!!」

「大分失礼やな君ら…」

 

 棗も思わずツッコんでしまった。でも、彼女たちとイリーナの間に嫌な雰囲気はないし、これも仲が良いということなのだろう。

 

「じゃあさじゃあさ、ビッチ先生がオトしてきた男の話聞かせてよ〜」

「わぁ、興味ある〜!」

 

 (イリーナ先生、一部の女の人にもモテそうやけど、女の人に色仕掛けとかしたことあるんかな?)

 

「フフ、いいわよ。子どもにはシゲキが強いから覚悟なさい。例えばあれは17の時…っておいそこォ!!さり気なく紛れ込むな女の園に!!!」

 

 イリーナがこれまでの経験の話をしようとした瞬間、しれっと紛れ込んでいた殺せんせーにツッコんだ。本当にヌルリと紛れ込んでいたので気づかなかった。

 

 (ステルススキル高いなー)

 

「え〜、いいじゃないですか〜。私もその色恋の話聞きたいですよ〜」

「そーゆー殺せんせーはどーなのよ。自分のプライベートはちっとも見せないくせに」

「そーよだよ、他人のばっかズルい!!」

「先生は恋バナとかないわけ?」

「そーよ!巨乳好きだし片想いくらい絶対あるでしょ?」

 

 女子からの総攻撃。一瞬考え込んだ殺せんせーは、マッハでその場から逃げ去った。

 

「逃げやがった!!捕らえて吐かせて殺すのよ!!」

 

 イリーナがそう叫び、女子は皆殺せんせーを追って部屋を出て行ってしまった。棗はというと、一人部屋に残って暫く扉の方を見つめたあと、

 

「……寝よ」

 

と言ってさっさと就寝した。

 

 明日は東京へ帰る日。そして、また日常が戻って来るのだ。




三班ってなんかバランスいい構成してますよね。

【親友ちゃんの設定】
影平(かげひら) 杏子(きょうこ)
年齢:15歳(中学3年生)
誕生日:5月3日
身長:143cm
体重:37kg
胸囲:D
血液型:A型
得意科目:主要五教科
苦手科目:体育
趣味:読書(小説も漫画も)
特技:作文
所属部活:帰宅部
宝物:家族と棗
好きな食べ物:キノコ類
好きなもの:ジャ○ーズ(特にNE○S)
将来の目標:図書館司書
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