【完結】その生徒、暗殺者に非ず。   作:クリオネf。t

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オリジナルストーリーです。
折角なのでメイド喫茶へ行くお話を書いてみたかった。


夏休み編
メイド喫茶


 一学期が終わり、いよいよ始まった夏休み。

 始まって早々、竹林からメイド喫茶へ行かないかとの誘いがあり、棗は人生初のメイド喫茶へ行くことになった。前々から興味はあったので、実際にお目にかかれるのはとても楽しみである。そして何故か、寺坂まで来るそうだ。棗の中では寺坂にそういうイメージは一切ないが……。

 竹林の話によると、どうやら寺坂がメイド喫茶に行きたいのに素直に言えずに絡んで来たから連れて来るという事らしい。

 棗もだが、竹林と寺坂は修学旅行の際同じ班であった。だからそれ以降もそれなりに交流があるのだろう。棗も修学旅行以降寺坂と話すことが増えたし、プールの一件以来更に仲良くなれたような気がする。

 

「おっ、おったおった。コータローくーん、寺坂くーん、おはよ!」

 

 待ち合わせ場所には、10分前だと言うのに既に二人が揃っていた。寺坂は意外と時間を守ろうとするタイプのようだ。

 

「おう」

「おはよう、歌さん」

「二人とも早いねー」

「そう言う歌さんも大分早いけどね」

「何かあったらいかんけんね。1時間前に来て時間潰しとった」

「ホントに早ぇな!?」

「やることなかったけんさー」

 

 都会は便利である。思い立てば、すぐに乗れる電車がある。故郷では通勤通学時間以外1時間に1本しか無かったし、午前の最後の便と午後の最初の便の間の時間が長い。まぁ本当のド田舎なら1時間に1本どころか1日に1本とか、もしかすると最寄り駅までの距離が死ぬ程遠いということもあるだろう。それと比べると棗の故郷はスーパーもコンビニもホームセンターもあるし、町内に2駅あるので、本当のド田舎の人からすると「ガチ田舎を舐めるなよ」と言われるかもしれない。まぁ要するに程よい田舎だったのである。

 

「少し早いけど、三人揃ったわけだし。目的地へ向かおうか」

「超楽しみ〜!」

「とても素晴らしい場所だから、きっと歌さんの期待に添っていると思うよ」

 

 行く前からウキウキが止まらない棗。竹林が言うならきっと間違いないだろう。

 

「でも寺坂くんまで来るのは意外やったなー」

「いいだろ別に」

「うん、いいと思う。かわいいメイドさんってやっぱ興味あるよね!」

「おう……」

 

 どこか歯切れが悪い寺坂。歳頃の男子だ。一応女子である棗の前でメイドに興味があると言うのは恥ずかしいのかもしれない。

 

「寺坂は歌さんの前だと普段よりも大人しくなるよね」

「るっせぇぞ竹林ィ!!」

 

 寺坂は顔を赤くしながら竹林を軽く締め上げる。それをまぁまぁ…と宥めながら、「仲良しだなぁ…」と思う棗であった。

 

 

 

「おかえりなさいませ、ご主人様!お嬢様!」

 

 店へ足を踏み入れると、ミニスカのかわいらしいメイドさんがよく聞く挨拶で棗たちを出迎えた。

 

 (うおぉ〜!!生お帰りなさいませ!!!)

 

 イメージ通りの光景に、棗は感動を覚えている。「本日はこちらの席へご案内いたします♡」と言われ席へ案内された。席へ着くと、椅子を引いて「こちらへどうぞ♡」と促すメイドさん。

 

「ありがとうございます」

 

 3人はそう言って席に着いた。

 

「こちらがメニューです。本日のおすすめはこちらとなっております♡」

「ごゆっくりどうぞ♡」とメイドさんは席を離れていく。渡されたメニューを見れば、定番のオムライス以外にもサンドイッチやパスタなどの料理があった。どれも美味しそうだ。

「んー、どれも美味しそう…でもやっぱりオムライス食べたいな…」

「僕が別の料理を頼むから、分けて食べるのはどうかな?」

「えっ、いーの!?」

「構わないよ」

「寺坂くん何食べる?」

「……オムライス」

「じゃあ僕はパスタを。どうしようか、ピザも2枚程頼んでおいて皆で食べるかい?」

「いいね!そーしよ!」

 

 そういうわけで、各々何を注文するかを決めたので、竹林が慣れた様子でメイドさんを呼んでくれた。

 

「オムライスをふたつ、クリームパスタをひとつ、ピザをふたつ、クリームメロンソーダをふたつ、カルピスをひとつください」

「かしこまりました、ご主人様。では、お料理が来るまでしばらくお待ちくださいませ〜」

 

 メイドさんが再び席を離れたあと、暗殺合宿の話になった。

 

「今度合宿の前に皆で集まって訓練をするようだね」

「あ、そう言えばグループチャットで流れて来てたね〜」

 

 先日、合宿前の訓練と計画の詰めの為に、クラス全員で旧校舎へ集まるという連絡があった。

 棗としては、この夏で暗殺が成功してしまえば殺せんせーとの別れが訪れてしまうので複雑な気持ちだが……皆でやる暗殺と、その訓練だ。出来る限り頑張るつもりである。

 

「お待たせ致しました、ご主人様、お嬢様。こちらメロンクリームソーダになります♡」

 

 話し込んでいると、メイドさんがドリンクを持って来た。棗の手元にもカルピスが置かれる。その後すぐにクリームパスタとピザが来て、最後にオムライスが来た。

 

「このままでも美味しいのですが、私が今から魔法をかけてもっと美味しくしちゃいますね♡ご主人様とお嬢様も一緒にかけてくださいますか?」

「は、はい!」

「はい…」

 

 所謂「萌え萌えきゅん♡」というヤツだ。

 

「では、こうやって手でハートを作って……そうそう♡お二人共とてもかわいらしく出来ていらっしゃいますよ♡」

 

 寺坂は思いっきり照れながら控えめにハートを作っている。棗はワクワクしながらハートを作っていた。

 

「では、ご一緒に♡行きますよ〜。美味しくな〜れ♡」

 

 メイドさんの掛け声に合わせて、「萌え萌えきゅん♡」と唱える。ちなみに何故かオムライスを注文していない竹林もノリノリでやっていた。

 その後はメイドさんとちょっとした会話を楽しんで、食事も楽しんで、最後はチェキも撮ってもらった。悪態付きながらも、寺坂は何やかんやでメイド喫茶を満喫している様子である。

 料理は美味しかったし、メイドさんもかわいくて、大変有意義な時間を過ごせたので大満足だ。出来ればまた来たいと思う。メイドさんと寺坂がチェキを取る後ろで猫耳メイド姿の殺せんせーがいた事には竹林と二人して度肝を抜かれたが。何やらメモを取っていたようだが、寺坂は気づいていないようなので何も言うまい……と目くばせをした。

 その後は寺坂のみ先に帰り、棗は竹林と二人でア○メイトへ行くなどして残りの時間も楽しんだ。

 一日遊び尽くして、いつの間にか日が傾き始めた頃、二人は帰路につく。

 

「今日は楽しかったー!お金のこともあるから頻繁には行けないけど、また行きたいな!」

「歌さんが気に入ってくれて嬉しいよ。僕もまたたまに歌さんや寺坂君と行きたいな」

「一人で行くのもありだなー」

「そうだね、一人は一人で自由に動けるから、楽しいと思うよ」

 

 暫しの間、会話が止まる。そして、竹林が真剣な面持ちで口を開いた。

 

「……歌さん」

「ん?」

「大事な話があるんだけど……」

「おーなになに?どした?」

 

 すると、竹林はまた口を噤んでしまう。中々何も言い出さない竹林に、何だか棗もそわそわしてきた。多分、何かを物凄く考えているのだろうというのは何となく分かった。

 暫く待つと、ぽつりと呟くようにこう口にする。

 

「実は…二学期からA組へ行くことになったんだ」

 

 A組へ行く。それはつまり、本校舎への復帰を意味する。

 

「僕の家族のことは……前にも話しただろう?」

 

 確か前に、竹林の家は病院を営んでいて、家族も皆医者や医者志望で、とても厳しいと聞いたことがある。E組へ落ちた竹林に冷たいのだとも。

 

「あー、なるほどぉ」

 

 棗はそれだけ返す。他に思い当たる言葉も見つからないからだ。

 

「他に何も言わないのかい?」

 

 あまりにもあっさりとした棗の返事に、竹林は面食らったように言う。

 

「言った方がいいの?」

「いや…」

「コータローくんが戻りたいって思って戻るんだよね?」

「それは…そうだけど」

「じゃあ私から言うことはなんもないがな」

 

 棗は特に何も気にしていなかった。それは竹林のことをどうでもいいと思っているからではない。棗は元々、家族や親友など彼女にとって最も大切な者であろうと、その人がどんな職業に就いていて、どんなことをしているかまでは然程関心がない。勿論、話の流れで聞くことはあるが……基本的に、『その人がどこで何をしていようとも、その人が心身共に健康で、その人が自分自身の人生に幸福を感じているのならばそれでいい』という棗独特の考え方がある。

 

「A組に行ったからって友達じゃなくなるとかじゃないよね?」

「…うん。それは勿論」

「会える頻度は確実に低くなっちゃうけど、今まで通りこうやってメッセージのやりとりしようぜ。たまにでも全然いいから」

「…ありがとう、歌さん」

 

 竹林はどこか安堵したように微笑んで言った。

 

「別にお礼言われるようなことはしとらんよ」

「あ…でも、このことはクラスの皆には絶対に話さないでもらいたいんだ」

「絶対ね。おっけーわかった」

 

 話しているうちに、改札前へ辿り着いた。

 

「そんじゃーね!今日は楽しかった、ありがと!合宿頑張ろーぜ!また!バイバイ!」

「こちらこそ。またね」

 

 棗は笑顔で手を振る。

 

「ちゃんと皆に隠し通せるかな〜」と心配しつつ、まぁ悩んでも仕方ないかと棗は改札を潜るのであった。




地元にガチのメイド喫茶ってないんで、いつか行ってみたいんですよね。かわいいメイドさんに「お帰りなさいませ、お嬢様♡」って言われたい。
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