【完結】その生徒、暗殺者に非ず。   作:クリオネf。t

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結構凝縮してます。


南の島

 本日から、E組がA組との賭けで勝ち取った普久間島での暗殺合宿が始まる。修学旅行の新幹線で乗り物酔いをすることが判明した殺せんせーは、やはり船酔いしてグロッキーな姿になっている。

 揺れの少ない新幹線で酔うのだから、船なんかはもっと酔うのだろう。棗にはよく分からない感覚であるが。

 普久間島へ着いて早々、店員がサービスでトロピカルジュースを用意してくれた。トロピカルジュースが具体的にどういうジュースなのかはわからないが、恐らく暖かい南国で育つ果物のミックスジュースなのだと思う。ジュースは大変美味しかった。

 海は透き通っていて、とても綺麗だ。ただ、白い砂浜に反射する光が眩しくて、目が眩みそうである。

 このビーチは、ホテルから直行で行ける場所らしい。海水浴はそこまで好きな方ではない。海は眺めるもので、眺めているだけで癒される。海風が心地いいパラソルの下で、棗はさざ波の音や皆がわいわいはしゃぐ声をBGMに、テーブルへ突っ伏していた。これが一番自分に合っている。

 生徒たちは誰も彼も皆、遊んでいるようで着々と暗殺の下準備を進めていた。棗は竹林たちと共に千葉と速水の狙撃ポイントを捜す役割を担っている。狙撃組は最早仕事人の風格であった。

 そして迎えた夜、船上レストラン。

 

「……コータローくん、先生なんであんな真っ黒なん?」

 

 棗は、前も後ろも分からない程真っ黒焦げになった殺せんせーを見て、隣の竹林に疑問を投げつけた。

 

「一日満喫し過ぎて日焼けをしたみたいだよ」

「歯まで黒いが…?」

「そこに関しては心の底から疑問だね…」

 

 本来は歯は日焼けしない筈なのだが…不思議なものである。

 殺せんせーは、黒過ぎてわからないからどうにかして欲しいと生徒たちから指摘されていた。確かにこのままだとややこしい。

 

「お忘れですか、皆さん。先生には脱皮があることを!」

 

 そう言って焼けた皮を脱ぎ捨てて、元の姿へと戻る。つまりそれは、月一でしか使えない奥の手を使ってしまったということで。気がつけば時すでに遅し。殺せんせーは自ら戦力を減らすという失態を晒してしまったのである。

 ちなみに船上レストランの食事はとても美味しかった。殺せんせーは船の上で更に食事までしてしまったせいか、再びグロッキーになっている。

 そんな殺せんせーを皆で水上チャペルへ誘導していく。

 

「さぁ、席に着けよ殺せんせー」

「ここなら、逃げ場はありません」

「楽しい暗殺!」

「まずは映画鑑賞から始めようぜ〜」

 

 今から見せるのは、三村が編集した動画だ。その後にテストで勝った七人が触手を破壊する。それを合図に皆で一斉暗殺を始める手筈である。

 ただ、棗は未だに泳げないため岸の方での待機を命じられてしまったのであった。

 チャペル内では、殺せんせーが今までやらかしたことの数々を収めたドキュメンタリー動画が流されている。

 例えば、今回の合宿より少し前…大量のエロ本を読んでいる姿。女装して女子限定のケーキバイキングに並ぶ姿。給料前に分身でティッシュ配りの行列に並ぶ姿。あろうことか、それを唐揚げにして食す姿。

 唯一と言ってもいい程純粋に殺せんせーを尊敬し、好感度の高い棗にこの動画を見られなかっただけマシであると言えるかもしれない。

 

「おー、殺ってんな〜、すげーやぁ」

 

 岸から皆の暗殺の様子を眺める棗。

 モーターボートでチャペルを一気に破壊し、フライボードで水の檻を作る。敢えて殺せんせーを狙わない一斉射撃。そこからトドメの狙撃組。

 水の檻の中は見えないが、今まで以上に殺せんせーを追い込んでいるように思える。

 

「……殺せんせー……」

 

 皆の目的が達成されるのは勿論喜ばしいことだ。しかし、この暗殺が成功すれば……殺せんせーとはもう二度と会えなくなる。棗は複雑な思いに駆られていた。

 が、突如聴こえた衝撃音にビクリと身体を震わせる。一体何が起こったというのだろう。棗は烏間やイリーナと共に皆の元へ駆け寄った。

 

「油断するな!奴には再生能力がある。磯貝君、片岡さんが中心になって水面を見張れ!」

 

 烏間の声掛けに応じ、磯貝たちが殺せんせーのいた水面近くへと泳ぎ近づく。そこからぶくぶくと気泡が浮き始め、何かが浮上して来た。

 当然、殺せんせー…なのであるが。

 いつもの姿ではなく、何やら顔だけが透明なカプセルの中にでも入ったかのような状態になっていた。

 

「ヌルフフフフフ!これぞ先生の奥の手中の奥の手…『完全防御形態』です!」

 

 完全防御形態。

 

「すげー!」

「ナツメはなんで目を輝かせてんのよ…」

 

 外側の部分は高密度に凝縮されたエネルギーの結晶体。肉体を思い切り小さく縮め、その分余分となったエネルギーで肉体の周囲を固めた形態。それが完全防御形態である。

 無敵にも思える形態だが、勿論欠点もある。結晶が崩壊し元の姿へと戻るまでの二十四時間、殺せんせーは身動きが全く取れなくなってしまうのだ。しかしながら、その間に宇宙空間に飛ばされるとして、それが可能なロケットは現時点ではどこにも存在しない。聞くところによれば、結晶体は核爆弾でも傷一つつかないらしい。

 

「そっかー。弱点ないんじゃ打つ手ないねぇ」

 

 そう言ってカルマは寺坂から殺せんせーを受け取ると、手に持ったスマホで先程のドキュメンタリー動画を見せた。

 

「ニュヤーーーッッ!!!やめて!!!手がないから顔も覆えないんです!!!」

「ごめんごめん!じゃあ取り敢えず…そこで拾ったウミウシ引っつけとくね〜」

 

 カルマはここぞとばかりに殺せんせーをイジり倒す。こういう時のカルマは天才的である。

 

「取り敢えず解散だ、皆。上層部とコイツの処分法を検討する」

 

 カルマの手から殺せんせーを受け取った烏間は、そのままビニール袋の中に殺せんせーを入れた。

 

「君たちは誇って良い。世界中の軍隊でも、先生をここまで追い込めなかった。ひとえに、皆さんの計画の素晴らしさです」

 

 殺せんせーは生徒たちを称賛する。しかし、彼らの表情は浮かない。かつてなく大掛かりな、全員の渾身の一撃を外したショックが大きいのだ。

 

「ところで殺せんせー」

「はい、どうかしましたか?棗さん」

「ちょっと触ってみてもいいですか?どんな感触が気になって…」

「勿論構いませんよ」

 

 触ってみた殺せんせーの結晶体は、硝子玉のようにツルツルで、硬かった。これが核爆弾をも跳ね除けるのかと、棗はついついっと指で軽く突く。

 大掛かりな暗殺の失敗に気落ちする棗以外と、普段通りの棗。それを見た烏間は、やはり彼女はどこか他の生徒とは違うと感じたのであった。




やだ、適当過ぎ…?
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