【完結】その生徒、暗殺者に非ず。   作:クリオネf。t

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烏間先生とイリーナ先生をくっつけよう作戦

「もうやってらんない!鈍感にも程があるわ!」

「ビッチ先生意外だな〜。あんだけ男を自由自在に操るのに」

「自分の恋愛にはてんで奥手なのね」

 

 ホテルのテラス席で為されるイリーナとクラスメイトたちの会話。棗は脳内に疑問符を浮べる。

 

「恋愛?はっ、冗談じゃない」

「えっ、違うんすか?」

「アイツが世界クラスの堅物だから珍しかっただけよ!それでムキになって本気にさせようとしてる間に…そのうち、こっちが…」

 

 それはつまり。

 

「ねぇコータローくん…これってイリーナ先生は烏間先生のことが好きってこと…?」

 

 棗はようやくその事実に辿り着いた。他人の恋愛事情に無関心な棗は、誰が誰を好きであるかを察するのが非常に苦手なのだ。交際していたことを知った時には既にそのカップルは別れていたなんてこともあるくらいだ。

 

「歌さん……今更かい……?」

「だから皆くっつけようとしてたんや…」

 

 棗はやっと理解した。

 

「でもイリーナ先生的に、首突っ込まれるのOKなんかね?」

「満更でもなさそうな顔をしているし、大丈夫なんじゃないかな」

「そっかぁ。私は大した後押し出来んけど、イリーナ先生なら多分大丈夫やね。かわいいから」

「ビッチ先生を普段からかわいいと思っているのはきみくらいじゃないかい」

「え?かわいいでしょ、イリーナ先生」

 

 寧ろどうして皆そう思わないのかが棗には疑問である。経験豊富な大人という感じもあるけれど、生徒たちとはしゃぐ姿は少女のようでかわいらしいではないか。

 

「まずさあ、ビッチ先生服の系統が悪いんだよ」

「そうそう、露出しときゃいいや的な?烏間先生みたいなお堅い日本人の好みじゃないよ。もっと清楚な服で攻めないと」

 

 (清楚なイリーナ先生……見たい……)

 

 普段際どい服装をする人間の清楚な服装。どう考えてもギャップ萌えの予感しかしない。そう、露出が少ないからこそのエロさというものがあるのだ。

 

「清楚っつったらやっぱり神崎ちゃんか。昨日着てたの、乾いてたら貸してくんない?」

「え?あ、うん」

 

 (それは胸のサイズ合わなくてとんでもないことになるのでは…?)

 

 棗がそう思っていたら、案の定とんでもない事になった。逆にエロいという緊急事態だ。これはこれで美味しいけれども。

 

「そもそも全てのサイズが合わないっての」

「神崎さんがあんなエロい服を着てたと思うと…」

 

 服がエロいのではない。イリーナが服をエロくしているだけである。

 

「もういいや、エロいのは仕方ない。大切なのは乳よりも人間同士の相性よ」

 

 岡野の言葉に千切れるんじゃないかという程首を縦に振る茅野。そう言えば茅野は巨乳に対する憎悪が謎に強かった。

 

「烏間先生の好みを知っている人は?」

「あ、そういえば以前、テレビのCMのあの人のことベタ褒めしてた。俺の理想のタイプだって」

 

 矢田が言うには、某セキュリティ会社のCM 出演していた某レスリング選手のことを「顔つきも身体付きも理想的だ。おまけに三人もいる」と言っていたらしい。

 完全に理想の戦力である。

 

「じゃ、じゃあ手料理とかどうですか?ホテルのディナーも豪華だけど、そこを敢えて二人だけは烏間先生の好物で…」

 

 奥田がそう提案したのはいいものの、皆烏間がハンバーガーかカップ麺しか食べているところを見たことがないという現実。

 

「付け入る隙が無さすぎる…」

「なんか烏間先生に原因があるように思えて来たぞ…」

「でしょでしょ?」

 

 打つ手が無さ過ぎて、ついには烏間がディスられ始めた。

 

「烏間先生忙しいから手軽に食べられるものを食べてるだけで、普通に和食とか好きそうなイメージあるけどなぁ……こう、白米と味噌汁とか、肉じゃがとか……家庭料理的な」

「まぁ…ありそうだね…」

 

 あくまでイメージなので、実際は全然違う可能性はあるが。

 

「とにかく、ディナーまでに出来ることは整えましょう。女子はスタイリングの手伝いを。男子は二人の席をムード良くセッティングです」

 

 そんなこんなで烏間とイリーナの席は外にセッティングされた。イリーナが身に着けたショールは裁縫の得意な原がブランドっぽくアレンジしたものだ。

 生徒や殺せんせーは、陰から二人を見守る。にしても、こんな大勢でこんな風に見ていたら普通にバレそうな気もするが、どうなのだろう。

 どうなることやらと思っていたが、イリーナは楽しそうだ。

 

「色々あったな、この旅は」

「え?」

「だが収穫もあった。思わぬ形だが、基礎が生徒たちに身についてるのが確認出来た。この調子で二学期中に必ず殺す。イリーナ、お前の力も頼りにしてるぞ」

「……」

 

 イリーナは何を思っているのか、何も言わずに烏間を見つめている。

 

「どうした?」

「ねぇ、カラスマ。『殺す』ってどういうことか…本当にわかってる?」

 

 この距離からだと何を言っているのかは聞こえないが、どこかセンチメンタルな感じがするのは見て取れる。手にしたナイフで髪ゴムを切ったイリーナが、烏間に近づいた。

 

「湿っぽい話しちゃったわね。それと、ナプキン適当につけ過ぎよ」

 

 烏間の身につけたナプキンに自身の唇を触れさせた後、そのナプキンを烏間の唇にそっと押し当てる。関節キスだ。普段大人のキスをするからイリーナだからこそ、逆にそれがギャップを感じていい。ロマンティックな雰囲気だ。

 

「好きよ、カラスマ。おやすみなさい」

 

 (ええ感じやがな!)

 

 棗としては中々きゅんきゅんするものを見れて大満足だ。イリーナのことは少し気になる歳上のお姉さんという認識ではあるが、イリーナが幸せならばそれで良いので、彼女が本気で烏間を想っているのなら全力で応援したい。

 他の生徒たちからはいつものディープキスではなかったことからブーイングが飛び交っていたが。

 いやらしい展開もいいかもしれないけど、一番は二人の心が通じ合うことが大切だと思う。

 イリーナにも、烏間にも、幸せになって欲しい。

 心からそう思う棗であった。




間接キスって浪漫を感じますよね。
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