【完結】その生徒、暗殺者に非ず。   作:クリオネf。t

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修正前の1話の内容を修正したものになります。


放課後

「先生。今、お時間大丈夫ですか?」

 

 放課後、棗はわからない問題を教えて貰う為に職員室へ寄った。今までは教えて欲しいと頼むのも苦手で避けていたけれど、殺せんせーには不思議と気兼ねなく聞くことが出来るようになっていた。

 

「おや棗さん。ヌルフフフ、勿論です。何か相談事ですか?」

 

 殺せんせーは笑みを浮かべながら──とは言えいつも笑顔がデフォルトなのだが──優しい口調で棗の声に反応する。まだまだ頼むのに緊張はするけれども、殺せんせーの反応を見ると少しずつの緊張も解れた。

 

「えっと。わからない問題が、あって。色々教えて欲しくて……良いですか……?」

 

 辿々しい棗の問いかけにも、殺せんせーは快く返事をして、わからない問題を丁寧に教えてくれた。一回では理解出来なくとも、それでもひとつひとつ丁寧に。だから棗は、この先生が好きだし、尊敬しているのだ。

 

「棗さん」

「あっ、はい」

「棗さんは、このE組(クラス)をどう思っていますか?」

 

 殺せんせーの唐突な問いかけに、棗はぱちくりと瞬きを繰り返す。

 

「いいクラスだと思います。私は好きです。皆いい人だし、本校舎にいた時みたいに皆勉強勉強〜って雰囲気ではなくて、過ごしやすいです。殺せんせーのお陰で少しずつわからないこともわかるようになってきてて…自分に合ってて、無理ないペースで成績を伸ばしていけるなら、私はテストの順位で50位以内に入ってもE組(ここ)に残りたいなって思ってます」

 

 思っていることをそのまま口にした。

 

「そうですか。先生としてもそれは嬉しいことです。この学校のシステムは一風変わっていますから……このE組(くらす)の生徒達は劣等感の強い者が多いですね」

「あー、確かにそうですね。皆それぞれいいところあるから、E組だからってそこまで気にする必要はないと思うんですけど…中々そうは思えないんだろうなとも思います」

 

 棗は、成績が下がることに関して学費を払ってくれる親に申し訳ないと感じていたが……他人との勝負や競争に対する興味関心が極端に薄い。だからE組(ここ)へ来て、前の自分の成績よりも少しずつ伸びていればそれでいいと考えていた。

 両親も、「棗に合った環境で勉強が出来るならそれでいい」と言ってくれているので、E組のまま卒業する予定だ。もし椚ヶ丘の高等部へ進学するのならば、外部受験にはなってしまうが……高校からどうするかは、まだ決めていない。

 気がつけばあっという間に一時間以上が経過しており、そろそろ帰らなければならない時間も近づく。棗は電車通学なので、遅くなればなるほど帰る為の便がなくなってしまうのだ。

 

「先生、ありがとうございました。お時間頂いちゃってすみません」

「いえいえ、それが教師としての役目ですから。君達に教えることは、先生にとってとても名誉なことなんですよ」

 

 そう言ってくれる殺せんせーに、棗は安心した。そういうことを当たり前のことのように口に出来る先生。本当にいい先生であると改めて感じた。

 

「あの…先生」

「にゅ、どうしましたか?」

 

 棗は、帰る前にどうしても聞きたいことが頭に浮かんだ。今度、いつまた二人だけで会えるかもわからない。だからこそ、今聞いておきたいこと。

 

「先生。私……興味のないこと、出来ないんです。でも、やる気が全くないとかじゃなくて……やらなきゃって、思うけど、でも、興味のないことはとことん身に付かなくて……えっと。どう言ったらいいのかわからないんですけど……」

 

 棗は口頭でのやり取りが苦手だった。その場で瞬時に考えて言葉を口にするというのが、棗にとってはどうしても高度なことで。だからどうしての、こんな話し方になってしまう。それが何故なのかは、棗自身にもよく分かっていない。

 

「焦らなくても大丈夫です。ゆっくりでいいですよ」

「は、はい。えっと。なんていうか……暗殺に、興味持てなくて。でも、皆凄く頑張ってるから、興味ないからって参加しないのは申し訳なくて。皆と一緒に暗殺計画に誘われた時は出来るだけ頑張りたいけど、単独での暗殺は……」

「……ふむ」

 

 話を聞いてくれていた殺せんせーが何かを考え、再び口を開く。

 

「そうですね、見ていてわかりますよ。興味の持てない分野がとことん苦手で、身につかない。身についたとしても、他人の数倍以上時間がかかる人はそれなりいるものです。君は君のペースでいい。もし暗殺に興味が出たら、その時に単独暗殺を試みるのもアリです。先生は歓迎しますよ。もし、興味が持てなかったら持てなかったで、それでも構いません。それが君の個性なのですから」

 

 殺せんせーの触手が、優しく棗の頭に添えられた。一見ひんやりしていそうに見える触手は、触れてみると案外温かくて、安心する。殺せんせーも人間なのだな、と棗は感じる。

 

「ありがとうございます、先生。じゃあ、今日はこれで……さようなら。また明日」

「はい、さようなら。また明日」

 

 挨拶を交わし小さく手を振れば、殺せんせーも振り返してくれる。

 明日も楽しみだな、と明るい気持ちで棗は帰路についたのであった。




意外と加筆修正が大掛かりになった。
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