【完結】その生徒、暗殺者に非ず。   作:クリオネf。t

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二学期末テスト

 いよいよ、二学期末テストが目前に迫っている。

 殺せんせーは、一学期中間テストでのことを改めて謝罪した。成果を焦りすぎたこと。敵の強かさを想定していなかったこと。

 そして……今のE組はもう、頭脳も精神も成長していると言った。どんな策略やトラブルにも負けず、目標を達成することが出来る筈だと。

 

「堂々と全員50位以内に入り、堂々と本校舎復帰の資格を獲得した上で、堂々とE組として卒業しましょう」

 

 だが、立ちはだかる壁は大きい。

 杉野の話によれば、A組の担任が學峯になったらしい。彼直々に、全ての授業を教えるそうだ。

 

 (はえー、理事長先生も気合入ってんだなー)

 

「……そうですか。とうとう……!!」

「正直、あの人の洗脳教育は受けたくないよ。異様なカリスマ性と、人を操る言葉と眼力」

 

 (表面上は温厚そうに見えるのになー)

 

「授業の腕も、マッハ20の殺せんせーとタメ張るし」

 

 殺せんせーは「キィー!」と悔しそうにハンカチを噛んでいる。いつもの事ながらまるで漫画のような悔しがり方である。割といつもコミカルであるが。

 

「あの人の授業受けたら……多分もう逆らえる気がしない」

 

 

 下校時刻。

 

「理事長と殺せんせーってさ、なんかちょっと似てるよね」

 

 山を降りて本校舎の前を通っていた時、不破が思い出したようにそう言った。それに対し前原は、「どこが?」と問う。

 

「二人とも異常な力持ってんのに、普通に先生やってるとこ。理事長なんてあれだけの才覚があれば、総理でも財界のボスでも狙えただろうに……たったひとつの学園の教育に専念してる。そりゃ手強くて当然だよ」

 

 確かにそうだ。細かいことはよくわからないが……學峯が取り敢えず凄い人であるのはわかる。そんな人が、この学園にこだわる理由。教師として居続ける理由となると、

 

「……人に何かを教えるのが好き……とかかな?」

 

と棗は考えた。出来る事とやりたい事は別にイコールではない。出来る事が多い中で教師である事を選ぶと言うのは、やはり教師という職業が好きだとか、思い入れがあるとか、そういう事なのだろうと思う。実際のところどうなのかについては、學峯のみぞ知るところである。

 

「……あれ?浅野君だ」

 

 茅野が、校舎の壁にもたれかかる学秀に気がつく。どうやら出待ちしていたらしい。

 

「……なんか用かよ」

「偵察に来るようなタマじゃないだろーに」

 

 E組の生徒たちは、皆怪訝そうな表情を浮かべている。

 

「……。こんなことは言いたくないが……君たちに依頼がある」

 

 学秀がE組に頼み事とは、珍しいこともあるものだ。彼をそうさせるような余程の出来事があったのだろうか。

 

「単刀直入に言う。あの()()を、君たちに殺して欲しい」

 

 学秀はE組の暗殺事情を知らない。だから彼の言う怪物とは、十中八九彼の父親のことであろう。

 

「勿論、物理的に殺して欲しいわけじゃない。殺して欲しいのは……あいつの教育方針だ」

「教育方針……って、どうやって?」

「簡単な話だ。次の期末で君たちE組に上位を独占して欲しい。無論1位は僕になるが、優秀な生徒が優秀な成績でも意味が無い。君たちのようなゴミクズがA組を上回ってこそ……理事長の教育をぶち壊せる」

「……浅野君。君と理事長の乾いた関係はよく耳にする。ひょっとして……お父さんのやり方を否定して、振り向いて欲しいの?」

「勘違いするな。父親だろうが蹴落せる強者であれ。そう教わって来たし、そうなるよう実践して来た。他人はどうあれ、それが僕ら親子の形だ」

 

 (浅野くんとお父さんの話全くしたこと無かったけど、複雑やな)

 

 色んな家族の形があるという事だ。

 

「だが、僕以外の凡人はそうじゃない。今のA組は、まるで地獄だ」

 

 E組への憎悪を唯一の支えに、限界を超えて勉強させる。もしそれで勝てたとしたら、彼らはこの先、その方法しか信じなくなると学秀は言う。

 

「敵を憎しみ、蔑み、陥れる事で手に入れる強さは、限界がある。君達程度の敵にすら手こずるほどだ。彼らは高校に進んでからも僕の手駒だ。偏った強さの手駒では、支配者(ぼく)を支えることは出来ないんだ」

 

 時として敗北は、人の目を覚まさせるもの。一学期末テストの時のカルマがそうであったように。

 

「だからどうか──正しい敗北を、僕の仲間と父親に」

 

 そう言って学秀は頭を下げた。傲慢な本心を隠さないのは、本心で話しているから。彼は今、本気で他人を気遣っているのだ。

 

「え、他人の心配してる場合?1位取るの君じゃなくて俺なんだけど」

 

 流石カルマ、雰囲気ぶち壊しである。学秀の顔にも青筋が浮かんでいる。まぁでも、変に緊張感があるよりかはこっちの方が気が楽でいいのかもしれない。

 

「言ったじゃん。次はE組全員容赦しないって。1位は俺で、その下もE組。浅野クンは10番あたりがいいところだね」

「おお〜、カルマがついに1位宣言」

「一学期末と同じ結果は御免だけどね」

「今度は俺にも負けんじゃねーのか、ええ!?」

 

 揶揄った寺坂がカルマにボカスカ殴られている。いくらなんでもやりすぎではなかろうか。こらこら、と棗はそれを止めに入る。その傍で、磯貝と学秀のやり取りが続く。

 

「浅野。今までだって本気で勝ちに行ってたし、今回だって勝ちに行く。いつも俺等とお前らは、そうしてきただろ。勝ったら嬉しくて、負けたら悔しい。そんでその後は格付けとか無し。もうそろそろそれでいいじゃんか。『こいつ等と戦えて良かった』……って、A組(おまえら)が感じてくれるよう頑張るからさ」

「余計な事考えてないでさ。殺す気で来なよ。それが一番楽しいよ」

「フン、面白い。ならば僕も本気でやらせてもらう」

 

 こうして話が終わり、E組はそれぞれ帰途につく。そんな中、学秀が棗だけに声をかけてきた。

 

「歌川さん」

「あっ、はいっ!」

 

 ここで声をかけられるとは思わず、棗は勢いのいい返事をしてしまった。先を歩くクラスメイトたちが振り返るが、気にせずに行ってくれと言って、学秀へと向き直る。

 

「……いつも以上に元気がいいな」

「いやー、この流れで話しかけられたからさ〜つい」

「いいんじゃないかな。君らしくて安心するから」

 

 苦笑を浮かべる学秀。今まで学秀からそういうことを言われたことがなかったので、棗ははにかんだ。

 

「そーかな?へへ」

「気の抜けた笑い方だな……いつものことだが」

「まぁねぇ。……それにしても、浅野くんがあんな真剣な顔で頭下げてるところなんて初めて見たよ。いやまぁ、浅野くんに限らずあそこまで真剣に頭下げてる人なんてそうそう見たことないけども」

「……君と話していると気が楽になるよ」

「ほえ?え、あ、そ、そぉ?んへへ……」

 

 褒められるというのは嬉しいものであるが、いつになっても慣れない。ましてや学秀からの褒め言葉など、いつも以上にどういう反応をすればいいのか分からなかった棗は、照れ笑いを浮かべて誤魔化した。

 

「……っ、か……」

「?」

 

 何かを言いかけた口許を手で押さえる学秀。棗はそれに首を傾げたが、すぐに「何でもないよ」と言って元の調子に戻る。一体何を言いかけたのか気にはなるものの、棗は流すことにした。

 

「君と話せてよかった。君も最善を尽くして頑張ってくれ」

 

 学秀は微笑んで、声援の言葉を投げかける。

 

「うん、頑張る!」

 

 棗も、満面の笑みを浮かべて応えた。

 


 

 怒涛のような二学期末テストが終わり、ついに結果の出る日となった。今回は細かい点数の発表はせず、総合順位が黒板一面に張り出される。

 結果は……

 

「俺が……47位……!?」

「うちでビリって寺坂だよな…」

「その寺坂君が47位…?」

「ってことは……」

 

 そう、ついにクラス全員総合50位以内を達成したのである。当然、クラスは沸いた。

 棗の順位は14位。なんと、五英傑の一人を抜いていた。大学入試レベルの問題でここまでの結果が出せたのは奇跡である。……否。殺せんせーの教育の賜物だ。

 

 (カルマくんは満点合格かー。凄いな……)

 

 各々がそれぞれの思いに浸っている。

 

「? 体調悪いのか、竹林」

 

 磯貝が隣にいる竹林に声をかけた。棗もそのすぐ傍にいたので、竹林の顔を見る。

 

「ああ、いや……E組に落ちて、色々なことがあったけど……残ってよかったなって」

 

 一度は本校舎復帰を望み、E組を抜けた竹林。そんな彼だからこその思う部分があるのかもしれない。

 

「なーにシケたツラしてんだよ!」

 

 そう言って寺坂が竹林の肩を組んで、「竹林の癖に」と片手で頬をうりうりとしていた。

 

「そうだ。面が悪いのは寺坂だけでいい」

 

 何気に失礼なことを言うイトナ。寺坂グループは今日も平和だ……と棗は思った。

 

「さて皆さん。晴れて全員E組を抜ける資格を得たわけですが……この山から出たい人はいますか?」

 

 殺せんせーの問いに、皆出る気はないと答える。棗もそう。棗としてはこのクラスが居心地がよかったし、勉強するのに場所は関係ないと思っていたので、元より出るつもりはなかった。

 

「では今回の褒美に、先生の弱点を教えて差し上げ……」

 

 その時、教室全体が大きく揺れた。初めは地震かとも思ったが、外を見てそうではないことを悟る。

 重機で校舎が破壊されていたのだ。

 

「退出の準備をして下さい」

 

 そこにいたのは、學峯だ。彼が言うには、E組のいるこの旧校舎は今日を持って取り壊されることが理事会で決まったらしい。

 

「君達には……来年開校する系列学校の新校舎に移ってもらい、卒業まで校舎の性能試験に協力してもらいます」

 

 (系列校まで展開してるんや……)

 

 それにしても、随分と強硬手段に出たものである。

 

「監視システムや脱出防止システムなど、刑務所を参考により洗練された新しいE組です。牢獄のような環境で勉強出来る。私の教育理論の完成形です」

「え、どこ目指してるんです……??本気でそうしたいんです……??」

 

 だとしたら怖過ぎるわ、と棗は思わずツッコんでしまう。浅野くん……君のお父さん、何だかおかしな方向に迷走していますよ……というメッセージを送りたくなった。

 当然、生徒たちは皆この校舎で卒業したいと反発。

 

「どこまでも……己の教育を貫くつもりですね」

「……ああ、勘違い為さらずに。私の教育にもう貴方は用済みだ」

 

 學峯が取り出したのは、解雇通知だ。それが意味することは……想像に難くない。

 殺せんせーは案の定テンパり、「不当解雇です!!」と訴えていた。というか解雇通知は印籠じゃないのだが。

 

「早合点為さらぬよう。これは標的を操る道具に過ぎない。あくまで私は……殺せんせー。貴方を暗殺しに来たのです」

「ニュヤッ!?」

「私の教育に不要となったのでね」

 

 まさかの暗殺宣言。本気のようである。しかし、思いつきで殺れる程殺せんせーを殺すことは容易ではないとカルマは言う。

 そして、學峯が提示した暗殺方法はこうだ。

 5教科の問題集と5つの手榴弾を用意している。そのうちの4つは対先生手榴弾、残りひとつは対人用…一般的な本物の手榴弾。どれも見た目や匂いでは区別はつかない。ピンを抜いてレバーが起きた瞬間爆発するようになっている。ピンを抜き、問題集の適当なページにレバーを起こさないよう慎重に挟む。これを開き、ページ右上の問題を一問解く。すると開いた瞬間レバーが置き、ほぼ確実に爆発を喰らう。そんなギャンブル的方法である。

 順番は、殺せんせーが先に4冊解き、残った1冊を學峯が解くというもの。

 これで學峯を殺すか、ギブアップさせられれば、殺せんせーやE組がここに残ることを認めるそうだ。

 殺せんせーが勝てる確率は20%。しかし、やるしかない。殺せんせーは勝負を受けることを選んだ。

 殺せんせーが席に着いた。その場に緊張が走る。

 初めの問題で、殺せんせーは一発目から爆発を喰らった。しかも、かなりの威力だ。あと3回耐えられるかどうかわからない。

 そして、次の問題。殺せんせーは開いて解いて、すぐ閉じた。一瞬の出来事だった。

 

「この問題集シリーズ……ほぼほぼどのページにどの問題があるのか憶えています。数学だけ難関でした。生徒に長く貸していたので忘れてまして……」

「私が持って来た問題集なのに、たまたま憶えていたとは」

「まさか。日本全国全ての問題集を憶えましたよ。教師になるんだからその位は勉強するでしょう。『問題が解けるまで爆弾の前から動けない』。こんなルール、情熱がある教師ならばクリア出来ます。貴方なら私をわかってくれていると思っていましたが……教え子の敗北で心を乱したようですね。安易な暗殺で、貴方は自分自身の首を絞めた」

 

 残りは1冊。つまり、學峯の番だ。表情から感情を読み取ることが出来ない。彼は今、一体何を考えているのだろう。自身の死を目の前にして。

 

「さぁ、浅野理事長。最後の1冊を開きますか?いくら貴方が優れていても……爆弾入りの問題集を開けばタダでは済まない」

「アンタが持ち出した賭けだぜ。死にたくなきゃ、潔く負けを認めちまえよ」

 

 吉田の言葉に、ギロリと學峯の眼球がこちらを向いた。吉田は思わず「ヒィッ!」と怯んで片岡の後ろに隠れようとするが、直ぐに押しのけられた。

 

「それに私達、もし理事長が殺せんせーをクビにしても構いません」

「この校舎から離れるのは寂しいけど……私達は殺せんせーに着いていきます」

「家出してでも、どこかの山奥に籠ってでも、僕らは3月まで暗殺教室を続けます」

 

 クラスメイトたちの意思は固かった。それだけ皆、殺せんせーのことが大好きであるということ。それだけ、殺せんせーが生徒達の信頼を積み上げて来たということだ。

 

「……殺せんせー。私の教育論ではね、貴方がもし地球を滅ぼすなら……それでもいいんですよ」

 

 學峯はそう言ってなんの躊躇いもなく問題集を開いた。当然、手榴弾は爆発する。……しかし。

 

「ヌルフフフ。私の脱皮をお忘れですか?」

 

 月に一度の脱皮。もしもの時のための切り札のひとつ。殺せんせーは、それを理事長の身体に纏わせていた。自分には使わずに。

 

「何故それを自分に使わなかった?数学の爆弾を開く時に使っていれば……そんな洋梨みたいな顔にならずに済んだものを」

「貴方用に温存しました。私が賭けに勝てば……貴方は迷いなく自爆を選ぶでしょうから」

「……。何故……私の行動を断言出来る?」

「似た者同士だからです」

 

 互いに意地っ張りで教育バカ。自分の命を使ってでも教育の完成を目指す姿勢。そこが、殺せんせーと學峯の似通った部分だった。

 殺せんせーは、學峯のかつての教え子に話を聞いたらしい。十数年前の學峯の教育理論は、今の殺せんせーの教育の理想とよく似ているらしい。

 

「私が貴方と比べて恵まれていたのは……このE組があった事です。纏まった人数が揃っているから、同じ境遇を経験してるから、校内いじめに団結して耐えられる。一人で溜め込まずに相談出来る。そして理事長。このE組を創り出したのは……他でもない、貴方ですよ」

 

 結局、學峯は昔描いた理想の教育を、無意識に続けていたのだと、殺せんせーは言う。

 

対先生(この)ナイフで殺せるのは超生物(わたし)だけ。人間の命を奪えと教えるわけがない。私も貴方も、理想は同じです。殺すのではなく、生かす教育。これからも……お互いの理想の教育を貫きましょう」

「……私の教育は常に正しい。この十年余りで、強い生徒を数多く輩出して来た。ですが貴方も今、私のシステムを認めたことですし……恩情を持ってこのE組を存続させる事とします」

「ヌルフフフ。相変わらず素直に負けを認めませんねぇ。それもまた、教師という生物(いきもの)ですが」

「……それと、たまには私も殺りに来ていいですかね」

「勿論です。好敵手にはナイフが似合う」

 

 正直聞いた内容のほとんどは右から左へすっぽ抜けてしまっているのだが、どうやら丸く納まったようで、棗はほっと一息つく。

 自らの命をも顧みないとは、一時はどうなるかと思った。

 

「あ……あのっ、理事長先生!」

 

 旧校舎を立ち去ろうとする學峯に、棗は声をかけた。

 

「ん?どうしたのかな、歌川さん」

 

 學峯と言葉を交わすのは一学期中間テスト前以来だ。尤も、あの時は挨拶を交わしただけで会話はなかったのだが。

 

「えっと。なんと言いますか……その。命は大事にした方がいいと思います……悲しむ人がいると思うので……それだけ、伝えたいなと思って」

 

 學峯には学秀という息子がいる。そして、当然妻の存在もある筈だ。もし學峯が居なくなった時、彼らがどう思うか。結局3月に地球が滅びるとしても……今この瞬間に學峯が居なくなってしまったとしたら……最期のその時まで、彼らは心に重荷を抱えなければいけないことになってしまっていた筈で。死神の一件で命を差し出そうとした棗が、強くは言える立場ではないだろうが。

 

「……浅野君が、悲しむと?」

「は、はい。えっと……悲しむとかそういうのを抜きにしても、浅野くんの心に大きな後悔が残って……一生消えない傷になるんじゃないかなと思うんです。浅野くん、多分、お父さんのことちゃんと尊敬してると思いますし……あ、あくまで私がそうなんじゃないかな?って勝手に思ってるだけなんですけど……」

 

 子供は、親の背中を見て育つもの。棗の家族のような家族愛とはまた違うのかもしれないが、彼等の間にも家族としての確かな情があるような気がする。

 

「……そうですか。君は随分と彼の事を考えてくれているんだね」

「あー、えっと、浅野くんは私にとって大切な友達なので……友達がそういう気持ちになるのヤダなーって思っただけなので、どちらかというと自分の為のような……」

「……友達、ですか。なるほど」

 

 學峯は一瞬何かを考える素振りを見せる。棗はそれを不思議そうな顔で見つめた。

 

「いや、こちらの話だから気にしなくてもいいよ。……良ければこれからも浅野君と仲良くしてやってくれるかな」

「はいっ、それは勿論です!」

 

 片岡は浅野親子のことを渇いた関係性だと称していたが……実のところ、お互い不器用なだけなのかもしれない。何故なら今目の前にいる學峯は、ちゃんと息子を想う父親に見えるのだから。

 

「理事長先生も、浅野くんと仲直り出来るといいですね」

「仲直り……か。そうだね」

 

 彼には申し訳ない事をした、と學峯が呟く。

 

「それでは、そろそろ行かせてもらうよ。やる事が残っているからね」

「忙しいのに引き止めてしまってすみません」

「いや、大丈夫だよ。それじゃあ、また」

「はい!さようなら!」

 

 家族だから必ず分かり合えるとは言えない。けれど、学秀も學峯も、どちらも決して根は悪い人間では無い。あの二人ならばきっと心配は要らないと思うのだ。




「……友達、ですか。なるほど(難儀なものだな、彼も)」
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