【完結】その生徒、暗殺者に非ず。   作:クリオネf。t

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リアルで暗殺教室卒業式ですね。




終わりの始まり

 カーテンから漏れる一瞬の光に、初めは雷が落ちたのかと思った。しかしその割に遅れてでも聞こえるはずの音が聞こえない。

 それとほぼ同時にピロンとスマホの通知を知らせるバイブ音が聞こえ、画面を見ると烏間からの自宅待機のメッセージだった。殺せんせーに何かあったのだとメッセージアプリを開いてみるも既読はつかず、電話をかけても繋がらない。

 他のクラスメイト達へ連絡を取ってみるも、皆結果は同じらしい。律に聞いたところ旧校舎にある律本体とも通信が出来ないそうで、恐らく山全体に繋がる通信や電源が切られているのだろうとのことだ。

 テレビを点けてみれば、臨時速報で政府からの発表がなされた。その声明は、殺せんせーだけが悪者だという印象を与えている。

 

「……!」

「これって、棗の担任の先生よね」

 

 リビングで共にニュースを見ていた両親が心配そうにこちらを見ている。

 

「う、うん……でも、先生は棗達に酷い事一回もした事ないよ、凄くいい先生だよ」

「面談の時のあの先生?」

「うん……」

 

 大変な事になった。だけどどうすべきか分からない。

 

「お母さん達はちゃんと関わった事なかけん、よう分からんけど。少なくとも棗達にとってはよか先生やったとは分かる」

「お父さんも、あの先生は先生として立派な人と思う」

 

 両親は殺せんせーを信じているようだ。今まで自分の意見を言わなかった棗がはっきりと「E組にいたい」と言った事や、将来やりたい事を告げた事。四者面談での殺せんせー(烏間のすがた)と対面して、良い先生だと感じたらしい。

 例え世間が殺せんせーを信じなくとも、自分が信じ、自分の身近にいる人達が信じてくれるなら……きっとそれ以上のことはない。

 

 (コータローくんが学校に行くって言いよった。もしかすると皆向かってんのかな)

 

「……先生の事気になる?」

「うん……なんか皆学校の方行っとるごた」

「学校の方は封鎖されとるし、近い場所は避難勧告が出とるけん、多分行っても本校舎にすら近づけんと思うぞ」

「でも棗行きたいよ……」

 

 両親は暫し黙り込んだ。それはそうだ、危険かもしれない区域にかわいい娘を送り出すなど心配でしかない。

 

「お父さんが近くまで連れて行ってやる」

「え!」

「ただ、本当に危ないと思った時はすぐに戻って来なさい。近くで待機しとっけん」

「う、うん、ありがとうお父さん!」

 

 慶一郎が車で送ってくれる事になり、棗はクラスメイト達が集まっているであろう場所へと向かう。

 移動中はネットの生中継を見ていた。クラスメイト達が映る。集まった報道陣は好き勝手な事ばかりを言う。まぁそんなものだろう。決して気持ちのいいものではないが。封鎖区域の少し手前で車を停めてもらい、棗はクラスメイト達が囲まれているその人だかりの中へ走って行く。泣いている倉橋へカメラやマイクが一斉に向けられていた。

 

「すみません、やめてください」

「歌川さん!」

「君も生徒?」

 

 倉橋を庇い前に出た事で、棗に沢山の注目が集まった。内心冷や汗だ。

 

「そ、そうです」

「怪物に脅されて思ってもない事を言わされて、君も辛かったでしょう。本当の事を話しても誰も責めないわ」

 

 女性記者にそう言われた時、シンプルに何を言っているんだと冷めた気持ちになり真顔になる。

 

「仮に本当の事を話しても本心を隠しても、どちらにせよ先生の事を血も涙もない怪物だと言って面白おかしく取り上げるだけのメディア(あなた方)にどうして私がこの一年の事を話す必要があるんですか。それで私に何か得でもあるんですか」

 

 淡々とそう告げる棗の姿に、報道陣達は若干怯む。クラスメイト数人も「ひぇ…」と声を上げていた。

 

「み、皆、一旦帰ろう!!警備もマスコミもどんどん来てる!!こんな状況じゃ何も言えないし聞いてくれない!!」

「聞かせる必要ないよ、どうせ日本語通じないもんこの人達。私達の大切な一年間を聞かせる価値なんかこの人達に1ミクロンたりともないから」

「歌川怖ェよ!!!」

「歌さんの養豚場の豚を見るような冷たい目は常人のそれの数百倍のダメージが……」

 

 岡島や竹林にツッコまれつつ、棗も皆と共にその場を退散する。

 

 

「……どーすんだ、これから」

 

 報道陣や自衛隊員を何とか振り切り人気のない場所へ辿り着いた。棗達は何も聞かされていない。だから現状をしっかり把握したいというのが総意だ。

 

「……よし、手分けしてバリアの周囲や発生装置を偵察に行こう。夜にまたここに集まって対策会議だ」

 

 上手くは言えないが、このまま終わっていい筈がないと磯貝は言う。それは皆同じ気持ちだった。

 

「歌さん」

「ん?」

 

 各々分かれて行動を始めた時、竹林が眼鏡を押し上げながら棗へ声をかけてくる。

 

「何かあった時のために、歌さんは集合場所には来ずに自宅で待機しておいてもらってもいいかな」

「よー分からんけど、コータローくんがそう言うなら分かった。なんか決まったら連絡ちょーだい」

「勿論」

 

 そんなわけで、棗のみ集合場所に戻らない事になった。今現在慶一郎が車で待機しているので一旦戻った方が良さそうだなと思っていた為丁度いいだろう。

 

「ただいま」

「用事は済んだと?」

「とりあえず棗は一旦家に帰る事になった。他の皆は各々情報収集で駆け回って一回集合するっぽい。棗はなんかあった時の為に自宅待機して欲しいって」

 

 実際問題、棗はクラスの中でも最も身体能力や暗殺能力が低い。クラスメイト達にギリギリついて行けるかどうかのレベルだ。自宅で待機させるのは正しい判断と言えよう。

 

「凄いクラスだね」

「うん、棗もそう思うよ」

 

 そんな会話を交しながら、車窓に映る旧校舎を眺めた。




棗ちゃんは家族相手だと一人称が自分の名前になる。
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